経過報告1

1

迂闊だった。いくら敵軍の活動範囲外とは言え、味方のいない状況で眠りに就くことは愚策と言う外ないだろう
私は月に攻めてきた地上軍の秘密基地を見つけ出す単独任務を言い渡されていたのだが、即席小屋にて休憩中に地上の兵士と遭遇、あっけなく捕まってしまった
武器は全て没収され玉兎たちとの連絡網も断ち切られた。手元に残っているのは肌を隠すための衣服と小型記録テープだけだ
これから私は捕虜として尋問及び拷問を受ける筈だが、それらの内容を経過報告として事細かに記録していく必要がある。例え、どんなに惨たらしい行為をされようとも…

2

気付いた時には狭い部屋にいた。若干意識が朦朧としているが、それは兵に嗅がされた睡眠薬による影響のせいだろう
私が収容されている部屋は、ベッドが一つに少ない家具が置かれた寝室だった。綺麗に掃除されている部屋と寝具を見て、ここで何が行われるのか凡その予想がついた
壁には扉が二つあり、片方は重苦しい鉄の扉で、もう片方は木製の扉だ。前者は恐らく出入り口なのだろうが、如何せんベッドの上で拘束されているので身動きは取れず、確認する術はない
暫くすると鉄の扉が開き、一人の男が入ってきた。男は私の身体を舐め回すように見ながら次のような台詞を吐いた
―これからお前の身体を自由に使う。月の情報を聞き出すつもりは一切無い。お前には俺の慰め者としてここで暮らしてもらう―

3

残念ながら私の予想は的中した。地上軍は私を性処理用の捕虜として捕らえ続ける気だ
どの程度の辱めを受けるのか、何人分の欲望を満たさなければいけないのか、そのようなことは最早どうでもいい。穢される、その一言が私の頭を駆け回っていた
男はベッドに登ると後ろに回り込み、私の両胸を鷲掴んだ。歯を食いしばって声を抑える
男はシャツ越しに胸を揉みながら少しずつボタンを外し、大きな胸を外気に触れさせた。シャツを両脇に広げて男は乳揉みを再開する。男の手はぎこちなく動いていたが、それは慣れていないと言うよりも、一人の女を好きに穢せる事への期待による震えの様に感ぜられた
眼下では私の胸が男の手によって色々な形に変形させられている。男は弾力を楽しむように指を埋めて揉みしだいたり、胸を下から掬い上げてたぷたぷと揺らして遊んだ
自分の乳房がオモチャにされているのを見下ろしながらも、私は嬌声も悲鳴も上げなかった。何かしらの反応を示したところで、それは男の嗜虐をくすぐるアクセントにしかならないことを知っていたからだ

4

壁に掛けられている時計を見ると、30分が経過しようとしていた。男は飽きること無く胸を揉み続けていたが、それから5分も経たない内にはたと手を止めた。シャツのボタンを付け直し、男の手が視界から消える
背後からギシギシと軋む音がする。男がベッドから降りたのだ
男は少し息を荒くしながら私の前に立った。ふと男の股間を見るとズボン越しでも分かるほど勃起していることに気が付き、思わず目を逸らしてしまう
―今日はここまでにしておく。徐々にお前を俺好みの女に仕立て上げる―
男は私にそう言うと、名残惜しそうにしながら部屋を出ていった
今日「は」ここまでにしておく。つまり、明日からはより過激なことをされるのだろう。私はベッドに背中を付けると、深く溜息を吐いた。次はどのような仕打ちを受けるのか、出来得る限りの最低のケースを想像して一人震えあがった
こうして私の捕虜生活の一日目は終わった

報告終了

経過報告2

1


私が地上軍に捕まってから一日が経過した。相変わらず脱出の目処は付いていないが、それなりの進展はあった
朝7時頃に例の男が部屋に入ってきた。料理の乗ったお盆を持っており、それをベッド脇のテーブルに置いた。「身動きが取れない状態で飯を食えと言うのか」と皮肉を言おうとした時、驚くべきことが起きた。何と男が私の拘束を解いたのだ。予想外の事態に呆然としていると男がここでの生活の「ルール」を教え始めた
―食事は一日に二食、必要なら三食持ってくる。風呂とトイレは木の扉の向こうに別々に設備されているので好きな時に使っていい。衣類下着類は箪笥の中にいくつか用意してあるので着替えたければそれを使うように。基本部屋の中では自由に過ごしていて良いが、俺が来た時には俺の命令に従うこと。従順でいれば命の保障は約束する―

2

男の説明を聞きながら私は焦っていた。まさか拘束が解除されるとは思っていなかった。この男は私に反撃されるのが怖くないのだろうか? いや、男には私が襲ってこないという確証があるのだろう。事実、私は「従順でいれば命の保障は約束する」という言葉に後ろ髪を引っ張られて手出しできなかった。玉兎で他に類を見る者はいないとまで言われた私の臆病さが、ここにきて私の身体を拘束したのだ。男はそれを見抜いていたに違いない
男は一通り話し終えると、最後にもう一つ教えておかないといけないことがある、とズボンのチャックに手を伸ばした

3

チャックの隙間から勃起した男性器が出てきた。初めて直接見たペニスは思っていたよりもグロテスクな外見をしており、思わず眉根をひそめた
男は私をベッドに腰かけさせ、目の前で自身のペニスを慰め始めた。何がしたいのか分からず当惑していると、今から射精の仕組みを見せるから覚えるように、と男が口を開いた
誰が見るものかと顔を背けたが、ちゃんと見るように、と強く言われて渋々視線をペニスに戻す。ペニスは先程よりも大きくなっていて、先端の穴から時折透明な体液を垂らした
男のペニスを扱く手が徐々に速くなっていく。そろそろ男が射精することを悟った私は精液を避けようと身体を傾けたが、男は声を荒くしながら精液を受け止めるように命令した。仕方なく上体を戻した次の瞬間、顔に何か熱いものがかかった

4

顔にかかったものが精液と気づくまで然程時間はかからなかった。生臭いにおいが鼻を通り抜け吐き気が込み上げてくる。堪らず私はシャツの袖で顔を拭った
射精した男は肩で息をしながら萎えた陰茎をぶらさげていた。ペニスの先端からは糸状の精液が垂れている
―次からはお前の身体を使って射精する―
脅しにも似た予告をした男は布で男性器を拭き、ズボンへしまった。洗濯は風呂場で道具を使って綺麗にすること、と男は言い残して部屋を出ていった
その後私は急いでシャワーを浴びて精液を洗い流し、シャツを洗って干し物竿にかけた。部屋に戻り、男が置いていった料理を口に運ぶ。決して粗末ではないむしろ上等な種類の料理だったが、なかなか喉を通らなかった
先程顔にかけられた精液の臭いが一生落ちないような、そんな気がしていたからだ

報告終了

経過報告3

1

朝食を終えた私は玉兎と連絡が取れないかと再度耳に手を当てた。しかし妨害波が流されているのかやかましいノイズ音しか聞こえなかった。仕方なく私は部屋の調査を始めたがこれと言った成果は得られなかった。生活に困ることは無さそうだが脱出に役立ちそうなものは一切無い。深く溜息を吐いてベッドに身を投げる
この捕虜生活はいつまで続くのだろうか。私と連絡が取れないことを知った玉兎たちは私の身に起きた異変に気付くだろうが、直ぐに救助が来るとは思えない。その間私は地上軍の男に身体を穢され続けるのだ…
目を瞑って時間が過ぎるのを待っていると、またあの男が部屋に入ってきた。時計を確認すると午後の3時を回るところだった
いよいよ犯されるのかと覚悟を決めたが、男の口からまた予想外の台詞が吐き出された
―今度はお前が俺の前で自慰をしろ―

2

どこまでも人の心を弄ぶつもりらしい。私はベッドから起き上がり、絶対に嫌だと拒絶した
逆らうとどうなるか分かっているのかと男が怒鳴った。声が大きかったが怒っている様子はなく、冷静な判断の元で恫喝をしているようだった
やれるものならやってみろと私は叫んだが、直ぐにその声を引っ込めた。男が拳銃を取りだしたのだ。咄嗟に両手と小さな悲鳴を上げてしまう
次また抵抗したら躊躇なく撃つ、つべこべ言わずにさっさとやれ。男は撃鉄を上げながら最終命令を下した。拳銃を向けられた私は、怒りと恐怖、何より羞恥に肩を震わせながら自身の陰部に手を伸ばした

3

緊張しているせいなのか、いくら性器をいじっても快感が得られない。「銃を向けられているせいで果てることができない」と涙目になりながら訴えると男は拳銃をしまった
―時間はいくらかけてもいいから自分を慰め続けろ―
穏やかな男の声を聞き入れながら自慰を再開する。布越しに性器をいじっていたがやがてもどかしくなり、パンツの中に手を入れて本格的に手を動かしだした。大陰唇を指でなぞりながら陰核を軽くこする。あっと言う間に快楽が身を包み、私は腰を浮かせながら絶頂に達した
事の一部始終を見ていた男は満足そうにしながら、ベッドに横たわった私に近づいて頭を撫でながら言った
―明日からいよいよお前の身体を使う。手、口、胸、股、お前の全てを汚すつもりだから楽しみにしているように―
私は絶頂の快感に脳を痺れさせながら、目をゆっくり閉じた。もうどうにでもなれ…

報告終了

経過報告4

1

私が地上軍に捕まってから三日目の朝、ついに本格的な凌辱が始まった
相変わらず玉兎と連絡は取れない。部屋から出ることも許されない。手も足も出ないような状況だったが、身体が鈍らないようできる範囲で身体を鍛えた
朝風呂で汗を流し綺麗なシャツに着替えていると、朝食を持った男が部屋にやってきた。男はテーブルにお盆を置くと、こちらを手招きしてベッドを指さした。横になれということだろう
嫌だったが私は言われるがままベッドに仰向けになった。男はズボンとパンツを脱ぎ下ろし、ペニスを勃起させながらベッドに登ってくる。犯されると思った私は太腿を無意識に閉じたが、男は股をスルーして私のお腹のあたりに体重をかけないよう馬乗りになった
目をしばたたかせる私に、男はこれからやることを簡潔に伝えた
―今日は胸を使う―

2

シャツのボタンを二つほど外される。男はシャツを広げで程よい「穴」を作ると、待ってましたと言わんばかりにペニスをそこへ挿し込んだ
胸の間をペニスが押し進んでいく感覚に、私はきゅっと口を結んで耐える。陰茎が谷間に入りきると男は両胸を手で掴んで思うまま扱き始めた
最初は胸を上下に揺らしてペニスを刺激した。暫く堪能すると今度は胸を互い違いに動かして柔らかさを楽しんだ。そしてまた乳房を上下に動かす、その繰り返しだ。長い時間胸に夢中になっていた男は一度陰茎を引き抜き、極度に硬くなった陰茎を見せびらかした。ペニスの先端と胸の谷間には先走りによる糸が引いていて、男はそれを指で指し示しながら、とてもいい、とこちらの頭を撫でた。私は黙って事が終わるのを待った
男が嬉しそうな顔をしながら再び谷間へペニスを挿入する。今度はまるでセックスをするかのように腰を動かし始めた

3

男の腰が50往復程したところで動きが速くなった。胸を抑える手に力が入り、額に汗を浮かばせながらペニスを擦っている。そろそろ達するだろうと思った時には既に、谷間が精液で溢れていた
またあの雄臭いにおいが鼻に付き、顔を顰める。男はびくびくと身体を震わせながらしつこく胸に精液を出し続けた
長い余韻の後、ようやく男が谷間から陰茎を引き抜いた。ペニスは精液で真っ白に汚れており、小さく縮こまって痙攣していた
とても気持ち良かった、と男は褒めながらこちらの顔に唇を近づけてキスをねだってきた。それだけはさせるかと口を強く閉じていたが、男は構わず口をくっつけ、こちらの唇を舐め回した
苦痛な時間もやっと終わりを告げ、男はベッドから降りて陰茎を拭くと手を振りながら部屋を出ていった。直ぐさま私は胸とシャツを洗いに行く。目尻には理由が判然としない涙が溜まっていた

報告終了

経過報告5

1

胸を犯されてから6時間が経過しようとしていた。捕虜の記録をとりながら、私はいくつかの疑問を胸に抱いていた。それは不可解と呼ぶには些細な事象だが、違和感を覚えるに足る事柄でもある
一人静かに悩んだ末、次また男がやってきたら質問をぶつけようと決心をした。無論一筋縄ではいかないだろうが何も行動しないよりはマシだ
扉の鍵が開く音がした。例の男がゆっくりと入ってくる。待ってましたとばかりに私は「お前や地上軍の事について質問がある」と口を開いた
男は一瞬虚を突かれたような顔をしたが直ぐに余裕のある表情を取り戻し、知ってどうする、と嘲った。情報を手に入れてもそれが真かどうか分からないし何よりお前はここから出ることができないのに、と

2

そのことは承知の上だ。しかし私には、男が嘘の情報を流すとは思えなかったのだ。男はある種のルールに従いながら私を弄んでいる。そんな人間が陳腐な誤魔化しをする筈がない
そのことを男に正直に伝えると、男は驚いたような嬉しそうな複雑な顔をした。顎に手を当てながら頷くと、君は中々鋭い、とこちらを称賛した
暫くの間沈黙が部屋を支配した。男は黙って何かを考えている。私は男が話し始めるまで静かに待っていた。やがて男が声を発し、沈黙が破られた
―よし、お前の質問に答えてやろう。ただしルールがある。まずお前が質問内容を一つだけ俺に投げかける。それに対し俺が交換条件を提示する。その条件をお前がのんで実行できれば質問に答えよう―
思った通り男は見返りを求めてきた。私は予想が当たったことで自信を付けながら、男に最初の質問をした。その質問に対し、男が最初の交換条件を提示してきた

3

ペニスが手の中でひくついている。指を絡めながら手を上下に動かすとペニスは震え、先走りを滲ませる。行為を始めてから10分が経つが、陰茎は限界を迎えつつあるようだ
男が私の質問に対して提示してきた条件、それは「ペニスを手で扱いて射精させる」ことだった。もう少しきつい命令を言い渡されるかと思っていたが質問内容が軽かったのか、男は妥当な条件を出してきた
緩急を付けて手首を動かす。ベッドに腰かけた男は目を瞑りながら、股間から送られてくる快感を楽しんでいる。もう直ぐでいきそうだから亀頭も刺激して欲しい、と男が頼んでくるので仕方なく片方の手のひらでペニスの先端を包んだ。そのままペニスを扱きながら先端を擦ると男は腰を浮かせ、手中に精液をぶちまけた
ぬるりとした感触が手のひらを覆い、鳥肌が立つ。顔にかけられるよりはマシだと思いながらもやはり気色は悪い
男が息を整えながら手のひらを開くよう指示をする。言われたとおりに手を開けると、半固形の白濁が手のひらに乗っかっていた

4

「約束通り質問に答えろ」と私が催促すると、いいだろう、と男が首を縦に振った
私の質問、それは「お前は何者か」という内容だった。男は頻繁に私の部屋に入ってきては欲望の限りを尽くしているが、戦争中にそんな余裕がある、更に言えば捕虜に自由に手出しできる男の階級が気になったのだ。私の疑問を解決すべく、男が口を開いた
―俺は軍に雇われている拷問官だ。故に捕虜に手を出すことが許されている。俺の仕事は主に尋問拷問で時には軍の雑用もこなしているが、基本的には時間を持て余しているのでいつでもお前の所に行くことができる。だが最初に言った通り、俺はお前から月の情報を聞き出すつもりは一切無い。しかし軍はそのことを知らない、と言うよりそれほど当てにしていないと言うべきだろう。だから俺はお前との逢瀬をたっぷりと楽しめる訳だ。それじゃあまた明日―
男が部屋から出て行った後、私は小さくガッツポーズをした。今の証言は全て本当のことだろう。つまり男の要望さえ叶えれば情報を集めることができるという訳だ。未だ暗雲は立ち込めたままだが、私の心には一条の光が差し込んでいた

報告終了

経過報告6

1

地上軍に囚われてから四日目を迎えた。私は拷問官の男に対して何もできず嬲られ続けていたが、僅かな希望を得ることに成功した。それは男の欲望を満たせば地上軍の情報を手に入れられる、というものだ
脱出に関してはまだ諦めていなかったが、何の情報も無しに脱出を試みることは危険だと理解していた。なら今はまだ男の命令に従っていよう。勿論悔しいが、今までと違ってただ蹂躙されるのではなく、情報を得る為にやっていると思えばまだ気持ちは和らぐ
いつも通りに男が入ってきた。料理を手に持ち、馴れ馴れしく朝の挨拶をしてくる。当然返事なんてしない
男がテーブルに料理を置いたのを見た後、早速私は質問をした。「私以外の捕虜はどこにいる? 人数と場所を正確に教えてもらいたい」
男は私の質問を聞き入れると、いいだろうとこちらに顔を向けた
―ただし当然のことながら条件がある。今回はお前の口で俺のペニスを気持ち良くしろ。射精させることができたら答えてやる―

2

男の交換条件に私は顔を顰めた。それもそうだ、あの穢れの塊を口に含まなければいけないのだ。誰だって嫌な顔の一つや二つはするだろう
男はこちらの返事を聞く前から既にパンツを降ろしている。口淫を期待して震えている陰茎を目の当たりにし、絶対に咥えたくないという想いが一層強くなる
しかし今回の情報は私の脱出計画に必要不可欠なものだ。味方の玉兎の位置や人数が把握できればその分脱出が容易になる。ここは何としてでも知っておきたい
男は早く早くと言わんばかりにペニスを近づけてくる。「分かった、舐めてあげるからベッドに座って」と指示を出すと男はウキウキしながら寝具に腰かけた
一度長く息を吐いてから床にしゃがみ、口とペニスの高さを合わせてから根元を手で握る。意を決して舌をペニスにくっつけた

3

不快なしょっぱさが味覚として舌を通る。一度舐め上げてから舌を離し、再び舌を付けて上がっていく。ペニスは舌が離れる瞬間にぴくんと揺れて反応している。きちんと快感が得られていることにほっとしながら陰茎の裏側を舐める行為を繰り返した
少し経つとペニスの穴から先走りが滲み出てきた。舌で裏側をなぞると連動するように液がこぼれてくる。あともう一歩で射精させられそうだと思っていると、男がペニスを咥えるよう指示してきた。精液を舐めることに抵抗があったが情報を得る為だと覚悟を決め、口を大きく開けてペニスの先端を口に含んだ
先程よりも強烈な苦味と臭みに陰茎を吐き出しそうになったが、我慢して先っぽを舐め回す。ねっとりとした先走りに嫌気がさしながらも舐め続けていると、ペニスが大きく震えだした。最後のダメ押しとばかりに舌を回転させて陰茎を刺激した次の瞬間、口の中に精液が流し込まれた

4

直ぐさまペニスから口を離し、手で受け皿を作って精液を吐き出す。絶対に飲み込むまいと何回も唾を吐いて口内の精液を排出した。口から外へ放り出されたペニスは一回目の射精こそこちらの口に出したものの二回目以降は宙ぶらりんの状態で射精し、私の服とスカートを白く汚していた
男は快楽による吐息をした後、私の頭を撫でながら、捕虜はいない、と言った
耳を疑った。口の端から涎を垂らしながら男の顔を見上げる
―お前以外にウサギの捕虜はいない。嘘ではない。今回の戦争で我々に捕まったのはお前だけだ―
男が部屋から去っていった後、私は洗面所で口をすすぎながら絶望に打ちひしがれていた。私以外に捕虜がいない? そんな馬鹿な。じゃあ今この場所には私一人しかいないってことなの…?
手のひらに水を注いで口に含み、ゆすいで吐き出す。この行動を何十回とったか覚えていない。現実から逃避する簡単な方法は、単純な作業を繰り返して脳を麻痺させることなのかもしれない

報告終了

経過報告7

1

地上軍の基地に囚われている玉兎が自分一人しかいないことを知り、私は呆然としていた。四面楚歌、この言葉がぴったりの状況だ。孤立奮闘とまでいけばいいが武器を取り上げられた兵士一人に何ができると言うのか
けど私は諦めない。捕虜生活は精神が折れてしまったらそこで終わりだ。絶対にめげるものか。何としてでも脱出してやるんだ
朝食を終えた後、次に質問する内容を考えた。心的余裕を得る為に聞きたい事と言えば、やはり戦況だ。仲間の玉兎たちが頑張ってくれていれば脱出の見込みも出てくる。じゃあ他にどんな質問をしようかとあれこれ考えていると男がやってきた
私は毅然とした態度をとりながら「現在の戦況について詳しく教えろ」と訊ねた。男は構わないと笑ったが、その情報は重要なものだから少しきつめの条件を出させてもらう、と付け足した
男は私に近づくと顔に手を伸ばし、こちらの唇を親指でなぞった。そして自身の股間の一部分を指さしながら、ここを1時間しゃぶってもらう、と言った
頬を冷たい汗が流れる。私は気力を振り絞って重い口を開け、「分かった」とか細い声で同意した

2

ちらりと時計を確認すると、まだ開始から10分しか経っていない。私は男の陰嚢をしゃぶりながら、あと50分間舐め続けなければいけないのかとげんなりした
ちゅぱちゅぱと音を立てながら吸いつき、唇をすぼめながら刺激し、舌の上で玉を転がす。この一連の動作を絶え間なく続けられた影響で、男のペニスはヘソに届くほど反り返っていた。快感は溜まっていくが射精に結び付けられる刺激は与えられない、そのもどかしさがいい、と男はとろけた表情で私の頭を撫でた。くだらない性癖だと心中で毒突きながら玉を吐き出し、片方の玉を咥えてまたしゃぶった
十分にしゃぶり終えた後口から陰嚢を出し、一呼吸する。男の陰嚢は私の唾液によってぬらぬらとてかっている。同じ動きに疲れていた私は何か別の動作をしなければと考え、舌を伸ばして玉裏を舐め上げた。効果があったらしくペニスがびくんと反応し、暫くそれを続けるように、と男が要望を加えた
今朝私がペニスに対してやったことと同じように、今度は玉に対して舐め上げを行う。ちらと時計に目を向けると15分しか経っていない。あの時計壊れているんじゃないか…?

3

開始から55分が経過。そろそろ終わりが見えてきた。私はほっと胸を撫で下ろしながら玉を舌で舐め回す。男は1時間近く生殺しの状態だった為か、全身から汗を噴き出させ、呼吸を荒くしていた
1時間が経った。私が玉舐めを終了すると男はベッドから腰を上げ、爆発寸前のペニスを咥えるよう指示を出した。こうなることを見越していた私は取り乱すこと無く、迅速的にペニスの先端を咥えて舐め始める。今度は1時間どころか10秒も経たずに射精し、穢れを私の口内に垂れ流した
前回のように精液を吐き出そうとしたが男が私の頭を掴み、飲み込め、と無慈悲な命令を下した。私は何とかペニスを口から出そうとしたが男の力は頑固なまでに強く、渋々精液を嚥下した。身体の中が穢れていくことを実感しながら、私は精子を飲み下して涙を流した
ようやく口からペニスが外へ出て行く。萎れてぷらぷらと揺れている陰茎の先端から私の口まで、一本の白い糸がかかっていた

4

―今、我々の軍と月の軍は停戦状態にある。最も互いに停戦を申し出た訳では無い。月は我々の基地がどこにあるのか見当が付かないので攻めあぐねいている。一方の我々は月の防衛が頑強であることに頭を抱え、次の一手が出せないでいる。要するにお互いお手上げの状態なのだ。この静かな時間がいつまで続くかは分からないが、直ぐに戦争が再開しないことは確実だ。だから仲間が助けに来てくれるなんて淡い期待はするな。どうせお前は俺から逃げられないのだから―
言うだけ言うと男は部屋から出て行った。私もいつも通りに洗面所へ行き、口の中をすすぐ
助けが来ないという事実に落胆こそしたが、それほど心のダメージは大きくなかった。きっとこのような最悪のケースを前もって想定していたからかもしれない。そして何より、一つの活路を見出すことができたからだ
今地上軍は停戦状態で油断しきっている。そして軍は私という捕虜の存在を忘れている可能性がある。それなら上手くいけば秘密基地を内部から破壊して外の玉兎と合流、地上軍を一網打尽にできるはずだ
諦めるな。私は鏡に映る自分に対して励ましの言葉を送った。最後に笑うのはこの私だ

報告終了

経過報告8

1

夜が訪れた。私は男の持ってきた夕食を口に運び、軽く筋トレをした後にシャワーを浴びて床に就いた。こうしてベッドで寝るのは四回目だが、この捕虜としての環境に私は慣れつつあった
別に脱出を諦めた訳ではない。適応してきたということだ。真に強い生物は環境に適応する力を持っている。そういう意味では私は強い存在なのだろう
毛布を被って目を瞑っていると、突然部屋の扉が開いた。不意の出来事に私は動揺しながら顔を上げる。男が入ってきたのだ。この時間帯に男がやってきたことは一度もないので、私は驚きと恐怖からすっかり目が覚めてしまった
慌ててベッドから出ようとする私を男が制止した。そのままベッドで寝ているように、と静かな声で話しかけてくる
眠っていた恐怖心が再び頭をもたげてきた。異例の事態はいつだって人を神経質にさせる。「今日はもう寝させて。質問は明日するから」と震えた声で訴えかけたが、男は意に介さずこちらに近づいてくる。そして私の被っている毛布に手をかけた

2

男は私の背後で寝息を立てている。横向きでこちらの腰に腕を絡めるよう寝ているので、男の息が私のうなじに毎回当たった
今回男が部屋に訪れた理由は添い寝だった。特別破廉恥な要求はせず疲れた顔をしながらベッドに潜り込み、私に抱き付いて眠りに就いた
二人の人間が一緒に入っても余裕なサイズだったが、私にはとても窮屈に感じられた。男によって安眠が阻害されたのだから当然と言えば当然だ。しかし男の腕を外してどかそうとすれば、目を覚ました男が胸を揉んでくるので仕方なく我慢するほかない。試しに今もまた腕をどかそうとしたが男が起きてしまい、手を上へ移動させて胸をやわやわと揉まれてしまった
明日はおっぱいかな。寝言とも独り言とも付かない男の声が静かな部屋に広がり、やがて薄まっていく。私は男を引き剥がすことを断念し、戻ってきた眠気に頼りながら瞼を閉じた

3

夢を見た。やけにリアリティを伴った夢だった。もしかしたら過去に起きた出来事を脳が処理するために夢として見せたのかもしれない
私は数人の玉兎たちと一緒にいる。彼女たちは私を指さして笑っていた。正確には私の胸を指さして嘲っていた
痴女。好色。穢れた存在め。玉兎の言っているセリフはそのような暴言ばかりだった。私の大きな胸が気に食わないのか、知り得る限りの否定の言葉を用いて私を貶めた。そんなでかい胸をしているってことは穢れが身体を満たしているに違いない、と
玉兎たちの発言を聞きながら私は小さく笑った。これが夢だと把握していたし、何より仲間の玉兎にこうしていじめられた経験は無かったから、怒ろうとも思わなかった。いや、正しくは私の無駄に大きな乳房を嫌っている者は一人いた
それは私自身だ。私は月の穢れなき玉兎として振舞っていたが、生命の源と言わんばかりに主張する胸にコンプレックスを抱いていた。他の仲間も口には出さないが私の胸を穢れと認識していたかもしれない。嫌われていたかもしれない
それが今では大きな胸が好きな男が現れ、私の身体に喜んでくれている。巡り合わせとは不思議なものだ

報告終了

経過報告9

1

「地上軍の秘密基地の場所を教えてほしい」
捕虜生活5日目。私は拷問官の男に対して踏み入った質問をした。相手の喉元に刃物をあてがうような質問だ。もしこの情報を私が手に入れられたら、脱出はおろか月の兵を呼んで総攻撃をけしかけることだってできるのだ。ただし、その分男の要求も大きくなるだろう…
男はお盆をテーブルに置きながら、それは無理だ、と悲しそうに首を振った
何故無理なのだと私は強く聞き返した。何でも言うことを聞けば情報を提供してくれるはずじゃなかったのか
男は溜息を吐くと、その情報はとても重要なので交換条件が重くなってしまう、と肩を落とした
具体的には? 私は平静さを保ちながら男に訊ねた
―どうしても知りたいのなら、俺と性交してもらう必要がある―

2

遂に出された「性交」と言う言葉に脚が震えた。私があともう一歩踏み出せば穢れが絡まり体内を満たしていく、もうそんな状況に来てしまったのだ
目を瞑り、頬を流れる汗を拭きながら、「どうして」と質問をした。「どうして私をさっさと犯さない。お前には私を強姦するチャンスなんていくらでもあったはずだ。今の条件だって、私が首を縦に振らなければお前は一生私の身体を貪れないんだ。何故そんなまどろっこしいことをする?」
二日前に湧き上がった疑問の一つだ。男に馬乗りにされて胸を犯された私は「何故男は本番をしてこなかったのか」と謎に思っていた。一人の女を屈服させるのであれば奉仕させるよりも問答無用で処女を奪う方が効率が良いはずだ。男が私の調教を楽しんでいると言うのならそれまでだが、何か他の理由があるような気がしてならない
男は難しい顔をしながら、その情報も言いたくないな、と唸る。言ってもらわないと私も動くに動けないのだと追及した。男がただ我慢しているだけなら早く済ませてしまいたい、それ以外の理由があるのならそれを聞きたい

3

男はぽんと手を叩くと思いついた顔でこう言った
―よし、それならゲームをしようじゃないか。今からやるゲームにお前が勝つことができれば、俺がお前を犯さない理由を説明してやる。そうすればお前は今後の交換条件をのめるやもしれない。ただしゲームに負けた場合は情報は無しだ。再挑戦はいくらでもできるものとしよう―
男が提案してきたのは情報を賭けたゲームだった。どうせ碌な遊びではないのだろうが、これを受けなければ道は開けない
もしゲームに勝った結果男が、何故俺が犯してこないのかと訊いてくるまで我慢していたんだよ、とせせら笑ってペニスを突いてくるのであれば、それはそれで構わない。いつ犯されてしまうのかという不安からようやく解消されるのだから
「いいだろう、ゲームをしよう」と私は勇まし気に勝負を買って出た。男は嬉しそうに腕を組み、それじゃあ予想してくれ、とゲーム内容を話し始めた
―お前の右胸か、左胸か。当てることができたらお前の勝ちだ―

4

ペニスの先端が私の左胸の外周をくるくると回っている。先っぽを胸に擦りながら動いているので時折ペニスはひくついた。やがて回転しながら徐々に胸を登っていく。渦を描くような感覚だ。ペニスは円の中心である乳首に近づき、今度は乳輪のあたりをくるくると回る。暫くすると陰茎が乳首に到達した。乳頭とペニスが触れ合った瞬間、私の背筋を軽い電流が走る。一定時間ペニスと乳首を擦り合わせた男はルール通りペニスを左胸から離し、今度は右胸の麓にペニスを置いて先程と同じように渦を描いていった
男が提案したゲームは、先の動作を繰り返す過程でどちらの胸で射精するか予想するというものだった。ペニスは左右の胸を行ったり来たりしておりどちらの段階で果てるのか、そんな馬鹿げたゲームだ。だがこの勝負に勝たなければ情報は手に入らない。こんなふざけた遊びでも真面目に取り組む必要がある
私は「左胸で射精する」と予想した。根拠なんてない。ただの勘だ

5

男はゲームを忘れているのか、純粋に私の乳房を楽しんでいた。仰向けになっている私に跨り巨大な胸に欲の棒を擦りつけるのはさぞかし気持ちがいいのだろう。柔らかい乳房にペニスの先端を付けて擦っては、あっあっ、と言葉にならない声を漏らしている。その内例の先走りが出てきたのか、両胸にはナメクジの這ったような跡ができあがった
突然右胸を攻略中に男の動きが止まった。かちかちに勃起したペニスは今にも暴発しそうで、男の膝がガクガクと笑っていた
頃合いか。男のペニスは乳首の近くなのでもう直ぐで左胸へと移行する。タイミング的にはそこで射精するはずだ。男は力を振り絞りながら右胸を登っていくが先程よりも先走りの量が増えている
チャンスだと思い私は男を見上げて、半ば演技半ば本心の台詞をすがるような声で口にした
「お願い…もうエッチなことはしないで…」
効果はてきめんだった。が、言うのが早かった。男は右胸の乳首にペニスを振れさせた瞬間、勢いよく射精してしまった
あぁ…と私は呻いた。余計なことをしてしまったせいで情報を得られなかった。男がペニスを乳首から離すと、まるで噴乳したかのように精液が滴っていた

報告終了

経過報告10

1

経過記録が二桁台に突入した。キリが良いというわけではないが、ここまでの私の現状について再度報告しておこう
私は月に攻めてきた地上軍の秘密基地を探している最中に敵に捕まり、捕虜となった。気づいた時にはベッドのある小奇麗な部屋に軟禁され、そこで拷問官の男に恥辱の限りを尽くされた。時には男の性器を口や胸で悦ばせ、時には男の目の前で自慰を強制され、私の穢れなき身体は汚れつつあった
しかし誇り高き玉兎の私はなんとか男との交渉に成功して、「男の言うことを聞く代わりにこちらの質問に答える」権利を獲得したのだ。そして私は地上軍に関する質問をいくつか聞いた後、最大の謎である「どうして男が私を犯さないのか」という疑問を問いかけた
そう、私はまだ生娘を保っていた。処女である捕虜を陥落させるにはまずその純潔を奪うことが鉄則なはずだが、何故か男は奉仕ばかりさせて私を犯そうとしない。くだらない質問だとは思うが男の交換条件の中には「性交が必須のもの」があるので、男の回答如何では処女喪失を覚悟する必要があるのだ

2

さて、先の質問に対する男の条件は「ゲームに勝つこと」だった。いつもなら男に対して奉仕さえすれば情報が手に入るのだが、今回は重要な質問らしく、ゲームに勝って初めて質問の答えを手に入れることができる
そのゲームの内容だがこれがまたくだらない。今朝挑戦したお遊びの概要は「私の胸に交互にペニスを擦り付け、どちらの胸で射精するのかを予想する」と言ったものだ。誠に遺憾ながら私はこの二者択一を外してしまい、ただ男を満足させる結果となった
そして捕虜生活五日目の午後2時、二回目のゲームが始まろうとしていた

3

「で、次はどこを使ってゲームをするの? また胸? それとも口? なんならその二つでも構わないけど」
男が部屋に入ってきた後、私は気丈さを見せつけようと軽口を叩いた。男は口角を上げながら頭を振り、ズボンのポケットからピンク色の何かを取り出した。男の手からぶら下がるそれを凝らして見ると、ローターであることが分かった
―今度は我慢ゲームだ。こいつをお前の陰部に付けて動かし、1時間耐えることができたらお前の勝ちだ。当然1時間の内に一度でも果ててしまったらお前の負けだ―
なるほど、と顎に手を当てる。今度はそういう趣向か…。相変わらず下劣なゲーム内容だが、今朝の運試し勝負よりはいくらかマシだ
「いいだろう」と二つ返事でゲームを了承した。それでは早速、と男が私をベッドに優しく押し倒す。そのまま男は私の下部に手を伸ばし、パンツに指をかけた

4

パンツの中でローターが蠢いている。振動は微弱だが、着実に私の快感を高めていった
私は時々腰を浮かせ、両手でシーツを鷲掴み、襲ってくる快楽の波に耐えた。余裕だと思っていたゲームがこれほど過酷なものだったとは。濡れそぼる陰部に意識を奪われないようにしながら、時間を確認する。20分経過していた
3分の1が終わったことにほっとした次の瞬間、男がローターのリモコンに指をかけてダイアルを回した
「ああぁっ! あぁ…!」
振動が強くなった。下着の中から漏れる音が大きくなる。無意識に片足を上げながら、ローターの責めによがった。口の端からよだれが垂れてくる
歯を食いしばって時間が過ぎるのを待った。恥部からは愛液がとめどなく溢れてベッドにシミを作った。我慢の時が長く続く。朧な頭で時計を見ると40分が経過していることに気付いた
あと20分耐えなければいけないのかと絶望をしたその時、男が再びリモコンに手をかけた

5

「いや…やめて…」
涙を流しながら男の持つリモコンに手を伸ばす。これ以上強くされたら最早絶頂は免れない
男は震える私の手を軽く避け、リモコンのダイアルをゆっくりと、見せつけるようにひねった
釣られるようにローターの振動数も上がっていった。桃色の玩具は一人の生娘を弄ぶべく、その身を一心に震わせて水浸しの秘裂をくすぐった
「あぁっ♡ あああああぁぁぁ♡」
艶のある声を出してしまった時にはもう遅い。私は大きく腰を浮かせて、顔をくしゃくしゃにしながら悶えた
「とめてっ♡ とめてよぉぉっ♡」
私の嬌声を聞いた男は楽しそうに笑い、説得力が無い、とこちらの願いを両断した
そしてその時がやってきた。私はひっと息を吞むとベッドのシーツを掴み、えび反りの状態で腰を震わせ、潮を噴いた。我慢できた時間は45分と40秒だった

報告終了

経過報告11

1

5日目夜。就寝の準備をしていると男が入ってきた
男による凌辱が行われるのは午前と午後の計2回なのだが、昨日の夜からは男との添い寝も加わった
私はため息を吐いてから電気を消し、ベッドに潜り込んだ。後を追うように男も毛布に体を入れる。抵抗は無駄だと思っていたので、何も言わず男を受け入れた。午後にやった絶頂ゲームの疲れも影響していたかもしれない
男に背中を向けるよう体を横にして、寝る。男が背後から腕を回して抱き着いてくる。またか、と思った矢先に男の手が胸へと移動した。軽く覆うようにして当てられた男の手のひらから体温が伝わってくる
「今日も揉みながら寝るつもり?」呆れ気味に後ろの男に問いかけると、男は返事をする代わりに大きく鼻息を吐いた。男は私の胸に手を添えたまま、より体を密着させてくる。臀部に当たった硬いソレから、もっと高い男の体温が流れてくる。この男はよっぽど私の胸がお好きなようだ

