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『24話another・1』/ラミリア


アナザー24話。
大河を追いかけた後。保健室にて。

実乃梨「あたし・・・もう一つ見えてること、あるよ」
竜児「・・・」
実乃梨「高須君は大河が好き!」
竜児「・・・」
実乃梨「?高須君?」
竜児「・・・違う」
実乃梨「え?」
竜児「・・・あれからよく考えた。あの・・・修学旅行の事件から」
実乃梨「・・・」
竜児「それで気付いた。俺は、確かに大河を守りたい。あいつをあのまま一人にしたくない。でもそれは・・・家族としてだ」
実乃梨「・・・え?」
竜児「泰子に対する感情と一緒だ。傍にいて、世話を焼いて、それで困難からは守ってやりたい・・・父親みたいに」
実乃梨「高須君・・・」
竜児「前に川嶋に言われたことがある。『なんでパパ役なんてやってるの?』って。それはたぶん・・・俺が父親を知らないからなんだ」
実乃梨「・・・」
竜児「だから、俺が・・・俺にもし父親がいたらして欲しいこと、それを・・・大河にしてやってたんだ。あいつも・・・『父親』を知らないから」
実乃梨「・・・それは勘違いじゃ・・・」
竜児「ない。よくよく考えた上で出た結論だ」
実乃梨「!」
竜児「俺は大河の傍を離れない。でもそれは家族としてだ」
実乃梨「・・・高須君・・・」
竜児「それは俺の意思で、もしかしたら大河の思いとは違うかもしれない。でも俺は決めたんだ」
実乃梨「ちょ・・ちょっとま・・・」
竜児「俺が好きなのは、お前だ櫛枝」
実乃梨「っ!!」
竜児「俺が自分で、お前の言う通り俺が自分で決めた幸せが、これだ。俺の意思で、傍にいて欲しいと想ったのが・・・お前だ」
実乃梨「た、たかすくん・・・」
竜児「俺は・・・櫛枝実乃梨が好きだ。ずっとずっと好きだった」
乃梨「っ!(涙が流れ出す)」
竜児「お前の笑顔が好きだ。お前の前向きさが好きだ。ひた向きさも、変なトコも、大河をホントに大事にしているところも、全部ひっくるめて好きだ」
実乃梨「た・・かす・・・くん・・・」
竜児「・・・俺の傍らに、立ってくれないか?」
実乃梨「た、高須君!!」

胸に飛び込む実乃梨。それを抱きとめる竜児。

竜児「・・・一緒に居てくれるか?」
実乃梨「(泣きながら無言でコクコク)」


翌日。登校時。

実乃梨「・・・あ、お、おはよ」
竜児「・・・よ、よう」

ぎこちなく並んで歩き出す二人。

実乃梨「・・・」
竜児「・・・」
実乃梨「・・・き、昨日さ」
竜児「お、おう」
実乃梨「ば、バイト大丈夫だった?その・・・ぶっちゃけ大河」
竜児「・・・ああ。全部話した。最初は驚いてたけど、三人ずっと一緒だっていったら逆に喜んでた」
実乃梨「そ、そっか・・・よかった・・・」
竜児「ああ」
実乃梨「・・・」
竜児「・・・」
実乃梨「・・・」
竜児「あ、あのさ」
実乃梨「ひゃ、ひゃい!」
竜児「その、お、俺たち・・・つ、つきあってんのかな?」
実乃梨「!!わ・・・わわわかんない・・・」
竜児「な、なんか俺、つ、つきあってって・・・言ってない気が・・・」
実乃梨「い、一緒に居てくれるか?・・・とは、言われたような・・・」
竜児「そ、それは・・・ちがう、よな?」
実乃梨「・・・ちがうね」竜児「・・・」
実乃梨「・・・」
竜児「・・・あのさっ」
実乃梨「な、なに?」
竜児「い、今!今言っちゃっていいか!?」
実乃梨「今!?やややだめだめだめ!」
竜児「な、なんでだよ!?」
実乃梨「そそそんな、そんなやっつけ仕事みたいなのだめに決まってるじゃん!こ、告白なんだよ!?」
竜児「でも俺、もういっぱいいっぱいで昨日っからテンパり続けてんだよ!いい加減楽になりたいんだ!頼む!(合掌)」
実乃梨「あ、あたしだってテンパってるけど、そ、そこはちゃんとして欲しい・・・だ、だって初めてだし・・・」
竜児「く、櫛枝・・・」

