妖異金瓶梅
■扶桑社文庫※『銭鬼』、『人魚灯籠』を収録しているのは扶桑社文庫版のみ
希代の好色漢西門慶と、その第五夫人にして大淫婦の潘金蓮。
『水滸伝』のいちエピソードより派生した奇書『金瓶梅』の世界を傑作ミステリーとして再構築。
密室、猟奇殺人、死体消失といったあらゆる技巧を凝らした物語は、弱みを握られた名探偵応伯爵の目を通して絢爛に、淫靡に、そしてタイトルの通り妖しく壮絶に展開されてゆく。
もともと連作短篇として執筆され、中国古典をヒントにした着想方法などはのちの忍法帖シリーズへと繋がる。
また、出版社が山風に原稿料を払えず『金瓶梅』の訳本を現物支給したことから誕生した物語でもある。
本作のヒットを受けて日本版『水滸伝』を作ろうとし、出来上がったのが『甲賀忍法帖』であり、ミステリと忍法帖への架け橋ともなった作品でもある。
希代の好色漢西門慶と、その第五夫人にして大淫婦の潘金蓮。
『水滸伝』のいちエピソードより派生した奇書『金瓶梅』の世界を傑作ミステリーとして再構築。
密室、猟奇殺人、死体消失といったあらゆる技巧を凝らした物語は、弱みを握られた名探偵応伯爵の目を通して絢爛に、淫靡に、そしてタイトルの通り妖しく壮絶に展開されてゆく。
もともと連作短篇として執筆され、中国古典をヒントにした着想方法などはのちの忍法帖シリーズへと繋がる。
また、出版社が山風に原稿料を払えず『金瓶梅』の訳本を現物支給したことから誕生した物語でもある。
本作のヒットを受けて日本版『水滸伝』を作ろうとし、出来上がったのが『甲賀忍法帖』であり、ミステリと忍法帖への架け橋ともなった作品でもある。
- もう大好きです。ともすると描写が煩雑で退屈がちな原典から、読者が期待するはずの要素である中華世界の爛熟と残酷趣味を巧みに描きだしてくれている。
- 原典の持つ「淫書」「奇書」というイメージを最大限に利用し、大成功した例。視点を変えての再読も楽しい、お得な1冊。扶桑社版は表紙が変なのを我慢すれば完全版なので必読かな。
- 基本的な妾の名前、設定は原典を準拠しているのだが、そのほか追加されたヒロインの名前は実は中国古代春本からとられているものが多い。本文中にも春本からとった記述があり、風太郎が中国春本を研究していた証だろう。初期短篇にも出てくる「もてる男の潘驢��小閑（美男、一物が大きい、金持ち、細やかな気遣い、閑がある）」というのも古代中国春本によく出てくるフレーズ。こうした春本研究の成果は、腎虚を原理とした各種忍法や『秘戯書争奪』といった作品にも生かされている。
- 『悪霊の群』でも『金瓶梅』のヒロインに扮した女たちが出てくる。風太郎はよほど『金瓶梅』が好きなようで。
- 梁山泊の英雄たちの出場頻度は原典よりこちらのほうが高い。武松、燕青、孫二娘の登場シーンはびっくりするほどよく出来ている。流石である。
- 日下翠『金瓶梅 天下一の奇書』では、本作での潘金蓮と春梅の倒錯した関係が「さすがは天才。原作もこういう設定ならばずっと面白かったであろう」と絶賛されている。また同書では「山田風太郎は、『金瓶梅』の翻案に関しては馬琴を抜いたといえるのかもしれない」とも書かれている。中国文学者すら圧倒した本物の作品だ！
- スカトロジー、カニバリズム、同性愛、SMと一通り異常性愛が揃っているのも凄い。それでいて美しく書いてしまう天才ぶりには驚倒するほかない。
- 文句なしにミステリの傑作でしょう！ まぁ、トリックは時代物限定的ご愛嬌なものもいくつかありますが、それはミステリ古典全般に言えることで、この作品を損なう要素にはなり得ません。風太郎の善悪を超えた魅力あるヒロイン像は何人かいますが、金蓮はその最高峰のひとつともいえるでしょう。
2006年02月13日(月) 22:31:13 Modified by kizurizm