2

服越しに乳房が揉みしだかれる。柔らかい私の胸は男の指に従うかのように、形を変形させた。五本の指に押し込まれる時もあれば、両端から軽く潰される時もある。次はどんな形にしてみようかと試すように男は胸を触り続けた
やがて胸を揉むことに満足したのか、別の動作をし始めた。両手で乳を下から掬うように鷲掴むが、人差し指だけは胸に触れないようぴんと伸ばす。そして人差し指の関節を曲げながら狙いを定め、胸の特定部分を突く。そう言った動作だ
指は胸の柔肉を突くとすぐに離れ、また別の突く位置を探し始める。この作業の意味を理解した私は顔を赤くしながら唇を結び、男が飽きて寝てくれるのを待った
男が7回目に人差し指で胸を突いたとき、遂に乳首の位置を当てられた。油断していた私は思わず「あっ」と声を上げてしまう。男は達成感からか、ペニスを更に硬くさせた

3

今度は乳首責めが始まった。男は人差し指を乳首に押し付けたまま親指を胸から離し、二本の指で突端を摘んだ。私は声を押し殺しながら太ももを擦り合わせて耐えるしかない
男は痛くないような絶妙の加減で、私の乳首をふにふにと潰した。かと思いきや次は人差し指で乳輪をなぞるようにして焦らしてくる。肩を震わせて我慢していると今度はカリカリと引っ掻くように、シャツに浮き出てきた乳首を触った
「ねえ、もう…」いよいよ辛くなってきた私は男の手首を掴み、抗議する。男が不満げに胸を揉んでくる
「その、そんなに私の胸が好きなら、明日また挟んであげるから、今日はもう…」
その一言でようやく男の手が離れた。痛い約束をしてしまったがこのまま続けられるよりはいいだろう。男は先ほどの興奮はどこへやら、既に寝息を立てていた
私はほっと一息吐くと男が寝入っていることを確認し、パンツの中に手を伸ばす。秘裂は露を垂らし始めており、下着から手を出すと指先がほのかに濡れていた

報告終了

経過報告12

1

捕虜生活6日目。情報収集のためのゲームが三度行われる
そろそろ私の精神に疲れが陰り始めてきた。仲間との連絡は取れず、脱出の目処も無く、昨日はゲームに二つとも負けてしまいろくに情報を手に入れることができなかったので、重苦しい空気が私の体を覆っていた
―今回も絶頂ゲームをしよう。1時間以内に絶頂しなければお前の勝ちだ―
男の提案に私は異を唱えた。「昨日のゲームでわかったでしょ? 私は1時間も耐えられるほど鈍感じゃないの」
わかっているさ、と男は笑みを浮かべる。昨日はローターを使ってのゲームだったから今回はやり方を変えよう、と男の口が動く
「やり方を変える?」私が首をかしげると男は両手のひらをこちらに向け、今回は俺の愛撫に耐えてもらう、と言った
今度は直に体を触られるのか。私はげんなりとしながら男の顔を見やる。自信満々な男の表情に不安を覚えるが、どうせ私に拒否権は存在しないのだ。やるしかない
私はベッドに仰向けになってゲームの準備を整える。男は隣に寝そべると、早速私のパンツの中へと手を突っ込んだ

2

陰部が男の手のひらでやわやわと揉まれる。こちらが処女だとわかっているのか、指を挿入するような真似はせずにひたすら大陰唇を愛撫してくる
私は片手で口を押さえ、無意識に出てこようとする声を止めた。男の手の動きは的確に私のツボを突き、性感を高ぶらせていく。ゲーム開始から10分も経たない内に私の股は濡れだした
やはり思った通り、男の技巧は相当のものだ。昨晩の胸への愛撫でも薄々感じていたが、この男は女が悦ぶ触り方を心得ている。陰核の周りを指でなぞられながら、私は腰を浮かせて悶えた
30分が経過した。男は一度パンツから手を抜くと、指先をこちらに見せてきた。愛液で濡れた指は妖しくてかっている。そろそろ本気を出すか、と男は再び下着の中へ手を入れた
最悪なことに男はまだ真剣ではなかったようだ。秘裂をひくつかせ愛液を垂らしながら、私はバケツいっぱいの不安と一抹の期待を胸に息を吞んだ
男の手が高速で動いた。手首を起点に振動させるように、女性器を手のひらでパンパンと叩く。先日のローターを思い出させる動きだ。堪らず私の口から女の声が漏れ出した

3

ゲームが始まって46分を迎えた。昨日はここで果ててしまったが、今はなんとか耐えている。しかしいつ絶頂を迎えてもおかしくはないほど、男の手と下着はぐっしょり濡れていた
―ルール変更だ。お前に有利なゲームに変えてやる―
耳元で男の声が聞こえる。朧げな意識の中で私は「なに?」と聞き返した
―今からゲーム終了まで約10分ほどだが、お前に選ばせてやる。このまま果てるか、否か。もし果てたいと言うのであれば最後まで気持ちよくさせてやろう。我慢するのであれば決して絶頂はさせない。愛撫は続けるが絶頂の手前で止める。さあ、どうする?―
私は奥歯を噛んで男を睨んだ。「なめるな」と威勢の良い声を張り上げる。残り10分なら最後まで我慢してやる、と
次の瞬間、体に電流が走った。男が私の秘裂に中指を挿れ、処女膜を傷つけないよう中を掻き回したのだ。言葉にならない声を上げながら、小さく潮を噴く
駄目だ。もう我慢なんてできない。そう思った時には男の手がぴたりと止まり、愛撫が中断された。快感の解放を望んでいた陰部が悲しげに涙を流した
さあ、あと9分。どうする? 男が再び問いかけてくる

4

「ぜったいにまけない」揺るぎ無い声で、覚悟を決めた瞳で、男に言った
私の答えに男は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに秘裂の中へ指を進めた。内側から責められて気を失いそうだったが、よだれと涙を流しながら我慢した。絶対に負けるものか
強烈な愛撫をされては寸止めを受け、二つを繰り返している内に時間は過ぎていった。途中挫折しそうな時もあったが、「いかせて」と懇願しようとする喉を呻くことによって押さえつけた
そしてその瞬間は訪れた。男は時計を確認して陰部から手を離すと、幾分か尊敬の念が籠った声色でゲームの終わりを告げた
―おめでとう。ゲームは君の勝ちだ―
浮かせていた腰をベッドにおろす。女性器の痙攣は止まっていなかったが、ついに果てることはなかった。勝利の余韻に浸りながら、私は「じゃあ……わたしのしつもんに……こたえなさい……」と息を整えつつ男に言った。
いいだろう、どうして俺がお前をすぐに犯さないのか答えてやる。男の口がゆっくりと開いた

5

―最初に断っておくが、俺はお前を無理やり犯すつもりは毛頭ない。調教上不可避な行為はさせるが、性交を強いることはない。もちろん俺は早くお前との性交を楽しみたいが…―
ならなぜ、と私は眉根をひそめた。なぜ我慢をするのか
―…君が俺の行いを許してくれるまで、挿入はしない。愛してる。君のことが好きだ。俺の女にしたい。だから君も俺のことを愛してくれるまでは、本番はお預けだ―
この男は何を言っているんだ。理解が追い付かなくなり頭がぐるぐると回る。この期に及んで男は冗談を口にしているのか? いや、男の表情は真剣そのものだ。愛してる、と男が再び口にすると私の陰部に手を伸ばした。そのまま下着の中に指を潜り込ませると、先ほどの中指愛撫を再開させた
「いやっ」私は下半身を浮かせて、否定の言葉を放った。何に対しての否定だったのかは今となっては判然としない。しかしその時の私は、男に拒否を示さないと精神が堕ちてしまう、と直感していたのだ「いやぁ、やめて…」
好きだ、レイセン。男の声が耳に届いた直後、ぷしゃぁっ、という水音も聞こえた

報告終了

経過報告13

1

私はひどく混乱していた。地上軍に捕まった時でさえ、これほど取り乱してはいなかった。それもこれも数時間前に男から言われた言葉のせいだ
愛してる。男はそう言った。そして私を犯さない理由は、私が男を愛すまで酷いことをしたくない、というものだった
ベッドに腰を掛け、額に手を当て俯く。予期していなかった展開に思考がこんがらがっているが、一つずつ確かなことを見つけて整理していくほかない
まず最初に「私はあの男と性交をしてまで情報を手に入れるべきか」ということだが、当然ノーだ。あんな奴と交わる気は一切ない
そもそも私が「なぜ男が性交を強いてこないのか」という疑問を口にしたのも、奴隷的価値や心情の優位性を保つためといったそれらしい理由が裏にあると踏んでいたからだ。それが蓋を開けてみたら「相愛の状況で交わりたいから」と来た。ふざけるな。誰があの男を好きになるものか
自分一人しかいない寝室でぶつぶつと独り言を呟きながら状況を整えていく。やがて今成すべき目標が二つ決まった
一つは決して男に屈服しないこと。一つは本格的に脱出の方法を探すこと。以上だ

2

耳についている小型無線機をいじくる。普段は特定の周波数に合わせていたが、私は敢えて波長を変えてみることにした
現在の戦況は停戦状態だと男は答えていた。それなら今はいかに相手の居場所を突き止めるかという情報戦に突入している可能性が高い。仲間の玉兎に敵の通信を探り出す通信員がいたはずだ。もし彼女の波長と私の波長が合えば、逆探知で居場所を割り出すことができるだろう。そうすれば地上軍の秘密基地の場所も明るみになる。一網打尽だ
扉が開いた。慌てて耳から手を離す。男はゆったりと室内に入ってくる。いつもは毅然とした態度で男の顔を睨みつけるのだが、午前中のあの発言のせいでまともに顔をみることができない
―さあ、次は何の情報を知りたい?―
男の問いかけにはっとする。そう言えば次の質問を考えていなかった。頭に手を当て質問内容を掻き集めるが、ほとんどが「性交が必須」のものばかりだ
早くしろと男に急かされ、慌てて口を開いた。「じゃ、じゃあ、貴方が答えられる質問と、それに対する交換条件を全て教えて」
咄嗟にしては我ながらいい質問だ

3

いい質問だ、と男も唸った。それじゃあ今回俺が出す要求を吞むのであれば交換条件の目安とそれに対応した情報をリストにまとめて渡しておこう、と続ける
「わかったわ。それで今回は何をするの? まさかこんな質問でセックスを要求するわけないわよね?」
勿論だとも、と男が肯定する。今日から勉強を始めよう、と男は楽しげに近寄ってきた。いつかはわからないが、俺たちは必ず交わることになる。本番の時に困らないよう今から疑似的な性交で練習していこう
「疑似的な性交?」私は小首を傾げた。男の自信に満ちた態度は置いておき、これからされることがわからないというのは不安を募らせるものだ
一体何をするのか、と訊ねようとしたがその前に押し倒された。柔らかいベッドが私たち二人を受け止める。男は自分のズボンに手をかけると、そのまま下着ごと脱いだ。反射的に男の股間を見ると膨れ上がった陰茎が目に入り、顔が赤くなった
次に男は私のスカートに手をかける。同じようにパンツごと服を脱がされ、私は下唇を噛んだ。更に男は私のシャツのボタンを、下から一個ずつ外していき腹部を露出させる
模擬授業の始まりだ。男がペニスを私の秘裂にあてがった

4

疑似的な性交の意味がようやくわかった。男は私の大陰唇に陰茎をくっつけると、腰を前後に振り始めた。眼下でペニスが手前へ奥へと行ったり来たりを繰り返す
男の顔は快感からか蕩けている。それもそうだろう、陰茎の裏側を女性器に何回も擦り付けているのだ。かくいう私も股から送られてくる刺激によって額に汗を浮かばせていた
これは正常位と言うんだ。男が唐突に説明を始める。最も一般的な性交だから最初に君とする時は正常位の体勢でやる予定だ
「誰が」思わず口を開いていた。「誰が貴様なんかと」
男の腰の動きが速くなった。今の私のセリフが、彼の嗜虐性に火をつけたのだろう。かくかくと下半身を揺らしては陰茎の先端から透明な先走りを垂らしている。もれなく私も秘裂から愛液を滲ませた
―愛してる。好きだ―
また男が告白をしてくる。私は両手で耳をふさぐようにしてから目をつむり、首を左右に振った。そのセリフだけは聞きたくない…

5

室内には男と私の息、局部を擦り合わせる音だけが響いている。私が滲ませた愛液によってより潤滑になった腰の動きは、ラストスパートを迎えようとしていた
男は私の太ももを掴みながら夢中になって腰を振り続けている。痛いほどに勃起したペニスからは、まだかまだかと未だ訪れぬ頂きに涙するように、先走りが流れ出ていた。私もシーツを掴んで肩を震わせながら、男がいくのが先か私がいくのが先かと事の終わりを静かに待った
ほどなくして男が射精した。秘裂に深く腰を押し付け、男性器を反らし、精液を飛ばす。先端の穴から放たれた体液は私のお腹に降りかかっていく。やがて陰茎は硬度を失っていき、ぺたんと私の局部にもたれかかった
男は肩で息をしながら、今まさに自身が飛ばした精液を見下ろしている。私も唾を飲み込みながらお腹に乗っている白濁をじっと見つめた
男が手を伸ばし、指でお腹の精液を薄く伸ばし始めた。彼は何を伝えたいのか、子宮にあたる位置を執拗に、濡れた指でなぞった

報告終了

経過報告14

1

7日目夜。シャワーを浴びて体を拭き終った私はベッドへと向かった。いつの間にか男がベッドに腰かけている。男は2、3枚の紙きれを持っており、それを私に渡してくる
受け取り確認してみるとはたして情報のリストだった。男が答えられる範疇の質問とそれに対する交換条件が書かれている
―性交が必須のものについてはそこには書いていない。どうせ君はまだ心を許していないだろうから。明日からはそれを見て質問を選ぶといい―
妙に準備のいい男に苦笑をしながら、「ありがとう」と皮肉を言った
「それじゃあもう寝るから」リストを机に置いてベッドに手をかけたその時、男が急にズボンとパンツを脱ぎ始めた。不意の出来事に体が硬直する
「な、何してるの?」戸惑いを隠せない声で訊ねたら、おいおい君から約束してくれたんじゃないか、と男が肩をすくめた
―昨日の夜、確かに君は言ってたぞ。明日その胸で気持ちよくしてあげるから、って―
あっと口を大きく開ける。すっかり忘れていた。私は頬を指で掻きながら、媚びる目つきで言った
「明日じゃ、だめかな…?」

2

男は枕に頭を乗せて仰向けになっている。私はベッドの上で正座をし、腿に男の腰を乗せた。シャツのボタンを外して胸を露出し、ぴんと勃つ陰茎を挟み込む。あぁ、と男の口から声が漏れた
「1回だけだからね…」
渋々と私は胸を両手で押さえ、動かし始める。まずは上下に、テンポよく。ぱちっぱちっと下乳と男の腰が当たって音を鳴らす。男は目をつむって乳房による愛撫を満喫している。気持ちがいいのか時折男の腰が小さく浮かんだ
むにむにと胸を動かしていたが、その内谷間がぬるぬるとしてきた。先走りが出始めたのだ。私は胸を下から掬い上げるようにして持つと、谷間の中間をペニスの先端に合わせて左右から強く押し潰し、上下に擦った
あっあっあっ、と男の喘ぎ声が聞こえる。効果があるようだ。溢れる先走りは先ほどよりも量を増し、胸での摩擦を容易くしてくれた。今度は左右交互に、互い違いになるよう胸を動かす。谷間の陰茎が増々硬くなっていき、それに応じて男の顔に苦悶の表情が浮かび上がる。おそらくこのひと時を少しでも長く味わおうと我慢しているに違いない

3

無論私はすぐにでも終わらせたかったので、男を楽しませるようなことはせずに腕の動きを速めた。水音は徐々に大きくなっていき、卑猥な音を部屋中に響かせた
男の腰が大きく浮かんだ。出るっ、と男が短く言う。谷間から顔を出したペニスの先端が一瞬膨れ、そして射精した。勢いよく飛び出た精液は上へと昇っていくが、すぐに重力に負けて落ちていく。一度目の射精が終わったのもつかの間、すぐに二発目が発射された。一回目と比べてこちらは勢いが弱く、穴から出た瞬間に落ちていく。三発目に至っては漏れるように溢れ出るだけで、飛ぶこともなかった
男への奉仕が終わった後、私はすぐにシャワールームへと向かって体を洗った。大量の石鹸を泡立てて胸に付け、お湯で流し落とす。体を拭いて寝室に戻ると男は寝息を立てていた。人を扱き使っておいて事が済んだらもう寝るのか、と呆れを通り越して尊敬すら覚える
私は電気を消してから男を起こさないよう慎重にベッドに潜り、男に背を向けて就寝の態勢に入る。さすがに今日は男も胸を揉んでは来なかった

報告終了

経過報告15

1

捕虜生活8日目。地上軍に捕まってから一週間が経った。今朝も私は小型無線機の波長をいじっては仲間の通信員がこちらの存在に気付いてくれないかと四苦八苦していた
相変わらず雑音しか聞こえない。めげずに目盛りを慎重に変えていく。少しでもノイズが小さくなるようなパターンを見出して暫く放置する。今はこちらの信号が捉えられなくても、時間が経てば玉兎が気づく可能性があるかもしれないからだ
次に部屋の中を捜索する。と言っても何度も見まわしている部屋だ。新しい発見も無いし使えそうな道具も無い。あるのは本棚に置かれた娯楽小説や箪笥の着替えくらいのものだ
そこで違和感に気が付いた。どうして今まで気付けなかったのかと自分の察しの悪さに頭を抱える
部屋に置かれているものは全て月のものだ。本も月で書かれたものだし、シャツも玉兎隊が着用するものだ。地上のものではない。これが何を意味するのかを考えようとしたが、男が部屋に入ってきたので私の思考は中断された。そして取り敢えずの結論に至った
おそらく地上軍が月から押収したものなのだろう。それをこの軟禁部屋に一部まわして、私の生活を楽にする、そんな目的に違いない

2

さて、これからは最初に「私の得た情報結果」を記録していくことにする。一々事実通りの順番で情報を晒す必要はない。重要な部分を先に述べてしまった方が賢明と言える
今回の質問内容は「地上軍の兵数と所持している全武器の特徴」だ。ある程度の予測は立っていたが、やはり裏の取れた情報には叶わない。男が答えた地上軍の人数ははたして月の予想していた人数よりも多少多かった。ピタリとはいかなかったがおおよその目安が当たっていたことに安堵を覚える。全武器の特徴に関してはまた別の質問として訊ねなければならなかったので、今回は情報無しだ
以上で必要な記録は終わりだが、不本意ながら情報を手にするためにやった男の交換条件についても記しておかなければならない。これも捕虜としての務めだ
まず男が服を脱ぎ始めた。今日は下だけでなく上も脱ぎ、丸裸になる。同じような恰好になるよう命令されて私もシャツとスカート、下着類をベッド脇に置いた
―今日も勉強会を始めよう。昨日は正常位についてだったが、今回は別の体位についてだ―
男はペニスを勃起させながら下準備の指示を出した

3

男がベッドにあぐらをかき、それに向き合うようにして私も腰を下ろし、脚を男の後ろへと絡める。座りながら抱き合う形だ。顔と顔が近く、二人の胸板の間で私の乳房が潰れ、局部がぴったりと密着し合う。「対面座位」と言う体勢らしい
―この状態でお互いに腰を動かすんだ―
言うが早いか男は腰を揺らし始めた。昨日と同じように陰茎が秘裂を擦っていく。「素股」と呼ばれるこの行為は本番での体位を全て網羅できるので初めての人間には打ってつけだと男は話した
男性器の裏側と女性器がすりすりと行き違う。微かに触れられる陰核の刺激に私は腰をひくつかせる。本番では、と男の体に腕を回しながら考えた。本番では私の中に挿れた状態で同じように動かすのか…
おもむろに男が私の唇に自信の口をくっつけた。咄嗟に歯を食いしばる。男の舌が唇をこじ開け、私の歯や歯茎を舐めまわす。キスをしたい、と男は一旦口を離してから言った
「……今したじゃない」
唇を触れ合わせるだけじゃなくて舌を絡ませたいんだ、と男が再度口を付けてくる。させまいと私は歯でガードする
そんな攻防を繰り返している内に互いの局部は濡れ始めていた

4

股がぬるぬるとしている。男の先走りと私の愛液のせいだ。昨日の正常位とは違って今回は体をより密着させているので、陰部だけでなくその周辺のぬめりも感ぜられた
男の動きが若干早くなる。単調な動きで始めた時と全く動作が変わらないが、その分送られてくる快感も誤魔化しがなく、それに耐えることはある種の試練にも思えた
快楽の頂きがうっすらと見えてきた私は、男の体をしっかりと抱きしめた。陰部からの刺激により私の体はどこかおぼつかないような浮遊感を生じてしまい、意識が飛ばないよう何かにしがみついていなければならなかったのだ
男は私の限界に気付いたのか、それとも単純に気持ちよくなりたいだけなのか、腰を振る速度を速くした。自前のローションによってコーティングされた下部はもはや何の摩擦も受け付けなくなっており、無慈悲なほどのテンポで大陰唇を上下に擦った
「あっ♡ あっ♡」
堪らず艶のある声を漏らす。秘裂からは更に愛液が流れ出し、ペニスの動きを潤滑にさせる。そろそろ我慢の限界だ

4

男が私の背中を優しく撫でる。押し寄せてくる波を堰き止めている理性が、徐々に崩壊していく
―大丈夫、いっていいよ―
男の一言がとどめとなった。私は「ひぅっ♡」と情けない声を出すと男を強く抱きしめ、絶頂した。男は変わらず腰を動かし続けているが、擦りあげる時に鳴る水音がその瞬間を境により水っぽい音へと変化した
がくがくと膝を震わせる。口の中に充満する唾液を何回かに分けて飲み下しながら、息を整える。暫くして男も絶頂した
私たちの体は深く密着し合っているので、ペニスは二人の腹部の間に精子を打ち上げる。じわりじわりと熱がお腹に広がっていく。あれほど自己主張していた陰茎が、気付くと小さく萎んでいる
「…射精したんだ…」
私の言葉に男の陰茎がひくつく。男は黙って私を強く抱きしめる
少しの間そうやって抱き続けていた。絶頂の疲れからか、私の瞼が重くなる。ふと男が我に返ったように体を動かし、ベッドに手を付けて私から離れる。にちゃ…という音が聞こえたので体を見下ろしてみると、男と私のお腹の間に、何本もの白い糸がかかっていた

報告終了

経過報告16

1

午後を迎えた。やはり進展は無い。男の目を盗んでは無線機を操作しているが、ただただノイズが聞こえるばかりだ。先の見えない現状に不安がくすぶっていく
男から手に入れた情報も重要性のないものだった。「地上軍の所持している武器」について質問をしたが、大方こちらの予想通りの戦力で、隠し持っている強力兵器は無いとのことだ。まあ男が嘘を吐いていればそれまでだが、今さら男が偽の情報を掴ませようとしているとは思えない。そして情報の対価として、あの「勉強会」が始まる
―ベッドに四つん這いになって―
二人とも裸になった後、男が指示を出した。言われた通りにベッドに肘と膝をくっつける。男もベッドへ上がり、私の後ろに近づく。首を傾けて後ろを振り返ると、何やら男がベッドの上に敷いていた。確認してみるとそれはタオルで、私の股下から胸下までのあたりをシーツに広げている
―今からやる体位だと、射精した時にベッドが汚れちゃうからね。タオルを敷いておかないと―
どこか生真面目な男の配慮に、私は「あっそう」と素っ気なく答えた。準備が終わると男は私の臀部に手を置き、「後背位」での素股を開始した

2

たんったんっ、と男の腰が私のお尻に打ち付けられる音がする。その音に合わせて熱いペニスが大陰唇を責め立てる。今朝の対面座位と打って変わって体を動かしやすいからか、男の腰を振る速度は最初から速かった
シーツをきゅっと手中で丸め、素股の快感に耐える。既に陰部から愛液が垂れだし、秘裂をこする陰茎を援助する形となっている。まるで男と私の下半身が手を組んで、私の理性を壊そうとしているかのようだ。「私の体なのに」と男に聞こえないよう小さく呟く
気持ちいいか、と男が腰を振りながら訊ねてきた。私は一度唾を嚥下し、「全然」と強がってみせる。男は私の返答に嬉しくなったのか、さも愛おし気にお尻を撫でまわしてきた
「やめっ、やめてよぅ…」顔を真っ赤にしながら俯く。そのまま体の下を覗いてみると、先走りを浮かばせながら前後に動くペニス、ペニスをつたってぽたぽたと垂れる私の体液、体液によって暗いシミを作るタオルが目に飛び込んできた
気持ちいいんだ。確信したかのような男の声が聞こえる。今度は何も言い返せなかった

3

男の動きがぴたっと止まる。股から脳へ送られていた快感が途絶えて私はほっと安堵したが、同時に訝しんだ
「な、なんで止まったの?」こちらの心を悟られないよう慎重に男へ声を投げる。もう少しでいけそうだったのに、なんて口が裂けても言えない
男は返事をする代わりに私の腰回りに両腕を絡め、指で大陰唇を広げた。予期せぬ動作に肩が強張る
―ここに挿れて素股と同じ動きをしたら、もっと気持ちよくなれるよ―
秘裂を広げられたまま素股が再開される。女性器の内側を刺激され私は悶えた。「はぅぅぅ♡」と眉を八の字にして快楽に立ち向かう。タオルのシミが大きくなっていく
―俺を愛してほしい。後悔はさせない。レイセン、君を愛しているんだ―
「やだっ♡」大きな声で、何に対してかわからぬ否定を口にしていた。「やだっ♡ それやだっ♡」
頭の中が白くなり始める。視覚や聴覚が鈍り始め、局部の触覚だけが鋭敏に研ぎ澄まされていく。あぁもうだめだ、とどこか冷静なもう一人の自分が降参のポーズをとった。だめだ、いくっ

4

一瞬、視界が光った気がした。全身がかっと熱くなり、体がふわりと浮く。聴覚が戻ったのか、何か水が噴き出すような音が聞こえた
続けてお腹に熱い感覚が襲ってきた。下から何か温かい水をかけられているようなそんな感覚だが、それほど量は多くない。私の太ももの間で何かが痙攣している。これはなんだろう、と無邪気に想像してみる。きっとここから何かが飛び出て、私のお腹にかかったんだ、と取り留めの無い空想を楽しむ
はっと意識が戻った。全ての感覚が正常に戻る。ばくばくと自分の心臓の動く音が聞こえる。体が気怠さを纏っている。私は絶頂したのか、とようやく事の顛末に気が付いた
うなだれるようにして体の下を見渡す。男が最初に敷いたタオルが目に移ったが、タオルはぐっしょりと濡れており、更に白い液体が点々と飛んでいる。次に自分のお腹を確認すると、これまた白い液体がかかっている。液体は粘性があるのかへそ周りにくっついたままだ
そして私の股の下、太ももの間に目をやる。そこには白濁の液を飛ばしたであろう犯人が、私と同じように頭を垂れて、小刻みに震えていた

報告終了

経過報告17

1

8日目夜。遂に私は小型無線機での通信に成功した。夕食を終えてシャワーを浴び、一息ついたところで周波数をいじりまわしていたまさにその時だ。時刻は午後9時を回っていた
『……ッ……オ……ダ…ッ…』
無線からノイズの混じった声が聞こえてくる。慌てて私は状況を報告した
「こちらレイセン! 玉兎隊のレイセン! 今現在地上軍に捕まっている! 場所は不明だが敵の秘密基地だと思われる! 迅速な救助を要請する! 繰り返す! こちらレイセン!」
必死に助けを求める。ようやく訪れたこの機会、今逃したらおそらくもうチャンスは無い
『キ……ナ……ミ…』
雑音のせいでよく聞き取れない。それは向こうも同じだろう。しかしあちらからはこちらの居場所を探り当てる逆探知ができるはずだ。それに賭けるしかない
「こちらレイセン! 私は今まで拷問官の男に尋問をされて来た! まだ外的な危害は加えられていないがそろそろ限界だ! 救助を求める!」
『オィ……ゴウモ……ツダ……シタ…ミヨウ…』
徐々にノイズが晴れてきた。このままいけばより正確な情報が伝えられるかもしれない。しかし私は即座に通信を切った。男が入ってきたのだ

2

幸い男に今の会話を聞かれなかったようだ。男は眠たそうに顔をこすると我先にとベッドに入っていった。そして早く一緒に入ってくるようにと手招きをする
ため息を吐いて男の横に寝そべる。いつものように男に背を向け、いつものように男も背後から腕を回してくる。その手も当然、私の胸元へ移行する
今夜は直接触るね。男の声がうなじにかかる。「嫌だと言ったら?」私の言葉を無視するように男はシャツのボタンを一個ずつ、上からゆっくりと、外していく
ブラジャーは付けていなかった。脱がされることが多いこの部屋ではブラを付けずにいる方が楽だった。なので男がシャツのボタンを外し終った時も、私の大きな胸は零れるようにして肌を晒した
男の手が胸に添えられる。手のひらから溢れるほどの巨乳を、男は優しく撫でるように、揉みしだく。胸が引っ張られると私の意識もそこへ引きずり込まれる。知らずの内に内腿を擦り合わせる
―ほらここ、昨日の夜はここで挟んでもらったんだよ―
男が谷間を指でなぞる。「だから何よ」と冷たく言う
―またパイズリしてほしい―
どうでもいい話だが、ここで私は初めてあの行為の名前を「パイズリ」だと知った

3

胸への愛撫が続く。男は五本の指で乳房を捏ねながら、大きい、柔らかい、と感嘆の声を上げている。私は口を閉じて事が済むのを待つ
男の人差し指が乳輪をなぞり始めた。両方共だ。乳首に触れぬよう、器用にその周りをくるくると回る。それに飽きたら今度は乳房を根元から掴んで、乳を搾るように手を動かす。搾る過程で指は少しずつ山を登っていくが、頂点に近づくとすぐに下山し、また登山を開始する
「ね、ねぇ」男の焦らしに根負けした私は文句を言った「そいうの…やめて、よ…」
男は何も言わず、また乳輪だけを指でなぞり出す。絶対に乳首には触らない気だ
更に男の指遣いが露骨になっていく。人差し指で胸の柔肉を何度も突くが、決して乳首を突かない。下乳の方から指をなぞって上に上がっていくが、乳首の部分だけはジャンプして再び乳を這っていく。人差し指と中指で乳輪を挟んで胸を揉む
「…わかった。私の負け。また明日挟むわよ、もぅ…」
降参して敗北宣言を口にする。途端に男の動きが止まる。現金なものだ
「でも」心の中で呟く。「でも、あの通信で仲間が助けに来たら、それで全て終わりよ」
私は一人静かにほくそ笑んだ

報告終了

経過報告18

1

9日目朝。私の心はいつにも増して穏やかだった。その理由は勿論昨日の通信である。昨夜私は遂にメッセージを送ることに成功したのだ。まあ大きなノイズが混じっていたので私の言葉を聞き取れなかった可能性は高いが、それでも逆探知で座標を突き止めることはできる
早ければ今日中にでも助けがやってくる。ようやくこの捕虜生活から解放される。あともう一息だ
そんな私の心境も知らずに男が入ってくる。暢気なものだ、こいつは未だ私を好きにできると考えているのだから
さて、最早必要が無くなったと思われる情報収集だが、一応はやっておかなければならない。こちらの気を悟られて救助にくる玉兎の対策を講じられたら目も当てられない。表面上だけでも捕虜として振る舞う必要がある
質問内容は「地上軍最高幹部についての情報」だ。特に訊きたいほどの情報でも無いが、仲間と合流した時にそれらしい情報を提供できれば「ただ捕まっていたわけではない」とアピールすることができる
そして私は男の交換条件を実行し、情報を手に入れた。今回の条件は「騎乗位の勉強」だった

2

ベッドで仰向けになる男に跨る。男の腰のあたり、もっと正確に言えば男の性器のあたりだ。言うまでもなく私たちは裸であり、自分の局部を男のものにくっつけるようにして、座った
―騎乗位は女性主体の体位だ。普通ならそっちから動いてもらいたい所だが、今日はこっちから動くことにしよう―
説明を終えると男は私のお尻を掴み、腰を揺らし始める。股の下で男のペニスがピクついている。ベッドが弾む音がする
この騎乗位というものは視線の置き場に大変困る。見下ろせば男と顔が合ってしまうし、さらに下げると愛撫し合う陰部が目に入ってしまう。目線を横にずらすのも疲れるし、目を閉じると下部から送られてくる快感をより味わうことになる。悩んだ末、局部を見続けることにした
陰茎と大陰唇が責めあっている。激しい運動の影響からか、お互い汗を垂らし始めている。陰茎は秘裂を擦りあげると同時に先端から汗を流し、秘裂は陰茎に擦りあげられると同時に汗を漏らした
ふぅ、と息を吐く。男に乗っかっているせいで私の自重が股間に集中し、性器同士がより密着している。その密着を抜け出すように男はペニスを動かしているので、素股の快感は生半可なものではないのだ

3

私の額から大粒の汗がぽたりと落ちる。その汗は男の腹にぴちゃんと到達する。そこから視線を少し下げれば、ぐしょぐしょに濡れながら擦り合っているペニスと秘裂が見えるはずだ
無意識に私の腰は動いていた。男の動きを物足りなく感じてしまい、おずおずと腰を振ってしまったのだ。下半身を前へ後ろへと移動させる度に、股から快楽が伝わってくる。そしてその動きは男の陰茎も刺激し、男の脳へと快感を送る。男の方も腰を懸命に動かして自身の性器を気持ちよくしている。そしてその動作が、私の秘裂を責め立てて興奮を脳に飛ばす
先に果てたのは男の方だった。男は小さく呻くとペニスをぶるぶる震わせ、射精した。白くて粘っこい体液が男の腹に降り注ぐ
それに釣られるようにして私も果てた。目をきゅっと瞑り、腰を痙攣させる。電流が全身を突き抜け、どこかへ逃げていく。絶頂の余韻に浸りながら深呼吸をする
敏感になっている陰部から、男の陰茎が少しずつ柔らかくなっていくのがわかった

4

勉強会を終えて一人シャワーを浴びる。股を念入りに石鹸で泡立ててからお湯をそそぐ
「仲間はまだ来ないのかしら」ぽつりと不満を漏らす。昨日の夜に私からの通信を捉えたのであれば、そろそろ来てもおかしくない頃だ。攻撃準備に手間取っているのだろうか
何にせよ、これからはもう「脱出できないのではないか」という不安に悩まされることはない。何だったらまたあとで無線機をいじってみよう。今度こそ明瞭にやり取りができるかもしれない
「大丈夫」と自分に言い聞かせる。体をタオルで拭きながら、何度も励ましの言葉を口にする。もし仲間が助けに来てくれたら状況はどうなるのだろうか、とシミュレーションをする。おそらく地上軍は壊滅状態になり、あの拷問官の男も慌てふためくだろう。仮にそうなれば午後には男はやってこれないはずだ。もしくは玉兎がこの部屋を探し出して昼にはあっさりとここを抜け出せるやも知れない
どっちになるのだろうか、とシャツに腕を通しながら期待で胸を膨らませる。どっちにしても私は助かるのだ
寝室に戻り、椅子に座って時計を確認する。午前10時を回ろうとしている。私は指を組み、仲間の登場を待ち続けた

報告終了

経過報告19

1

最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ。あの通信は仲間のものじゃなかった。地上軍のものだったんだ
昼の12時に部屋のドアが開いた。拷問官の男はこの時間帯に来ることはなかったので私は「仲間が助けに来てくれたんだ」と興奮してしまった。喜んでしまった
入ってきたのは玉兎でも拷問官でもなかった。知らない三人の男だった。頭が真っ白になった。未知の存在を前に足がすくんだ
「おっいたいた」男の一人が笑いながらそう言った。他の二人もにやにやと笑っていた。「何だよ、あの男はいないのか。それなら」
体がどんっと揺れた。ベッドに乱暴に押し倒されたのだ。二人の男が素早く私に近づいて、服を脱がしてきた
「いやぁ! やめてっ!」
私は大声を上げて抵抗をした。しかし次の瞬間には頬を強く殴られていた。ほっぺたがじんじんと腫れ上がった
「騒ぐな。今度騒いだら殺すぞ」
男の脅しに私は声を押し殺した。嫌だ、死にたくない死にたくない死にたくない
シャツが脱がされ、そのまま後ろ手に拘束された。引き千切られるようにパンツも脱がされた。三人の男たちも服を脱ぎ始めた。みんな勃起していた

