- 城島町
大河筑後川に沿って広がる穀倉地帯をひかえた城島城は、昔から諸豪族の攻防がくり返された所です。
その戦火もおさまり、徳川の世を迎えたころ、城跡は昼なお暗いうっそうとした森であったといいます。
その城跡の近く、楢林(ならべし)という村に与作という子供がいました。病気のお母さんと二人暮らしで、
毎晩どじょうをとっては売りに行き、どうにか二人の暮らしを支えていました。
ある晩のこと、与作がいつものようにお母さんの病気がよくなりますようにと城跡の森にある琴平(こんぴら)さんに
お参りしていると、神社の後から「うんうん」うなる声がします。びっくりした与作が裏へまわると、一ぴきのたぬきが
しっぽを石にしかれもがいていました。与作はさっそく石をどけてやりました。
「私は、この森に住むふる山きんさくというたぬきです。助けてもらったお礼にあなたのどじょうとりのお手伝いを
しましょう。私が提灯でどじょうのいる所まで案内します」
与作が大よろこびでついて行くと、いるわ、いるわ、たちまちびくはどじょうで一杯になりました。そして毎晩、
きんさくと与作は琴平さんで会い、どじょうをとりました。
与作が毎晩、どじょうを一杯とってくることを知った村人は、不思議に思って与作の後をつけてみました。
そうすると与作は琴平さんまでくると、ふわりふわりと浮かぶ提灯に導かれて昼間でもあまり人の近づかない森を
ぬけていくではありませんか。
次の日、与作からそのわけを聞かされた村人は、与作ときんさくの友情に感動しました。
それからは夜中に田んぼや川で赤い火がみえると「与作の提灯」と呼ぶようになりました。
現在、森のあった所は道路が走ってすっかり開け、琴平さんは城の本丸跡に移されています。
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