- 宮田町
鞍手郡宮田町と飯塚市の境に笠置山があります。むかし、そのふもとを流れる川に
深いふちがあって、大きなナマズが住んでいたということです。
この大ナマズは全身が灰色で、どう猛な口を持ち、魚をとりに来た人や、そばを通る人を
襲って食い殺すという凶暴なナマズでした。
その背中には黒い紋があり、それがちょうど馬の背に置く鞍のように見えるので、
村人は「くらかけのナマズ」と呼んで恐れ、ふちに近づかないようになりました。
しかし、近くに住んでいる人や、どうしてもそばを通らなくてはならない人は
大変困っていました。
宮田村には、「長屋殿」と呼ばれ、村人の信望を集める長屋山筒男(ながややまつつお)
という人が住んでいました。
ある日、村人の難儀を見かねた饒速日命(にぎはやひのみこと)という神様が笠置山にお下りになり、
長屋殿に神剣を授け「くらかけのナマズを退治せよ」と命じられました。
長屋殿はさっそくナマズ退治に出かけました。
長屋殿は大変な力持ちで、武勇にもすぐれていましたが、なにしろ相手は人を食い殺すほどの
大ナマズで、しかも水の中で戦わなければならず、まさに命がけの一騎打ちとなりました。
戦うこと数時間、ついにナマズを組み伏せた長屋殿は、鞍のように見える背中から、
手のように見える両ひれにかけて、一刀のもとに切り殺してしまいました。
こうして大ナマズに襲われる心配もなくなり、村人は大喜びしました。
それ以来、村人は長屋殿の武勇をたたえ、その恩を忘れることがないようにと、
この話を子々孫々まで語り伝えたということです。
一説では、大ナマズの背中が鞍のようで、両ひれが手のように見えたというところから、
鞍手郡の地名が起こったとも言われています。
トップページ
コメントをかく