2

「ははっいい眺めだな」
男の一人がこちらを撮影した。他の二人は好き勝手に私の体を触っていた
「おいコイツ処女だぜ! やりぃー!」
秘裂が男によって広げられた。じろじろと中を確認されて、私は唇を噛みしめて涙を流した。「何だあの男、まだやってなかったのか」
「早い者勝ちだな、早い者勝ち。俺たちだけでとっととこいつを犯そうぜ?」
私の髪をペニスに巻き付けて遊んでいた男がそう提案した。血の気が引き、体が大きく震え出した
「くくく…お前も馬鹿な女だなぁ。昨日の夜無線で通信してたの、あれお前だろ? 俺たちの通信を勝手に仲間のものだと勘違いして、必死に助けを求めて、敵に居場所を知らせちまってんだから救いようがねぇな。お前みたいな奴を『無能』って言うんだぜ?」
「まぁそんな駄目なお前の体を俺たちが使ってやるって言ってんだからありがたく思うんだな」
三人がじゃんけんを始めた。残りの二人が悔しがり、一人が私の前に膝を付けて、ペニスを握った。「それじゃあまずは、俺からっ♪」
秘裂にペニスの先端がくっつき、徐々に広がっていった。「誰か助けてぇ!」恐怖から私は叫んでいた

3

部屋の扉が開いた。「おい、お前は外で見張ってろって言っただろうが」
入ってきたのは拷問官の男だった。部屋の外には地上軍の兵が一人倒れていた。「あっ」と私を取り囲む三人が声を出した
彼の動きは速かった。今まさに私を犯そうとしていた男を殴り、ベッドから落とした。次にポケットから何かを取り出して倒れた男の首に押し当てた。バチンッという大きな音がなって裸の男が痙攣した
「てめぇこの野郎」男が彼に向って腕を振った。拳が彼の顔をかすったが、彼はたじろかずに手の物を相手のペニスに押し付けた。それがスタンガンだと気づいた時には既に男は泡を吹いてうつ伏せに倒れていた
残りの一人が裸のまま部屋から逃げ出そうとしていた。拷問官は懐から拳銃を抜き出して何のためらいもなく発砲した。廊下に出た男の背中から血が噴き出し、崩れるようにして倒れた
―大丈夫か、助けに来たぞ―
男は心配そうにしながら私に近づき、拘束を解いた。もう大丈夫だ、ちゃんと帰ってきた、と励ますように言った
私は自分の体を抱きしめるようにして腕をさすりながら、大きな声を上げて泣き続けた

報告終了

経過報告20

1

最初に謝っておかなければならない。私は「捕虜になった者は毎日克明に現状を記録する」という掟を破ってしまった。この経過報告は前回、即ち私が三人の暴漢に襲われた時から一週間後に記録したものである。あの後一体何が起こったのか、そこから説明していこう
拷問官の男に助けられた後も私の体の震えは止まらなかった。玉兎の通信だと思っていたものが敵のものだと知った時の絶望、顔を思い切り殴られた時の衝撃、三人にもう少しでレイプされる所だったというショック、そして今までの軟禁生活の疲労が全て混じり合い、私は心を病んでしまった。「ごめんなさい…ごめんなさい…」と狂ったように言い続ける。吐き気がこみあげてきて、ベッドに朝食べたものを戻してしまった
男が慌ててタオルを持ってきて私の口を丁寧に拭く。吐瀉物のかかったシーツを取り外してベッドに私を寝かし、浴室へ丸めたシーツを持っていく。その後は部屋に倒れている暴漢を一人ずつ担いで一旦部屋を出ていった

2

それから私は暫く寝続けた。酷い高熱が出たのだ。男は付きっ切りで看病をしてくれた。どす黒い感情が心を覆って私が嗚咽すると、男が優しく私の頭を撫でてくれる。冷たいタオルを額に乗せ、何か欲しいものがあるかと定期的に訊ねてくる。男が部屋を出るのは飲み物や食べ物を持ってくる時だけで、基本的には私の近くに座って私を見守った
熱はなかなか引かなかった。夜中には必ず怖い夢を見てうなされた。妄想と現実の区別が付かなくなっている。滑稽なのが、とある晩に看病をしていてくれたのが男だけでなく仲間の玉兎も一緒にいてくれたと錯覚したことだ。はっと目を覚ました時には船を漕いでいる男の姿だけで、月の兎達はいない。こんな時でも私は仲間に頼りっぱなしなのかと自分の不甲斐無さに涙を流した。それに気が付いた男がまた頭を撫でてくる
そんな生活が一週間続いた。今は捕虜生活17日目の夜を迎えている。あれほど私の体を苦しめていた熱が嘘のように消えていた。元々精神的なものから来る熱だったのだろう、心の平穏を辛うじて取り戻した私にはもう縁のないものとなったに違いない

3

男は机近くの椅子に腰を下ろして本を読んでいる。熱は下がったが、未だ心配なのか時間を見計らっては私の傍にいる。この一週間、男は性的な要求を一切してこなかった
私はベッドから上半身だけを起こし、「ねえ」と男に声をかける。男が本から顔を上げる
「私は…もう出られないの? 永遠にこの部屋に閉じ込められるの?」
不安は依然として心を蝕んでいる。希望のきの字も見えなくなった私は精根尽き果てようとしていた
男が立ち上がる。こちらの顔を強く見返して、ここから解放する、と言った。思ってもいなかった言葉に私は目を丸くする
―だけど今はまだ駄目だ。この月面戦争が終わったら君をこの部屋から解放する。それはどちらが勝っても負けても同じことだ。約束する―
「それって…戦争が終わったら私を殺すってこと…?」
―違う。ちゃんと生きてここから出す。危害を加えるつもりもない。まぁここにいる間はこちらの要望を少しは訊いてもらうことになるだろうが、無茶なことは頼まないさ―
そこでやっと、私の目に光が戻った。生きる活力が男によって全身に注入された気分だ
じゃあ俺はこれで、と男が部屋を出ていこうとする。「待って」と私は声を上げた

4

ベッドから起き上がって男に近づく。どうした? と男が振り返る
「その…私の質問に答えてくれたのに交換条件がまだだったから…」
男が何かを言おうと口を開く。そこを私は素早く顔を寄せて、自分の口で塞いだ
男が驚いたように体を揺らす。が、一番驚いているのはこの私だ。なぜこんな行動に移ったのか、思考と切り離された私の体が勝手に動く
舌を男の口内にねじこんだ。男のベロと触れ合う。そのまま口の中を乱暴に舐めまわす。舌と舌が触れ合うたびに、脳がピリッと麻痺を起こす。遅れて男も舌を動かした。互いが互いの唾液を求めるように、なりふり構わず舌を絡ませる。男の腰に腕を回して抱き寄せながら、ディープなキスを続ける
時間としては1分にも満たなかっただろうか。呼吸を忘れて口を動かしていた私は息苦しさを覚えて、慌てて唇を離した。男も忙しなく息を吸っている。私の口と男の口の間に、唾液による一本の糸がかかっている
「これで質問の対価としては十分でしょ? これ以上のことはしないから」
そう言って私は男をどんと突き出し、小走りでベッドに戻る。流れるようにして毛布の中に潜り込み、顔を真っ赤にしながら寝たふりをした

報告終了

経過報告21

1

捕虜生活18日目、朝。顔を洗い終わった私は椅子に座って男が持ってきてくれた朝食を口に運んだ。静かに咀嚼しながら部屋を見渡し、しみじみと思う
私は恵まれている方なのかもしれない。夜になればふかふかのベッドで眠りにつける。汗をかいたらシャワーを浴びて服を洗濯することもできる。こうやって美味しい食事をとることも許されている。捕虜の生活としては至れり尽くせりの環境だ
私が地上軍に捕まった時に想像していたのは、布団すらない部屋で埃にまみれながら貧相な食糧を与えられ、そして、複数人の男たちに犯される、そんな気の狂うような情景だ
この部屋で過ごしながら拷問官の男とやり取りをしている内に私のそんな想像は薄れていったが、数日前の暴漢達の襲撃により再度恐怖心が首をもたげてきた。私の想像は起こりうる現実なのだと再認識させられた
いや、きっとそっちの方が捕虜の身としては普通なのだ。今回の私のパターンに限って特別なのだ。そしてこうやって朝食を平らげながら突然の襲撃に怯えることもなく落ち着いて考察できるのも全て、あの男の所為によるものなのだろう

2

日課の筋肉トレーニングをやっていると男が部屋にやってきた。食べ終わった料理の皿を取りに来た、と言う。「ありがとう」と腕立て伏せをしながら短く礼を言う
男は空になっている料理皿を確認した後、知りたい情報はあるか、と机のリストを手に取った。私は筋トレを中断して立ち上がり、男からリストを受け取る。実の所、私が男から情報を聞き出す意義は無くなっていた。戦争が終わるまで脱出は不可能だと腹を決めたし、戦争が終わったら地上軍の情報なんて団子屋の新作発表よりも価値が低くなる
私は紙をざっと見直し、ここには書いていない質問を男にぶつけた。「あの襲ってきた三人、いや、四人かな? あいつらはどうなったの?」
―…ああ、奴らはここで過ごす上でのルールを破ったからね。勝手に捕虜に手を出した挙句拷問官の俺に攻撃をしてきたから罪は相当重い。俺から言えるのは、奴らはもう絶対に君の前に姿を現さないこと、そして他の兵たちもこの部屋に突入してこないこと、それだけだ―
でももう無線機で通信をするような真似はやめるんだ、と男がその時だけ眉を怒らせた。「勿論よ」と私も素直に返事をする。もう大勢の人間に襲われるのはこりごりだ

3

男がお盆を持って部屋から出ていこうとするので、慌てて止める。「ま、待ってよ。質問に答えてもらったんだから、私は交換条件を吞まないと」
男は体をこちらに向け、無理をする必要はない、と首を振った。熱は下がったかもしれないが精神的疲れは簡単に消えないので暫く安静にしておいた方がいい、と
「私を甘く見ないでもらえる?」男に真正面から向き合い、毅然とした面持ちで言い放つ。「私は玉兎隊のレイセンよ? 根っからの軍人として鍛えられてきた。か弱い女だと決めつけないでちょうだい」
捕虜の身に落ちながら何を言っているんだともう一人の私がつっこむ。思わず苦笑いを浮かべてしまう。男も同じように思ったのか失笑している。しかし男の笑みは直ぐに消え、こちらの体を見回しながらそわそわとし始める。やがて辛抱たまらなくなったのか、何をしようか、と私の顔色を窺った
「…それは貴方が決めてよ。私はそれに従うから…」
男は少し思案すると、じゃあ勉強会を再開しよう、とお盆をテーブルに置きなおし、ベッドの淵に腰かけた
―今日は「言葉」の勉強をしてもらう―

4

ここが裏筋、と男がペニスの裏側にある一本の細い筋を指でさす。私はそこを舌で舐め上げる。「ここが裏筋」と頭の中で復唱しながら何度も舐める
今日の勉強会は「ペニスの部位の名称について」だった。覚えるだけなら舐める必要なんてないんじゃないかと質問すると男は簡潔に、フェラチオをされたかったから、と答えた
舌先で裏筋を上へ下へとなぞる。集中的にそこだけを、執拗に責める。男は私の頭を撫でると、じゃあ次は亀頭だ、とペニスの先端を指さした
一旦舌を離して亀頭を見てみる。普段男の陰茎は皮で覆われているのだが、勃起をすると先っぽの部分が少しだけ顔をのぞかせる。今も円状に広がった包皮の中央に、桃色の肌が見えている
「医学を勉強した時に男性は勃起すると皮が剥けるって学んだんだけど、貴方のは完全には剥けなのね」私のセリフに男が痛いところを突かれたような顔をする。初めて男の弱点を知った気分だ
舌を伸ばし、亀頭にくっつける。そのまま円を描くようにして舐め回す。外周の包皮も巻き込むようにして舐める。男の顔は見えないが、硬度を増していく陰茎と私の頭を撫でる男の手で、男が気持ちよくなっているというのが伝わった

5

次は鈴口に行こう、と幾分か息を荒くした男が提案する。鈴口? と私が首を傾けると男は亀頭に付いている穴を指さした
―ここを舌先だけで舐めてほしい―
なるほどここは鈴口と言う名前だったのかと妙に感心しながらじっと見つめる。先の口淫によって先走りの液が溢れている
慎重に舌を伸ばして、さっと鈴口だけを舐める。溢れていた先走りを舐めとる形だ。男の陰茎がびくんと跳ねる。要領を掴んだ私は陰茎の根元を掴んで固定し、ぺろぺろと絶え間なく鈴口を舐める。手の中でペニスが快感に抗うよう暴れる
どのくらい舐めていただろうか。男の呻くような制止に慌てて舌を離す。鈴口はひくひくと痙攣しながら大量の先走りを垂らしている。もうそろそろだろうか
次は陰嚢をしゃぶって、と男が言う。その名前は私にもわかる。顔をペニスの先端から根元へと移動させる。口を開けて舐めようとした時、迷いが生じて顔を上げた。「二つあるけど、どっちを舐めたらいいの?」
片方ずつ順番にしてほしい、との命令なので取り敢えず右側の玉を口に含み、たっぷりとしゃぶる。陰嚢は一週間分の精液を溜め込んでいるのか、ずっしりと重かった

6

左側の玉も十分にしゃぶり終わり、口を離す。陰茎はいつ爆発してもおかしくないほど大きく勃起している
―もう限界だ。最後は雁首を刺激してもらう―
男はペニスの先の方にある、くびれた部分を指でなぞる。皮に覆われていてわかり辛いがここが雁首なのだろう。どう舐めたらいいものかと考えあぐねいていると、咥えて唇で刺激して、と男が助言を出した
言われた通りに陰茎を咥える。ほどよい位置まで先端を口内に入れた後、唇を窄めて雁首を責めた。口の中でペニスが抵抗する。私は雁首をちゅぱちゅぱと吸いながら舌を伸ばし、裏筋も同時に舐めて気持ちよくさせる
陰茎が一際大きく跳ね上がり、爆ぜた。舌に男の精液が流される。飲み込んでみようと思ったが精液は驚くほど粘っこく、容易に嚥下できない。どうやって尿道を通ってきたのだろうかと疑問に思うほどの粘性だ
男の射精が完全に終わるまで待ち、手のひらで受け皿を作って、そこに精子を吐き出す。半固形状の白濁が一纏まりとなって手中に落ちる
一呼吸置いてから男の顔を睨みつけ、文句を言った
「濃すぎ…」

報告終了

経過報告22

1

18日目午後、椅子に座って本を読んでいた私は扉の開く音に釣られて顔を上げた。例の事件がトラウマとなり、この時間帯の訪問には不安を覚えるようになっていた
入ってきたのはいつもの男だ。胸を撫で下ろして息を吐く。怖がらせてしまってすまない、と男が申し訳なさそうな顔をする
「いや、大丈夫。ちょっとビクついてただけ。奴らはもう来ないんでしょ? 貴方も暴力を振るうつもりは一切ないんだし、怖がることなんて何もないのよ」
勿論だとも、と男は深く同意する。平静さを取り戻した私は軽く微笑んで見せたが、「あれ、でも…」と疑問を口にしていた。「じゃあどうして貴方は、私が捕まったばかりの時にあんな乱暴的な態度をとったのよ。口調も悪かったし、銃を向けたりしてきたし…」
―あれは仕方がないことだったんだ。最初の頃は君もまだ反抗的と言うか、素直に命令を聞いてくれる状態じゃなかったし…どうしても必要最低限の威圧はしなければならなかった。申し訳ない―
男が苦虫を噛み潰したような顔つきで頭を下げる。もっと他に謝ることがあると思うのだが、寛大な私は「いいわよ、謝ってくれたんだから」と彼を許すことにした

2

ルールはまだ適用されている。今回の私の質問に対して、交換条件の「勉強会」が開かれる
「この体勢は前にやったじゃない。『対面座位』って言うんでしょ?」私は男とベッドの上で抱き合いながら疑問を口にした。既に男の陰茎は私の秘裂に押し当てられている
確かにそうだがこの前のやつでは勉強不足だ、と男が言った。「勉強不足?」と首を傾けると、男が私の下唇を人差し指でなぞった
―結局前回はキスをしながら素股をことが出来なかった。今回はしてもらう―
ああそういうことか、と私は合点する。「この前私とキスできたから、今回もキスできると思ってるんでしょ。ほんと身勝手なんだから…」
男は両腕を私の腰に回し、素股を始める。すりすりと性器同士を擦り合わせることによって生まれる快感が、下部から脳へ伝わる。暫くして男が私の唇に口を付けてきた。私は門を開けようか開けまいかと逡巡したが、降参するように口を開けた
舌と舌が触れ合う。男がより一層強く私を抱きしめてくる。悔しいが、事をしながらキスをするのは気持ちいいと認めざるを得ない

3

私とのキスで興奮したのか、男の腰の動きが激しくなる。私の口内を貪るように舐め回してくる。言葉を発せられる状況じゃないので男は何も言わないが、きっと心中では「愛してる」と何度も呼びかけているに違いない。そう感じられるほど男の動きはこちらへの慈しみで満ちていた
堪らず私も積極的に体を動かす。男を抱きしめ、腰を前後に振り、男の舌に自分の舌を絡ませる。歯止めが効かなくなったかのように愛液が溢れ出る。男のペニスが膨らんでいく。このまま続けたら脳がとろけてしまうのではないかと心配になるが、体は止まらない。止められない
上の口でのディープキス、下の口でのフレンチキス。先に終わったのは後者の方だ。ほぼ同時に私と男が達した。前回と同じように発射された精液が、二人のお腹の間で広がっていく。男の射精が完全に終わるまで、ディープキスを続行する。陰茎が縮んで痙攣が治まった所で、上の口も離した
「ハァ…ハァ……これで満足した…?」男との口の間にできた糸を指で切りながら訊ねる。男は頷いて、私から体を離す。腹と腹の間で作られた精液の橋を見下ろし、小さく笑った。「こっちは指で簡単に切れそうにないなぁ」

報告終了

経過報告23

1

18日目、夜。いつも通り男と添い寝をする。と言っても私が熱を出していた時には、男はベッドに入り込まず椅子に座って見守っていただけなので、実質的には一週間ぶりの添い寝だ
先に私が毛布に体を入れる。直後に男もベッドへ入ってくる。二人分のスペースを作るために私は中央から少しずれた位置に転がる
前と同じように男に背中を向けた状態で目を閉じる。閉じてから、男の悪戯に身構える。暫くして男の手が私の胸元へと移動する。ほらやっぱり、と私は内心で得意げになった。男が胸を鷲掴んだ所で、「ちょっと待って」と声を出す。唐突なことに驚いたのか男の動きが止まる
私は一度男の手を引き剥がすと、体を反転させて、男と向き合った。「こっちの方が…揉みやすいんじゃない…?」
電気が消えていてつくづくよかったと腕をさする。もし電気が付いていたら、今頃真っ赤に染まった私の顔を男に見られていたはずだ
男は黙っている。暫く沈黙が続いた後、この体勢だと逆に揉みづらいかな、と男が苦言を呈してきた
こいつ、人の好意を…。頭にきた私は男の頬を指で抓ってやった

2

「ふんっ、じゃあもう揉まないでよね」男の頬から指を離し、私は眠りにつこうとした。当然、男が揉みづらい向き合う状態でだ。もしこれで男が揉もうとしてきたら手を引っ叩いてやる
―…じゃあ…―
男の指が、私の胸元のシャツにかかる。「揉まないでって言ったじゃない」と私が唇を尖らせると、揉むわけじゃない、と男が言い返してきた。「じゃあ、何をするのよ」
男は黙ってボタンを外す作業を進める。やがて全てのボタンが外し終り、乳房が露わになる
「何? 胸を露出させたかっただけ?」
私の問いかけに返事もせず、男がにじり寄ってくる。部屋が真っ暗なので明確な姿は見えないが、かなり近い。男の吐息が顔にかかる
胸の片方を掴まれた。根元から、揺れる柔肉を支えるように。ほら結局揉むんじゃない、と私は頬を膨らませる。しかし男の手は固まったかのように動かない。普段ならここから思う存分と言った具合で指が蠢くのだが、今回は微動だにしない
すると男が頭を動かした。空気が振動して、私の胸元へ移動するのがわかる。「何をする気…」と言おうとしたその時、胸からぬめりのある感触が伝わってきた。「うぅっ!?」
男が私の乳首を吸い始めたのだ

3

ちゅう、ちゅう。暗闇で音がする。男が乳首を吸う時の音だ。男は赤ちゃんのように、必死になって私の胸を吸っている
「ちょっ、何やって…!」流石の私も動転した。まさか吸われるとは思っていなかった。乳首から送られてくる男の舌の感触が、私の脳を痺れさせる。「ま、待って、タンマ!」
ちゅぽんっ、と男が口を乳房から離す。ほっとしたのも束の間、今度は舌先だけで乳首を弄ってくる。私は悲鳴に近い嬌声を上げながら首を振った
「ひゃめ、なさい♡ それ以上、んっ、やったら、許さないわよ♡」
男は言うことを聞いてくれない。ひたすら乳首や乳輪を舐め続ける。それが終わるとまた乳房に吸い付く。唇を窄め、出るはずのない母乳を求めるように、音を立てて吸い続ける
男を引き剥がせないまま数分が経ち、私の背中を小さな電流が走った。軽くいってしまったのだ。私の体の震えに気付いたのか、ようやく男が口を離す。「よかった…終わり…」かと思いきや、今度はもう片方の胸に吸い付いてきた。「えぇっそっちもなの!?」
あぁ…揉まないでなんて言わなければよかった…。そんな後悔をしながら、男の乳を吸う音と共に夜が更けていく

報告終了

経過報告24

1

19日目、朝。私の心に小さな変化が訪れる
朝食を終えた後に日課の筋トレをしていると、こちらもまた日課と言えるが如く男がやってくる。短い挨拶を交わした後に、さてどうしたものかと考えた
恐らく男はもうこちらから質問をしない限りは、性的な要求はしてこないはずだ。まあ例外的に夜の添い寝の時間は胸を弄られるが、それよりも大きなことは交換条件としてしか言い出せないに違いない。つまり、私から動かなければ男も動くことはない
しかし、ついつい質問を考えてしまう。やっぱり何も情報を得られないというのは精神衛生上好ましくない。ただ戦況についてや地上軍のことについての情報はもう聞く意義がない。となると、この男の素性についてもっと知りたくなってくるというものだ
今にして思えばこれが本当の始まりだったのだろう
「この戦争が終わったら私を解放してくれるって言ったわよね? 月が勝っても負けても。じゃあ貴方は戦争が終わった後はどうするつもりなの?」
世間話をするようなノリだった。男とお喋りをして時間を潰せれば、と思っていた
男はにこりと微笑んで見せたが、それが悲しみを抑えるための作り笑いだと直ぐに気が付いた

2

―戦争が終わったら、俺は死ぬ―
予想だにしない言葉に絶句した。「今、なんて」と震えた声を出す
―地上軍が勝てっても負けても、俺は生きてはいけない。死ぬんだ―
男の顔は、全てを悟ったかのような、人生を諦めているかのような、そんな表情をしていた。「なんで?」と思わず強い口調で訊ねてしまう。「なんで死ぬの? 戦争に負けたとしても、殺されるわけじゃないのよ?」
―…理由については話せない。話したくない。こればかりはどんな交換条件でも答えることは出来ない。ただ約束する。この月面戦争が終わる頃になったら、全てを話す。必ずだ―
男が小指をこちらに向ける。慌てて私も小指を出し、指切り拳万をする。理由は分からないが、今ここで指切りをしておかないと私は何も知らないまま生涯を終えることになる、そんな気がしていたからだ
―あ、そうだ。別に病気に罹っているわけではないよ。性病を患ったりはしていないから安心してほしい―
男のこちらを労わるような台詞に「ならよかった」と思わず言ってしまったが、直ぐにむっとした。「ちょっと。私が貴方とセックスする前提で話さないでくれない?」

3

先ほどまでの不穏な会話が無かったかのように、勉強会が始まる。今回は2回目の正常位素股だ。ただ前回とは違い、今日は男と手を繋ぎ合いながらすることになった
恋人繋ぎと言うんだ。男は私の両手の指に自身の指を絡ませ、腰を振りながら説明をする。「私たち恋人じゃないんだけど」と取り敢えずツッコミを入れる
それにしてもこの素股という行為は未だに慣れない。これで確か6回目のはずだが、今も快感に翻弄される。男の裏筋と私の秘裂が擦り合い、相手と自分を気持ちよくさせようとする。時々陰核が擦られることもあるので、不意にやってくる強めの刺激に私は体を震わせた
愛液が垂れてくる。男のペニスが愛液によってスムーズに動く。いつものスパイラルだ。速くなった陰茎に責め立てられ、更に愛液が流れ出し、一層男の腰の動きを素早くさせる。こうなったらもう成す術はない。達するのを待つだけだ
下腹部の疼きを感じ、身構える。思わず男の手を握り締める。ああそうか、と理解に至った。こうして相手を求めるように握るから、恋人繋ぎなのか

4

男の手を強く握って腰を浮かせ、潮を噴いた。霧吹きを使うように、私の陰部から愛液が噴き出す。絶頂の快感に惚けながら腰を下ろす。男はまだ腰を振っている
「ふー…♡ ふー…♡ はやく…あんたもいきなさいよ…♡」
絶頂したばかりの下部を責められるのは中々に辛い。このままでは第二波がやってきて脳を溶かしてしまうに違いない。しかし私の不安は杞憂に終わった。直ぐに男が私の手を強く握ってきた
「あ…これ」さっきの自分の動作と同じだ、と思った直後に鈴口から精子が飛び出した。射出された白濁が私のお腹に降り注ぐ。男は腰を震わせて、射精の快感と戦っている。私も男の射精を見守りながら、きゅっと手を握り返す
精液を出し切ったのか、勃起していたペニスが縮んでいく。お腹の上に乗っかった白濁液を眺めた後、男と顔を合わせる。「出たね…」
射精が終わったので手を離そうとしたが、男が指を絡めたままにしてくる。「ちょっと」と文句を言おうとしたその口を、男が自身の口で塞いでくる
軽いキスだ。舌を絡めるディープなものではないが、状況が状況だ。「これじゃあ…恋人同士みたいじゃない…」と顔を染めて訴えた

報告終了

経過報告25

1

19日目、昼。筋肉トレーニングの休憩中に、男の台詞の意味を考えていた
戦争が終わったら俺は死ぬ。この発言が私の脳に絡みついて離れなかった。地上軍の人間がどうなろうと知ったことではないが、それでも面と向かって己の死を語られては気にかかるのも無理はない
もしかして、戦争終了と同時に男は地上軍に処刑されるのだろうか? そう考えてみたが、戦争が終わるまで軍が男を生かしておく理由が見当たらない。月を侵略するにあたって有益な存在だから? そうは思えない
では自殺をするつもりなのだろうか。そう思ったが直ぐに頭を振る。何故戦争が終わった後に自殺をするのか、結局その部分が判然としない。「戦争が終わること=男の死」なのだ。そこの理由を解明しなければいつまでたっても疑問は晴れない
男が部屋に入ってきた。調子はどうだ、と男が問いかけてくる。問題ないと返事をする代わりに肩をすくめて見せる
さてと、それじゃあ質問をするか。私は情報を手に入れるため、男に対して次のように言った
「貴方のことについて、もっと知りたい」

2

―その質問なら、ずっと前に答えたじゃないか。俺は地上軍に雇われている拷問官だ―
「そうじゃなくて、貴方自身のことを知りたいのよ。役職とかそういうのを聞いているんじゃなくて、今までの人生とか、貴方の価値観とか」
男が困った表情をする。どう答えればいいのか言葉を探しているようだ。時計の長針が3分ほど進んだところで男が口を開き、自身についてのことを話し始めた
要約すると男が述べた情報は、男の名前や年齢、出身などの他愛のないものだった。初めて男の名前を知って感慨深かったが、本記録ではそのまま「男」と表記していくことにする。今さら固有名詞を並べても読み手が困惑するだけだ。歳の方は思っていたよりもかなり若かった
「家族とかはいるの? その歳ならお嫁ができてもいい頃だと思うけど」
そこで男は両手のひらをこちらに見せ、今回の質問は終わりだ、と言ってきた。どうやら訊ねすぎてしまったようだ
終わりと言われたのであれば仕方がない。後は男の破廉恥な交換条件を実行するだけだ

3

今回は珍しく裸にならなかった。男は服を着たままだったし、私もスカートとパンツを脱いだだけでシャツは着たままだ。私はベッドで仰向けになり、男は私の腰のあたりに顔を寄せている
―今度は性感帯についての勉強だ。今から俺が君の体のある部分を舐めるから、ここが気持ちいいんだと覚えるように―
ある部分って言われても舐める箇所は丸わかりだ。わざわざ下着を脱がせて秘裂を晒しているのだから、そこを舐めるに決まっている。男は体を動かして陰部に顔を近づける。果たして男の舌技はどのようなものなのか。昨夜の疑似授乳を思い出し、私の胸が高鳴ってしまう
男が太ももの付け根に親指を添える。私の大事な部分が男にじっと見られている。恥ずかしくなり私は「早く舐めてよ」と催促したが、これはこれで我慢できなくなった者の台詞みたいではないかと一層顔を赤くした
男の口が開いて、赤い舌が姿を現す。いよいよだと私はベッドのシーツを軽く掴んだが、男は予想外の部位を責めていた
「ひゃっ!? どっ、どこを舐めてるのぉ!?」
男が舌を付けた場所は、陰部と肛門の間の部分だった

4

男が舐めた場所は「会陰」と言うらしい。別名を「蟻の門渡り」と言い、陰部と肛門の間に位置している。今まで生きていた中で意識したことのない部位だ。そこを男が責め立てている
意地が悪い快感だった。くすぐられているような感覚と普通の性感が同時に襲ってくる。刺激は強く無いが、決して弱くもない。程よい塩梅の快感が絶えず脳に送り込まれていく。何より一番厄介なのが、このまま会陰を舐められ続けても絶頂に至ることはない、と察したことだ
「だめ♡ もう舐めちゃだめ♡ あぁぁぁ…♡」
私の訴えを意に介さずに、男は蟻の門渡りを責め続けた。たっぷりと唾液の付いた、肉厚で柔らかい舌で、会陰をねっとりと舐めほぐす。子宮がきゅんきゅんと疼く。秘裂がこっちも舐めてほしいと懇願するように愛液を垂らす。しかし男は贔屓をしているのか、会陰だけを執拗に舐め回す
いつまでこの生殺しの状態が続くのだろうか。とっくに私の快感は絶頂域にまで満ちたというのに、肝心の最後のひと押しがやってこない。秘裂を少しでも触ってくれればこの苦しみから解放される。しかし、男は会陰を舐め続ける

5

5分が経過した。会陰への責めは止まらない。10分が経過した。まだ会陰への責めは止まらない。15分が経過した。それでも会陰への責めは止まらない
もう何も考えられなかった。長時間の生殺しのせいで私の頭は馬鹿になってしまった。顔を涙と涎でくしゃくしゃにし、愛液をだらしなく垂れ流し、「やめて♡ もうやめて♡」と同じ言葉ばかりを繰り返している
男はやめない。私の腿に腕を回して固定し、身動きが取れないような状態で会陰を舐める。舌先で軽く這うように、小さな蟻が渡るように
遂に折れてしまった。鼻をすすり、大粒の涙を流しながら、「お願いっ♡ いかせてぇ♡」と泣き喚いた
今度こそ私の声は男の耳に届いた。男は呆気ないほど簡単に会陰への責めを止めると、大陰唇を舐め始めた
「あぁっ!! ああああ♡」
最後のひと押しがようやく来てくれた。私はシーツを握りしめ、腰を浮かせて達した。夢にまで見た絶頂に私の体が痙攣をする。長い快感が終わり、私はくたりとベッドに横たわった。「はぁ…♡ はぁ…♡」
男が手を伸ばして頭を撫でてくる。よく頑張ったと私を褒めるように。悪い気分では無かった

報告終了

経過報告26

1

19日目、夜。夕食とシャワーと終えた私は男と添い寝をする
今日は昨日のようにはいかない。私は男に胸を吸われないよう、ちゃんと背中を男に向ける。そして背後から乳房を揉まれないよう腕を組んで防御を作る。少し窮屈になってしまうがこれで一安心だろう
早速男が腕を回して胸を揉もうとしてくるが、私の腕がその進行を拒む。どうしてガードなんかするんだと異議を唱えるように男が抱き着いてくる
「ふんっ、毎晩毎晩胸を触られて嫌になっちゃうのよ。添い寝してあげるだけでもありがたく思いなさい」
私の言葉にむっときたのか、男の手の力が若干強くなる。腕を無理やり外そうとしてくるが、私も頑なに抵抗した。暫く静かな攻防が続いたが、男は諦めたのか私の腕をどかそうとするのをやめた
ようやく安眠が訪れると安心して瞼を閉じたが、甘かった。男は今度は私のお尻を下着越しに揉み始めたのだ

2

しまった、そう来たか。私は目を開けて慌てて腕を背後に回した。しかしそれがまずかった。その瞬間を狙っていた男が私の胸元へ片手を持ってくる。「あっ、ちょっと!」慌てて腕を戻そうとするがもう遅い
男が片手で私の胸を揉み、もう片方の手で私のお尻を揉む、そんな状況になってしまった。私は男の手をどけようとするがこうなってしまっては取り戻しは付かない。男が満足するまで耐えるしかない
おっぱいも柔らかいけど、お尻も柔らかいね。男が興奮しながら褒めてくる。既にお尻の方は下着の中に手を入れられ、直に触られてしまっている
おっぱいも直接触りたいからボタンを外して。男がそうねだってきた。私は溜息を吐き、「早く終わるためだ」と自分を納得させてシャツのボタンに手をかける。露わになった胸を男の手が襲う。五本の指が大きな乳肉にうずもれる。男の吐息が忙しなくなる
やっぱりおっぱいの方が柔らかいね。こんなに大きいのに指が吸い付くなんて、レイセンはいやらしいなぁ。男は私をからかいながら胸とお尻を揉み続ける
「いやらしいのはどっちよ…」私の小さな指摘は男の耳には届かなかったようだ

3

「家族はいるの?」とさりげなく男に訊ねてみた。いるよ、と男は胸を揉みながら答える。両親と小さな妹が一人いる、と
「奥さんは?」と再度訊ねる。いない、と今度は否定の言葉が返ってきた。今まで結婚したことはない、でも叶うのであればレイセンと結婚したい、と男が言う
「何馬鹿なこと言ってんの。まあ兎も角、じゃあ貴方の家族はその三人だけなのね」
不思議なもので男の素性を知ってからはより男に対しての親近感が大きくなっていった。得体のしれない存在から、私と同じようなただの有象無象だと確認できたからだろうか。拷問官という役職を除けば、彼もまた何の変哲もないただの人間なのだ
「けど、あまり家族に誇れるような仕事じゃないわよね、拷問官って。いたいけな女の子を捕まえて性的なことをして、それが仕事ですなんて冗談でも言えないわ」
私が笑うと男も笑いながら、そうだね、と言った。でももう心配する必要もないんだ、と男が続けるので「どういうこと?」と首を傾ける
―父も母も妹も、もうみんな死んじゃったから―

4

男の家族は戦争で死んだのだと言う。この月面戦争が始まる前に、地上で起きていた戦争で
―俺が敵軍の兵を拷問して情報を得ている間に、自分の故郷が襲われたんだ。家族は戦争に関わっていなかったのに、敵軍に蹂躙されて殺された―
ぽつぽつと語る男の声がとても重い。気が付けば、私への愛撫もやめていた
―もしあの時、戦線から逃げ出して故郷に帰っていれば、家族を守ることができたかもしれない。「大丈夫、帰ってきた」と言ってひょっこり家に戻っていれば、三人を助けることができたかもしれない。だが所詮は結果論だ。俺の軍は戦争には勝ったが、俺は最も大切なものを失ってしまった―
私は、ただ黙って男の話を聞いていた。何も言えない
―なあ、レイセンはどうして戦うんだ? 何のために、軍人として争う―
「それは……月を守るため。私は玉兎だから」
―立派な動機だ。それに対して地上軍の奴らは略奪の為に戦っている。誰かから大切なものを奪うために戦争を引き起こす。だから俺は…―
そこまで言って男がしんと黙る。それっきり喋らなくなった。今夜は今まで以上に重苦しい夜となった

報告終了

経過報告27

1

この情は何なのだろうか。今朝から男に対する正体不明の気持ちが、心の奥底から湧き上がって止まらない。どこか浮ついた気分で中空を眺めている
同情? 私は男に対して憐憫の情を抱いているのだろうか? いや、違う
色情? 男へ穢れた劣情を向けるようになったのだろうか? いや、違う
この気持ちは何なのだろうか。自信の胸に手を当て、問いかける。一体私は何を考えているのか。何をしようとしているのか
分からない。答えを知っているはずなのに、敢えて知ろうとしないような、そんな感じだ。真実から目を逸らして仮初の冷静さを着飾ろうとしている
「私は…」
ぽつりと呟いた声が空中を彷徨い、消えていく。一人きりの部屋がとても広く感じる。男は、男はまだ来ないのだろうか。壁の時計を確認する。朝食が運ばれてからそれなりに時間が経っていた。もうそろそろ来てもいい頃だ
扉が開いた。男が来た。いつも通りの飄々とした顔つきだが、どこか疲れている。戦時中なのだから無理もないだろう。私のように、部屋でのうのうと休んでいる方がおかしいのだ
私は椅子に座り、手招きをする。男とお喋りをしたい気分だった

