- 直方市
むかし、人々はこの世に“鬼”の存在を信じていました。しかし“鬼”といっても、決して悪い鬼ばかりではありません。
古くから語り継がれてきた昔話の中には良い鬼の話がいくつも伝えられています。このものがたりもそのひとつです。
直方市上新入(かみしんにゅう)の石丸と夏峰との間に、地元の人たちから鬼橋と呼ばれている小さな石の橋があります。
すこし山手の岩河内池から犬鳴川に注ぐ小川にかかる橋で、いまではわずかに石組みを残すばかりです。
むかし、ここは植木や新入と宮田方面と結ぶ重要な道路でした。しかし、この小川には橋がかかっていなかったため、
雨が降って増水するとすぐに渡れなくなり、往来する人々はとても困っていました。
そこで、周辺の村では協力してこの小川に橋をかけることにしました。ところが大勢人が集まったにもかかわらず、
作業はなかなか思うように進みません。材料の石を山から切り出したり、川の中に土台を築いたり、
また足場を組んだりといった基礎工事に手間どり何ひとつ完成しないまま、とうとう日が暮れてしまいました。
村人たちは一日で片付けるつもりだったのが、またあすも出て働かなければならなくなったことにガックリして
家に帰っていきました。
そして翌日。朝、みんながしぶしぶ仕事場へ行ってみると、どうしたことでしょう、
小川には立派な石橋がかかっています。
だれもがこの夢のような出来事に目をパチクリとさせて驚きました。もちろんとても人間の仕業とは思えません。
そして、「きっと心やさしい鬼たちが、われわれの苦労を見かねて手助けしてくれたに違いない」ということになり、
この橋を鬼橋と名付けたそうです。
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