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『幸せという名の受難』/ラミリア


ん・・あぁ・・日直終了・・っと」

2−Cへと向かう廊下の上で竜児は一度伸びをした。
一仕事終えた後だけに、文字通り肩の荷が降りたといった感じだ。
ボリボリと頭を掻きながら、教室のドアへと手をかける。
ガラララ・・
「え?」
ドアをくぐって見た目の前、実乃梨が竜児の机に突っ伏して安らかな寝息立てていた。


『幸せという名の受難』


「・・・」
竜児はゆっくりと教室のドアを閉める。極力音を立てないように。
そして忍び足のまま、自分の机の前のイスを静かに引き出して腰掛けた。
『よく寝てんな・・・』
スー、スーっと、規則的な寝息が耳に届く。
目の前で上下に揺れている、短めに切り揃えられた髪の毛が、
竜児の理性をそっとくすぐった。
思わず髪に触れたい衝動に駆られるが、なんとかそれを我慢する。
「・・・むにゅ」
黙って見ているだけで、顔が綻んでしまう。
自分の目の前、こんなにも無防備な寝顔を晒してくれるなんて。
頬杖をつき、飽くことなく寝顔をみつめながら、
竜児は込み上げる喜びを堪能していた。
今日は日直だから一緒には帰れない、そう伝えたはずなのに・・・。
おそらくは自分を待っていたんだろう。
自分の机に陣取り、帰ってきたら驚かせよう・・・そんな事を考えてたのかもしれない。
思わず想像した考えに、クスクスと笑い声がこぼれた。

そのとき。
「・・・くしゅんっ!」
ブルっと一つ震えて、実乃梨がゆっくりと起き出した。
「う〜・・・さむ・・・・あれ?」
「おはよう櫛枝」
「・・・なんで高須くんがうちにいるの・・?」
むにゅむにゅっと、まだ寝ぼけている目をこすりながら、実乃梨がポヤーッと呟いた。
その様子が、また可愛らしい。
竜児の笑いがまた漏れ出した。
「そうだな・・・夢じゃないか?」
クスクスと笑いながら、冗談めかして嘘をついた。
まだこしこしと目をこすっていた実乃梨が、その言葉を理解するまで数瞬。
突然、フニャッと笑顔になると、おもむろに竜児の頭を抱き寄せた。
「!?くくく櫛枝!?」
「なぁんだぁ、いつものか〜」
「・・・え?」
実乃梨の言葉に、竜児の目が見開かれた。
「い・・いつもの・・って?」
「んー・・どうしたのぉ?いつもみたいに抱き返してくれないのぉ・・・?」
「え・・あ・・・お、おう?」
動揺しながらも言われた通りにしようとする竜児。
おずおずと手を背中に回すと、ゆっくりと実乃梨の小さな体を抱き寄せた。
その体からはお日様の匂いがした。
「こ、これでい、いいか・・・?」
「んんー・・ちがうでしょー・・・。いつもは頭を撫でてくれるー」
「あ、お、おう」
言われるままに、クシャクシャと柔らかい髪の毛を撫でる。
実乃梨が気持ちよさそうに目を細めた。
どれくらいそうしていただろうか?
ふと見ると、実乃梨がさっきとはうって変わった、不満げな瞳で見上げていた。
「あ、な、何かまた違ったか?」
「・・・いつまで頭撫でてるの?」
「え、あ、す、すまん!」
慌てて頭から手を放して引っ込めようとした。
「違う」
その手が不意に掴まれる。
「え?」
「・・・どうしたの?キス・・・してくれないの?」
掴んだ手の平に、ゆっくりと自分の頬を押し当てながら、実乃梨が上目遣いに竜児をみつめた。
瞬間、ドクンッと竜児の心臓が跳ね上がる。
「キキキキキス・・・?」
「そうだよ?いつもしてくれるじゃない・・・?」
何してんだ夢の俺ーーーーっ!!?
どぎゃーっと心の中で突っ込んでみるが、怒りの矛先が夢とはいえ自分であることがどこかやるせない。
いやまて。今はそれどころでは、全くなく・・
「・・・ね?どうしたの・・・?はやくぅ・・・」
この状況を、正に今現在どうにかしてどうにかしないといけないんだ!!

既に焦れてきているらしい実乃梨は、抱きつく手を強くして、体を出来る限り密着させようと試みている。
ほんとに寝ぼけてるのか?と思うほどに、その甘え方は竜児の急所をキュンキュン的確に射抜いていく。
「ああああの!くく櫛枝っ!!」
「ん?・・なぁに・・?」
「おおおおお俺は!い、いつもどのようにしてるんだっけ!?」
窮余の一策。
こう言えば、「そんなこと・・・」とか言って、実乃梨が恥らって怯むのではとの考えだ。
その隙を見逃さず実乃梨に、これは夢じゃない!現実だ!と一言・・・。
「んと」
「え?」
「こうだよ・・?」
焦りながらも冷静に計算していた頭の中、その全てが徒労となった瞬間。
実乃梨は両手でそっと竜児の頬を包み込むと、むにゅっと音がするのではないかと思うほど、自然に唇を重ねてきたのだ。
「〜〜〜〜っ!!?」
竜児は目を白黒させながら、とりあえず身を離そうとするが、如何せん実乃梨が相手では乱暴に引き離すわけにもいかず、ただただ両手を戸惑ったように上下させるのみであった。
「・・・・・ん、はぁ・・・」
時間にして20秒ほどだろうか?
解放されたとき、最早竜児の心臓は爆発寸前の状態。
理性がガラガラと、音をたてて崩れていきそうな錯覚にとらわれるほどに、切羽詰ったところまで追い込まれていた。
とはいえ。
「・・・な、何とか・・・保った・・か・・・」
額の汗を拭きながら、ほっと安堵の吐息をついた。
のも、束の間。
「まぁだぁ・・」
「へ?」
うちゅっ。
俯いていた竜児の顔に合わせるように、しゃがみ込んできた実乃梨が、するりと首の後ろに手を回して、強引に竜児を引き寄せ唇を重ねた。
「ん・・は、あ・・んみゅ・・ふぅ・・あむ・・ん・・・」
ちゅっちゅっと音を立てながら、竜児の唇に時には深く、時には浅く、積極的に愛撫をするようにキスを繰り返す実乃梨。
眉根を寄せ、一生懸命にその行為をしている実乃梨から目を逸らすことも、閉じることも出来ないまま、竜児はただひたすらに硬直していた。

そんな、ある秋の日の竜児の受難w


ちなみに教室の外

「わわわわわ!ばかちー、なにあれなにあれ!?」
「うっわすっげうっわすっげ!わーわー!あれ絶対舌入れてる!」
「あれキス!?キスだよね!?」
「うわーうわー!み、実乃梨ちゃんスゲーテク持ってる!!あ、あなどれねー・・・」
「・・・(カシャ)」
「写メ!?なんで!?」
「き、記念・・・」
「あんた・・・」
「・・・わ!?み、みのりん、竜児に乗しかかった!?」
「うっそ!?・・・うわ!押し倒してんじゃん!攻めだ攻め!た、高須君為すがままかよ!?」

狂喜乱舞な女子二人w

このページへのコメント

感動

0
Posted by azeka 2013年01月24日(木) 18:22:49 返信

面白かったです

0
Posted by 不死鳥 2012年03月02日(金) 19:35:59 返信

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