2

私たちはテーブルの傍に座りながら、お茶を飲んで談笑をした。私は月のことについて話し、男は地上のことについて話す。男の話は滑稽なものが多く、思わず笑ってしまった。本来なら私は敵軍に蹂躙されてもおかしくない立場である捕虜のはずなのに。何とも穏やかなひと時だ
「どうして貴方は拷問官なんかになったの?」一通りの話題が尽きたところでそう質問をした。「昨晩も言ったけど、あまり誇れるような仕事でもないわよね」
―なりたくてなったわけじゃない。軍に徴兵されて色々なことをやらされて、上官に「お前には情報を訊き出す才能がある」と褒められて、気が付いたら拷問官になっていた。自分に人を傷つける才能があるなんて、思ってもいなかった―
男は胸を張ると言うよりも、自嘲するかのようにそう言った。私はティーカップに口を付け、お茶で唇を濡らす
―あとは、嘘を吐く才能もあるのかな。それで相手を翻弄して、自分のペースに持っていくんだ―
「嘘を吐くのが上手いの? あまりそうには見えないけど」
男は軽く笑うと、まあ、と口を開いた。まあ君の質問には嘘で答える気は基本的に無いけど
「基本的なのね」と私も失笑した

3

お茶を飲み終わり、私たちは黙って椅子に座っている。次にどう動くのか、男は私の行動を待っているようだ
「ごめんなさい。虫のいい話だとは思ってるんだけど、少し考える時間が必要なの。私は貴方に対して質問をしたけど、貴方の交換条件は吞まないわ」
男は黙ったままじっとこちらを見つめている。私が何を考えているのか、それを男も考えているみたいだ。分かった、と男が快活に返事をする
―さっきの君の質問は他愛のないものだったし、別にこちらの要求を吞まなくても構わないよ。君の思考の邪魔をするのも悪いし、俺は出ていく―
そう言うと男はテーブルに置いてあったお盆を持って、静かに部屋を出ていった。また私は一人きりになる
その後はずっと、テーブルに両肘を付け、おでこに手を当て、考え続けた。自分の立場のこと、月のこと、今後の人生のこと、そして男のこと
時間はあっという間に過ぎていった。脳が疲れ始めた私は席を立ち、洗面台に行って顔を洗った。頭を上げると鏡があり、そこには臆病な目をしている水で濡れた兎の姿が映っていた
決断の時なのかもしれない。私はタオルを手に取り、そっと顔に押し当てた

報告終了

経過報告28

1

20日目の昼を過ぎた。しんと口を閉じて考え事をしていると、男がやってきた。調子はどうだ、と訊ねてくる
「……まだ色々と考えてる」私は男の方に視線を向けず、ぽつりと言った。何か手を貸せることはないか、と男が問題解決に名乗り出る。二人で知恵を合わせれば答えが見つかるかもしれない
「…じゃあ、質問に答えて…」私は椅子から立ち上がり、男と向き合った。「どうして、私を好きになったの? 地上軍に捕まった女の捕虜が私だけだったから、性的な目的の為に愛そうとしたの?」
男は即座に首を振った。が、なかなか口を開かなかった。悩んでいるように見える。私に情報を教えたくないと言うより、どう教えるべきなのかと思案している顔だ
―何て言ったらいいんだろうか。いくら言葉を探しても、陳腐な答えしか出てこない。根拠も無いし、信頼性も無い。それでも俺の答えに納得してくれるのなら、堂々と言おう―
「…分かった。馬鹿になんかしないから、言ってちょうだい」
―君に一目惚れしたんだ―

2

―そもそも俺は今回の戦争で、捕虜を凌辱しようなんて思っていなかった。必要最低限の暴力を振るい、敵から情報を訊き出し、戦争を有利に進める。それが俺の役割だった―
私は黙って男の話を聞く
―そんなある日、君が地上軍に捕まって運ばれて来た。俺は普段通りに仕事をこなそうとしたが、君の姿を見た瞬間、分かったんだ―
「分かった? 何が」
―この人こそが、俺の運命の人なんだって―
思いもよらぬ男の台詞に、私は瞼を瞬く
―な、馬鹿馬鹿しいだろ? でも俺は本気だ。君を一目見た時に悟ったんだ。俺の大切なものが、地球ではなく月にあったんだって。地上で見つからなかった赤い糸のパートナーが、遥か上空、大気圏を越えた先にいたんだって―
「……」
―…呆れさせてしまったか? まあ無理もない。存外に身勝手な話だもんな。いきなり拷問官の男から運命の人だって言われるなんて、気色が悪くなるのも当然だ。それに、これは俺がそう感じただけで、君は俺を運命の人だと全く思っていない。一方通行もいいところだ―
「分からない…」私の口が動いていた

3

「分からない…。どうして、どうしてそれを最初に言ってくれなかったの? 私がここに連れてこられた時に、真っ先にそのことを言ってくれれば、私は態度を変えていたかもしれないのに…」
―それは今だからこそ言える台詞だ。もし俺の心情を捕まったばかりの君に話していても、真に受けてもらえなかっただろう。敵の拷問官が下らぬ戯言をほざいている、そうとしか受け取ってもらえなかったに違いない―
私は何か言おうとしたが、直ぐに口を閉じた。男の考えを否定出来なかった
―もし君と出会った場所が平穏な町中だったのなら、俺は紳士的に交際を申し込んでいたはずだ。けど今は戦時中だ。そんな悠長なことはしていられない。いつ戦争が終わって君と引き剥がされるのか、それだけが気掛かりだった。だから俺は…―
「強硬策に打って出た…」
―…その通りだ。俺は一刻も早く、君に愛してもらいたかった。だから、俺の拷問官としての才を使って、君を堕とそうとした。…これは俺のエゴなんだ…―
私の質問に答え終わった男は、そのまま部屋を出ていった。私は何も言えぬまま、男を見送るだけだった

報告終了

経過報告29

1

20日目、夜。男と一緒にベッドで寝る
今回の報告は簡潔なものとなるだろう。何故なら、記録すべき事項が少ないからだ。いつもなら男が私の胸にちょっかいを出してくるのだが、今日はベッドに入った途端に寝てしまった
余程疲れていたのだろう。男は小さな鼻息を漏らしながら、死んだように寝入っている。そう、死んだように
戦争が終わったら俺は死ぬ。男の声が蘇る。結局理由は分からずじまいだったが、男の態度から察するに、それは変わらぬ結果なのだろう
「逃げなさい」ふとそんな言葉を思い出した。私が玉兎隊に配属されたばかりの時、上官の一人が言っていた台詞だ。「もし命の危険を感じたら、どんなに無様になろうとも、逃げなさい。生きるということが最も大事なことなのだから」
それを聞いた仲間の玉兎達は思い思いに笑い、上官を嘲った。軍人がそんな心持ちでどうする、死してなお月を守り抜くことが我々玉兎の務めなのだ、と非難した
私も他の仲間と同じように上官を責めた。「そんな情けないことが出来ると思っているのですか?」
上官は何も言わず悲しそうな顔をしながら、私たちの言葉を聞き入れていた

2

「そう、逃げればいいのよ」私は隣で寝ている男にそう言って、そっと抱きしめた。男の脳に私の声が届かないことは重々承知していたが、それでも私の口は止まらない。「何が貴方を死に至らしめるのか分からないけど、生きるために逃げればいいのよ。例えそれが、地球でもなく、月でもなく、もっと別の場所に行くことになるのだとしても」
やっとあの時の、上官の言葉の意味を理解した気がした。逃げるというのは恥ずべき行為ではなく、勇気ある行動なのだ。穢れの充満した世界に住むこの男なら、きっと分かってくれるに違いない。生き続けるという覚悟の、その重さを
「……私、決めた」
男を抱きながら息を吐く。大きな決意を胸に秘め、私は目を閉じる
明日の朝、男に言おう。そして、実行しよう

報告終了

経過報告30 その1

1

「地上軍の秘密基地の場所を教えて」
捕虜生活21日目の朝。私はとうとうその質問を男にぶつけた。これが一体何を意味するのか、今までの経過報告を見てきた者なら察しが付くはずだ
この情報を手に入れるために必要な交換条件は、男と性交すること。私は男と交わる決心をしたのだ
―…本気で言っているのか? この質問ばかりは、流石に俺の要求を吞んでもらうことになるんだぞ。悪いことは言わない、軽い気持ちで言ったのであれば、今の言葉は聞かなかったことにしてやる―
「3週間」私は男を無視して話し続ける。「私が捕虜になってからちょうど3週間経った。貴方の努力は実を結んだわ。私は、堕ちちゃったのよ。残念ながら。ちなみに聞きたいんだけど、この3週間って捕虜が堕ちる期間としては長い方なの? 短い方なの?」
男はバツの悪そうな顔をして、いや、と頬を掻いた。今まで女の捕虜を調教したことが無かったから分からない
「えっ」呆気にとられる。私は男が、幾人もの女を食い物にしているとばかり思っていた。「そ、そうなの?」
まあ普通な方じゃないか、と男が投げやりに答える。適当だなぁ、と私は苦笑した

2

「兎も角、私は負けたのよ、貴方に。貴方と過ごしている内に、段々と貴方の行動や思考を理解するようになって、許せるようになった。貴方となら…性交をする価値はあると思ったのよ…情報の為に」
じゃあ俺を愛してくれるのか、と男が消え入りそうな声で訊ねてくる。「許すだけ」と私は強く言った。「私は貴方の行いを許して、受け入れるだけ……それだけなの…」
男は寂しそうに口を閉じたが、直ぐにこちらに寄ってきて、私を抱きしめた
―ありがとう、レイセン。君にとってその決断は、とても重いものだったはずだ―
男の言う通り、これはとても重大な決意だった。私が地上の男と性交をすると言うことは即ち、穢れを受け入れることを意味する。今までの前戯のように口や胸が汚されるとか、そんな生半可なものではない。正真正銘、生を、この身に刻むことになる
もしこのことが月の者にばれたら、私はただでは済まないだろう。「穢れた女め」と後ろ指をさされて月で一生を過ごすのならまだいい方だ。最悪の時は、覚悟を決めるしかない

3

―…じゃあまず、地上軍の秘密基地の場所を教えておこう―
男が話し始めようとしたので、慌てて男の口を手で塞いだ。「待って」と男の声を遮る。「待って、言わないで。お願い」
男が眉を八の字にする。私の手をどかし、交換条件なのだから俺が情報を教えておかないと、と怪訝そうな顔をした。それともやっぱり怖くなったのか、それならそれで構わない、と男がこちらの後頭部を撫でる
「違う、そうじゃないの。別に、だから…貴方からその情報を聞いても、どうせ私は戦争が終わるまでここから出られないんだから…意味がないじゃない。だから、貴方が秘密基地の場所を言っても言わなくても、別に…」
―何を言っているんだ。君は俺の言うことを聞いて、俺はそれのお礼に情報を提供する。折角の情報を手に入れないでどうする―
「だからぁ!」私は目尻に涙を溜めながら男を睨んだ。「私は、そんな情報の為だけに貴方と交わるつもりはないの! 情報を得る為に貴方と抱き合うんじゃないのよ!」
ぽろぽろと涙を零しながら、男に声をぶつける。きっとこれが、私に残された最後のプライドなのだ
私の気持ちを慮った男は、強く私を抱きしめてくれた

4

ベッドに仰向けになる。そこに男が覆いかぶさるように乗っかってくる。服はベッドの脇に綺麗に畳んでおいた
まずはキスから始めた。互いに唇を触れ合い、舌を伸ばす。男の舌を舐め回す。男も舐めてくる。唾液が混ざり合う。男の唾液が混ざったそれを、時折飲み下す。否応なしに身体が火照ってくる
呆れるほど長く私たちはディープキスを続けた。時間はたっぷりある。今はまだ口を離したくない。男の舌が、私の歯茎をなぞる。そこは卑怯だ、と私は目を閉じて肩を震わせた。こちらも負けじと男の背中に腕を回し、男の上顎部分を舌先で舐める。男の体がピクッと揺れる
ようやく長かった接吻が終わりを告げる。私たちは唇を離して、荒く呼吸をしながら見つめ合った。口惜しいが、このままキスを続けているわけにもいかない。口と口にかかっている唾液の糸が重力に負け、私の唇に落ちる
男が私の胸に手を伸ばした。片手で、片方の乳房を揉み始める。「んっ」と私は眉を困らせる。「本当に胸が好きなのね」
私がそう言うと男は上気した顔で、おっぱいって言ってほしい、とねだってきた。私は目を逸らして顔を赤くしながら、「本当におっぱいが好きなのね」と言い直した

5

男の手が私の胸を丹念に揉みしだく。円を描くようにして乳房を触りながら、五本の指を波打つように動かして柔肌を楽しむ。男の手のひらの下で、私の乳首が硬くなっていく
男が顔を胸元まで持っていく。まさかと思った直後、男が乳首を口に含んで吸いだした。私は快感に呻きながら目をつむる。男は唇を窄め、突端を甘噛みしながら、しつこく吸ってくる。我慢できなくなった私は叫んでいた。「で、出ない♡ そんなにいっぱい吸っても、出ないからぁ♡」
男は口を離し、今度は舌先で乳首をチロチロと舐めてくる。こそばゆい快感に私は体を揺らす。舌根を左右に素早く動かし、突端を連続で責める。もう片方の乳首にも男の魔の手が迫り、人差し指で乳輪をなぞられてしまった
私は口を閉じて喘ぎ声を出さないようにするが、どうしても声が漏れてしまう。男がまた乳首を吸い始めた。「やぁっ♡」と明確に声を発してしまった
男が乳を吸いながら片手を私の下半身へと伸ばしていく。指先で秘裂をさっとなぞられた。私は小さく腰を浮かせる
―もう準備はいいみたいだ―
男の言葉に、私は今更、自分の秘所がびしょ濡れになっていることに気が付いた

6

この体勢は3回目だ。即ち、正常位の体勢だ。男の陰茎と私の大陰唇が、ぴったりとくっついている
―ほら、ここまで―
男が自分の勃起したペニスを指さす。この長さがここまで君の中に入る、と事前に説明をする
私の心臓ははち切れんばかりに高鳴っていた。鼓動に合わせて脳も振動している。身体全体が心に合わせて揺れている。遂に、遂に挿れられちゃうんだ
男が少し腰を引き、亀頭を私の秘裂に付ける。そのまま徐々に進んでいく。素股じゃない。本当に、私の中へと入ってくるのだ
シーツを掴んでいる腕が震え出した。緊張からなのか、妥当な生理反応からなのかは分からない。男は進行を一時中断して、私の腕を撫でてくれた。大丈夫、と私の目を見て語り掛ける
それを聞いて私も頷いた。まだ震えは止まらなかったが、先ほどよりも大分小さくなった。男が再び亀頭を秘裂にあてがう
いくよ、と男が言った。きて、と私も返事をする。男の先端が少しずつ、大陰唇を広げ、膣内へ、入ってくる

そして、男が私の処女膜を貫いた

報告中断

経過報告30 その2

1

私は遂に男と繋がった。男の性器が、私の純潔の象徴である膜を破り抜けた
始めは太い針で腹部を刺されたような痛みがした。苦痛に顔を歪ませる。しかしその鋭い痛みは一瞬で、今度はピリピリとした、軽い鈍痛が股を襲う。「痛っ…」と歯を食いしばって純潔を捨てた代償に耐える
私はいつの間にか閉じていた目を開き、下部を見やった。男の股間と私の股間が密着し合っているが、男にあるはずの陰茎が見当たらない。いや、隠れているのだ。私の膣内に、根元まで
「うぅ…くぅ……はぁ…っ♡」硬直していた私の顔が柔らかくなる。処女膜を貫いた痛みが薄れていき、緩やかに快感へと昇華していくかのようだ。深呼吸をする。吐き出すときに息が震える。口の中にたまった唾を飲み込み、男の顔を見上げる。「入った…入ってる…」
男もゆっくりと呼吸をしている。抑えきれない興奮を押し付けているみたいだ。そろそろ腰を動かしても大丈夫か、と小さな声で訊ねてくる
あぁそうか…彼は私の痛みが治まるまで待っていてくれたのか。「大丈夫」と私が答えると、男は静かに、腰を振り始めた

2

男の動きは極めて遅かった。根元まで入った陰茎を膣から引き抜くように、そうっと下半身を後ろへ動かす。内壁を擦りながら出口まで行こうとする陰茎に、私は「ふぁぁぁ♡」と情けない声を上げてしまう。これだけでも素股の時より遥かに気持ちいい。脚を不規則に震わせながら、徐々に私の中から出てくる陰茎を見下ろす。あんな太いものが私の中に入っていたのかと今更実感を得て、それが余計に私の脳を桃色にさせた。ペニスに絡んでいる赤い筋は、処女膜を破った時に付いた血だろう
男の亀頭、雁首が秘裂までやってきた。しかし完全に外へ出るようなことはせずに、踵を返して再び奥へと侵入してくる。陰茎の竿がまた少しずつ姿を消していく。消えた分だけ私の中に現れていく。また膣を擦られる。快感から視界がぼやける。声を我慢することなんて出来ない。「あぁ…♡ やぁ…♡」と恥ずかしさの籠った声を出す
男の陰茎が再度根元まで挿入された。穢れがたっぷりと溜まった陰嚢が、私の下部に軽くぶつかる。亀頭と触れ合っているこの個所は、私の子宮だろうか。もし男が射精したら、穢れが根元から先端まで届き、子宮に流れ込むはずだ

3

腰の動きが徐々に速くなっていく。膣内で男のペニスが縦横無尽に行ったり来たりを繰り返す。私はその横暴な陰茎を止めることが出来ず、されるがまま全身に快楽を送られ、言葉にならない声を上げ続けた
秘所からの水音がスピードに合わせて大きくなる。素股の時とは比べ物にならないくらいの音量だ。愛液が男の竿にまとわりつき、前後運動をスムーズにさせる。どんどん男の動きが速くなる。速い。駄目、このままじゃいっちゃう
「うぁぁぁぁ♡ だめっうごいちゃ、だめぇっ♡」
ピストン運動が激しさを増す。私の身体も小刻みに動き、大きな胸が男の腰に合わせて揺れ動く。「だめぇ♡」と何度も、それだけを叫ぶが、男の耳には届かない。いや、届いているはずだ。届いているが、男は止めることが出来ないのだ。男の顔は、今まで私が見た中で一番、幸せそうな顔をしていた。蕩けていた。きっと私も同じような顔をしているに違いない

4

部屋の中はすっかり淫靡な音で満たされてしまった。タンッタンッタンッと等間隔で打ち付けられる腰の音、それに伴って湧き出てくる軽い水音、ギシギシと鳴り響くベッドの音、そして私の嬌声、男の吐息。もうそれだけしか聞こえない
限界だ。いつ絶頂してもおかしくはない。膣を刺激される度に真っ白になる私の視界に、頂きが見え始めている。あともう一歩で、その頂上に届く
声が聞こえてきた。聞き覚えがある声だ。誰の声だ、と快感で役に立たないでいる頭を回転させる。これは、男の声だ
男は何かを繰り返し喋っているが、腰を動かしながら口も動かしているせいか、うまく聞き取れない。頂上付近で薄れかけている意識を何とか男の声に、持っていく。そしてはっきりと聞こえた。男はこの言葉だけをしきりに言っていたのだ
―愛してる、愛してる、レイセン―
考えるよりも先に、私はいっていた。腰を浮かせ、背も反らし、悲鳴にも近い悦びの声を上げて、絶頂した
私がいっている間にも、男は挿入運動を止めずに続ける。頂きよりも遥か上の空まで私の意識が飛んでいく。果ての見えないオーガズムに気絶してしまいそうだ

5

私の絶頂は男にも影響を及ぼした。私が達すると膣がきゅっと狭まり、ペニスを締め付けたのだ。男は最後の力を振り絞って腰を前に出し、根元まで深く挿入した状態で、射精した
一瞬だが、陰茎が大きく膨らんだのが分かった。その膨らみは陰嚢のあたりから亀頭まで移動していき、鈴口まで辿り着くと精液を吐き出した。男から解放された精液は、今度は私の中へと入ってくる。子宮に、精子が流される。目では見えないが、お腹の下の方から伝わる体温よりも少し熱い液体の感覚で、精液が流れ込んでいるのだと把握出来る。男の穢れを、私は受け止めた
第二波がやってきた。一回目の射精を終えた陰茎がびくんと跳ね、二回目の射精をする。先ほどよりも少ない量の精液が、また私の膣を通る。暫く間を空けてもう来ないのかと思っていると、柔らかくなり始めている陰茎がぴくっと動き、鈴口からちょろりと精子を漏らした
射精を終えた男が腰を引き、膣からペニスを抜き出す。役割を全うした陰茎は、ふにゃりとした状態で顔を出した
「ハァ…ハァ…」男の顔を見つめる。こんな時、何て言えばいいのだろうか。取り敢えず私は、最初に思った感想を口にした
「出しすぎ…」

報告終了

経過報告31

1

21日目、昼。私はベッドに座ってぼうっとしていた。服の上から下腹部を撫でる
ここに、出されたのだ。男の穢れを、精子を。事が終わった後にシャワーを浴びていくらかの精液を膣から流し出したが、子宮には少量残っているはずだ
これで私は正真正銘「穢れた女」となった。しかも男に無理やり犯されたのではなく、私から望んでこの身に堕ちたのだ。でも、後悔はしていない
この秘密は死ぬまで隠し通す。月面戦争が終わって普段の生活に戻っても、いつも通りに過ごしてやる。…私は最低な女なのだろうか
男が来た。どこか照れくさそうな顔をしている。私も少し顔を赤らめながら、視線を合わせないようにする。妙によそよそしい態度をとってしまったが、初めて身体を重ねた男女が再び対面するのは、想像以上に恥ずかしいものだ
まだあそこは痛むのか、と男が訊ねてくる。「いや、もう全然痛くない」と私は答えた。強がりではない。処女膜を貫かれた時の痛みは、性交を終えた時には既に無くなっていた「でも、まだ股に何か入ってるような感覚はするかな。慣れるまでには時間がかかりそう」

2

―処女を捨てる時にはかなりの激痛を伴うと聞いていたけど、君は違ったみたいだね―
私の隣に腰を下ろした男がそう言ってきた。「多分…」と私は憶測を口にし始める。「多分…三つの理由のせいかも」
理由? と男は訝しげな顔をする
「まず私が軍人で身体を鍛えていたこと。普段から身体を動かしていると各部への痛みが減るってどこかで聞いたことがあるわ。二つ目は、その……沢山濡れてた、からかな……貴方のやつもすんなり入ってきたし…」
言い淀む私をフォローするように、じゃあ三つ目の理由は、と男が相槌を打ってくれた
「三つ目は、これもまあただの憶測なんだけど、私が玉兎だからじゃないかな」
男が首をかしげる。私は自分の耳を指で摘んでみせた
「ほら、この通り私は普通の人間じゃなくて、兎の血が混じってる。兎って繁殖力の強い動物じゃない。だから、初めての性交も難なく出来たんじゃないかな…」
成る程なぁ、と男が唸るように腕を組んだ。こちらを感心する男の素振りに私はつい笑ってしまう
「それで、本題なんだけどさぁ…」私は手を胸に当て、眉を困らせながら、流し目で男の方を見た。「またここに来たってことは、やっぱり…」

3

まるで今朝の出来事をなぞっているかのようだ。衣服を全て脱ぎ、ベッドに仰向けになり、男が覆いかぶさってくる。前戯は済ませてある。私の目は潤み、下部も程よく濡れている
男はもう交換条件を出してはこなかった。つまり、私は男の言うことをただ聞くだけだ。勿論私にも拒否権はあるし、男はそれを聞き入れてくれるに違いない。でも私は、男の行為を拒まずに、受け入れた
男が私の両手を握ってくる。指も絡めてくる。これは確か、恋人繋ぎだ
挿れるよ。男はそう予告をして、腰を器用に動かして亀頭を秘裂に押し当てた。恐怖と期待から男の手を強く握ってしまう。またあれが、入ってくる。私の中を滅茶苦茶にしたやつが、懲りずに入ってくる
直後に身体の異変を感じた。膣から多量の愛液が滲み出てきたのだ。えっ、と困惑する。私の秘所は、私の意思に関係無く、男を受け入れる準備をしたのだ。男が私の中に入ってくると理解した時に、迎える支度を整えたのだ
戸惑いは一瞬で、直ぐに理解した。これもまた、兎の本能なのだ。一度男との性交を体験した私の身体は、滑らかに彼を招きこめるよう、変化したのだ

4

亀頭が秘裂を潜り抜け、膣を通る。男と私の身体が同時に震える。恋人繋ぎをより力強いものにする。亀頭が子宮の入り口に到着した
それから男はテンポよく腰を振り始めた。雁首が膣壁を擦りながら、前へ後ろへと行き来する。鈴口が子宮と接吻する度に、口から声が漏れる。腰が痺れ始める。二回目とあって脳には快感しか届かない。男の腰の往復は三桁を越えただろうか。私の性感は極限まで高まり、頭を振りながら、「だめっ♡」と最後の言葉を発した
愛液が、膣と陰茎の隙間から外に鋭く噴き出した。私の絶頂に押し出されるようにして男がペニスを引き抜き、そして彼も達した。体液で濡れた陰茎が大きく跳ね、真っ白な液体を私の腹にかけた。鈴口が開いて精子が飛び出る瞬間を見てしまった私は、顔全体を赤くして震えた。「あぁ…出てる…出てるよぅ…」
陰茎は不規則に跳ね上がり、その都度精液を飛ばした。全ての射精が終わったころには、私のお腹の上には大量の白濁が乗っかっていた
この一時だけを見れば私たちは素股をして男が絶頂したと勘違いするかもしれないが、実際はちゃんと男と交わっていた。しかしその事実は男と私だけしか知らない

報告終了

経過報告32

1

21日目深夜。私たちはベッドで抱きしめ合いながら寝ている。性的な意味ではない。男と軽い抱擁を交わしながら、目を閉じている
時計の針が進む音がする。今は何時だろうか? 床に就いてからそれなりの時は過ぎているはずだ。瞼を開けて、心の中で溜息を吐く。どうも眠りにつけない。漠然とした不安がさざ波のように押し寄せてくる。その理由は当然、日中の性交が原因だ
私は禁忌を犯してしまった。地上の男とまぐわい、身体に穢れを取り入れてしまった。あれほど覚悟をしていたはずなのに、いざ実行し終わると私の中の冷静さが罪悪感と言う槍を持って心を突き刺してくる。その頻度は夜が更けていく毎に回数を増していく。今や私の身体は心の痛みに耐えられず、震えながら男にしがみついている
「ねぇ」男に向かって小さく声を発してみた。「ねぇ、起きてる?」
男がもぞりと動く。彼の方はすっかり眠っていたようだ。私の背中を手のひらで撫でてくる。眠れないのか、と男が訊ねてくる
「うん…ちょっとね…。何か不安で…」
じゃあレイセンが眠れるまでお喋りでもしようか、と男が提案してくれた。断る理由はない

2

私は自身の心中を全て男に吐露した。月の民が嫌う穢れのこと、地上の者と交わる罪の重さのこと、そして私の覚悟のこと、それら全部を男に話した
男は驚いた様子だった。きっと彼は、私と交わることの重大さを、処女を奪うくらいのものだと思っていたに違いない。それ以上の意味を孕んでいたとは想像もつかなかったはずだ。事実彼は私を強く抱きしめながた、懺悔の言葉を口にした
―すまない。君にとってそれほどの覚悟が必要だったなんて知りもしなかった。本当にすまない…―
私は枕に頭を付けながら、小さく首を振った。「ううん。結局最後に決めたのは私だし、貴方の責任ではないわ。私が我慢していればよかっただけなんだから」
―でも、そこまで追い込んだのは俺のせいだ。もっと君たち月の住民のことについて聞いていれば…―
男の言い方に違和感を覚えた。聞く? 一体誰に? 私はそう質問をしようとしたが、先に男が口を開いたので慌てて言葉を飲み込んだ
―俺の目標はもう達成された。君から愛を貰うことが出来た。だから、明日からは君に性的な行為を強要するのはもうやめるよ―

3

「ちょっと、どういうこと?」
―実は明日から忙しくなる。君といられる時間も限られるかもしれない。勿論ちゃんと食事は持ってくる。だけど、もう君にエッチなことはしない。既に君を汚してしまったのに馬鹿なことをと思うかもしれないけど、これ以上君を穢したくないんだ―
「あのねぇ」怒りの籠った声で男に言った。「それは流石に身勝手すぎない? 私の身体を穢しておいて、それではいもう終わりなんて、ふざけないでよね?」
男が押し黙る。暗闇の向こうでも、申し訳なさそうな顔をしているのが伝わってくる
「私は貴方と結ばれることを受け入れたの。仕方ないことなんだって罪悪感に苛まれながら決意したの。それが何? 今度は貴方が臆して私の決意を無駄にしようとするの? いい加減にしてよ」
早口で男を責める。一呼吸置き、何とか平静さを取り戻してから、口を開く
「貴方は拷問官で、私は捕虜。貴方は命令をする権利がある。そして私には、その命令を満足に聞く権利がある。だから…」
私は一度唾を飲み込み、声を中断させた。これから吐く台詞が頭のなかで渦巻き、顔を赤くする。長く息を吸ってから、男に言った
「貴方の好きにすれば、いいじゃない…」

4

レイセン、と男が堪ら無くなった声を上げ、私の頬に自分の頬をくっつける。男の私を抱きしめる力が、痛いほどに強くなる
「…絶対に独りにしないでね」私は消え入りそうな声を出した。「今日貴方と結ばれてから、世界の全員が私の敵になったような、そんな妄想が止まらないの。世界が私を見捨てて、私はこの部屋で独りぼっちで……味方なんか誰もいなくて……。だからお願い、私を独りにしないで……」
―約束する、どんなことがあっても、必ず君に会いに来る。君を孤独にはさせない。また帰ってくる―
それを聞いて安心した。私は男の胸元に顔を寄せ、男の服で目尻の涙を拭きながら、そのまま深い眠りについた

報告終了

経過報告33

1

22日目。今日から起こった変化について、先に述べておこう
まず最初に、男が私に行う性的行動が少なくなった。具体的に言えば、今までは午前と午後に一回ずつ何かしらの行為をしていたのだが、今回は手を出してこなかった。私は男とお喋りをし、好きな小説について語り合い、効率的な筋肉の動かし方を議論し合った。非常に有意義な時間だ。まるで友達のように、いや、それ以上の関係のように、私と男は笑い合った
そうこうしている内に夜が訪れた。一人きりの部屋で、私はベッドのシーツを綺麗に伸ばし、シャツの埃を手で落としながら、そわそわと男の来訪を待った
性的行為は確かに減ったが、無くなった訳ではない。日中に男が、夜になったら俺の言うことを聞いてもらう、と些か興奮した雰囲気で言ってきた。拒否権はあるが、俯き気味に男の目を見ながら、「分かった」と恥ずかし気に応えた
男が扉を開けて中に入ってきた。昼と様子が違い、鼻息が荒い。男の瞳は、獲物を狙う獣の目をしている。当然標的はか弱い雌兎だ
男が私を抱き寄せて、しよう、と言った。「うん」と私も少し間を空けて言った

2

生まれたままの姿でベッドに上り、四つん這いになる。男が私の後ろに場所を取って、お尻に両手を置き、ペニスを秘裂に押し付ける。「後背位」の姿勢だ
男の亀頭が大陰唇を少し広げた瞬間、またあの生理現象が発生した。即ち、膣から脈絡も無く愛液が溢れ出てくる例の現象だ。私の身体が男を受け入れる態勢に入ったのだ
―本当にレイセンの言った通りだ、いきなり濡れ始めた―
感慨深いような男の台詞に、私の耳が赤く染まる。いやらしい女だと思われないだろうかと胸をどぎまぎさせながら、シーツを掴んだ
―…それじゃあ、挿れるよ…―
にゅるり、といきなり根元まで陰茎を挿れられた。あっという間のことに身体の反応が追い付かない。ワンテンポ遅れてから陰部から頭部へ痺れが伝わった。ぶるりと身体を震わせる。「きっ…た…♡」
膣の中でペニスが脈打っているのが分かる。竿が膨らみ、今から私の中で暴れようとしている。あぁ、動き始めた……わたしのなかで……いっぱい…
「やぁぁ♡ やっ♡ あっ♡」
男が腰を前後に動かすと、連動するかのように私の声も漏れだした

3

二人だけの空間、私と男だけしかいない秘密の部屋、誰も見ていないことをいいことに、男は腰を振り続ける。豊満な肉体を持て余した捕虜兎を、好き勝手に犯す。抵抗出来ない私は枕に顔をうずめ、必死に嬌声を抑えた
男の腰が大きく往復する。雁首が膣口から顔を覗かせる度に、愛液が掻き出される。「んんんんぅっ♡」と枕を口に付けた状態で私は叫んだ。膝がガクガクと笑い始める。男が私の臀部を軽く撫で回す。「だめぇ♡」とくぐもった声で抗議する。男はやめない
男の動きが小刻みになる。ペニスを奥まで挿し込み、連続的に子宮を突いてくる。快感の熱で溶かされた脳が、視界をぼやけさせる。額に浮かんだ汗がぽたりと落ちる。朦朧とした意識の中で、絶頂のことしか考えられなくなる。もう少し、あともう少しで、と快楽の解放を待ち望んでいたその時、あの刺激が下半身から伝わってきた
男は陰茎で私の膣をいたぶりながら、会陰を指で擦り始めたのだ。そう、陰部と肛門の間にあるあの部位だ。私は一際大きな声で呻くと、涙を零しながら達した

4

絶頂の関係で膣がペニスを強く締める。男も一歩手前の所まで来ていたのだろう、膣壁が陰茎を抱き締めた瞬間に、精液が漏れ出した
男が私の腰に抱き着き、亀頭を深くまで押し込み、竿を射精で震わせた。鈴口から流れ出る白濁が、私の子宮に侵入してくる。一滴たりとも膣から零すものか、と言う男の意思がありありと感ぜられる
「やぁぁぁ♡ いやぁぁ♡ なかにださないでぇっ♡」私は大きな声で否定の言葉を口にしていたが、本当に嫌がっているわけではない。ただ上手く自分の感情を説明することも難しい。男と性交をすると、本心とは真逆の台詞が出てきてしまうのだ。それは男も分かっているらしく、彼は私の言葉を無視して膣内に射精をし続けた
―レイセン、レイセン―
射精中に男が私の名前を呼ぶ。絶頂の快感を引きずっている私も、男の名前を連呼する。やがて陰茎の痙攣が治まり、私たちは忙しなく肺を動かしながら押し黙った。思い出したかのように男がペニスを膣から抜き出す。亀頭が膣口から離れる瞬間、私は腰を震わせた
「……いっぱい出せた…?」
私は肩越しに男を振り返り、そう訊ねてみた

報告終了

経過報告34

1

23日目。男が部屋にいられる時間が短くなった
これから忙しくなるという話は本当らしい。男は料理を運んでくる時以外は、30分も経たない内に部屋を出ていってしまう。今までは一時間以上も部屋でのんびりとしていたのに、さっと現れて風のように消えてしまう。勿論その間にお喋りは出来るが、やはりどこか物寂しさを覚えてしまう
一体男は何の仕事をしているのだろうか。夕食を口に運びながら一人で考え込む。拷問官の仕事は当然敵への拷問だろうが、私以外の捕虜はいないはずだ。いや、男が嘘を吐いている可能性も捨てきれないが、それはあり得ない。と言うよりも考えたくない。ここで私が疑い始めたら、ようやく手に入れた男との信頼関係が全て崩れてしまう恐れがある。だからその推測は候補に入れないようにする
どちらにしても、だ。男は地上軍の人間な訳だから、地上軍に益となる仕事をしていることは自明の理だ。それは言い換えれば、私の仲間を危機に追いやっているとも捉えられる。溜息を吐く。どんなに信頼を築こうとも、敵は敵なのだろうか…

2

男が部屋に戻ってきた。時計を確認すると、まだ就寝には早い時刻だ。ここからは私と男だけの時間が待っている。が、私は男が口を開く前に訊ねていた
「貴方の仕事って何なの? 拷問以外にどんなことをしてるの?」
言ってから、そう言えば男は雑用の仕事もこなしていると答えてたな、と3週間程前の事を思い出した。ひどく昔のように感じてしまう
―雑用やら何やらだが、まぁ、他にも色々としている…。それ以上は答えられないな―
「絶対に?」
―…戦争が終わったら必ず教える―
またその回答だ。男が決して答えたがらない質問は、終戦まで先延ばしにされてしまう。何を隠しているのだろうかと気にかかるが、これ以上の追及は不毛と判断して、その変わり別の質問をぶつけてみた
「貴方の仕事って、私の仲間を傷つけるようなことじゃないわよね…?」
それは違う、と男は明瞭な声で答えた。それだけは絶対に無い、とこちらの顔を見据えてくる
「で、でも、貴方が軍の仕事をするってことは、結果的に月を追い込んでいるってことじゃないの?」
男が大仰に首を振る。俺はレイセンの味方だ、と私の手を取る。男の目は決して嘘を吐いているようには見えなかった

3

さて、一昨日は正常位で、昨日は後背位だ。男との模擬授業ではあと二つの体位を勉強していたが、果たして今日は「騎乗位」だった
まず男がベッドに仰向けになる。そこに私が跨る。一旦素股の状態にしてから、気分を落ち着かせる。手で団扇を作って真っ赤に燃えている顔に風を送る。この体位は今までの二つと違って、私から男のペニスを膣へと挿れなければいけないので、死ぬほど恥ずかしかった
よし、と小さく頷き、男の竿を手で持つ。絡ませた指から熱が伝わってくる。腰を少し上げて、私の陰部を亀頭にあてがう。「じゃあ、い、挿れるよ…」
ゆっくりと、慎重に、腰を下ろしていく。期待で泣き出しそうな男の顔が見える。秘裂が小さく口を開け始める。ゆっくり、ゆっくり……。先っぽが、入った。男がきゅっと目を閉じる。つられて私も目をつむる。ゆっくり…ゆっくり…。雁首が入り口を通り抜けた。口を窄め、静かに長く息を吐く。そのまま、ゆっくり、竿を飲み込んでいく。そして、腰を下ろしきった
「はぁ…はぁ…」目を開けて、下部を確認する。男のペニスは完全に私の膣に入っている。「入ったよ…」
男は私の腰辺りに手を置き、下半身を揺すり始めた