そんで真っ赤になる二人。


登校時。教室。
竜児、机に突っ伏している。

大河「おはよー竜児・・・って、なにあんた朝から死んでるわけ?」
竜児「・・・心臓が痛え・・・」
大河「やだ、ホントに死ぬの?死体見たくないから、どっか消えてから死んでよね。猫みたいに」
竜児「お前な・・・」
大河「冗談よ。で?一体なにがあったわけ?」

竜児、一瞬口籠もる。

竜児「・・・(ゴニョゴニョ)」
大河「ハァ?ぜんっぜん聞こえないわよ?」
竜児「だから・・・だが・・・よ」
大河「聞こえないっつってんでしょ、グズ犬!男だったらもっとハキハキ喋れ!」
竜児「(ガバッ!)だから、櫛枝が可愛すぎたんだよ!朝会ったとき、いつもの元気一杯の態度と違って、なんつーんだ?可憐?可憐っていうのか!?いや別にぃ
つもの態度も120%可愛いわけだが、とにかく!顔をほんのーり赤くしたりして!しかも『初めてだから・・・』なんて目ウルウルさ
せてみつめられてみろ!俺の心臓、鼓動限界突破スレスレまで跳ね上がったんだぞ!?殺す気か!?」

ゼイゼイと息を切らす竜児。その目の前で大河が、呆れたような半眼でみつめる。

大河「あー・・・まあどうでもいいけど・・・」
竜児「どうでもよくねぇ!俺にしたら死活問題だ!!」
大河「・・・みのりん全部聞いてるよ?」
竜児「へ?」

指差された己の背後。
振り返った先に、

実乃梨「・・・はう・・・はう・・・はう・・・」

火でも噴いたかのように、真っ赤になった実乃梨。
今にも泣きそうにプルプルと震えて。

竜児「あ、く、櫛枝・・・い、今のは、別に違うんだ。いや違わないけど・・・」
実乃梨「た・・・高須君の・・・」
竜児「ま、まて。は、話を・・・」
実乃梨「馬鹿あぁぁぁぁぁっ!!」

どごーん!

思い切り竜児にグーパンを食らわして走り去る実乃梨。
残されたのは床に転がった一つの屍。

大河「あーあ、泣かせちゃった。ま、そりゃあんだけ恥ずかしいこと公衆の前で言われたら、そりゃ泣くわよね」
竜児「お前・・・知ってたら教えろよ・・・」
大河「仕方ないじゃん。こっちの方が面白そうだったんだから」
竜児「悪魔か・・・」

「で?みのりん行っちゃったけど、このまま放置すんの?」
誰のせいだ?と突っ込みたい気持ちをギリで押さえて竜児が立ち上がる。
「なわけねーよ・・・」
パンパンと制服に付いた埃を払って、前を見据えた。
「はからずも・・・お前のおかげで言えたんだからな。このまま突っ走る!」
勢い込んだ声。
今まさに、自らの枷を外した。
己が心の為に動くと
「わーカッコいいー。骨はあたしが拾ってあげるわー」
「・・・お前の棒読み、スッゲー萎えるな・・・。でもま、応援ありがとな、大河!」
大河の言い様に苦笑を浮かべる。
「じゃあ、行ってくる!」
竜児はそう言い残すと、一目散に駆け出した。
実乃梨の後を追って。
「・・・」
「・・・いいのか、逢坂?」
そっと大河の背後に近づいていた北村が、心配そうに声をかける。
振り返らないままに、大河は静かに目を伏せた。
「・・・いいのよ。これで・・・いいんだわ」
振り向いた大河の目に浮かぶ涙。
「・・・竜児とみのりんはお似合いだもん・・・相思相愛なんだから・・・」
切なげに笑うその小さな体を、北村が静かに抱き締めた。
「・・・え?き、きたむらくん・・・?」
「・・・格好つけすぎだ、お前。俺より余程カッコいい」
「・・・えへへ。今なら北村君・・・ちゃんと応えてくれるかな・・・?」
「・・・釣りあわな過ぎて、今すぐ武者修業の旅に出たいくらいだ」
そう言って笑いあう二人。
かつて好きだった人と、かつて好きだった人。
二人は今重なって、お互いを育む。

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