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『You are similar』【1】/R29



これは色々あったその後
3年の夏

『You are similar』

プロローグ
「は?みのりんを家に呼びたい?」
「おう、そうなんだ」
「……で?」
「頼むよ〜」
はっ、ふざけんじゃないわよっ と近くにあった雑誌で竜児の頭を
ひっぱたいて一喝、そしてその雑誌を開いて読み始めた。
「頼むって、ど、どうしたらいいかわかんねえんだよ」
「はぁ?付き合って半年も経つのにまだ家にも呼べてないの!?
あっきれた……よく振られないわね」
相変わらずの毒舌で罵り、哀れなものを見るような視線をも向けてくる。
「だ、だからだな、その……おまえに、櫛枝を自然に家に連れてきて――」
「調子乗んな!!」
「おう!?」
またも雑誌、今度は角の部分が竜児のでこのあたりに直撃した。
「だいたい自然に竜児の家ってのがすでに自然じゃないのよ!
なんで他人のうちに自然に人連れ込むのよ!?」
「いや、おまえ自然に俺ん家くるじゃねえか」
「黙れクソ犬」
さすがに女の子が「クソ」なんて単語を飛ばすのは良くない気もするのだが、そこはあえてスルー
大河の機嫌をこれ以上損ねるわけにはいかないのだ。
「そもそもなんで家なわけ?外行けばいいじゃない……買い物とか散歩とかなんなり」
「そ、それは、そうなんだけど……で、でもよ、な?」
外でもいいのだ、もちろん。実乃梨に会えればどこだっていいのだ。
しかし男の竜児としたら、そろそろ彼女を家に呼んで
屋内の二人っきりの場でやることだって色々したいのだ。
「は!?もしかしてあんた……」
そんな竜児の心情が大河にも伝わってしまったのか、大河は急に目を見開き
食いつかんばかりに竜児に攻め入る。
「ああああんたもしかしてみのりんに……このエロ犬っ 最っ低、近づくな、エロに汚される」
「おまえから近づいてきたんだろうが!」
あからさまに何かを払うように服をぱんぱんと払うと竜児と随分距離を取る。
「あんたみのりんに何する気!?やだやだやだーーっみのりんは私のだああーー!!」
「いや、落ち着いてくれよ……ち、違うそういうのじゃなくて」
実際は違くもないのだが、そう言わないことには確実に大河は
協力などしてはくれそうにない。

「何が違うのよっ だめ、絶対」
「なんの決まり文句だよ……じゃ、じゃあいいよ、おまえも一緒にいれば!それで文句ないだろ!?」
大河がいたら二人でいい雰囲気になどなるはずがないのだが、
とりあえず実乃梨を家に呼びたいので今回はそこは妥協することにした竜児。
一度呼んでしまえば次からは案外簡単に誘えるだろうし、つまりは切っ掛けが欲しいのだ。
「はあ!?あんたたちの間に私が入って一緒に遊べっていうの!?」
「間に入れとは言わないが、別にいいだろ?」
「良くないわよ!あんた一体私にどんだけKY役させるつもりよ」
「じゃ、じゃあ帰ればいいじゃんかよ!」
「い、嫌よっ 帰ったらあんた絶対なんかするもん」
「………うっ」
黙り込む竜児に一言遺憾だわ、と呆れたように呟き、仕方なさ気に大河が頷いた。
「本っ当に仕方ないわね……さっさと振られろ駄犬」
「ひっ、ひどすぎる……」
なんという毒舌、人の心の繊細な部分まで容赦なくガスガスと抉っていく。
「私にだって色々あるし、今回だけよ」
「ま、まじか!?」
「言っとくけど……本当にあんたの頼みを聞くわけじゃないから!」
強く念を押すように鼻息を荒くして大河は言うと、お茶を一気飲み、
さらに勢いよく湯飲みをちゃぶだいに叩きつけると続けた。
「来週の日曜、私、みのりんと遊ぶことになってるの。
その時上手い具合にあんたの家に連れてくる、それでいいわね?」
「う、上手い具合ってどんな具合だよ」
ドジっ子の大河のことだ、変なドジを踏んで実乃梨に作戦がばれたりしないか冷や冷やなのだ。
「大丈夫! 絶対に成功させるわよ」
「本当か?」
「本当よ!いい、来週の日曜よ。午前中はみのりんと遊んでくるから午後ね。
あ、どうせだからお昼用意しておいて!あんたん家で食べるから」
「おいおい……」
なんという図々しさ、しかし今は何でも大河の言うことを聞く、本当に犬にならなくてはいけない。

そう言うことで、来週の日曜午後――
大河の作戦が成功すればうまい具合に実乃梨が家に来てくれるはず……
情けなさずぎる竜児の、『彼女を家に呼ぶ』という願いが
もうすぐ達成されようとしていたのだった。

続く。

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