4

「あっ♡ あっ♡ あっ♡」
男が腰を突きあげる。陰茎が子宮をノックする。そこに発声を司るツボでもあるのだろうか、私は男に腰を浮かされる度に短い嬌声を上げた
この体位もまた、素股の時とは比べ物にならないくらい刺激が強い。そして正常位や後背位に対しても一線を画しているように思える。無理もない、私の自重によって膣がペニスを咥えこんでいるので、亀頭が最奥に当たっている状態がニュートラルなのだ。そこから更に子宮を突き上げられ、腰が落ちると着地と同時に再び亀頭にぶつかる。膣から送られてくる「気持ちいい」が休むことが無い
だからだろうか、私も男も直ぐに果ててしまった。先に男が精子を打ち上げた。噴水が水を噴き出させるように、鈴口から精液が噴出する。精液の熱さがとどめとなり、私も絶頂した。膣内に愛液が満ちていく。膣が絶頂の痙攣でペニスをきゅっきゅっと締める。男がまた不定期に子種を飛ばす
私は生まれたての動物のように脚を震わせながら、腰を上げた。べちょんっ、と陰部から抜け出た陰茎が、男の腹に倒れる。余程気持ちよかったのだろうか、白く染まったペニスはまだ痙攣していた

報告終了

経過報告35 その1

1


24日目。男が私に頼み事をしてきた
午前の出来事だった。私がベッドの上で瞑想をしていると、男が部屋に入ってくるなり、君の仲間のことについて詳しく教えてほしい、と訊ねてきた
「仲間って、他の玉兎のこと? 一体何で…」
―俺の仲間たちが、君の玉兎たちと遭遇して、傷を負わせたらしい…―
全身の毛が逆立った。目を大きく見開く。「仲間は無事なの?」と男に縋りつく。彼は苦虫を噛み潰したような顔を作った
―致命傷には至っていないらしいが、大丈夫とも言い切れないらしい。彼女たちは地上軍との遭遇地点から離れた場所に退去して身体を休めているとのことだ。そこを俺の仲間が、今夜襲いに行くと言っている―
「襲うって…」
―捕まえて、慰めものにする気だ―
顔がかっと熱くなる。恥ずかしさからではない。怒りからだ。数週間前に3人の暴漢に襲われた時のことを思い出す。消えたはずの恐怖心が再び私の血液を冷たくさせる
―だから、俺が彼女たちを助けに行く。それに協力してほしい―

2

男の計画は至極単純だった。地上軍が玉兎隊のいる場所へ攻め込む前に、彼がいち早く赴いて彼女たちを安全な場所へ避難させる。それだけだ。しかし、彼も地上軍の人間なので玉兎たちから警戒されてしまう恐れがある。そこで私の出番と言うわけだ
男が数枚の紙をテーブルに置いた。そこには仲間の顔が描かれている。男の説明によると、玉兎と遭遇した地上軍が後になって描いた絵らしい。その絵の下には、捕まえた後にする行為や順番決めの名前が羅列してある
―この子たちに見覚えがあるか? あるのならその子の情報と、あとは彼女らに宛てる手紙を書いてもらえると助かる―
「手紙? どんな?」
―兎に角、仲間を安心させられるような言葉を書いてくれればいい。それを玉兎たちに渡して、俺が月の敵ではないことを伝えたいんだ。そうすれば彼女らも俺を信用してくれる―
私は口に手を当て考えていたが、やがて机上の紙を指さし、知り合いの情報を話し始めた。その後は筆を取って励ましの手紙を書いた。最後に名前と、兎のマークを記す
男が礼を言って足早に部屋を出ていった。私は椅子に座り、仲間の無事を祈った

3

実はこの時、私は男を疑っていた。本当は仲間たちは既に捕まっており、これから男が拷問を円滑に進める為に情報を手に入れたかったのではないか、そう勘ぐっていた
では何故男に情報を与えたのか。理由は簡単だ。男を信じたかったからだ
私の予想では、この後男は仲間の手紙を持って帰ってくるはずだ。ちゃんと玉兎を助けたという証拠を見せる為に。そして私が仲間の手紙を読めば、全てが明らかになる。即ち、仲間が名前の横に兎のマークを描いていたら安全な状態にいる、と言う隠れたメッセージを確認出来る。もし印が無かったら、それは男によって無理やり書かされたと言うことになる
今更私は男に疑惑の目を向けるつもりはない。しかしそれでも、彼が私の完全な味方であるという確証を得た上で、彼と過ごしたい。もし彼が嘘を吐いていると分かったら…。私は覚悟を決めて、彼の帰宅を待つ
夜の6時頃、男が夕食を持って部屋に戻ってきた。「どうだった?」と訊ねる。男は疲れた笑みを浮かべながら手紙を取り出し、何とか皆を安全な場所に送ることが出来た、と答えた
男から手紙を受け取り、真っ先に名前の横を確認する。そこにはちゃんと、可愛らしい兎が描かれていた

4

私は安堵の息を吐いてから、手紙の文面に目を通した。そこにはこちらを励ますような言葉が書かれてある。筆跡もちゃんと仲間のものだ。男は嘘を吐いてなんかいなかった
「…仲間には…私と貴方との関係を何て言ったの…?」
―君は地上軍にスパイとして侵入中で、俺が君のパートナーだと言うことを嘯いておいた―
これは予想だが、仲間はその時点ではまだ彼を疑っていたかもしれない。けれど私の手紙に描かれている兎のマークを見つけて、彼を信じることが出来たのだろう。そして彼女たちは無事に地上軍の魔の手から逃げることが出来た…
―…どうした、レイセン。何で泣いてる?―
男に言われて慌てて目に手をあてる。指先がほんのりと濡れる。仲間が危機を乗り越えたことの安心感と、男が仲間を助けてくれたという感謝、そして何より男が私の味方だったと確信出来たことへの安堵から、涙が出てしまったに違いない
「うん…ちょっと…お腹空いちゃったかな…」私は笑いながらそう誤魔化した
―それじゃあ今夜は一緒に食べよう。実は俺もついさっき戻ってきたばかりで、食事がまだだったんだ―
それから二人で、和やかな夕食を楽しんだ

報告中断

経過報告35 その2

1

男との夕食を終えて、まったりとした時間を過ごす。時計を確認してみるが、寝るにはまだ早い。私は男の顔色を上目で伺いながら「どうしたいの?」と訊ねた
男は照れた顔をするだけで何も言わない。仕方なく私から「貴方との勉強会で教えてもらった体位が、まだ一つだけ残ってたわよね…」とそれとなく話題を振る
おもむろに男が立ち上がると、服を脱ぎ始めた。「しょうがないなぁ」と私も嫌そうな顔を作りながらスカートのチャックを下ろす
それから二人でベッドに上がり、勉強会最後の体位である「対面座位」の準備を始めた。男があぐらをかき、そこに私が座る。まだ陰茎を膣には挿れない。取り敢えず素股の状態にしておいてから、男と向き合う
顔が近い。目と鼻の先に彼がいる。恥ずかしくなり、目を逸らす。男は私の背中に腕を回して、抱き寄せながらキスを求めた。拒否権はある、あるが、無いに等しい。私は男の口を受け入れ、舌を絡め合った
それから暫くディープキスを続けていると、男が私の太腿を下から手で持ち上げた。そろそろ挿れたい、と言うことだろう。私は捕虜らしく従順に従い、濡れた恥部を亀頭に付けて、静かに腰を下ろしていった

2

竿が膣に入りきる。挿入の快感に襲われてキスを中断させる。無言で喘ぎながら男にしがみつく。男が私の頭を撫でながら、腰を上下に揺すりだした
「んっ…♡ はっ…♡」
ベッドのスプリング音が大きくなる。男の腰が跳ねる度に、ペニスが子宮を突く。痺れるような快楽に涙を流しながら、否定の言葉を発する。「あぁ♡ やめてっ♡」
男が口を近づけてくる。このまま、セックスをしながらディープキスをする気だ。「やだ♡」と私は顔をくしゃくしゃにして、首を振る。「いま、キスしたら……こわれちゃう…♡」
問答無用だった。男が私の唇に舌をねじ込む。そして、口内を蹂躙した。私は悦楽の悲鳴を上げたが、それすらも飲み込むように男が口を動かす
腰を突きあげる動作が速くなった。愛液が飛び散っているのか、飛沫の音も聞こえる。男は丹念に舌を絡ませてくる。私の頭は既に真っ白だ。口と膣からの快感が混ざり合って、私の脳を駄目にしてしまった。ここまで来たら、あとはただ、終わりを待つだけだ

3

両脚を男の腰に回して、がっちりと固定する。私の精神は許容量を超える快感によって疑似的な無重力状態に陥っていた。身体がふわふわとしていて、どこかに身を寄せる必要があった。私は男を抱きしめ、来るべき絶頂に備える
不意に子宮が熱くなった。男のキスが若干弱まる。一体どうしたんだろうかと不思議に思ったが、直ぐに男が射精したのだと気が付いた。竿を震わせ、ひっきりなしに精子を打ち上げている。男が口を離し、深呼吸をする
「わたしも…わたしも…」男の奔流を感じながら私も腰を動かし、追いかけるようにして絶頂した。精液を溜め込んだ子宮が蠢く。無重力状態から解放され、今度はずっしりとした疲れが襲ってくる
私たち二人は呼吸を整えて、性器を繋げあったまま、再びキスを開始した。今度はディープなものではなく、絶頂した互いを労わるようなソフトなキスだ
眠気がやってきた。このまま男と抱き合った状態で寝てしまいたいが、身体を洗わなくてはいけない。ベッドに足を付けて立ち上がると、膣から陰茎が抜け落ちた。鈴口から膣口に繋がっている白い糸を、指で摘むようにして切り落とした

報告終了

経過報告36

1

25日目。日課である筋トレを行って、男のいない退屈な時間を潰す
汗をかくことはいいことだ。汗腺から滲む水滴と共に、心中に燻る不要な感情まで流し出してくれる。私は部屋の空間を存分に利用しながら、出来る限りの運動をこなした
額の汗を手の甲で拭いながら、時計を見る。午前のこの時間帯は、男が来るにはまだ早い。私はシャツを脱いで上半身だけ裸になり、タオルで身体の汗を拭き始める
ドアの開く音がした。はっとして振り返ると、いつもより早く男がやってきた。咄嗟に露わになっている胸元を腕で隠す。今更裸を見られてもどうと言うことはないのだが、突然の出来事に羞恥心が呼び起こされてしまったのだ
男が、私の胸に釘付けになっているのが分かる。私は両腕で胸全体を隠そうとするが、たわわに実った乳房がどうしてもはみ出てしまう。視線を忙しなく動かしながら、「み、見ないで…」と男に抗議をする
男が近寄ってくる。そして手を伸ばし、私の下乳を撫でた。おっぱいを見せて、と男が頼んだ
「嫌よ…夜以外はエッチなことはしない約束じゃない…」私はそう言ったが、男は見たい見たいと駄々をこね始めたので、仕方なく腕を下ろした

2

桃色の突端が姿を見せる。運動でかいた汗が、胸をつたって落ちている。男が何も言わず胸を掴んだ。「見るだけって言ったじゃない」と当然の文句を口にすると、触るだけ、と男が言い直した。私はこれ見よがしに溜息を吐く
男は乳房を下から持ち上げるようにして、ぽよぽよと揺らして遊んだ。水滴が胸から飛び散る。「どうしてそんなにおっぱいが好きなの」と私は困った顔で男を見た
―おっぱいが好きなんじゃない、レイセンのおっぱいが好きなんだ―
夢中になって巨乳を弄りながら、男が答える。そうですか、と私も気の抜けた返事をする
―汗かいてるね。筋トレしてたのか?―
「うん。貴方が部屋にいない間、暇だし…」
―それなら今度何か持ってこようか? 例えば、地上軍の運動マニュアルとか―
本当? と私は幾分か上ずった声を上げた。是非お願い、と男に頼む。男は私の胸を揉み続けながら、じゃあ明日にでも持ってくるよ、と承諾してくれた
「…ところでいつまで揉んでる気なのよ…」
手を離す気配を見せない男をじっとりと睨む。まだまだ、と男は歯を見せて笑うと、片方の乳を持ち上げた

3

そして男は口を開け、乳首を吸い始めた。ちゅうちゅうとわざとらしく音を立てながら吸い付く。私は背筋を逸らせて、「ちょ、っとぉ…♡」と困惑の声を出した。「汗かいてて、んっ♡ 汚いから、やめてよぉ…♡」
男は我関せずと言った表情で、乳首を舐め続けた。舌先をチロチロと動かされ、堪らず息を漏らす。男の手が胸の根元を掴んで、乳を絞り出すように指を操る。赤ちゃんが母乳を求めるように、男も私のおっぱいを待ち望んでいる。「そんなに吸っても、出ないよぅ…♡」と大きな赤ちゃんの頭を撫でる
ちゅぱっと男が口を離した。舌で責められ続けた突端が唾液で妖しくてかっている。男は満足した表情で、今度はキスを求めてきた。やれやれ、と私は男と軽く唇を付ける
―俺はもう仕事に戻らなくちゃいけないけど、夜になったら、またちゃんとしよう―
そう言って男はあっという間に部屋を出ていってしまった。私は床に落ちていたタオルを持って胸を拭こうとしたが、流石にこれはシャワーを浴びた方がいいなと思い直し、スカートと少し濡れたパンツを脱いで、浴室へと向かった

報告終了

経過報告37 その1

1

25日目。夜がやってきた。私と男は諸々の準備を終え、ベッドの上で抱き合った
シーツに寝転ぶ私に男が覆いかぶさり、キスをしてくる。男の後ろに手を回し、抱き寄せながら舌を舐め合う。今日は朝からずっと我慢していた。男が私のおっぱいを中途半端に弄ったせいで、興奮が治まらなかった。口で受け取る男の愛を一旦止めてから、「今夜はどうする気?」と判決を待つ囚人のように訊ねた
―今日は、そうだな、一緒に気持ちよくなろう―
「それって要は、セックスするってことじゃない…もう…」
―いや、今回は69をやる―
「シックスナイン? 何それ」
聞きなれない単語に私は眉を顰める。彼は無知な私に性的な知識を植え付けていくのが嬉しいのか、柔和な笑みを浮かべて話を続けた
―互いに相手の性器を舐め合うんだ。こう、一人が相方と逆の方向を向いて、そして口で愛撫し合う。だから69だ―
「……」
そんな変態的なことをやれと言うのか? 私は紅葉を散らしながら、「しなきゃ、駄目…?」と一応訊いてみた
―嫌なら諦めるけど、一度でいいからやってみたい―
「……じゃあ…してみよっか…」

2

男はベッドで仰向けになり、私はその上にうつ伏せになる。ただし姿勢は逆方向で、男の顔にお尻を向ける形だ。恥ずかしさから「うぅ…」と小さく呻く。目の前にあるペニスはまだちゃんと勃起していないのか、皮が亀頭を完全に覆っている
―準備はいい?―
「い、いいよ…」
言うが早いか、男は秘裂を舌でなぞり始めた。ぴちゃぴちゃと音を鳴らして筋を舐め回す。やはり男の口技は巧い。私は震える手で陰茎を掴みながら、舌を亀頭に伸ばして反撃に出た。舌先を包皮の中央に差し込み、内側をなぞるようにして舐める。男の腰が若干浮く。私は下部からやって来る快感に負けないように、亀頭を舐め続けた
暫くするとペニスがむくむくと成長を始め、すっかり硬くなった。先端を隠していた皮が少し広がり、赤く染まった亀頭が顔を覗かせる。鈴口からは、透明な液が滲み出てきている。一度舌を離して男の勃起に見とれていたが、直ぐにまたフェラを再開した。ぬめっとしているベロの先っちょで、ちょっぴり見えている亀頭部分を、時計回りに舐める。時々皮の下も舐めてあげると、男が気持ちよさそうな声を上げた

3

快感の熱に犯されている頭から口元へ、「舐め続けろ」とだけ命令を与える。男の舌が気持ちよすぎて、私は愛液を零しつつ舌を動かす。鈴口から溢れる先走りを、執拗に舐め取る
男が私の膣に舌を入れたのはその時だ。今まで大陰唇だけを舐めていた彼が、急に中を責めだしたのだ。驚きのあまり「きゃっ♡!?」と高い声を上げる
男の舌が私の中で、うねうねと蠢く。まるで意思を持った生き物のようだ。ペニスを挿れられた時とは全く違う。舌は波打ち、震え、のたうちながら陰部を刺激する
「だめっ♡ それだめっ♡」私はもう男の陰茎を舐めることが出来なかった。男の執念深いとも言える奉仕に、ただ耐えることしか出来なかった。私は竿から手を離しシーツを手繰り寄せると、その瞬間が訪れるまで目を閉じ続けた
男が膣を舐めながら、両手でお尻を撫でてくる。「それっ♡ 反則っ♡」と明確なルールが決まっていないにもかかわらず私は男の行為を指摘する。男の口と手は止まらず、どんどん私の性感を効率的に高めていく。もうだめだ。私は眉を八の字にして、心中で弱音を吐いた

4

やがて男が秘部を責めている最中に、何の脈絡も無く私は潮を噴いた。腰をびくんと跳ねさせ、膣口から液を飛ばす。恐らく男の顔にかかってしまったであろう自分の愛液を想像して、私は背徳的な興奮を覚えてしまった
―いっちゃったねぇ。気持ちよかった?―
「ふぅ…はぁ……うん…」
―でもレイセンだけいっちゃうなんてずるいなぁ。俺もいきたかったのに―
「ごめんなさい…」と男のせいにも関わらず私は律儀に謝った
男が私のお尻を軽く叩き、身体をどかすように命じる。私は絶頂で重くなった身体を引きずるようにして、男から離れた。ちらと男の顔を見やると、彼は濡れた顔面をタオルで拭いていた
―ここからは、レイセンが俺だけを気持ちよくしてもらおうか―
「ええと、何をすればいいの…?」
男はタオルを枕元に置くと、私の胸を人差し指でつんつんと突いてきた。「やっぱり…」と私は呆れた表情を見せる。男はパイズリをご所望だ
おっぱい、と男が幼児言葉を言ってから人差し指を私の唇まで持っていき、と口、と遅れて続けた
「え?」
―おっぱいと口でちんちんを気持ちよくして―

報告中断

経過報告37 その2

1

男がベッドに腰掛ける。私は床に膝を付け、胸を両手で持ち上げて男の陰茎を挟んだ
「それじゃあ始めるわね」
肘を支点にして腕を上下に動かす。谷間の陰茎が乳房で擦られる。胸を高く上げて、自由落下に任せるように落とす。乳房が下がる瞬間に男がぴくりと腰を動かし、谷間から亀頭が少しだけ現れた
取り敢えずはその動作をひたすら繰り返した。胸を上へ下へと揺り動かして、男のペニスを気持ちよくさせる。男は快感の息を漏らしながら、私の頭を撫でている。交互に、と男が指示を出した。言われるがまま私は胸を互い違いに動かし始める
こねこねと、勃起したちんちんをおっぱいでいじめる。2対1と言う劣勢に後悔したのか、陰茎が先走りの涙を流し出した。胸の間から軽い水音が鳴っている
―そろそろ、口も使って…―
男が私の頬を手のひらで撫でながら、そうおねだりをしてくる。私はパイズリを止め、谷間から亀頭部分だけを外気に触れさせる。鈴口が薄っすらと濡れている。一度男の顔を見上げてから私は舌を伸ばし、3対1の勝負をふっかけた

2

ぺろぺろ、ちろちろ。陰茎の先っぽを舌で舐める。パイズリをしながらと言う状態の為、亀頭以外の個所を舐めることが出来ないのだ。私は舌の筋肉を器用に使い、鈴口やその周り、包皮を集中的にいたぶった
男の呻き声が聞こえる。感じている証拠だ。私は得意げになりながら、亀頭のフェラを続けつつパイズリも再開させた。男の声がより悲痛なものへと変化する
「んっ…ちゅ…れろれろ…ちゅぅ…ちぅ…」
腕を動かし尚且つ口も動かすのは容易なことではなかったが、直ぐに要領を得た。おっぱいで竿を擦り、亀頭にキスをする。舌だけでなく唇も使い、男を楽しませてみる。首を曲げてペニスの先端に顔を近づけ、魚がぱくぱくと口を動かすように、私も柔らかい唇を使って先っぽを擦った。谷間で陰茎がひくついているのが分かる。先端の穴からまた汁が滲み出てくる。少しだけ亀頭を咥え、鈴口を舌先で軽くほじくる。勿論腕を交互に動かしてパイズリも忘れない
男が否定の言葉を口にし始めた。やめて、であるとか、駄目だ、といった台詞を連呼している。これは即ち、限界が近いのでそのままやめないでくれ、と懇願している言葉に意味に他ならない。私は舌の動きを速くしてみせた

3

男がうなされたような声で何かを言っている。奉仕しながら耳を傾けてみると、胸で、胸で、とうわ言を口にしているのが分かった。多分、もう我慢出来ないのだろう。私は口で亀頭を責めるのをやめ、激しく胸を揺すっってペニスを刺激した
ちゃぽちゃぽと揺れる乳肉の間から精液が飛び出てきたのはその時だ。男の身体全体が電気が走ったように痙攣すると、陰茎が膨らんで射精をした。亀頭を含めた竿全体が胸の間に隠れている状態での出来事だったので、私はいきなり谷間から出所不明の水が噴出したように見えた
最初に撃たれた精子は勢いがよかったのか、私の顎先にかかった。男は息を荒くして腰を震わせながら、余韻の射精をする。二発目がまた谷間から飛び出し、今度は鎖骨にかかる。三発目からは流石に勢いが弱まり、谷間をぬめらせる程度だった。私は男の射精が完全に終わったころを見計らい、陰茎から胸を離した
「いっぱい出たね…」男の顔を見上げて感想を言う。「これで満足してくれた?」
男は射精で疲れたのか何も言わなかったが、満足したかどうかは、鈴口から白い糸を流して頭を垂れている彼の陰茎を見れば、明らかだった

報告終了

経過報告38

1

26日目。男が持って来てくれた書物を読み漁る
朝食と一緒にお盆に乗せていた本を男が手渡してきた。これで少しでも時間を潰すことが出来たらいいが、と彼が頭を下げる。私は試しに一冊を手に取り捲ってみた。これは娯楽小説のようだ。他の本は参考書であるとか哲学書と言った興味深いものが並んでいる
「ありがとう。ただ…」私は広げた本を閉じて、俯いた。やっぱり戦時中だと言うのにこうして暢気に読書をしていて良いものなのだろうか、と罪悪感が沸いてしまう。自分が捕虜の身だということは重々理解しているが、それでも何かしらの役割を求めてしまう
―ただ、なんだい?―
男が首をかしげる。私は胸中でざわめく悔恨の念については教えず、代わりに「何か仕事はあるかしら?」と訊ねていた。「地上軍の為に働くのは御免だけど、せめて貴方の役に立つようなことをしたいわ」
男は首を振り、俺の言うことを聞いてくれるだけで十分さ、と私の手を取った。甲をまるで卵を扱うかのように優しく撫でる
そうか、と私は今まで気付けなかった心の変化に、今更気が付いた。こうして彼と共にいることは、本当は苦だったはずなのだ。でも今は、違う

2

それから男は部屋を出ていき、私は日中を一人で過ごした。男から借りた本を読み耽り、月と地上の価値観の違いに関心を抱きながら、夢中になって紙を捲った。目が疲れると読書を中断させ、今度は身体を動かした。良い汗をかき、タオルで肌を拭いてから、また本を読む。そうこうする内に夜が来て、男が夕食と共に現れた
―今日も一緒に食べよう―
男の提案を私は承諾し、二人でテーブルに向かい合い料理を口に運んだ。物を咀嚼し、飲み込んでから、昼に読んだ小説について語り合った。「中々面白い」と私が感想を述べると、男が嬉しそうな顔をした。あれは俺のお気に入りなんだ、とまるで自分がそれを書いたかのように胸を張りながら小説の魅力を熱弁し始めた。私は手のひらを向け、慌てて男の解説を止めた。「ま、待って、そこまでまだ読んでないから」
夕食を終え、まったりと食後の時間を過ごす。明後日はこれと言った仕事が無いから丸一日時間が空くかもしれない、と男が今後の予定を話した
「なら、明後日は私と一緒に筋トレでもする?」
私の意見に男は良いねと顔を縦に振った

3

食事も終わりあとは眠りに就くだけだが、まだ時間がある。恒例の、あの行為が始まる。男が先に椅子を立ち、服を脱ぎ始める。私も彼を追うようにしてシャツのボタンに指をかける
―今夜はどうしたい? レイセンの好きな体位でやろう―
衣服を畳んで互いにベッドに腰掛けた後、男がそう言ってきた。「わ、私の?」と声を裏返しながら訊き返す。「そんな…私の好きなやつだなんて…」
―恥ずかしがらなくてもいいから、言ってごらん―
頭から湯気が出てしまいそうだ。まさかこんな展開になるなんて。でも、言わなければならない。男に私の性癖を伝えなければ
「その……ぎゅって、抱き合いながら…キスするやつが…いいかな…」
―…対面座位のことか?―
目を伏せ、何も言わずに頷く
―よし、じゃあ今日はそれでいこう―
ああ、教えてしまった…。恥ずかしさからそのまま卒倒してしまいそうだ。しかし嘘を吐くわけにもいかない。今まで行った体位の中で、男と抱き合い、唇を触れ、身体を密着させる対面座位が、一番男の愛を受け取れる気がするからだ

4

「ふわぁ…♡ はぁ…♡ ふぅ…♡」
男の腰が上下に揺れる。ペニスが私の膣を掻き回す。私は恍惚とした表情で男にしがみつき、彼のほっぺに頬擦りをする。男も私の後ろに腕を回し、必死に腰を振っている。私は彼の陰茎が気持ちいいし、彼は私の膣が気持ちいい。二人で気持ちがいいことを続ける
「んぅ…好き…♡ 好きぃ…♡」
無意識にそう言っていた。男は腰の動きと息を荒くして、俺もだレイセン、とキスをしてきた。そう言えば、これが男に言う初めての告白だった。私は口の中に舌を入れられながら慌てて「んちゅ…♡ ちがっ…♡ これが…すきな、だけ…♡」と訂正をした
しかし男の耳には届いていないのか、俺もだ、俺もだ、と何度も舌を絡め、亀頭を子宮に突き上げてくる。困ったことになったなぁ、とどこか他人事のように思いながら、蕩けた頭でディープキスを続けた
それから直ぐに、子宮が熱くなった。もう男が射精してしまったらしい。あら早いとキスを止めてから、男の顔を見る。どうやら先ほどの「好き」という言葉が余程効いたらしい。男は幸福に満ちた顔で、膣内射精をしていた

5

レイセン、と男が竿をひくつかせて呟く。私は男の背中を撫でながら、「出ちゃったね…」と言った。男が恥ずかしそうに頷く
「そんなにちんちん気持ちよかったの?」そう訊ねると男が私を抱きしめ、だってレイセンがあんなことを言うから、と言い訳にも似た台詞を口にした
「あの…私が好きって言ったのは、この体勢で腰を動かすことが好きだから、だよ…?」
男が耳元で、じゃあ俺に好きって言って、と頼んできた。私は口を開いたが、驚くことに言葉が出てこない。愛してる、の五文字が口から発せられない。戸惑う私に気付いたのか、男が大丈夫かと訊いてくる
「大丈夫…だけど」何故言えないのだろうか。もう男のことが嫌いでもないし、こうしてセックスもしている。なのに、愛してると言えない。言おうと思えば言えるはずなのに、舌が動かない
そして気が付いた
今はまだその時ではないのだ。きっと彼とまぐわった時のように、時間が経てばその瞬間が訪れるのだ。そう直感的に感じ取った
私は男から腕と脚を剥がし、「また今度ね」と陰茎の根元を摘んだ。男は何か言いたげだったが、私が膣から柔らかくなったペニスを引き抜くと、愛おしそうに目を細めた

報告終了

経過報告39

1

27日目。二日続けて対面座位を行うことになった
夜が下りてきて、私たちは抱き合う。男がキスをしてきながら私のスカートのジッパーを下ろす。私は男に応じるようにして唇を舐め返す
―また好きって言ってほしい―
ベッドの中央に座り、身体を密着させた状態で男がそう言った。「言ってほしいって言われても、あれは貴方のことを好きって言ったわけじゃないからね…?」と困った声を出す
―それでも構わない。俺のことじゃなくてもいいから、している最中に好きって言ってもらいたいんだ―
「……貴方はそれで満足なの?」
―…勿論レイセンに、ちゃんと愛していると言ってもらいたいさ。でも今はまだ、俺に言うつもりはないんだろ?―
男がまた唇を付けてくる。ちゅっと軽く触れ合わせた後、再び彼が口を開ける
―新しい目標が出来た。今度は君に許してもらうだけじゃなくて、愛してるって言わせてみせる―
何とも頼もしい台詞だ。私は少し愉快になりながら、「簡単に堕とせると思わないでよ?」と挑発してみた。男はニヒルに笑い、捕虜を調教するのが拷問官の仕事だ、と私の髪を手で梳いた

2

腰を上げ、秘裂を指で広げ、そこにペニスを導く。「あぁ…♡」と悩ましげな声を上げながら腰を下ろしていく。子宮にペニスの先端がくっつく。太腿を震わせつつ、男の耳元で「ほら…自由にしていいよ…」と囁く
男は腰をグラインドさせ始めた。いつものように突き上げるのではなく、下半身を回して膣を掻き混ぜている。新たな快感に私は熱い息を零した。「はぁ…はぁ…ちゅっちゅる…れる…」男が餌を求める雛鳥のように口を開けたので、そこに舌を入れる。私の唾液を男が飲み込む。私も男の唾を飲み込む。下劣で汚らわしい穢れた行為を、私たちは夢中で繰り返す
ちゅぱぁ…と下品な接吻を止め、見つめ合う。男がまだ陰茎を軸に腰を回転させているので、私は瞳を揺らしながら男の顔を眺めた
―どう? こうして腰を動かされるの、好き?―
「…うん…好き…」視線を逸らし、小さな声で答える
―じゃあ、ちんちんを突き上げるのと、どっちが好き?―
「……そっちの方が…好き…かも…」
消え入りそうな声を出しながら、俯く。恥ずかしさで顔が焼けそうだ。男は幸せそうに頷くと、腰を縦に揺らし始めた

3

先ほどまで大人しかった陰茎が本性を現したかのように暴れ出す。細い入り口を突っつかれ、子宮が悲鳴を上げる。このままでは持ちません、と私の頭に助けを呼んでくる。しかし理性は既に白旗を掲げていた。「あぁぁ…それすきぃ…♡」と情けない声を上げ、子宮からのSOSに見て見ぬふりをする
男とキスをする。絡み合った舌から送られる快感が、もう降参したはずの理性を更に責め立てる。もうやめて、と私の冷静さが悲痛な叫びを上げるが、やめないで、と私の本能が強く押し付けてくる。途方もない快楽に涙を流しながら、男と一緒に腰を動かした
男が強く私を抱きしめてくれる、これが好きだ。口内でのたうつ舌の感触も好きだし、膣を刺激する陰茎の動きも好きだ。でも何より、私を沢山愛でてくれる、男の愛が大好きだ
気付いた時には果てていた。腰の痙攣が止まらず、男にしがみつく。男も追従するように射精して、私をぎゅっと抱き寄せる。長い間、二人で絶頂の波と戦った
「好き…好きなの…」瞼を閉じ、うなされたみたいにその言葉を繰り返す。「大好き…」
男は精子を子宮へ送りながら、黙って私の頭を撫でさすった

報告終了

経過報告40 その1

1

「はいっ、スクワット終了ー」
後頭部で結んでいた手を外し、楽な姿勢をとる。男は息を切らせながら額の汗を拭っている。「ほらほら、何スクワット300回くらいで疲れてるのよ。次は腕立て伏せ500回行くわよ?」
28日目午前。この日は前に言った通り、男が一日中暇な日だった。約束通りに二人で筋肉トレーニングを行っているが、男は思いのほか体力が無い。現に腕立てを200回越えたところで、彼の腕はぷるぷると震えていた。「男のくせに情けないなぁ」と下品に笑って嫌味を言うと、俺は君と違って地上の人間なんだ、と掠れた声で言い訳をしてきた
「関係ないわよそんなこと。それでも貴方軍人なの?」
―俺は拷問官だ―
「捕虜に体力で劣る拷問官なんて、とんだお笑い種ね」
くすくすとほっぺを膨らませて男を馬鹿にする。男はむっとした顔をしたが、玉兎は毎日こんなトレーニングをしているのか、と訊ねてきた
「いいえ、ここまで身体を動かすのは私くらいね。なんせ私はエリートだから」胸を張って誇らしげに歯を見せた
―その割には無駄な肉が多い気がするなぁ。胸とか二の腕とか太腿とか―
「うるさいわねぇ」

2

腕立て伏せ500回を終えた。流石にこの回数を休みなしで続けたら息が切れる。私はコップの水を一口飲んでから、腕を揉み解した。男の方は途中休憩を挟みながら何とか500回をやり遂げた
「よーし次は背筋200回!」
―…何か今日のレイセンはいつもより元気だね。そんなに筋トレが好きなのかい?―
男に指摘されて「そ、そうかな?」と慌てて取り繕った。この時の男の読みは半分当たっていて、半分間違っていた。私がこの日元気だったのは筋トレをしていたからではない、男が一緒にいてくれたからだ
最近は男の仕事が忙しくて、夜を除き長い時間二人で部屋にいられなかった。日中は孤独と退屈との戦いだ。本を読んでいる時や運動をしている時はそんな戦いとおさらば出来るのだが、油断をすれば直ぐに奴らがやって来る。その度に不安に苛まれる。だから、男が昼もずっと傍にいてくれることが嬉しかった。ただこの事は男には秘密だ
「さあ、背筋をやるからうつ伏せになって」
床に身体の全面を付ける。目の前で男も同じ姿勢をとる。せーの、と声を合わせて背筋を始めた
―レイセンは胸が大きいから背筋とか楽そうだよね―
「うるさいわねぇ」

3

背筋も無事に終え、全身に程良い疲れを感じながら立ち上がった。男の方はゆったりとしたペースでやっているので、ようやく半分を越えた所だ
「…ねぇ、今日みたいに一日中暇な日って、また来る?」
私は一早く男に訊ねてみた。まだ今は昼の12時も過ぎていないが、それでも午後が来て夜が下り、必ず明日を迎えてしまう。そうなるとこうして男と一日中いられる時も終わってしまう。楽しい時間はいつまでも続かないと理解しているが、それでも可能であればまたこの一時を体験したい。「どうなのかな?」と男の答えを待つ
―今の所、時間がある日の予定は無いね。ただまぁ、今は一種の停戦状態だから、仕事の方に熱を入れなければ、今日みたいにレイセンとずっといられるけど―
「その仕事って、本当に大事なことなの?」
―ああ、大事で、大切なことだ―
「そっか…」
―でも、レイセンが暇で辛いと言うのなら、一週間に一度はこういう日を作っても大丈夫だよ―
「えっ本当!?」
男は背筋を終え、苦しそうな顔で背中を撫でながら、レイセンさえ良ければ、と立ち上がった
「…うん、良いよ…」
私は嬉しさと恥ずかしさのないまぜになった声で、頷いた

4

スクワット、腕立て、背筋と来て、次は腹筋だ
「じゃあ次は腹筋500回やってみよう!」
―…レイセン…ちょっと休もう…―
泣き出しそうな男の顔を見て、嗜虐心が湧き上がってくる。「ん〜? もう辛いの〜?」
―そうじゃないけど…いや、そうじゃ…―
「なら早く腹筋をするわよ♪」
諦念を滲ませる男を無理やり床に座らせる。男の両足に尻を乗せ、「さあ500回、休みながらでも良いからスタート!」と笑顔で強要した。男は疲労からか壊れたような笑みを浮かべて、スローペースで腹筋を開始した
楽しかった。本当に楽しかった。きっと恋仲の異性と過ごすというのは、こんな感覚に近いんだろうと妄想したりもした
ただこの後、身をもって思い出すことになる。私は彼に調教される捕虜だということを。少しでも性的な虐待を受けてしまえば途端に堕ちてしまう、哀れな兎だということを
そして、長い長い一日が始まった

報告中断

経過報告40 その2

1

男は腹筋を始めてから丁度30分の時間で500回に辿り着いた。頬に汗を流し、手のひらでお腹をさすりながら、苦しそうに息を吸っている
「はいおしまい! 時間はかかったけどちゃんと最後までやれたわね」
―お、お腹が…―
「普段から鍛えてないからそうなるのよ。じゃあ次は私ね」
背中を床につけ、膝を曲げる。男が私の足に尻を乗せ、膝の下をくぐらせるようにして胡坐をかく。きっちりと固定出来たところで私は宣誓した。「ふふん、30分以内にクリアしてやるんだから」
―じゃあ30分を越えたら、俺の言うことを聞いてくれるかい?―
「構わないわよ」
これが失言だったことは言うまでもない。この時、男のほくそ笑む顔を見ることが出来ていれば、こんな安請け合いはしなかっただろう
両手を頭の後ろで組み、「スタート」と短く言ってから腹筋を開始した

2

「1、2、3…」
口の中で数えながら腹筋を行う。自身の胸部が膝にくっつくまで上半身を上げ、背中の全面が床につくまで身体を下げる。これを黙々と繰り返していく
今日はとても調子が良い。このペースなら300回までは難なく行けるだろう。自然と笑みを零しながら上半身を上下させる
その時、太腿を男に撫でられた。按摩すると言うより指先でくすぐる感じだ。「ちょ、っと…」と顔を歪めながら文句を言う。「ちょっと、やめて」
男は我関せずと言った表情で腿を触り続ける。痺れを切らし、男の肩に捕まって睨みつける。「ちょっと、いい加減にしないと怒るわよ?」
―別に怒っても構わないさ。そうしている内に制限時間が過ぎていくだけだ―
「こんな妨害行為は無しに決まってるでしょ。卑怯だわ」
そう言うと男は怖い顔をしながら、次の台詞を吐いた
―妨害禁止なんてルールは無かった。それに、勝ちが決まってるような勝負を持ちかけてきたのは君の方だぞ。これくらいのハンデは当然だ―
「だ、だからって…」
―捕虜の君が、負けたらどうなるか分かってるよな?―
ゾクリと来た。男の言葉に身体が冷たくなる。それから、熱くなる
慌てて私は腹筋を再開した

3

早く腹筋を終わらせなければ。でないと取り返しのつかないことになる。私は奥歯を噛みしめながらペースを上げた
男がお尻を撫でてきた。五本の指の腹で臀部を這わせてくる。嫌らしいくすぐったさに脚が震えたが、頑張って身体を動かす
―これならどうだい?―
男の指が、パンツを引っ掛けた。「そこは」と振り絞るような声を出す。そこは、絶対駄目だ
するするとパンツが太腿を上がっていく。スカートの裾から、白色の下着が登っていくのが見える。恥ずかしさから目をつむり、無心で腹筋を行う
―ほら、ここからだとレイセンの大事な部分が丸見えだ―
「いわ、言わないで…」
目尻をほのかに濡らしながら床に背中を置く。内股にして秘部を隠そうとするが、男が両脚を広げてしまう。私は一秒でも早く終わらせようと身体を起こすが、無理なペースで続けていたせいか息が切れてしまった
―おやおや随分と調子が落ちてしまったようだね。このままだと500回を越える前に30分経っちゃうよ?―
分かってる。分かってるが、身体が動かない。背中に鉄の棒をくくりつけられ固定されているみたいな感覚だ。私が無言で苦しんでいると、男は次の一手に移った

4

くちゅり、と男の中指が秘裂の中に入った。「ひっ!?」と驚きの声を上げる
―どうしたの? 早くしないと本当に負けちゃうよ?―
落ち着いた男の声とは裏腹に、中指が膣を突き進んでいく。私は頭から手を離し、男に向かって伸ばした。「待って! それはほんとに、駄目だって…!」
くちゅくちゅっと中指が暴れ出した。「あぁぅ!」と背中を反らして大声を出す。予想していなかった膣への愛撫に、子宮が疼く。愛液が指をつたって外に流れる
頭がくらくらした。こんな状況で腹筋を行えるわけがない。最早私は勝負を諦め、男の責めを甘んじて受け止めた。思考は筋肉トレーニングのことから絶頂のことへと移り変わる
人差し指も入ってきた。膣の中で二本の指が暴れまわる。「あぁぁっ♡」と口を大きく開け、私は絶頂……出来なかった
男が私の果てる寸前で指を抜いたのだ。誰もいなくなった膣が寂しがるように愛液を垂らす
―流石にいかせちゃったら身体が疲れて絶対に勝てなくなるからね。俺は優しいからタイムリミットがくるまではほどほどに弄ってあげるよ―
そんな、と絶望に満ちた顔をする。男が再び膣に指を入れる。私はまた背を反らせ悲鳴を上げた

5

「もぅっやめてっ♡ わたしのまけ、まけだからっ♡」
口の端から涎を垂らしながら男に懇願する。男に陰部を責められてから、私は一度も腹筋を行えなかった
―諦めちゃだめだ。まだ君が勝てるチャンスがある―
膣中で指を滅茶苦茶に動かしながら、男が無責任な応援をする。ああ、また来た、くる、いくっ。しかし男は絶頂のタイミングを見計らって、その一歩手前で指を抜いてしまう。あともう少しで苦しみから解放されるはずだった膣が、寸止めによって痙攣をしている
「あとっ、あとなんふんなのっ♡」
5分だ、と男が時計を見つつ秘裂を広げて指を入れる。あと5分でこの苦しい快感から抜け出せる。私は力を振り絞って上半身を起こし、両手を男の肩に伸ばして掴まった
男の顔が見えた。冷酷で捕虜をいたぶることを至上の悦びとしている最低の顔だが、ああそんな、やっぱり彼の目は、私を心から愛している目だ。それが私の精神を狂わせてしまう
30分経った。男が手を目の前に持ってきて、濡れた指先を見せびらかす。結局最後までいかせてくれなかった
―俺の勝ちだ。それじゃあ、ここからは俺の言うことを聞いてもらおうか―

報告中断

経過報告40 その3

1

男との勝負に負けてしまった私は彼の言うことを聞くことになった。まず最初に脱がされていたパンツを履き、立ち上がる。絶頂寸前で愛液が滲んでいた下部に下着を触れさせるので当然シミが出来てしまったが、男の命令には逆らえない。そして男は私の背後に回り、後ろから抱き着いてきた
―今から精神トレーニングをやろう―
「…精神トレーニング?」
―レイセンは筋トレに関しては優秀だと思うけど、精神面はまだ弱い。もし悪い拷問官に捕まってしまったらすぐに心が折れてしまう。だからそうならない為に今から俺と一緒に精神のトレーニングをしていこう―
「既に悪い拷問官に捕まっちゃってるんだけどなぁ…」私は露骨な溜息を吐いてから「で、どんな練習をするの?」と訊ねた
―まずは簡単なものから。今から君に性的愛撫を行っていく。その過程で制限時間以内に床に崩れ落ちてしまったらトレーニング失敗。次はもっと過酷なトレーニングへと移行する。もし制限時間をクリアすることが出来ればそれで訓練終了だ―

2

「性的愛撫ねぇ…」いくらか顔を熱くしながら呟く。「私は何時間耐えればいいの?」
1時間だ、と男が答える。ふむ、と私は顎に手を当ててから、「でもこれって精神トレーニングじゃなくて、ただの我慢じゃない? 性的快感とか肉体的なものだと思うし」
―言い忘れてたけど、今回は本当に尋問を行っているって言うていでやるんだ。つまり、君は何か大事な情報を持っていて、それを言ってしまってもアウトだ。その代わり自白すれば直ぐにトレーニングは終わる―
「…? 早く終わるのなら、訓練が始まって直ぐに言っちゃうわよ?」
―言えればね―
男がシャツのボタンに指をかけた。尋問がスタートしたのだ。私は幾ばくか緊張して男の手を見下ろす。耳元で男が口を開いた
―玉兎隊のレイセン。お前に問おう。お前は俺のことが好きか?―
「えっ」思いもよらなかった質問に思わず声を上げる
―俺を愛しているかどうか、正直に答えるんだ―

3

汗で濡れたシャツのボタンが全て外され、胸が零れ出る。男が下から持ち上げるようにして揉み始める。さあ答えろ、と男が耳元で囁く
成る程、男の狙いはこれだったのか。つまり私から愛の言葉を引き出させたいのだ。ただ一言「愛してる」と男に言えば、この下らない茶番もさっさと終わる。しかし私は彼に対して「絶対に言わない」と啖呵を切っていた
そもそも彼の事が好きか嫌いかと訊かれれば、決して嫌いではない。けれど今はまだ男に対して告白をしたくはない。まだその時ではない
ではいつになったら告げるのかと言われれば、この月面戦争が終わってからだ。それまでは、男に愛しているとは言いたくない。なので結局この尋問は、私が耐える以外に終わる道はないと言うことだ
男の手つきが更にいやらしくなる。人差し指で乳首を掻き、まるで牛の乳を搾るかのように指を蠢かせる
―正直に話せ。でないともっとひどいことをするぞ―
「ふんっ、やれるならやってみなさいよ」
それにしても今思い返せば、わざわざ強気な台詞を吐かなくてもよかったのではなかろうか。認めたくはないが、私もこの訓練をどこか楽しんでいたのかもしれない

4

もにゅっもにゅっと眼下で自分の胸が変形する。桃色の突端が俄かに硬くなり始め、そこを人差し指と中指が襲う。二本の指で乳首を挟み、また乳房を揉みしだく。私は口をへの字にし、スカートの裾を両手で握って耐えた
―意外としぶといね。じゃあ次は下に行こうか―
男は片手で乳を揉み続けながら、もう片方の手をするすると下へと動かしていった。指先がスカートを這い下り、裾の所で内側へとUターンをする。そして今度はパンツのウエスト部分へ移動し、中へ指を滑り込ませた。無意識に内股になる
男が秘裂をなぞりだした。流石にそこを責められたら我慢出来ない。「あっあぁ…♡」と吐息を漏らして強く目をつむった
―さあ言うんだ。俺を愛してるかどうか、早く―
「い…わ…ないっ…♡」
膣から刺激が走った。男が指を挿れたのだ。私は膝を震わせながら嬌声を大きく上げた

5

男の指から愛液が垂れ落ちる。男は指を巧みに動かし、私を絶頂へと導いていく。私は不格好な形で男の腕にしがみつきながら、何とか崩れ落ちないように努力をする
だがこのまま愛撫を続けられて絶頂してしまえば、崩落は必至だ。懸命に快感を遮断しようと試みるが、快楽は休むことなく陰部から送られてくる。そしてついに頂きが見え始め、もう終わりだと私は諦念から目を閉じた
しかしそこで男が指を止めた。あともう一歩で山頂に手が届くのに、身体を固定されてしまった。私は息を震わせながら男の腕を強く握る
―愛してると言え。言えばこのまま気持ちよくさせてやる―
そうだ男にはこの手があった。寸止めをすることにより捕虜を苦しませる禁断の一手だ。私は歯ぎしりをしながら「言わない…!」と断言をする
男の中指が再度動き出す。愛液を掻き混ぜるようにして膣を擦る。膝ががくがくと笑う。「いやだ♡ いいたくない♡」と男の横暴に必死に抵抗する
またピタリと手が止まる。絶頂間近だった私は天を仰ぎ、震えた。この尋問があと30分続くのだ

6

もう言ってしまおうか。男の執拗な尋問に私の心は折れかけていた。度重なる寸止めで理性は崩壊し、膣は溜められた快感で決壊しかけている。もう我慢なんて出来ない。私は男を好いているのだ、恥ずことなどなく告白してしまおう
「あ…♡ あい…♡」
だかそこで不運が重なってしまった。尋問が始まってからもう直ぐ1時間が経過しようとしていたので、男が本格的に指を動かし始めてしまったのだ。明らかに今までの愛撫とは一線を画す中指の振動に、言葉が詰まってしまった。「ああっ♡ あああああ♡」
ぷしゃあ、という情けない音と共に長かった尋問が終わった。私は膝を床につけ、痺れる股を手で押さえながら、腰を震わせてベソをかいた
―あーもうちょっとで合格だったのに、座っちゃったね―
深呼吸をしたまま男を見上げる。目には涙が溜まり、耳がぺたんと折れてしまう
―精神トレーニングを続けるよ。レイセンが持っている情報内容は勿論、俺を愛しているかどうか、だ―
男が私の腕を掴んで立ち上がらせる。尋問は、まだ始まったばかりである

報告中断

経過報告40 その4

1

2回目の尋問が始まった。私は両手を縛られ、身動きの取れない状態でベッドに横たわっていた
―いい加減白状してもらおうか。正直に話さなければもっと酷いことになるぞ―
男がこちらを見下すような目で、凄みのある声を出す。ただこれが演技だと言うことは私もちゃんと分かっている。ようするに、まあ、そういうプレイなのだ
「い、言うわけないでしょ…」私も捕虜さながらの振る舞いを演じてみせる。男は私の返答に笑みを零すと、後ろから何かを取り出した。白くて胴の長いコケシのような物だ
「なっ、何よ…それ」
彼は黙ってコケシの頭を私の股間に当てるとスイッチを入れた。次の瞬間、コケシの頭が高い駆動音と共に振動し始めた
「あっ! いやぁっあぁ!」
―これは電動マッサージ器さ。軍の疲れを取るための道具だけど、こういう使い道もある―
絶頂直後の秘部を揺すられ、私は苦悩の表情を浮かべる。息を荒くし、腰を浮かせ、機械的に送られる快感に身をよがった
カチッと男が電源を切る。責めが終わり、私は尻をベッドに付けた。が、直後にまたスイッチを入れられ、振動が戻ってきた。再び腰を上げ、熱い息を吐き出した

2

―制限時間は今回も1時間だ。1時間以内に絶頂したら、次の尋問へ移る。1時間を耐えきるか正直に白状すれば尋問はすぐに終わる―
「うぅぅぅぅっ♡」
歯を食いしばり、涙でぼやける視界の先にいる、男の顔を睨む。男がぐいと強く電マを押し付ける。パンツ越しの振動が身体全体に伝わり、脳がくらくらと揺れる。「あっああ! いくっ!」
カチッ。無慈悲なスイッチ音が部屋に響く。機械の振動が止まり、刺激が送られてこなくなる。宙ぶらりんになってしまった快感をなんとかしようと自分から腰を振って電マに陰部を擦り付けるが、絶頂寸前だった興奮が徐々に下がっていってしまう
―こらこら駄目じゃないかレイセン。いってしまったら君の負けになるんだよ?―
「ふー…! ふー…!」
カチリ。振動音が思い出したかのように鳴り響く。沈んでいた腰が一瞬で浮かび上がる。「うぁぁ♡ いやあぁぁぁ♡」
―さあ、早く愛してるって言うんだ。そうすれば全て楽になる―
全身から汗が噴き出してくる。パンツは既に膣液でぐっしょりと重くなっている。真っ赤になった顔を歪ませ、私は叫んだ。「言わない!」

3

―あと10分でクリアだ。さあ頑張れ―
乳首を舐めながら男が応援をする。私は涎を垂らし、電マの快楽と戦った。しかしこの戦いはあまりにも一方的で、私が嬲られるだけだ。自分の非力さを恨みながら涙を流す
「ううう♡ いかっ、いかせるならっ♡ いかせてよぉっ♡」
男の寸止め調教に私の理性は崩壊寸前だった。さっさと「愛してる」と言ってしまえばいいのに、何を私は意固地になっているのか。でも、どんなに辛くても、それだけは譲れなかった
男が一旦電マを離し、パンツに手をかけた。体液で濡れた下着を器用に脱がせる。そして今度は、直接電マを大陰唇に押し付け、スイッチを押した
布一枚で守られていた柔肌を、刺激が襲う。私はシーツを掴んで仰け反り、身体を震わせた。「あぁ! だめっ! いくっ!」
カチッ。振動が止まる。秘裂から愛液が滴り落ちる
―あと8分―
「いゃ…♡ もぅやだ…♡」
絶頂の快感が治まったのを見計らい、男がスイッチを指で押した。耳にまたあの駆動音が入り込む。浮かんだ腰から心地よい震えがやってくる
「うぅ…もう…♡ いきたい…♡ いきたいよぅ…♡」

4

残り1分。男が私の唇を舌でこじ開けてきた。「んむっ♡」と咄嗟のことに対処が遅れる。男が舌で口内を蹂躙し始める。股間からは電マの揺れが絶え間なく送られてきている。今しかない、と私はルールのことを忘れ、ただひたすら絶頂のことだけを考えて、男の口を貪った
蕩けるようなディープキスと、マッサージ器による陰部への愛撫。これで絶頂を向えない理由はない。びくんっ、と身体を波打たせ私は潮を噴いた。バイブの音に紛れるように、ぴしゃっ、と水の噴き出る音が聞こえる
男が電マの電源を落とし、口を離した。足りなくなった酸素を取り込もうと、肺が忙しなく動く。男は電マを顔の前まで持ってくると、濡れた先端部を指さした
―またいっちゃったね。約束通り次の尋問を始めよう―
「やだっ…」私は目を潤ませて必死に首を振った。「もう尋問は、いやっ…」
―駄目だよ。レイセンがちゃんと愛してるって言うまで、尋問を止める気はない―
「壊れる…壊れちゃうから…」
―大丈夫。壊れる一歩手前でトレーニングを終わらせるから―
男は恐ろしいことを口にしながら、とても優しく私の頬を撫でた

報告中断

経過報告40 その5

1

男が仰向けになっている私に覆いかぶさってくる。軽く体重を乗せてこちらの身動きが取れないようにし、キスをしてくる
私の唇は力なく開き、彼の舌の侵入を許した。二回目の絶頂で疲れたのか粘っこい唾液が口内に溢れていて、それを男が舐め取っていく。穢れきった行いに脳を焼かれながら、私は抵抗せずにベロを絡ませ合った
男が口を離す。私の反応が弱いことに気付いたのか、心配そうな顔をする
―…大丈夫? 流石にやりすぎたかな…―
「だから…もう壊れちゃうって…言ったじゃない…」
掠れた息を吐きながら眉を困らせる。男は私のおでこに手を当てた後、私の両手を封じていた拘束を解いた
―じゃあ今日の訓練はここまでにしようか。よく頑張ったよ―
途端に安堵が全身を包んだ。熱くなっていた頭が冴え始め、鈍い疲れが鋭く背中を引っ張った。私は男の後ろに両腕を回し、一度小さく口付けをした
「…私が捕虜で、貴方が拷問官ってことは忘れてないから……エッチなことをする時はもっと普通にしたいな…」
そして自分から男の口に舌を入れ、尋問という建前抜きのディープキスを再開した

2

息を止めていられる時間が終わり、キスを中断する。二人で忙しく呼吸をしながら見つめ合う
「なんだか今日はやけに意地悪だったね…。何かあったの?」
―レイセンが俺のことを好きって言ってくれないから…―
どうやら彼はそのことをずっと気にしていたらしい。不適に微笑んでいるが、目の奥はどこか不安そうな瞳を湛えている
―君は俺の行いを許してくれると言ってくれたけど、やっぱり俺はそれだけじゃ満足出来なかった。君にちゃんと愛してもらいたいんだ―
暗くなっていく男の声にいたたまれなくなり、私はそっと彼を抱き寄せ、耳元で小さく伝えた
「貴方のことが嫌いだったら、私からキスをするような真似はしないでしょ?」
男は何も言わずただ黙っていたが、暫くすると苦しそうな声が耳に入ってきた。手負いの獣が弱っているところを見せつけまいと虚勢の唸り声を上げているような、そんな感じだ。そして、この謎の声の正体が分かった時、私は困惑した
男は嗚咽しているのだ。限りなく音を抑えているので分かり辛いが、確かに泣いている。私は唐突な出来事に当惑し、どうにか彼の気を紛らわそうと髪を軽く梳いてあげた

3

男の泣き声は直ぐに止み、いつもの飄々とした顔を私に見せた。目には涙の痕もない
―嫌いじゃないなら、愛してるって言ってくれてもいいじゃないか―
「それとこれとは話が別だもん」私は口を三角に結んでぷいとそっぽを向いた。男がほっぺを摘んでくるので「ひゃめなさいひょ」と苦言を呈する
「ちゃんとその時が来たら言ってあげるから」
―その時って、いつ?―
「その時はその時よ」
何だそれは、と男は納得のいかない表情をしながら私の鼻を摘んだ。「やえなさい」と鼻声で抵抗をする
「それよりも、身体が汗とかでびしょびしょだからお風呂に行かないと。早くどいてくれる?」
男は言われた通りに私の上からどこうとしたが、動きを止めて思案顔になり、一緒に入ってもいいか、と訊ねてきた
「えっ」
―俺も汗かいたし、レイセンと一緒にお風呂に入りたい―
予想していなかった申し出に思考が少しの間止まる。しかし直ぐに脳は活動を始め、私の口を命令通りに動かした
きっと今男の頼みを断ったらどいてくれないだろうし、別に彼と共にシャワーを浴びるのは嫌ではない。なので、「…構わないけど…」と了承していた

報告中断

経過報告40 その6

1

男とは食事や添い寝をした仲だが、共にお風呂に入るのは今回が初めてだった。既にベッドの上で裸を見せ合っているはずなのに、何故だか妙に恥ずかしさがこみ上げてくる
浴室のスペースは二人でも入ることの出来る広さだ。まず私が中に入り、次に男がタイルを踏む。私はそのままの流れで風呂椅子に腰を下ろした
―まずは俺が髪の毛を洗ってあげるよ―
男がシャワーのノズルを掴むとお湯をかけてきた。頭から温水の感触が伝わってくる。全身の汗が流れ落ちていき、自然と笑みが零れる
「髪長いから、洗うならちゃんと気を遣ってね?」
シャンプーを手のひらで伸ばしている男に釘を刺しておく。大丈夫、と男が快活に返答すると、私の頭をわしゃわしゃと掻き始めた。髪の間で泡が膨らんでいくのが分かる
男は頭皮を揉むように洗うと、今度は後ろ髪を梳くようにしてシャンプーを馴染ませていった。思いのほか上手な彼の洗い方に一人舌を巻くばかりだ
目をつむり、暫く男のシャンプーを堪能する。こうして人に自分の頭を洗ってもらうのはいつ以来だろうか。懐古の情に心を浸しながら、私はうつらうつらと船を漕ぎだした

2

かなり念入りに髪を洗ってもらえた。半分夢を見ながら頭部へのマッサージを楽しんでいた私は、シャワーの流れる音で目を覚ました。男が丁寧に髪を梳きながらお湯をかけ、綺麗に泡を流していく
「ふぅ…ありがとう。さっぱりしたわ」
―我ながら上手くシャンプーできたと思う。よし、次は身体を洗おうか―
えっと男の方を振り返る。無意識に胸と股間を腕で隠している自分がいる。「いや、これ以上は悪いし、あとは自分でやるから」
―いやいや折角二人で入ったんだから洗いっこをしなきゃ損だ。大丈夫、綺麗に洗ってあげるから―
「うぅ…」
頑なな態度を示す男に根負けし、前を向く。男が石鹸をタオルに包み、お湯をかけて泡立てる。まずは背中から始めよう、という男の声を聞き、私は後ろ髪を集めて背中にかからないよう一纏まりに結んだ
男が泡まみれのタオルを背につける。一瞬肩が強張ってしまったが、直ぐに緊張が治まる。男は両手でタオルを掴み、上下にゆっくりと擦り付けた
―どう、気持ちいい?―
「うん、気持ちいい」
私は正直に感想を述べた。それから「捕虜の身体を洗う拷問官って、なんだかあべこべだね」と今更のように笑った

3

一通り背中を洗い終わったのか、男が手の動きを止めた。「ありがとう」とお礼を言ってシャワーに手を伸ばそうとしたが、いやまだ前面が終わってない、と言う男の台詞に身体を固くした
「い、いや、前の方は自分で洗えるからいいってば…」
―折角だし洗おうよ―
そう言うと男は私の返事を聞く前に、私のお腹を手のひらで撫で始めた。腹部と手との摩擦で泡が広がっていく。「ひゃっ!? タオルは!?」
―下手にタオルを使うと肌を傷つけちゃうから、ここからは手を使うね―
男の両手がお腹の上を這いまわる。泡のぬめりに快感を覚えてしまい、自然と内股になる。徐々に男の手が身体を登っていった。「やっぱりー」と私が言うタイミングと男が胸を揉み始めるタイミングが同時だった
泡だらけの手が、おっぱいを責める。下から潰すように持ち上げると、上でぱっと手を離す。ぶるんっ、と泡のついた乳房が揺れる。かと思えば指先が谷間に侵入し、胸の内側を執拗に洗う。そして乳首を真上から人差し指で押し、ほじくるように指を回転させる。「やめてよぅ…」と言う私の抗議も虚しく、暫くそうやって胸を弄られ続けた

4

おっぱいを触ることに満足したのか、男の両手は身体を下りていった。「やっと終わった」と安心するのも束の間、今度は太腿の内側を指先でなぞりだした。「あっ」と声が出て、腰が少し前に動く
男の手が動き続ける。途中泡を追加し、太腿と恥骨の周囲を撫で洗う。明らかに特定の部位を避けており、その他意が見え見えの男の行為に私は涙を吞んだ
―どこか洗ってほしい部分とかある?―
いけしゃあしゃあと男が言う。「別に無いもんっ」と気丈に振る舞うが、男の指が秘裂をかすめ、「ひゃっ!」と驚いてしまった
―本当にないの? 気持ちよく洗ってあげるよ?―
流石人心掌握に長けているだけのことはある。私は降参の意を示すため両手を上げ、「じゃあ、その、股も洗って…」と悔しさを滲ませた回答をした
男が片手を大きく開き、陰部を手のひらで覆った。そしてそのまま揉みしだいた。「うんっ♡」と息を吞み、手と陰部の間から零れ出てくる泡を見下ろす。「気持ちいい…♡」
ここは念入りに洗わないとねぇ、と男が手を振動させた。先ほどの電マと似たような動きに、私は背を反らせた

5

性的快感が下部から送られてくる、と同時に、マッサージ特有の疲れを癒すような快感も送られてくる。普段の性交渉のような鋭くて突き放されるような快楽と違い、日向でうたた寝をしながら頭を撫でられるような気持ちよさに、私は恍惚となってしまった
「んぅ♡ もっと♡ もっと洗って♡」
浴室に満ちている湯気に包まれていることも相まって、まるで低反発のクッションに身を沈めているような感覚だ。私は目をとろんとさせて、男におねだりをしてしまう。「ちゃんと…♡ あっそこ、そこ洗って♡」
男が手首の動きを速め、大陰唇を軽く叩きつけるようにして振動を送る。大量の泡が空気を取り込み、ポンポンポンポンと軽やかな音が鳴る。私は腰を鋭く震わせ、軽くいってしまった
ひくつく秘裂から男が手を離す。これでしっかり洗い終わったはずだ、とお湯で身体の泡を流し落とした
「ん…ふぅ…♡」泡の消えた股間部を見下ろす。若干の愛液が垂れていたはずだが、泡と一緒に流されたのか綺麗な肌をしている。一息吐いてから男の方を振り返る
「今度は、私が洗ってあげる」

報告中断

経過報告40 その7

1

私たちは場所を交代し、男が椅子に座った。シャンプーの液を手で伸ばし、男の頭を洗う
「どう? ちゃんと出来てる?」
いいね、と男は満足そうに頷いた。指の腹で頭皮を擦っていく。私よりも髪の毛が短いので早く終わりそうだ。粗方頭に泡を馴染ませてからお湯をかけた
次にタオルを手に取り石鹸を擦る。十分な量の泡が出たことを確認し、男の背中を摩擦し始めた
「うんしょ、大きいから大変だなぁ」広い背部を満遍なく洗いながらしみじみと眺める。女の私と比べて、まさに男と言う感じがする背中だ。肌も私よりも硬く、がっしりとしている。もう少し強めに擦った方がいいだろうかと思い直し、腕の力を増やした
―人に背中を洗ってもらうなんていつ以来だろうなぁ…―
奇しくも彼は私と同じようなことを考えていたようだ。「最後に洗ってもらったのはいつ?」と訊ねながら手を動かす
―子どもの時だね。父親と二人で入ってよく互いの背中を洗いっこしたものだよ―
「じゃあもしかして、女性と一緒に入るのは初めて?」
家族以外では初めてだ、と男が答えるので、どうしてか私は嬉しくなってしまった

2

背中も無事に洗い終わりシャワーで泡を流す。次に男の前へ移動して、「こっち側も洗わないとね」と彼の胸部をタオルで擦った。布地の間から泡が零れ落ちる。自然と目線が下へ向き、男の象徴を目で捉えてしまった。ぴんと勃起しているソレから目を逸らし、「何で勃ってるのよ…」と戸惑いの声をぶつけた
―何でって、レイセンの尋問を始めた時からずっとこうだよ。ずっと我慢してたんだ―
「…言っておくけど、私は洗うだけで汚れるようなことはしないからね?」
分かってる、と男が首を縦に振るので、私も身体洗いに集中を向ける。まずは胸を泡まみれにし、その後は腕、腹、腿、と洗う個所を下げていく。敢えて男性器には触らなかった
男の足を擦った所で、ここも洗ってほしい、と彼が股間を指さした
「……分かった…」
タオルを持った手を下部へと伸ばしたが、男に手首を掴まれてしまった。「え、何?」と顔を見上げる
―タオルだときちんと洗えないから、素手で洗ってほしい―
「え〜?」あからさまな不満顔を作り、頬を膨らませた。「はぁ…もう…しょうがないなぁ…」

3

泡だらけの手で陰茎を掴んだ。高く屹立している男根は程よい硬度を保っていて握りやすかった。そのまま上下に手を動かして陰茎を洗い始める。ちゅくっちゅくっと泡の擦れる音が鳴る
ここも洗った方が良いのだろうかと残った片手で陰嚢を揉みしだく。指と泡の間で二つの玉が無邪気に踊る。竿の方とは違いとても柔らかく、泡のぬめりも相まって軟体動物のような感触をしていた
頭を上げ、男の顔色を伺う。気持ちがいいのか目がとろんと泳いでいる。陰茎から両手を離し、「はい終わり」と男に告げた。彼は悲しそうな表情を浮かべ、まだ洗い足りない、と文句を言った
「いいえしっかりと洗いました。それにこれ以上やったら出ちゃうでしょ?」
腰に手を当ててペニスを見る。白い泡に包まれて正確に見えないが、鈴口からは先走りが垂れているに違いない。このままでは飛び出た精液によって汚れてしまう
―絶対に射精しないから、お願い、もっと洗って―
男の懇願に眉を顰め、「もう、本当にしょうがないなぁ」と再び陰茎に手を伸ばした。そこをまた男が手首を掴む。嫌な予感がする
―今度はおっぱいで洗って―
やっぱり…。彼は無類のおっぱい好きなのだ

報告中断

経過報告40 その8

1

男がシャンプーのボトルを持ち、私の谷間に液を垂らす。胸に満遍なく液がコーティングされていく。「身体を洗うなら石鹸の方が良いんじゃない?」と訊ねると、シャンプーの方がヌルヌルしていて良いから、と男が答えた。「だから気持ちよくさせる為に挟むんじゃないってば」と指摘をする
タイルに膝を付けて姿勢を下げる。男は直立したまま私の肩を掴み、ペニスを胸元へ近づける。私はもう一度自分の手で胸のシャンプーを塗り広げ、ペニスをぱふんと挟んだ。男の膝がかくんと揺れる
「我慢しなさいよ…」念を押すように男を見上げ、胸を動かした。シャンプーにより摩擦係数が限りなく小さくなったのか面白いほど速く腕を上下させられる。陰茎が泡でまみれていく。快感に耐えようとしているのか男の肩を掴む力が強くなる
交互に動かしてみた。ねっとりとした谷間の間で陰茎が震えているのが分かる。時々驚いたかのように跳ね、泡の中でもがいている
ストップ、と男が言うのでパイズリを中断した。男が忙しく呼吸をしながら谷間から愚息を抜き出す。今にもはち切れそうな陰茎を見て、思ったよりも泡パイズリの刺激が強すぎたのかと暢気に考えた

2

男は呼吸を整えた後、私に胸の下で腕を組むよう指示を出した。言われる通りに腕を組んでおっぱいを強調させる。男は意を決したように口を噤むと、泡だらけの谷間にペニスを挿入した。乳房の間から小刻みな揺れが伝わってくる。そのまま彼は胸と性交をするように腰を前後させた
最早身体洗いとは建前ばかりの性的行為に私は紅葉を散らす。恥骨と乳房がぶつかってぱちゅんぱちゅんと音が鳴る。しかしそんな規則正しいリズムも30回を越えたあたりになるとペースが遅くなり、男が震えながらペニスを引き抜くことによって完全に止まった。そしてまたペニスの興奮が治まると私の頭を撫で、再び谷間へ欲望を満たしに行くのだった
「ねえ、もう十分に洗えたでしょ」無理を承知と分かりつつ男の顔を見るが、案の定彼は腰と首を振った
―もうちょっと。あともうちょっとだけ―
にゅるんっと谷間から泡に包まれた男根が姿を現す。陰嚢が大きく膨らみ、竿が生き物のように痙攣している。私との約束を守る為と言うよりは、興奮を昂らせたままの方が気持ちがいいからと言う理由で射精を我慢しているようだった
―もうちょっと、レイセンのおっぱいでヌルヌルしたい―

3

ちんちんとおっぱいのじゃれ合いはまだ続く。男は今度は谷間ではなく乳首に目を付け、そこに亀頭を押し当てた。そのまま裏筋を擦るように胸を上がっていき、根元まで乳首が移動した所で腰を戻し、再度乳首を突く。その動作を気が済むまで繰り返していく
でも流石に辛抱が堪らくなってきたのか、男は叱られた少年のような顔をしながら息を吐いていた。もうこのまま射精してしまいたい、と言う男の想いがひしひしと伝わる
―レイセン、最後はそっちからパイズリをして…―
もう男も隠す気はないようだ。最後と言う言葉の裏には射精という真意が隠れている。だから私は「約束と違うじゃない。挟んであげない」とわざと突き放すように言った
―頼む。もう限界なんだ―
男の悲痛な声に押されるようにして、ペニスをちらりと見る。快楽の解放を待ち望んでいる陰茎は、もう挟むまでもなく一声かければ絶頂してしまうのではないかと思わんばかりに反り返っていた
「……そんなにおっぱいで出したいの…?」
深く男が頷く
「……はぁー…もう…そんな顔しないでよ…」
私は自分の胸を持ち上げて、ちんちんを両側から抑えた
「ちゃんといっぱい出しなさいよ?」

4

挟んで互い違いに胸を擦り合わせる。間で陰茎も巻き添えを食らいながら左右に首を振る。おっぱいの感触とシャンプーのぬめりで張り詰められていた快感が、遂に解き放たれた
まず男が、出るっ、と鋭く言った。直後に谷間が熱くなり、精液特有の粘りを感じ取った。愚息がじゃじゃ馬のように暴れながら鈴口から精子を飛ばし続ける。おっぱいの間を膣の中と勘違いしたちんちんが、おっぱいに種付けを行っている。射精の影響で力が抜けそうなのか、男の膝がかくんかくんと震えている
谷間から何かが落ちて私の膝に当たった。片手で掬い取ってみるとどうやら精液が落ちてきたようだ。指先で子種を広げてみる
男が長く重い息を吐いた後、腰を引いて椅子に尻を付けた。極楽極まれりと言った表情で空を仰いでいる。私は自分を見下ろして、谷間の状況を確認してみた。泡の白さで分かりづらいが、明らかにシャンプーとは違ったぬめりを持つ液が要所要所に付いている。いっぱい付いている。試しに一か所を指で摘んでから離してみると、にちゃりと細い糸を引いた
「やらしぃー…」そう感想を漏らしながら暫く男の精液を触り続けた

報告中断

経過報告40 その9

1

お湯を胸にかけてシャンプーと精液を洗い流す。風呂椅子に座っている男をちらりと伺い、「あれっ?」と目を見開いた。普段なら頭を垂れているはずの陰茎が、射精直後なのに萎えていなかったのだ。さっきよりも少しだけ縮んでいるが未だに勃起を保っている。戸惑いからつい口角が上がってしまう
―レイセン、最後は一緒に気持ちよくなろう―
男がこちらに手を伸ばした。要するにセックスをしようと言うことだ。あれだけ精子を出したのにまだ出し足りないのかと呆れを通り越して感動さえ覚える
「駄目よ。そろそろ上がらないと湯冷めしちゃうわ。髪の毛だって乾かさなきゃいけないし」
―でもここでやらなかったらこの後にベッドの上でやるんだよ? そしてまた身体を洗うのなら今やっちゃった方が効率的だ―
口を開けて反論しようとしたが、男の案を頭の中で復唱して「成る程…」と納得してしまった。「確かに、今ならちゃちゃっと洗えるしね」
ならしよう、と男が椅子に座りながら手招きをする。私は男の両腿に跨って腰を下ろし、そのまま抱き着いた

2

「い、挿れるよ…」自分から腰を上げて亀頭を陰部にあてがう。人体の構造は真に不思議なもので、あれだけ汗や愛液をかいて身体中の水分が抜けきったと思っていたのに、性交が始まると感じ取った途端に膣が潤いだしたのだ。その水で浸された部屋の中へ、訪問客を招き入れる
陰茎の先端が子宮口に到達した。私もこの行為に大分こなれてきたが、やはり足腰が震えてしまう。男を抱き寄せる力を大きくする。男も膣の感触に慣れないのか、快感に怯えるよう私をぎゅっと抱きしめた
男の肌と私の肌が密着する。今回は風呂場での情事なので身体が汗とお湯で濡れており、より一層互いの肌が吸い付くようだった。おでこからは性交開始による合図のように粒状の汗が浮かんでいた
浴室がしんと静まり返る。辺りには水滴の落ちる音だけが響いている。「ねえ」と耐えかねた私は口を開いた。「何で、止まったままなの…?」
いつもなら男が腰を振って快楽を共有し合うのだがどう言う訳か彼は動かない。だが答えは直ぐに返ってきた
―ベッドと違ってスプリングが無いから腰を動かせそうにないんだ―

3

ああそうか、と合点が付いた。普段はベッドの上で対面座位をするのでバネの力を借りて腰を突き上げられるが、ここではただの椅子に座っているだけなのでそれが難しいのだ
と、なると…。私は男の無言を察して、自分から解決案を出していた
「私から、動くのね…」
その通りと私を褒めるかのように彼がお尻を撫で回す。「撫でないでぇ…」と艶声を出した後に、さてどうしたものかと目を閉じた
自分から下半身を動かして男をリードするのは今日が初めてだ。今までもちょくちょく腰を振っていたりもしたが、それは男の責めに耐えられずに止む無くと言った免罪符から成せた技だ。もし己の欲望の赴くがまま腰を振ることになったら……きっと私は私じゃいられなくなる
だがいつまでもこの姿勢のままでいるわけにもいかない。私は目を開けて「いくよ」と男の耳元で合図を送った後、膝を軽く伸ばして腰を浮かせた

4

雁首が膣を引っ掻きながら下りていく。私は息を震わせつつ脚を伸ばし、亀頭が子宮の入り口に引っかかるギリギリの所まで腰を浮かせた。一度唾を飲み込み、酸素を小刻みに肺へ送り込む。男も胸を大きく動かして空気を求めている
そのままゆっくりと、ゆっくりと腰を下ろしていった。膣の中が再び竿によって押し広げられる。鈴口と子宮がちゅっとキスをする。「んぅっ♡」と足の指を硬く丸める。男が私の尻尾を手のひらで包み揉み始める。もっとペースを上げろ、と言うことだろう
「ちょっと待って…」私は隙間風に似た息を唇から吐き出し、また腰を上げだした。またペニスが膣を刺激し、また入り口まで退く。そして腰を下げてペニスを迎え入れる。最奥まで辿り着くと背中を電流が走っていく
これだけの快楽を生じている動作がたったの二往復で済むという事実に恐怖を抱きながら、私はお尻の上げ下げを夢中で行った

5

最初の方こそテンポは遅かったが、途中から勢いを増していく雨のように、私の下半身は腰を振る速度を上げていった
狭い部屋に腰を打ち付ける音が反響する。私と男の喘ぎ声が混ざり合い、私たち二人だけにしか作れない音楽を奏でる。決して観客に見せることのない演奏会は佳境に入り、新しい楽器であるディープキスが途中参戦した
「ちゅぱ…♡ ちゅるる…♡ ん…ふぅ…♡」
口と口の間から涎が垂れる。私は唾液が漏れ出さないよう気を遣って舌を動かしていたつもりだが、どうやら男がわざと垂れるように口を開けているようだ。それに気付いてからは私も敢えて涎を垂らして男の舌と抱擁を続けた
お湯と性交の熱に犯され頭がのぼせてきた。この段階で私の理性は既に瓦解し、兎としての本能だけが身体を支配していた。腰を男の股間に激しくぶつけ、自身と相手の絶頂を求める。男とのキスを止めると二人の口から「あっあっあっ」と高い声が鳴り出した。演奏は終局を迎えようとしている
「だしてっ♡」ただの発情兎と化してしまった私は求愛の泣き声を発していた。「いっぱい、いっぱいだしてっ♡」

6

どちらが先にいったのだろうか。恐らく同時だったはずだ。私が潮を噴いたタイミングと男が射精をして子種を子宮に流したタイミングはほぼ重なっていた
「あぁ…♡」絶頂によって生まれる掠れ声が双方の喉から零れ出る。演奏終了だ。私たちはパートナーを労うように口を付け唇を濡らした。私の膣が痙攣をすると男のペニスも痙攣を起こす。鈴口から精液が出て子宮を満たすと膣口から愛液が滴り落ちる。完璧な結末と言っていいだろう
「んまっ…ハァ…ハァ…いっぱい出た…」
男から上半身を少しだけ離し、結合部を見下ろす。外からは確認できないが膣内での震えが小さくなっていくのが分かる
「ちょっと…見てみようか…」
腰を上げて陰茎を抜き取り、僅かに下半身を後ろへずらして男の太腿に座る。柔らかくなった陰茎の根元を掴んで上に向かせ、腰を前に進めて素股のようにペニスを挟む
「ほら…あんなに大きかったのに、もうちっちゃくなってる…」
二人でちんちんを見下ろす。亀頭がすっぽりと皮に隠れてしまっているが、頂点の皮が密集している部分には白濁が溜まっている
秘裂から垂れた精液が男の脚の間を通り、タイルへと落ちていった

報告中断

経過報告40 その10

1

長かった一日が終わろうとしている。いや、正確には濃くて短い一日だろうか。気が付いたら夜が訪れていた
お風呂場でのセックスを終えた私たちは股間を洗い、直ぐに外へ出た。タオルで身体を拭きながら新しいシャツに着替える。時計を確認すると夜の6時を回っていた。夕食を持ってこよう、と男が駆け足で部屋を出ていく
ふう、と息を吐いて椅子に座る。なんだかとても疲れた。朝は筋トレで身体を鍛え、昼は男の疑似尋問に付き合い、夕方は熱い浴室で洗いっこをする。これだけの行事をこなせば疲れが溜まって当たり前かと肩を回した
男が二人分の食事を持って戻ってきた。早速私たちはテーブルに向き合って食器を鳴らした。お腹が空いていた為黙々と手を動かして咀嚼する。皿が空になってくると今度は眠気が襲ってくる。我ながらなんて欲求に忠実な生き方なんだろうかと苦笑した
「ご馳走様でした」と手を合わせながら唱え、洗面台へ向かって歯を磨く。男も隣で歯ブラシを擦っている。時間は8時ちょっと過ぎだったが部屋の電気を消し、共にベッドへ潜った

2

毛布にくるまれると一瞬で夢の世界へと落ちていった。捕虜生活が始まってから中々良い夢を見る機会がないのだが、今日の夢は存外に不可思議だった
私は男と一緒に部屋にいる。地上軍に捕らわれている部屋ではなく、簡素な掘っ立て小屋だ。決して大きくはないが二人で過ごす分には十分な広さだ。窓の外には一面の竹林が広がっている
ここはどこだろうか。初めて見る光景だが、どこか懐かしさを感じる。月ではない。地球のどこかだろうか
ドアを開けて外に出る。後ろから男も付いてくる。辺りには数多の竹が生い茂っている。一陣の風が吹いて笹の擦れる音が鳴る。首を曲げて天を仰ぐ。笹の天井の隙間から青い空が広がっている
「いい物件でしょ」ふとそんな声が聞こえた。男のものでも私のものでもない、第三者の声だ。「私がこっそり使ってた場所だけど、あんた達二人にあげるよ」
声のする方へ顔を向ける。そこには、黒い癖毛と垂れた兎耳を有している背丈の小さい少女がいた

3

彼女は誰だ。今まで会ったことが無い。私と同じように兎の耳をしているが、玉兎ではないことは明らかだ。一体何者だろう。人懐っこい笑顔をしているものの、裏に抑えきれない悪戯心を秘めているような、それでいてやはり人畜無害そうな見た目をしていた
「色々とありがとうね」私の口からそう台詞が発せられた。驚いて口に手を当てる。勝手に舌が動いたのだ。後ろの男も、本当にありがとう、と礼を言っている
「別に良いってことよ〜! 困った時はお互いさまって言うじゃない!」屈託のない笑みを浮かべて少女が話す。「あの二人も今はまだ警戒してるけど、きっとその内打ち解けてくれると思うわ」
あの二人とは誰のことだ? 疑問が尽きない。しかし私の口は自分の心に反して「そうだと良いなぁ…」と思ってもいない言葉を出していた
「しっかし、あんたも凄いわよねぇ」少女が男を指さす。感心したようにウンウンと頷きながら、「地上の連中は月を手に入れるために戦争をおっぱじめたんでしょ? それなのにあんたは……」

4

そこで目が覚めた。上半身を上げて、周囲を確認する。見慣れた捕虜部屋だ。さっきまでいた掘っ立て小屋ではない。額を手の甲で拭う。かなりの量の汗が浮かんでいた。寝起きで思うように動かない脳みそを奮い立たせ、ベッドから抜け出す
まず男がいないかを確認した。ベッドの上には毛布だけが乗っかっていて、誰もいない。当然周りにも誰もいない。時計を見る。朝の9時を回っている。寝過ごしてしまったようだ
次にテーブルの上に目をやる。料理がお盆と一緒に置かれてある。きっと朝食だ。男が置いていってくれたものだろう
腰に手を当てて大きく身体を反らせる。小さなあくびを一つかき、先ほどの夢を思い出そうとする
あの夢は何だったのだろうか。やけにリアリティを伴っていた。夢は過去の出来事の氾濫だと言われているが、あんな経験はしたことがない。あの綺麗な竹林や兎の少女は何者なのだろうか。考えれば考えるほど不思議な事象に囚われる。が、怖いとは思わなかった
ともあれまずは食事を取ろう。椅子に座り、手のひらを合わせる。顎を動かしながら男は何時ごろに戻ってくるのだろうかとぼんやり考えた

報告終了

経過報告41

1

29日目。男が夜になっても戻ってこない
一体どうしたのだろうか。時計の針が午後の8時を指しているのに一向に扉が開く気配が無い。普段なら午後6時頃には食事を持ってやって来るのに、未だ彼は現れない
何か悪いことが起きたのではないだろうか。私の心が冷たい不安で覆われていく。背中を嫌な汗が流れ落ちる。居ても立っても居られなくなり無意味に部屋の中を歩き回った
20時30分を過ぎた。ドアは開かない。おかしい、やっぱりおかしい。彼の身に何かあったんだ。私は指の爪を噛みながら何もできない歯痒さに苦悩した
心臓が早鐘を打っている。胃が縮んで食欲が失せていく。扉の前に佇み、両手を握ってひたすら祈った。この小さな世界では男が唯一の拠り所であり、最後の希望なのだ。もしこのまま男が帰ってこなかったら、私は餓死するよりも先に孤独で死んでしまうかもしれない
「お願い、帰ってきて…」微かな声を扉へ、扉の外へ向かって放る。この声が男の元へ届いてくれれば、と淡い期待を込めて祈り続けた。「お願い…」

2

夜の9時。鍵の開く音がして、扉が動いた。男が帰ってきた
―遅くなって申し訳ない。色々と面倒なことが起きてしまって…―
片手にお盆を持った男が明るく微笑む。私は唇を震わせ、一筋の涙を流した
「心配…させないでよ…」精一杯の虚勢を張ろうとしたが、声が震えてしまう。不安から解放された安心感によって心が軽くなり、涙腺が緩んでしまった
―ごめんよ。もっと早く帰ってくるつもりだったんだけど―
男が料理をテーブルの上にそっと乗せる。私は弾かれたように男に近づき、強く抱きしめた。男の背中に顔を当て、彼の両腕ごと抱擁する。「もう私、すっかり貴方に依存してるみたい」と明るく冗談を言おうとした
しかし次の瞬間、男が叫んでいた。傷を負った動物が上げる断末魔のような、そんな悲鳴だ。心臓が震えあがり慌てて男から離れる
男は左腕を右手で押さえて呻いていた。苦痛からなのか、顔を恐ろしいほど歪ませている。私は状況が判断出来ず茫然と立ち竦んでいた

3

―すまない…いきなりだからびっくりしたんだ…―
男が頬に汗を垂らしながら作り笑いをする。誰の目から見ても何かを隠していることは明白だ。そしてその何かは、彼の左腕にある
考えるよりも先に手が動いていた。男の左手を掴み、服の裾を捲った。肩まで裾が上がった所で、それが見えた
男の二の腕のあたりに包帯が巻かれている。血が滲んでいるのか、若干濃い赤で染まっている。昨日一緒にお風呂に入った時にはこんな傷はなかった。これは今日付けられたものだ
「この傷、どうしたの…」感情が消え去った声で男に訊ねる
―……午後に、敵と戦った時に撃たれたんだ…―
悪戯が見つかった子どものように、男が沈んだ顔で答えた
「敵? 敵って、私の仲間のことでしょ?」男の顔を睨む。脈が早くなっていく。「嘘を吐いたの? 私の仲間には傷を付けないって言ってたのに。玉兎に撃たれたってことは、玉兎と戦ってたってことでしょ?」
―違う。違うんだレイセン―
「何が違うの!? 嘘ばっかり言って、本当は月のみんなを傷つけてるんでしょ!? 何で、何で嘘を吐くのよ!」
心を鎮めようとしたが、駄目だった。私は泣きながら男を罵ることしか出来なかった

4

気付くと男も泣いていた。私のように滂沱の涙を流すのではなく、口を噤み、静かに泣いていた
―レイセン、違う、俺は…俺は君の味方なんだ…俺は…―
「私の味方でも、月の味方ではないんでしょ…? 玉兎達を平気で傷付けてるんでしょ…?」鼻水を啜りながら訊く。男の涙を見たせいか、幾ばくか冷静さを取り戻していた
―違う…俺は玉兎を傷付けたりはしない…―
「じゃあ仲間? 貴方の仲間が玉兎を撃ってるの? その手助けをしてるの?」
―違う…違う…―
男は床に膝と手を付け、首を振って否定し続けた。違う、違う、と壊れたように声を出す。私はそんな彼を見下ろし、止まらない涙を手の甲で拭った
―信じてくれ…お願いだ…―
「もう…信じ疲れたよ…」
男が顔を上げる。涙や鼻水で濡れている彼の顔を見て、私は心臓が掴まれた思いをする。こんな彼の表情を見るのは初めてだ
―お願いだ…俺の希望は、レイセンだけなんだ…―

5

息が止まりそうになった。男の言葉に、胸が締め付けられる。自分の心臓の音が、やけに大きく聞こえる
―自分が、卑怯な男だってことぐらい分かっている…。でも他に手段が無かった。こうでもしなきゃ…レイセンと一緒にいられなかった…―
男の台詞を静かに聞く。内容をちゃんとは理解出来ない。しかし、男の懺悔に満ちた誠意だけは伝わってくる
―きっともう直ぐで戦争が終わる…。そうしたら全部を話すし、ここから解放する。俺もこの世からいなくなる。だからそれまで、お願いだから待っていてくれ…―
ゆっくりと彼が立ち上がる。左腕をだらしなく垂らし、右手で顔の涙を拭いている。そしてテーブルの食事を指さし、遅いかもしれないけどきちんと食べ栄養を付けておいてくれ、と扉に向かって歩き出した
―俺は医療室に戻ってもう一度手当を受けてくる。今日はもうこの部屋には戻ってこないだろう。また明日、話し合おう―
ノブを捻って男が出ていった。一人残された私はベッドに腰を下ろして、顔に手を当てて泣きじゃくった
孤独な中で誰かを求めていたのは、私だけじゃなかったのだ

報告終了

経過報告42 その1

1

30日目。朝の5時にはもう目は覚めていた。ベッドから起き上がり、洗面所へ向かって顔を洗う。鏡に映る自分と向き合うと、目の下に濃い隈があるのに気が付いた。昨日はよく眠れなかったのだ
椅子に座ってテーブルに突っ伏する。眠気は無いが身体は怠い。何も考えず、何も感じず、静かな部屋で時間が経過するのを待つ
朝の7時には男がやってくるはずだ。だが確証はない。昨日あれほどのことをしてしまったのだから、彼に見捨てられてしまっても何らおかしくはない
時計の短針が7を示す。驚くほど呆気なく、扉が開いた。男が部屋に入ってくる。右手には朝食の乗ったお盆を持っている
「おはよう」私は顔を俯かせたまま挨拶をした。おはよう、と男も返事をする。気まずい沈黙が流れる。彼は料理をテーブルに置くと私と向き合うように椅子に座った
「…ねぇ…」意を決して口を開く。「昨日は、その、ごめんなさい…」
男は黙ったままだ。こちらの動向を慎重に窺っているようにも見える
「昨日は、貴方が帰ってくるのが遅かったから、心配しちゃって…それで感情的になっちゃって…本当にごめんなさい…」
椅子から立ち上がる。男の傍へ近寄った

2

「腕見ても良い?」
男は視線で頷くと、左腕の袖を捲った。そこにはやはり白い包帯が巻かれている。ただ昨日とは違い血で染まってはいなかった
「大丈夫? 痛くない?」
―…骨には当たらなかった。ほとんど掠るような形での被弾だったから、怪我はそれほど大きくない―
「そう、よかった…」
ほっと胸を撫で下ろす。致命傷だったとしたらどうしようと心配していたが、どうやら無事のようだ
―レイセン、すまない。気を病ませるようなことをしてしまって…―
「ううん、いいのよ別に。それより、今度こそちゃんと訊いておきたいの」
一度息を大きく吸ってから長く吐き出し、男の目を見た。「私の仲間を傷付けたりはしてないのよね?」
男は自分の左腕を痛そうにさすると少し間を空けて、当然だ、と断言した
「じゃあ、それは誰に撃たれたの? もしかして、無抵抗の状態で玉兎に撃たれたんじゃ…」
―いや、違う。この怪我は玉兎隊とは関係ない―
「ならどうしてそんな傷を負ったの? まさか貴方の仲間に撃たれた訳じゃないわよね」
男は苦い顔をすると下を向いて押し黙ってしまった

3

「図星ね」私はモミアゲを指先で弄りながら立て続けに訊いた。「どうして仲間に撃たれちゃったの?」
―…この前の一件から色々と軋轢が生じてしまったんだ。一部の連中が俺に対して不信感を募らせている―
この前の一件とは何のことだろうか。「もしかして、私の仲間を助けに行った時のこと?」と思いつきを口にする
―ああ、それも勿論ある。察しの良い数人が、俺が玉兎を逃がしたんじゃないかと疑っている。ただそれよりも、君をあの暴漢達から救ったときの方が大きな問題となった。何せ仲間を殺してしまったんだからね。ほとんどの皆は、非は殺された方にあると俺の肩を持ってくれたんだが、不快感を燻らせている人間も少なからずいた―
「…そいつらに撃たれたの…?」
―ちょっとした口論だったんだ。子どもじみた口喧嘩に始まって、最後には向こうがズドンさ。俺のことが気に食わなかったんだろうな。殺す勢いだった―
「そんな…」
―勿論先に手を上げた相手の方が罰せられたさ。そもそも喧嘩も向こうから売ってきたんだからな。俺はお咎めなしさ―
「…ねぇ、一つ訊いてもいいかな…」
―何だい?―
「どうしてそれを先に言ってくれなかったの?」

4

―…あの時はある種のパニックに陥っていたんだ。腕が痛かったし、脳みそが混乱していた。ただ一番気にかけていたことは、君のことだったんだ―
「私?」
―君を心配させてはいけないと、真っ先にそう思った―
「ちょ、ちょっと。それ変じゃない」疑問が男の話を遮る。「だったら尚更、真実を話すべきだったんじゃないの? お蔭で私は貴方が玉兎と戦って撃たれたと勘違いしちゃったのよ?」
―そうじゃないんだ。俺が懸念していたことは、また暴漢に襲われてしまうんじゃないかと君が不安を抱えてしまうことだったんだ―
「…どういうこと?」
―俺が仲間との関係が良くないと知ってしまったら、君はきっと心配する。一部の不良たちが俺を殺してこの部屋にやってきて、非道の限りを尽くすのではないかと恐怖するはずだ。だから、そんな思いにあわせたくなくて、直ぐには本当のことを言えなかった―
全てを話し終えたのか、男は一度深呼吸をすると懐から何かを取り出してテーブルに置いた
それが拳銃だと気付くまでに少しの時間がかかった

5

固まる私に男が説明を始める
―君を守り抜く自信は十分にある。だが、絶対ではない。不慮の事故によって俺が死んで、欲を持て余した馬鹿どもがここにやってくる可能性もある。その時はこれを使え―
「これ…本物なの?」
―本物だ。弾も多量に持って来てある。何かがあったらこれでピンチを切り抜けろ―
言葉を失ってしまった。唖然としたまま拳銃を手に持つ。贋作ではない、本物のピストルだ
―先に言っておくが、今俺を撃ってここから抜け出すと考えるのはやめてくれ。それは命が惜しいから言っているんじゃなくて、危険だから忠告しているんだ。今はまだこの部屋にいた方が安全だ。だから真の危機が迫ったら、ここから逃げろ―
「うん…うん…」涙がぽろぽろと零れてきた。視界が霞み、頬を温かな液が流れる。口に手を当てて、喉を押し殺すようにして嗚咽する。男が慌てて立ち上がり、どうしたんだ、と私の背中を手で撫でる
どうして私は泣いているのだろうか。原因不明の涙が溢れて止まらない。ただ一つ確かなことは、男を置いてここから逃げることは出来ない、という想いが芽生えたことだ

報告中断

経過報告42 その2

1

その日は男と共に一日を過ごした。昨日までの険悪なムードは微塵もない。一緒に朝ご飯を食べ、小説の談義をし、笑いながら冗談を言い合った。悲しい涙は既に止まったはずなのに、今度は嬉しい涙が少しだけ出てしまう
しかし男の体調は優れないようだ。時々痛そうな顔をして左腕をさすっては溜息を零している。「大丈夫?」と私が心配すると、大丈夫とは言い切れないかな、と彼は眉根を寄せて笑った
昼頃になると男は眠たそうに目を擦り始めた。被弾の傷を癒す為に体力が持っていかれるのだろう、疲れた顔をして幾度かあくびをしている
「お昼寝しよっか」そう提案してみた。「疲れている時にはふかふかのベッドで寝るのが一番だよ」
―それは流石に悪い。折角一緒にいるのに―
「いいのいいの。私も昨日の夜は眠れなくて少し眠いし、一緒に寝たいから」
男は暫く黙っていたが、それじゃあ少しだけ、と言うとベッドへと潜り込んだ。私も彼の右側に陣取るように横になる。身体を男の方へ傾けて軽く抱き着きながら、二人で寝息を立て始めた

2

目覚めたのは午後の6時頃だ。寝ぼけ眼で部屋を見渡し、隣に男がいることを確認して安心感を得る。起きた時に気の置けない誰かがいることは何と幸せなことなのだろう。彼はまだ夢の中らしく、小さな鼻息を立てている
男の身体に顔を近づけて匂いを嗅いでみた。上手く形容出来ないが、私の心を落ち着かせてくれる匂いがする。男が起きていないことを良いことに、私はすんすんと鼻を動かした
時刻が夜の7時を過ぎた。いい加減に起きないといけない。私は男の肩を優しく揺らして現実の世界に呼び戻した。男がぱちりと目を開ける。今何時? と顔を向けて訊ねてくる
「もう7時だよ」そう答えると男は慌ててベッドから抜け出し、夕食を持ってこなきゃ、とドアノブに手をかけた
「ここで私と一緒に食べるんだよね?」不安になって男に声をかけた。勿論だ、と男は笑うと部屋の外へと走っていった
男が戻ってくるまでの間、私はベッドで横になり続けた。男の寝ていた場所に身体を移し、ほのかな温もりを感じながら、最低なことを考えた
このまま戦争が終わらず、彼と一緒にいられたらいいのに…

3

10分足らずで戻ってきた男と共に夕食を取る。「昼寝しちゃうと何だか頭がふわふわするね」と言うと、男は何度も頷いて深く同意した
のんびりと食事を楽しみ、ご馳走様でしたと手を合わせる。男も左腕を慎重に動かしながら手のひらを付け合う。それから歯を磨いてコップ一杯の水分を取り、またベッドへ向かった。当然男も一緒だ。昼寝の時と同じ姿勢で眠りに就こうとする
ふといつもの夜伽を思い出した。今までなら夜寝る前に性交の一つでもやっていたのだが、これからはどうするのだろうか。左腕を負傷しているとなると性交による運動も楽ではないはずだ
そのことを男に伝えて「貴方はどうしたいの?」と意見を伺った
―本心を言うなら、レイセンと色々したい。でもこの腕だと激しく動いただけで痛みが響く。残念だけど暫くは安静にしておくしかないね―
「…じゃあ激しくなければ良いのね…」
私は半身を起こすと左手でシャツのボタンを外しながら、右手で毛布をはだけさせた。一体何を、と男が戸惑いを見せる
「動かないでね…元気が出ることをしてあげるから…」
胸元が開き、おっぱいがとろんと零れる。右手を男の股間に向かわせ、チャックを下ろした

報告中断

経過報告42 その3

1

男はベッドに仰向けになったまま少しだけ首を動かし、私のおっぱいを吸っている。唇をすぼめて乳首を刺激し、舌で乳輪を舐め回す。小鳥が囀るように音を鳴らしながら、思うがまま吸い続ける
一方の私は右手で男の性器を弄っていた。硬く勃起している陰茎のその根元、ぷにぷにとした陰嚢を手のひらで揉み転がす。射精に繋がるような快感は生じていないだろうが、男はとても気持ちよさそうな顔をしている
「これなら激しく動かなくても気持ちよくなれるでしょ?」
男は私の言葉に耳を傾けていないのか、必死に乳房をねぶっている。途中で息苦しくなったのか口を離して呼吸を繰り返すと、再び乳首に舌を伸ばした
「おっぱいは出ないけど、好きなだけ吸っても良いからね…♡」
男の鼻から息が漏れる。何としても乳を出させてやると意気込むように、より一層吸い付きを強くする。「こーら」と私は彼をたしなめるように左手で頭を撫でた
「そんなえっちな吸い方をするなら、お仕置きしちゃうぞ?」
そう言ってから睾丸のマッサージを中断し、太く膨らんだ竿を握った

2

ペニスを右手で握ったまま人差し指を伸ばす。指先を亀頭に向けてから少し折り曲げ、半分皮の被った先端部分を指の腹で這い回した
男の腰が若干浮く。陰嚢を揉んでいた時よりも反応が良い。やっぱり先っぽを弄られるのは気持ちがいいようだ。おっぱいを口に含んだ状態で、目を閉じて快感に耐えている
「ちんちんの先に皮が被ってることを、包茎って言うのね。この前本で読んだわ」人差し指をくるくると動かしながら話し始める。「普通の大人は勃起したら剥けるのに、貴方は完全には剥けないのね。ほら、ここ」
私は鈴口の周りをなぞるのをやめて、更にその周りの包皮を責めだした。皮の淵を円を描くようになぞるとペニスが跳ね、先端から透明な液体を垂らした
「おちんちんは子どものままなのに、雌兎を捕まえて、えっちなこといっぱいやって、好きなだけぴゅっぴゅして、捕虜を困らせちゃうなんて、悪い子…♡」
先走りがどんどん溢れてくる。陰茎が反り返り、精液の発射準備を整えている。これ以上焦らすのも酷だと思い、人差し指を戻して竿を握りなおした
「それじゃあ、おっぱい吸いながら白いおしっこ出しちゃおうね…♡」

3

肘を支点として右腕を動かす。ペニスを握ったまま上へ下へと手で擦る。胸を吸っている男の口からくぐもった呻き声が聞こえる
「最初はつらいけど我慢して? 最後はいっぱい気持ちよくなれるから」
手コキを速める。雁首と裏筋を余すとこなく刺激しながら射精感を高まらせていく。鈴口から垂れる先走りが糸となって男のお腹に落ちていく
ぷはぁっと男が口を離し、もっと裏筋も擦って、と涙目でおねだりしてきた。私は手コキの動作を一旦止めると、ペニスを逆手に持ち、親指で裏筋を撫で回した。「これでいい?」
男は返事をする代わりにおっぱいに口を付けた。親指の腹でちんちんの裏側を擦りつつ、逆手での手コキを再開する
額から汗が落ちた。ずっと胸を吸われているせいで興奮してきてしまったようだ。しかしそれは男も同じで、愚息からの快感を象徴するように頬から汗を流している
ふと男が右腕を股間あたりに動かし、服を胸元まで捲ってお腹を露出させた。直ぐに私は、射精で服を汚さない為にやったことなのだと気が付いた。つまり、もう限界と言うわけだ
「いいよ♡ 出して♡」
手の中で、陰茎が一瞬膨らんだ

4

ペニスから精子が出てくる瞬間が、見えた。鈴口がぱっくりと開き、白濁の液体が勢いよく噴き出てきた。精液は長い尾を引きながら中空を舞い、やがて引力に負けて落ちていく。服を捲っておいて正解だった。粘り気のある体液はお腹に飛び散り、どれだけ気持ちのいい状況から自分たちが射出されたのかを目一杯誇示した。そこへまた新たな集団がやってきて、肌色を白く染め上げていく。体外に出された精液の量が快感に比例するのであれば、男はこれ以上ないほどの快楽に包まれているはずだ
手中で陰茎が脈打っている。尿道に飛び出し損ねた精液が溜まっているのか、先端から粘性を持った糸がだらだら垂れている。外の皆に合わせるために私が手を動かして陰茎を按摩すると、ぴゅるり、と残った精液が飛ばされた
視線を下部から男の顔へと移す。男はいつの間にかおっぱいから口を離していて、顔を朱に染めながら、柔らかくなったペニスを見下ろしている。そしてこちらに目を向け、粗相をしてしまった子どものような顔を作った
私はにこりと笑うと、精液の付いた右手を彼の目の前に持ってきた
「おちんちん気持ちよかったね♡」

報告終了

経過報告43 その1

1

31日目。地上軍の捕虜になってから一か月が経過したと言うわけだ。ここまで来ると私の仲間たちは、私を死んだ者と見なすだろうか。いや、少し前に男が玉兎隊に手紙を渡していたからそれはないか。彼女らは私が今現在スパイとして地上軍に潜入中だと思い込んでいるはずだ
実際は拷問官と一緒にカードに興じているだけなのだが…
朝食を二人で終えた後、男がポケットから一組の山札を取り出した。「それは何?」と興味津々で訊ねる
―これはトランプと呼ばれるカードだ。まあ正式にはプレイングカードと呼ぶらしいが。レイセンは知ってるかい?―
名前は聞いたことがある。地球の玩具だ。ただ実物を見るのは今回が初めてだ
―俺は左腕を負傷してしまったせいで、暫く仕事に就けない。だから少しの間暇をつぶす必要があるんだ。トランプ遊びにレイセンが付き合ってくれれば嬉しいんだけど―
そうか男は肩腕の怪我のせいで筋トレも満足に出来ないのか。かと言って何もせずこの部屋にいるのも気が引けると感じ、こうして遊戯を持ち出してきたのだ
「私で良いのなら付き合ってあげるけど」

2

どうやらトランプと言うものは一つのデッキだけで色々な遊びを行えるらしい。最初は「神経衰弱」と言う二枚一組のカードを揃えるゲームを楽しみ、次に「スピード」と言う文字通り速さを競うゲームに挑戦した。悔しいかな相手は左腕が不自由な人間なのに、三戦三敗してしまった
…それにしても私は一体何をやっているのだろうか。捕虜としての生活を過ごす中でふとそう思わずにはいられない。敵の軍に捕まり、幽閉され、性的欲求の捌け口にされるはずなのに、敵の軍の拷問官と親しくなり、一緒に食事や就寝をして、更にはカードで遊んだりしている。もし一か月前にタイムスリップして当時の私に「貴方は今から拷問官の男と良好な関係を持つことになる」と伝えても絶対に信じてもらえないだろう
とは言ってもこればかりはどうしようもない。私はあくまで捕虜であり、地上軍の秘密基地から抜け出して戦争に合流することは出来ない。なら今はせめて有意義な捕虜生活を送ってやろう
と言うわけで私はテーブルに広がったカードを掻き集め、「もう一回!」と四度目のスピード勝負を挑むのであった

3

テーブルに突っ伏して「くそぅ…」と呻く。結局スピードで男に勝つことは一度も無かった。反射神経は良いと自負しているはずなのに、男の手が先に出てどんどん場を変えられていってしまう。あんな怪物に勝てるわけがない、と私は自分を慰めるように言い訳をした
―ふう、いい加減腕が疲れてきてしまった。スピードはこれで終わりにして、今度はポーカーをやってみよう―
「ポーカー?」
―俺の一番好きなゲームだ。5枚のカードを手札として、その役の強さを競うんだ―
男は一枚の紙を取り出すとペンを持ってポーカーの役を書いていった。ロイヤルストレートフラッシュに始まり、フルハウス、スリーカード等々、心をくすぐられるような役名を羅列していく。すっかり乗り気になった私は早速男とポーカーで遊んでみた。初心者なのでそう上手くはいかないが、やっていてとても面白い。神経衰弱やスピードと違って心の読み合いで勝利をもぎ取る感じだ
「これ良いわね!」とはしゃぐと、気に入ってもらえてよかった、と男も破顔一笑した
「でも役名はもうちょっと格好良くてもいいかもね。例えば、最強役は優越貴族(アリストフロンター)って名前にするとか」
―え…―

4

十数回目の勝負を終えると、男がデッキを切りながら、そろそろ真剣勝負といこうか、とニヒルな笑みを浮かべた
「真剣勝負? どういうこと?」
―ポーカーは元々ギャンブルゲームだ。だから、次からは俺たちも賭けをしながら遊ぼうじゃないか―
「賭けるって言っても、私お金とか持ってないわよ?」
―賭けるのは、これさ―
そう言って男は私の袖を引っ張った
―服を賭けてもらおう。勝負で負けるたびに服を脱いでいくんだ―
「…またそうやってえっちなことを考える…」
どうするやるかい? と男がカードをシャッフルする。「もし着ている服が無くなったら、それでゲーム終了?」と子細を訊いてみる
―いや、裸になってもゲームは終わらない。もし裸の状態で負けたら、敗者は勝者の言うことを聞いてもらう―
成る程、男は衣服を脱がせただけで終わらせるつもりはないようだ。私は指を絡めて肘をテーブルに付け、にやりと不敵に笑って見せた
「良いわ。勝負しましょう」

報告中断

経過報告43 その2

1

少しの昼休憩を取った後、私たちは席についてポーカーを始めた。互いの衣服を賭けたお遊びの真剣勝負だ
簡単なルールを説明しておくと、双方が戦って敗者が決まった場合、勝者は好きな部位の服を一枚選んで脱がせることが出来る。片方が戦う前に下りた場合、敗者が自分で好きな部位の服を一枚脱ぐ。そんなルールだ
私が今着ている服は、ブレザー、ネクタイ、シャツ、スカート、靴下、ブラジャー、パンツの7枚だ。対して男は、シャツ、ズボン、靴下、パンツの4枚だけである。強者故の余裕なのか、かなりのハンデ戦だ
男が山札をシャッフルして5枚のカードを私に配る。さっと目を通してみると10のワンペアだ。悪くはないが良くもない。カード交換へと場が移り、まず私から3枚の札を捨てて山から新たな3枚を引き抜いた。が、役は変わらない
対して男はカード交換をしなかった。さあどうする、と挑戦的な目を振ってくる
「…戦いましょう」先に勝負を宣言した。これで男が下りてくれれば万事解決だが、そうはいかない。男も勝負を挑んできた
結果は男のAワンペアによる勝利。服を脱がされるのは私となった

2

―それじゃあ最初は、ここから脱いでもらおうか―
男が私のスカートを指さす。だろうなぁ、と恥ずかしくなりながらジッパーを摘んだ。もし私が下りていれば靴下やネクタイなどの無難な所から脱いでいた。しかし主導権が相手にあるとなると、真っ先に本丸を責めてくるのは当たり前だ。そうやって羞恥心による動揺を元手に更なる精神的揺さぶりをかけてゲームを有利な方向へと持っていく。きっとそんな作戦だ
俯いてスカートを脱ごうとしていると、違う違う、と男が制止に入った
―スカートじゃなくて、パンツを脱いでくれ―
「えっ!?」
流石にそれは予想できなかった。外側の服は放っておき先に内側から崩そうと言うのか
―別に恥ずかしくもなんともないだろ? パンツだけを脱いだところで見た目的には何も変わってはいないのだから―
「そ、そうだけど…」
私はどもりつつスカートの中へ手を突っ込み、パンツを膝下まで下ろしていった。そのまま脚から脱ぎ捨てる
「ほら、ちゃ、ちゃんと…脱いだ…」
白色の下着を掲げながら手団扇で顔を扇ぐ。恥ずかしすぎて顔が発火してしまいそうだ
―それじゃあ二回戦に行こう―

3

ゲームは完全に男の手の中だ。私は巧みに翻弄されて負けを重ね続けた
二回戦目もまた勝負をして負けて、ブラジャーを脱ぐよう命令された。私は浴室の着替え所に入ってからブレザー等を脱ぎ、たわわな胸を抑えていたブラジャーを外して、再びシャツを着こんだ。男の元へ戻り「ん」と素っ気なくブラジャーを手渡した
心臓が恐ろしいほど速く脈打っていた。下着を身に付けず服を着ているだけで、こんなにも恥ずかしいものなのか。男の倒錯的な性愛に侵されて、ポーカーフェイスやブラフを仕掛ける所ではなくなった
三回戦目は私から勝負を下りて、ネクタイを脱いだ。四回戦目では男のフォールドにより、同じく自身で選んだ靴下を脱ぐ。五回戦目にて三度戦いを選んで敗北、シャツを脱ぐよう命令された
現段階で私の着ている服はブレザー、スカート、靴下の三点。一方男は靴下を脱いでシャツ、ズボン、パンツの三つが残っている。圧倒的有利だったはずなのにいつの間にか並んでしまった
ここからブレザーかスカートのどちらかを脱がされれば、私の秘部を男に曝け出すことになる。そう思うと汗が止まら無くなった。羞恥による熱で頭がくらくらする
そんな時男が口を開いた

4

―なあレイセン、次の一戦で終わりにしないか―
「え?」
―折角いやらしい恰好をしているのにそれを全て脱がして全裸にするのはもったいない。次負けた方が、即刻相手の命令を聞くことにしよう―
何を馬鹿な、と思ったが願ってもない条件かもしれない。このまま戦いを続けて4勝する見込みは皆無に等しい。ならば次の一戦に全てを賭ければ運良く男を負かすことが出来るかもしれない
「…乗った!」威勢よく返事をして山札を手早くシャッフルする。男にカードを渡し、自分にも同じ枚数のカードを配る。緊張しながらカードを捲ると果たして2、5、6、8、9のブタだ。落胆が肩へと圧し掛かる
―次はカード交換だ―
男はカードを3枚交換した。私は唾を飲み込み、2を捨てて一枚カードを捲った。もしこれが7であれば、ストレートが完成する。カードの数字は…数字は…
7だ
「やったぁ!」
両手でガッツポーズをしながら喜びの声を噛みしめる。やった、私の勝ちだ。それではカードをオープン、と男がゲームを進める
「残念だったわね!」私は渾身のストレートを男に見せつけた。「これで私の…」
男の手札を見る。彼の手には、8が3枚と4が2枚、あった

報告中断

経過報告43 その3

1

ベッドで仰向けになっている男に跨る。彼はズボンとパンツを下ろして男性器を露出しているのに対し、私は下着を身に付けずブレザーとスカート、靴下を履いた状態だ。視線を男の顔から更に下へと向ける。スカートの裾に隠れて見えないが、秘裂と陰茎が密着している
―そろそろ腰を動かしてもらってもいいかな?―
「いいけど…本当に素股でいいの? もっと本番行為とかをねだってくるのかと思ってた」
―挿れたいのは山々だけど、流石にセックスは激しく動き過ぎちゃうからね。ならばせめても素股でレイセンと気持ちよくなりたい―
「そう…分かったわ…」
両手をベッドに付けて、腰を振り始める。さすっさすっと性器同士が擦れ合う。口をへの字に結び、淡々と素股をこなしていく
不思議な気分だった。いつもなら裸になってから素股なりセックスなりをするのに、今回は中途半端に服を着たままなので背徳的な感情が背筋をなぞっていた。愛液と先走りで水音がし始めた股間部を見下ろしても、スカートが局所的に情事を隠してしまっている。この中では、確かに性的営みが繰り広げられているのだ

2

「ふぅ…はぁ…ふぅ…♡」
汗をかきながら腰の前後運動を続ける。性器が今どうなっているのか確認出来ず、見えない箇所から送られる快楽を頼りに頂きの見当を付けなければいけないので、いつにも増して素股のむず痒さが増大している気がする
恨めしげにスカートを見下ろした。騎乗位の体勢なら現在の陰茎の状態、秘裂の状態を見ることが可能なのに、それが出来ない。歯痒さが快感にまとわりつきながら脳へと送られる
男からスカートを捲ってほしいと頼まれたのは暫くしてからだ。「捲るの?」と問いかけると、今どうなっているのか目で確かめたい、と男が頷いた
「分かった」と言ってから裾を両手で持ち、腰を振りながら器用に捲って見せた。瞬間男が目を強く瞑って枕に頭を預けた
「どう? どうなってたの?」
すごいことになってた、と男が噛みしめるように答える。陰茎が更に膨らんでいくのが分かる
「そんなに…そんなに凄いの…♡」裾をぎゅっと握りしめる。このまま更に捲り自分の目でも確認しようかと思ったが、それをした途端に興奮で絶頂してしまうのではないかと恐れを抱き、やむなくスカートを離した

3

頃合いだ。下腹部の疼きが大きくなり、堪らず前かがみになる。男の左腕に触れないよう気を遣いながら肘を付け、お尻を前へ後ろへ振り続ける
「あっあっ、これっいっちゃうっ♡」
下半身を小刻みに揺らし、愛液で濡れた大陰唇をペニスに擦り付け、達した。足の指を折り曲げ、目をきゅっと閉じ、腰を痙攣させながら絶頂の余韻に浸る
「はぁ…はぁ…ああ…ごめんなさい…」
男はまだ射精していないと思い、腰振りを再開する。しかし彼が私のお尻を叩きながら、もう大丈夫、と制止してきた
「いや悪いよ、私だけいっちゃうのは」
いいから身体を起こしてスカートを捲ってみて、と言われたので上半身を反らせ、裾を摘み上げた。中に目をやると白濁の液体がペニスから流れ出ていた
「あ、貴方もいってたのね」スカートの裏に付いた精液を指で掬い取る。レイセンがいった時に俺もいっていた、と男が自白する
「…スカートに付いちゃったんだけど」
―まあ着衣のままなら付いちゃうさ―
「流石にこれは貴方が洗ってよ? 貴方の命令で着たままやったんだし」
―…じゃあ誰が洗うかポーカーで決めようか―
「嫌だ」と断ると男は苦笑した

報告終了

経過報告44 その1

1

32日目。男と再度お風呂に入ることになった
夕食を口に運びつつ男と会話を楽しむ。お皿が空になった所で、明日から仕事に復帰する、と彼が告げた
「左腕は大丈夫なの?」不安そうに訊ねると男は頼もし気に、これくらいの傷ならもう動いても平気だ、と左腕でガッツポーズを取った
「気を付けてね…」尚も心配になりながら男を見る
―大丈夫。無理に身体を動かすつもりはないから―
「そうじゃなくて、地上軍の兵士にだよ…。また逆恨みを買われるようなことになったら、私…」
男が口を閉じる。表情を固くしてこちらを見つめているが、その内顔を緩めて私の肩をぽんと叩いた
―死ぬことになったらその時はその時だ。どうせ戦争が終わったら消える命だ。早いか遅いかの違いでしかない―
「…私はどうなるの…? 貴方が死んじゃったら、私はどうすればいいの…?」
―…仮に戦争中に俺が死んだとしても、君だけは必ず助ける。助かるようになっている。だから心配しなくていい―
違う、そうじゃない。貴方がいなくなった世界でどう生きていけばいいのかと、私は訊いているんだ…

2

ご馳走様でしたと両手を合わせる。膨らんだお腹を撫でながら「明日から仕事に戻るのなら、今日の内にお風呂に入った方がいいよ」と男に助言をした。「腕が怪我してから一回もお風呂に入ってないわよね? いやよ私、臭い人なんて」
―うーんでも腕の包帯はまだ外しちゃいけないし、付けたまま身体を洗うのも難しいし―
「なら私が一緒に入って洗ってあげる」
えっ、と男が驚いた顔をする。「今回だけだからね?」ネクタイを外して顔を染めながら私は言った
一分もかからない内に二人とも裸になる。男の左腕には未だ痛々しい包帯が巻かれている。「痛い?」と訊くと、まだちょっと痛い、と彼は正直に答えてくれた
そのまま浴室へ直行する。まずは男を椅子に座らせて、お湯を頭にかける。左腕の包帯に液体がかからないよう慎重にノズルを動かし、髪を濡らしていく。次にシャンプーを手のひらで受け止めて、軽く延ばしていく。若干泡だった両手で男の頭を掴み、揉むように頭皮を洗った
「痒い所はございませんかー」しゃかしゃかと髪を洗ってあげる。何故か自然と笑みが零れていた

3

十分泡が浸透した所でお湯をかけた。包帯が濡れないよう左からシャワーを向けて流す。ありがとうと男がお礼を言う
「次は身体を洗うねー」
タオルで石鹸を包み、お湯で泡立てていく。男の広い背中にタオルを付けて上下に擦って垢を落とす。「痛くない?」と加減を確かめると男は無言で頷いた。しっかり汚れが落ちるように強く腕を動かした。頃合いを見計らってシャワーで泡を洗い流す
「最後は前ね」
膝を上げて男の前に移動しようとしたが、彼が腕を伸ばして遮ってきた。どうしたのと質問をすると、男は着替え部屋への扉を指さした
―あっちにマットが置いてあるから持って来てくれないか―
「マット?」
―ビニールで出来た寝転がれるマットだ。それで身体を洗おう―
よく分からなかったが言われた通りに浴室を出て、壁の端にかけられていたマットを持ってきた。「これを使うの?」
床に置くと中々の大きさだ。男は椅子から立ち上がるとベッドで寝る時と同じ体勢でマットに仰向けになった
―これで良し。後はレイセンが身体に石鹸を塗って抱き付くだけだ―
「え?」ワンテンポ遅れて訊き返す。よく見ると男のペニスは興奮で勃起していた

報告中断

経過報告44 その2

1

石鹸の泡を身体中に塗りたくる。摩擦と言う概念が消失した私の肌は、驚くほどにぬるぬるとしていた。「始めるね…」一声かけてから、マットに横たわる男に乗っかった。彼の上からうつ伏せになるようにして身体を寝かせる
「これで、次はどうしたらいいの?」
―身体を前後に動かしてくれればいい―
目を合わせながら男が答える。勃起した陰茎が彼と私のお腹の間で主張をしている
「こうかな」
肘と膝を固定させて身体を前後に揺り動かす。泡で濡れた乳房が男の胸板を擦る。お腹の下では陰茎が裏筋を擦られて気持ちよさそうに震えている
その調子で続けてほしい、と男が顔を蕩けさせた。愚息を刺激された快感からか、僅かに腰を浮かそうとしている
「先に聞いておくけど、んっ、これってちんちんを気持ちよくする為にやらせてるんだよね」
―いいや、きちんと綺麗にする為にやってもらってる―
「嘘つき…どうせ最後には射精して汚しちゃうくせに…」
―体外の汚れは簡単に洗えるけど、金玉の中を綺麗にするには精子を出すしかないんだ―
「も〜あー言えばこう言う〜」
そんな下らないやり取りを楽しみつつ、私はペニスをお腹で擦り回した

2

暫く上半身を合わせながら洗っていたが、男が脚を洗ってほしいと頼んできたので、一度身体を起こして彼の左脚に抱き付いた
どうしてあのまま続けなかったのかと不思議に思いつつ谷間や太腿で脚を洗っていると、見事に反り返った愚息が目に入った。泡で白くなり、ぴくぴくと揺れているペニスを見て、限界が近かったのかと今更納得した。「射精しなくていいの?」と訊ねると、お腹で擦られただけで出したくない、と男が言った。どうせならパイズリや素股で射精したい、と願望を口にする
「贅沢だなぁ」にゅるりと彼の左脚を泡まみれにしながら、腕を伸ばして陰嚢をさっと指先で撫でた。男の嬌声が聞こえる
「本当は出したいんでしょ〜? 我慢は身体に毒だよ〜?」にまりと笑って大きく膨らんだ睾丸を指でつついた。男の声が大きくなる
「…きーめた♡ お腹で射精させちゃおっと♡」
左脚から離れて右脚に抱き付き、男の顔を見上げてそう宣戦布告した

3

脚を洗い終わったので最初の体勢へと戻る。上半身を倒し、おっぱいを男の胸板に預け、ペニスをお腹で挟んだ
―レイセン、俺が限界だって言ったら頼むから止めてくれ―
「ん〜? 何か言った?」
聞こえないふりをして全身按摩を開始する。程よく肉の付いたお腹が、陰茎の裏筋を執拗に責める。男は二の句が継げなくなったのか、情けない声を漏らしながら下半身を揺らしていた
「出しちゃおうね♡ ぬるぬるのお腹を、もっとぬるぬるにしちゃおうね♡」
動きを加速させる。私と男の乳首が触れ合い、軽い痺れが脳を走る。ちんちんが更に硬くなっていく。これがあと3分もしない内に柔らかくなるのかと思うと、男がとても愛おしくなった
駄目だレイセン、と男が悲鳴を上げる。それ以上は射精する、と懇願にも似た報告をする
「いいんだよ、いっぱい出して♡」
ヘソが裏筋を撫でた。次にはペニスが大きく脈打っていた。腹部に熱を感じて、「あ」と二人で声を出す
身体を上げて解放された陰茎を見下ろすと、ちょっとだけ精液が飛び出ていた。完全に射精しなかった影響で硬度を保っている陰茎を確認し、私は妖しく笑った

報告中断

経過報告44 その3

1

「出ちゃった…♡」お腹に付いた精液を指で摘み取った。「ほら、これ♡ お腹で擦られて出ちゃったね♡」
男は顔を紅潮させて、興奮による過呼吸を繰り返している。快感に浸っているようにも見えるが、射精を抑えるための我慢の方が強そうだ
「でも量はちょっとだけだねぇ。いっぱい出した方が気持ちいいのに」
酸素を取り込むために喘いでいる口を懸命に動かし、だからお腹で擦られただけで射精なんかしたくない、と男が異議を唱えた
「ふーん…。それなら、こういうことをしても射精なんかしないんだね?」
私は身体を前の方へ動かし、彼との目線の位置を一致させた。すぐ下を見下ろせば彼の顔が目に入るし、彼も瞼を開ければ否応なしに私の悪戯顔が視界に飛び込んでくる。そんな状況で私は両脚を広げ、男の陰茎を手で支えた
何をする気だ、と男が戸惑う
「こうしちゃうの♡」
両脚と閉じて陰茎を挟んだ。肉付きの良い太腿がペニスを圧迫する。男の表情がふにゃりと蕩けた
「今から太腿で擦ってあげる…♡ 我慢できるかな?」

2

腰を引き、下半身を浮かせる。腿の間のペニスが上へ引っ張られる。そして今度は腰を突き、下半身を落とす。皮を下へと引っ張られたペニスが震え、亀頭が少しだけ顔を覗かせているのが伝わってくる
この動作をテンポよく繰り返した。普段から筋トレを怠っていないのでこの手の運動は大の得意だ。お尻を浮かせ、降ろし、浮かせ、降ろし、ちんちんを刺激していく
「どう? 気持ちいい?」
男の顔を伺いながら質問をするが、愚問のようだ。彼はだらしなく涎を垂らし、必死に快楽に抗っていた。こんなことで射精したくない、もっと気持ちいいことがしたい、という想いがありありと感じ取れる
「中々強情だなぁ。だったら、えいっ」
都合よく近くに置いてあったシャンプーのボトルを手に取り、そのまま後ろ手で臀部の方へと照準を合わせ、太腿の間で逞しく成長する陰茎に液を垂らした
突如降ってきた冷たい感触に驚いたのか、彼の腰が大きく跳ねた。私はシャンプーを垂らしながら腿を擦り合わせ、より陰茎をぬるぬるのものへとさせた
「ほーら♡ ぬるぬるしちゃうぞー♡」
ボトルを床に置き、泡が溢れ出る両脚を上下させた

3

レイセン、レイセン、と男がうわ言を言い始めた。余程いきたくないらしく、私の背中に腕を回して力強く抱きしめていた
「いってもいいんだよ? 捕虜に精子かけちゃお?」
嫌だもっと気持ちよくなっていたい、と男が首を振る
「別に太腿で射精することは、恥ずかしいことじゃないんだよ? こーんなににゅるにゅるしてるんだから、おちんちんがぴゅっぴゅしても平気だよ?」
それでも彼は下半身を力ませて、射精の誘惑と戦っていた。腰を振る速度を上げても歯を食いしばって耐える始末だ
仕方がない、奥の手を使っちゃおう
私は男の唇に舌をねじこむと、彼の口内を縦横無尽に掻き回した。不意のディープキスにびっくりした男が幸せに満ちた呻き声を上げた
更に、私は腕をお尻の方へと持っていき、太腿からはみ出ている亀頭を指でなぞった。泡の付いた中指で鈴口の周りをくるくると回す。5周ほど回転した所で指を下げ、裏筋を素早く擦った
男の咆哮が私の口へ飛んだ。腰をびくっと浮かせると溜まりに溜まった快感を放出した

4

お尻に熱い何かが降り注いだ。ねっとりとしていて簡単に落ちそうもない。しかもそれは大量に落ちてくる。ぱたりぱたりと不連続的に、温かい液体がお尻にかかる
それに比例するかのように太腿の間のちんちんが小さくなっていった。さっきまであれ程硬かった竿が嘘のように柔らかくなり、怯えるように痙攣している。はみ出ていた亀頭も太腿の中へと収まったが、不思議なことに両脚の内側にも温かな感覚が伝わってきた。泡とはまた違うぬるりとした感触が、内腿に広がっていく
「んぱぁ…ハァ…ハァ…」
ディープキスをやめる。私の舌と男の舌が唾液の糸で繋がっている。人差し指で糸を絡め取り、口の端を舐めた
「ふふ…♡ 我慢出来なかったでしょ♡」
男はくたりとした笑いを浮かべたまま、私の頬を撫でた。憑き物が落ちたような顔をしている
「約束して? 左腕の怪我が治ったら、舐めたり、挟んだり、抱きしめたりしてあげるから、早く元気になってね?」
約束するよ、と彼は穏やかに言った
身体を起こして男からどく。お尻に手を添えて軽く撫でてから手のひらを確認すると、真っ白に汚れていた

報告終了

経過報告45 その1

1

33日目。男が仕事へと復帰した
いつもの朝食を終えて暫く談笑した後、男が部屋を後にした。今日から自分の仕事へと戻る、とノブに手をかけながら男が振り向いた
「…分かった」私は少し沈んだ声で頷いた。「でも、ちゃんと戻ってきてね?」
扉の閉まる音が鳴り響く。またこの部屋に一人きりだ。孤独感が私の心をちくちくと突き刺してくる
取り敢えず筋肉トレーニングを始めてみた。汗をかけば気持ちを落ち着かせることが出来るかもしれないと思ったが、運動を終えると部屋の静かさが身に沁みた
手持ち無沙汰になった私は、過去の経過報告を見返して見ることにした。私が地上軍に捕まってから33日が経過し、報告を44個書き留めてきた。最初の方から順に記録を追ってみる
経過報告1には恐怖と不安で押し潰されそうになっている私がいた。捕虜の身となりこれから行われるであろう虐待に慄いている私だ
経過報告13には、男に告白されて困惑している私がいた。この時からだろうか、男への態度に変化が生じ始めたのは
夢中になって記録を読み進める。過去の自分はこんな感情を抱いていたのかと感慨深い想いが溢れてきた

2

経過報告19は、例の暴漢達が襲ってきた日だ。あれ程の恐怖は今までの人生の中で一度も味わったことが無いだろう。つくづく彼が味方になってくれて良かったと思う
経過報告30。この時に私は、処女を失った。自分から望んだ結末だ。男の出生や思想に共感を覚えたからか、それとも憐憫からか、はたまた諦念からか、今となってははっきりと思い出せないが、彼への愛情は真そのものだろう
経過報告41、これは4日前だ。男が銃で撃たれて負傷した日である。あの時はあらぬ誤解で築き上げた仲が壊れそうになったが、何とか持ちこたえることが出来た。男の私への想いを思い出すことが出来た
経過報告を閉じる。息を吐き、ベッドに身を投げる。この記録はいつまで続くのだろうか、と先の見えない未来を想像した
いや、結末は分かってる。月面戦争は必ず終わる。そして私は解放され、男は死んでしまう。これは揺るぎ無い事実なのだ
でももし、変えることが出来たら…。もし結末を無理やりにでも変えることが叶うのなら…
「……それにしても…」
私は思考を一時中断し、自分で書いてきた経過報告の感想を述べていた
「何か、途中からすごくいやらしくなってた…」

3

両手を顔に覆い、ベッドの上で悶絶した。顔から出る熱が手のひらを焼いてしまうくらい、私は恥ずかしくなっていた
書いている時には気付かなかったが、よくよく見なおしてみると私の文書はかなり性的なものになっていた。最初は淡々と出来事を述べていただけのはずなのに、いつからか克明に性交の詳細を書き綴っていた
「いやぁーもう、恥ずかしい…!」
枕で顔を抑える。この爛れきった経過報告を上官に見せなければいけないのだろうか。今更自分のしてきた愚かさにプライドが焼かれていく
だが上官は「その時の気持ちを事細かに記録するように」と仰っていた。ならばこのままにしておいた方がいいはずだ。でも、いや、でもなぁ…。男との情事とか私の性癖を書いちゃうのはなぁ…。少なくとも亀頭とか膣とかそんな言葉を使っちゃうのはなぁ…
ベッド上で脚をばたつかせながら、ああするべきかこうするべきかと決断を先延ばしにした。そしていつの間にか夜を迎え、男が部屋に戻ってきた。照明の強さは変わっていないはずなのに、室内が一段と明るくなった気がした

報告中断

経過報告45 その3

1

男のそれがゆっくりと、内壁を確認するかのように慎重に入ってきた。秘裂が押し広げられそのまま雁首を通過する。穏やかだった口呼吸が興奮によって震えを帯び始める
根元まで入りきった。亀頭が子宮の入り口を軽くノックし、私の視界がくらりと揺れる。笑いだした肘と膝を気力で伸ばして何とか四つん這いの姿勢を維持した
「はいっ…た…」
瞼を閉じて下唇を噛み、快楽のさざ波に立ち向かう。男は挿入をしたまま動こうとしない。私のお尻を両手で掴みながら静かに佇んでいる。痺れを切らした私は「なんで、うごかないの…?」と訊ねていた
背後の方で息を荒くしながら、久しぶりに挿れたせいで気持ちよすぎる、と男が理由を言った。つまりこのまま直ぐに動くとあっという間に射精してしまうと言うことらしい
「こんなの…なまごろしだよ…」瞳を潤ませて抗議をするが後背位の体勢ではこちらから満足の動かすこともできない。挿入運動は彼だけが頼りなのだ
暫く男はじっと我慢していたが、覚悟を決めてようやく腰を振り始めた

2

リズミカルに腰を打ち付ける音が鳴り響く。肉と肉がぶつかる衝撃音、擦れ合う性器から出る水音、口元から零れる喘ぎ声、二人だけの静かだった部屋は一気に賑やかな様相を醸し出した
「ふんっ♡ んっ♡ んぅっ♡」性的快感が喉を通り甘い声へと変化する。何度も何度も子宮を小突かれ愛液が多量に滲み出てくる。男の下半身を振る速度は衰えることが無く、限りなく速い速度でペニスを行ったり来たりさせた
不意に男が上半身を私の背中に付けてきた。覆いかぶさるような体勢でピストン運動を繰り返す。何をする気だろうかと桃色の脳で考えていると、またまた胸を持ち上げられた。彼はおっぱいを揉みながらセックスをしたかったのだろう
「ん、もぅ…♡」この時ばかりは恋人としてではなくある種の母性本能が芽生えていた。ひたすら乳房を求める男に子どもらしさを感じ取ったのだろう。だから私は怒るようなことはせずに「しかたないなぁ…♡」と彼の行いを許容していた
男の腰が小刻みに動く。徐々に膨らんでいく竿を感じ取りながら、もうそろそろだろうな、と彼の絶頂を予想した

3

中に出してもいいか、と男が早口で訊いてきた。私は唾を飲み込みながら「だめ♡」と答えた
いやだ中に出したい、と男は駄々をこねるように抱き着いてくる。「やだっやめて♡」と私も同じ言葉を口にする
男の胸を揉む手の動きが止まった。陰茎を擦る運動にだけ集中し始めたようだ。射精する気だ
耳元で彼が呻いた。途端に膣内が熱くなった。ペニスの震えが膣壁に伝わる。子宮に精液が流れてくるのが分かる。「あぁ…♡」と私は余韻に浸るような声を上げた。あれだけ駄目だと言ったのに、彼は拷問官という立場を利用して、いたいけな捕虜である兎に中出ししてしまったのだ
ちんちんの痙攣は止まらない。最後の一滴まで精子を絞り出そうと躍起になっている。子宮を白濁で満たすまでは射精をやめないつもりみたいだ。男の胸を揉む手が強くなり、柔肉が指の間で変形している。射精の快楽に負けないよう必死なのだろう
やがてペニスは小さくなり、精液を放出しなくなった。役目を終えた愚息を引き抜き、男が長い息を吐く。それから親指で秘裂を広げた
「あっ、こら」慌てて手で隠そうとしたがとろりと精子が垂れてきてしまった

報告終了

経過報告46

1

彼の様子が何かおかしい。言動の節々に正体不明の焦りが感ぜられる
34日目、午後。男が仕事から戻ってきたと思ったのも束の間、夕食だけを置いてすぐさま部屋を出ていってしまった。声をかける暇さえない。またすぐに戻るから、と男は言ったがそれから帰ってきた時刻は午後の10時頃だ
扉が開いて彼が現れる。ひどく疲れたような、今までの行いを後悔しているような、そんな表情を浮かべている。よろよろと近づいてくるとおもむろに私を抱きしめていた
「どうしたの?」彼の背中をさすりながら訊ねる。「何かあったの?」
―…何でもない。ただちょっと、疲れた…―
やつれた声が耳を通る。男の疲労は肉体的なものよりも精神的なものの方に近いみたいだ。既に潰れかけた気力を意志によって支えようとしている、そんな具合だ
―レイセン、お願いがあるんだ―
「何?」
―暫くこうして抱き合っていたい―
男の私を抱き寄せる力が大きくなる。決して離すまいと腕を締めてくるが、どこか遠慮も見て取れる。一体何がしたいのだろうかと私は眉間にしわを寄せた
「別に構わないけど、どうしたの、何があったの?」
彼は口を開かず、ただ私を抱きしめ続けた

2

電気を消しベッドに潜った後も、私たちはハグをやめなかった。性的な意味は無い、そのまま腕を背後に回すだけの行為だ
―ありがとう―
暗闇の中で男の声がする。「大袈裟だなぁ」と私はわざとらしく笑った。そうでもしなければこの得体の知れない不安感も身体に抱き着いて離れない気がしたからだ
「このくらいのことならいくらやっても平気だよ。もっと色々なことをしてきたんだし」
―そうじゃなくて、そういうことを全部ひっくるめてお礼を言いたいんだ―
いよいよ雲行きが怪しくなってきた。「ねぇ、何が言いたいの」と男を急かす。脈拍が上昇していくのが分かる
―今まで俺のわがままに付き合ってくれて、本当にありがとう―
「わがままって、そんなの当たり前じゃない。だって私は…」そこで口を噤み、どちらの単語を口にするべきか逡巡したが、「貴方の捕虜なんだから」と片方の台詞を口にした
男は何も喋らない。押し黙って、静かに私を抱きしめている。もしかしてもう片方の台詞の方を期待していたのだろうか。だとしたら言葉選びを誤ってしまったことになる
彼は口を開いて何かを言おうとしたが、そのまま疲れと共に寝入ってしまった

報告終了

補足

この報告は後日記録されたものである。本経過報告46では大した情報を書くことが出来なかったが、全体の様相を鑑みるとここが佳境であったことは間違いがない。よってここに以降の経過報告を妨げない程度の補足を付け加えることにする。ただし補足と言っても、書き足す事項は次の一つだけだ
私、レイセンが拷問官の男と共に生活を始めてから35日目の朝、つまり経過報告46を書いた次の日、月面戦争が終わりを告げた
正確に言えば戦争が終わろうとしていた。実際に事が決したのは36日目だと言う
この事実を先に知っていれば、戦況を把握していれば、34日目時点での男のあの態度にも理解が及んでいただろう。いや、その日だけでなく男と出会った初日の段階から、全ての真相を知ることが出来たはずだ
兎も角私は35日目に、男から今回の捕虜生活の真実を知らされることになる。その詳細については経過報告47を参照されたし

補足終了

経過報告47 その1

1

35日目。全てを知る時が来た
時計の針は昼の12時を指していた。ドアが開いて男がやってくる。この時間帯の訪問は大抵イレギュラーが発生した時に起こる。そして今回もその例に漏れず、男は神妙な面持ちで椅子に腰を下ろした
―レイセン…話したいことがある。取り敢えず座ってくれ―
ただ事ではない雰囲気に呑まれ、私は言われるがまま彼の対面に座った。テーブルを挟んで顔を向き合わせる
男は一度深呼吸をすると、私の目を見てこう言った
―戦争が終わる。今日の深夜には全てが決する―
「えっ!?」
思わず立ち上がって頓狂な声を出してしまった。「本当なの?」と大声で訊いた後、「どっち? どっちが勝ったの?」と男の肩を掴んだ
―落ち着いて。大丈夫、月の圧勝さ―
全身の緊張が一瞬でほぐれた。安堵の息を漏らし、私はゆっくりと椅子に座りなおした
「……戦争が終わるってことは、私はこの部屋から出られるのね」
―ああ、そうだ―
その時の私の気持ちは、どう表現すればいいのだろうか。あれ程待ち望んでいた解放が目前に迫っているというのに、私の心は浮かばれなかった。きっと解放以上のものがここにあるからに違いない

2

「とうとうこの日が来ちゃったんだ…」感慨深げに俯く。長いようで短い日々だった。正直な話、永遠にここに居続けるものだと言う錯覚を覚え始めていたので、この部屋から出られるという事実に非現実的な印象を抱いていた
―そうだ。もう俺の言うことを聞かなくてもいいし、無理に抱かれることもない。君は自由の身なんだ―
「貴方は? 貴方はどうなるの?」
彼は月面戦争が終わると死ぬと言っていた。それは揺らぎない未来だと。でも彼はまだここにいる。恐らく私に全てを説明する為に
―もう頃合いか。戦争は間もなく終わる。だから、レイセンに全部教えよう。今までの事の全部を―
男の物言いは教えると言うよりも懺悔をするような言い方だった。これまで犯してきた罪、隠してきた罰を曝け出そうとしている。私は無意味に座り直し、男が話し始めるのをじっと待った
―何から話せばいいんだろう。話さなきゃいけないことが多すぎる。でもまずは、そうだな、俺のことについてから話そうか―
彼は頬に汗をかき、苦しそうに口を開いた
―俺は、地上軍の人間じゃないんだ―

3

一瞬彼が何を言っているのか理解出来なかった。中途半端な笑みを浮かべて「え、どういうこと?」と訊き返した
―そのままの意味さ。俺は地上軍の人間じゃない。今まで嘘を吐いてきたんだ―
視界が揺れた。床が抜け落ち、どこまでも墜落していくような感覚に見舞われる。顔が青褪め、寒気が襲い掛かってくるのが分かる
「何…言ってるの…?」絞り出した声でそう訊ねた。「だってここ…地上軍の秘密基地の一部なんでしょ…?」
―違う。ここは地上軍の本拠地じゃない。全く別の場所だ―
そう言ってから彼は秘密基地の座標と今いる場所の座標を口にした。咄嗟に頭に月の地図を広げる。男の言う通りならば、この部屋と地上軍の位置はかけ離れていることになる
「じゃあここ…ここは何の場所なの…」
―月が所有する小さな基地の一つだ。玉兎隊が使っている。レイセンは知らない場所だな―
「玉兎隊って…貴方一体…」
―…言い方が悪かったな。もう一度きちんと言おう。俺は元地上軍の人間で、今は玉兎隊の仲間になっている。所謂裏切り者だ―

4

「裏切り者?」男の言葉を鸚鵡返しする。それほど頭の中は混乱していて、単純な反応しか受け付けなくなっていた。「地上軍を、裏切ったの?」
―ああ―
「いつから?」
―レイセンと初めて会った時からだ―
目を見開く。男の言葉一つ一つが衝撃となって降りかかってくる。私がここで築き上げてきた常識が瓦解していく
「あの時から? あの時から地上軍を裏切っていたの?」
―と言うより、月面戦争が始まって直ぐに俺は地上軍を裏切ったんだ。軍が月に着いてから真っ先に、俺は月に寝返った―
「何で…何で軍を裏切ったの…?」
―…もう嫌だったからだ。戦争を初めて、何の罪もない人々から全てを奪っていくのが、耐えられなかったんだ。だから俺は、月の味方になって、月を守ろうと決意した―
「そんなの私、上から知らされてなかった…」
―秘密事項だったから当然さ。俺が地上軍を裏切ったことは一部にしか伝えられていなかった。無駄な情報共有は逆に綻びを生みやすい―
胸が苦しくなっていることに気付いた。呼吸を忘れていた。慌てて酸素を肺に送り込む。呼吸をしなきゃ死んでしまうと言う常識すら壊れてしまいそうだ

5

「ちょっと質問してもいい?」
―勿論だ―
「私は確かに即席小屋で地上軍の人間に捕まったはずなんだけど。なのに何で貴方が、月の人間がここいるの?」
―簡単なことさ。俺と玉兎隊が君を救出したんだ―
「救出?」
―偶然だったんだ。偶然、玉兎の一人が地上軍の人間に連れられて行く君を見つけたんだ。それで慌てて連行途中の君を助けに行った。ただその時は、君は睡眠薬か何かを嗅がされていて意識が無かったと思うけど―
成る程、つまりそこから誤解が始まっていたと言うわけか。意識を取り戻して真っ先に目に入った彼をそのまま地上軍の人間だと勘違いしてしまったと言うことだろう。いや、でも…
「おかしくない? なんで貴方は地上軍だって嘘を吐いて、私を調教しようとしたの? いやそれよりも、どうして玉兎達は貴方が私を好きなようにしても誰も咎めようとしなかったの? こんなことは普通許されることじゃないのに」
男が口を閉じる。矛盾を指摘されて言い淀んでいるように見えたが、単純に口の中が乾いて一度閉じただけらしく、直ぐに舌を動かしだした
―それも俺が皆に嘘を吐いていたからだ。ちゃんと全部話そう―

報告中断

経過報告47 その2

1

―レイセンを地上軍から救出した時、君はまだ意識を失っていた。玉兎の皆は君を安静にする為に基地へ戻ろうと言ったんだけど、そこで俺は嘘を吐いたんだ―
「一体何て?」
―この娘は軍に洗脳されている。だから少しの間隔離して洗脳を解く必要がある、と―
突拍子もない単語に眉根を顰めた。洗脳? 今、洗脳って言ったの?
―そしてその洗脳を解く役を俺が務めることになって、あとは玉兎達に内緒で君に色々なことをしてきたと言うわけだ―
「…そんな子供騙しの嘘を、私の仲間は信じたって言うの?」
―そうだ―
「嘘よ、そんな…」
―俺は拷問官の職に就いていたから、洗脳に関する知識も持ち合わせていた。それらしいことを説明して、これを解けるのは自分しかいないと熱弁し、玉兎を納得させたんだ。あとは俺が今まで築いてきた玉兎への信用と、得意の口八丁で嘘を突き通した―
「そんな…」
―現に君も俺の嘘を見破ることが出来なかった。ここが地上軍の秘密基地で俺が地上軍の人間だと言う嘘を、最後まで信じていた―
そこを突っ込まれると何も言い返せない。私が彼に騙されていたように、玉兎隊もまた騙されていたのだろう

2

―ただ中には俺のことを疑っている玉兎もいた。レイセンが洗脳されているなんて言うのは実は嘘で、君によからぬことをしているんじゃないかとね―
「その玉兎の信用は、どうやって勝ち取ったって言うの?」
―契機は二つあった。一つは、君の手紙だ―
「手紙? それってもしかして…」
―そうだ。玉兎隊が負傷して、彼女らに応援の手紙を書くよう指示した、あの時だ―
「じゃああれも嘘だったってこと…?」
―本当に必要だったのは君の筆跡で書かれた手紙だったんだ。あの時に手紙の内容を抽象的に書くようお願いしたのも、それを読む玉兎が都合よく解釈するよう誘導する為にやったことだ―
「それと、兎のマーク…」
マーク? と男が首をかしげたが、何でもないと首を振った。きっと仲間は、私のウサギマークを確認して、男に害はないのだと最終的に判断したに違いない
―玉兎は何よりも君の安否を確認したがっていたからな。あの手紙で不信感を抱いていた玉兎が俺の嘘を信じてくれるようになった―
「……もう一つは? もう一つの契機って、何のこと?」
―あとの一つは、例の暴漢達だ―

3

「そう、暴漢!」思わず声を上げる。喉に突っかかっていた骨を思い出した気分だ。「あいつらは何だったの? ここが地上軍の秘密基地じゃないとしたら、あいつらはどこから来たのよ」
―あれは俺も予想外だった。この基地の場所は地上軍に知られていないはずだったし、まさか攻めてくるとは思ってもいなかった。完全に死角を突いた強襲だったから玉兎達も気付けなかった―
「ならどうして暴漢達はこの基地の場所が分かったの」
―分かったも何も君がしたことじゃないか―
何のことだか分からなかったが、「あっ」と自分のした過ちを記憶の底から引きずり出した。「小型無線機」
―レイセンがこっそりとしていた通信が、地上軍の兵に盗聴されたんだ。正確には互いの周波数が合致して向こうが逆探知から発信源を付きとめたのさ―
「じゃあ、彼らは貴方の味方なんかじゃなくて…」
―本当の敵だったんだ―
今更恐怖が襲ってきた。身震いしてから両腕を撫でさする。あの時は本当にあと一歩で、奴らに穢されるところだったのだ

4

―幸運だったのが、あいつらは君を捕まえて自分たちのものにしようと躍起になっていたから、上層部に教えずに自分たちだけでここにやってきたんだ。だからこの基地が落とされることもなかった―
「分かった、分かったけど、それが玉兎達への信用とどう関係があるの?」
―大ありだよ。俺があいつらと戦ったお蔭で、玉兎の皆は俺が地上軍の人間じゃないということを心から信じるようになってくれた。それで君への性的な行いもないものだと決めつけた。本当は両者はイコールの関係じゃないのにも関わらず―
「そうだ、ならあの暴漢達はどうなったの? 私は、あいつらは地上軍のルールを破ったから罰せられたって聞かされていたけど」
―勿論そんなことはない。ここは月の基地だし、あいつらに自分たちの秘密基地へ帰させるような真似はさせなかった。一人は君を助ける時に銃で殺して、残りの三人には拷問を行った。この戦争で月が有利に進むような情報を手に入れるためにね―
「……」
―兎に角そうやって玉兎隊との信頼関係を築いていったんだ。ああそれと、途中で君に会いたいと言っていた玉兎を君に会せたりもした―
「えっ嘘、いつ?」

5

―君が暴漢に襲われた後に高熱を出してうなされていた時があっただろ? あの時に玉兎に君の看病を手伝って貰ったんだ―
「あ」朧げな記憶が戻ってきた。あの時確かに、私は仲間を見た。夜中に私を心配そうに見下ろしていた玉兎達の顔だ。あれは熱に犯されて見た夢とも現実とも付かない幻だと思っていたが、本当のことだったのか。きっと彼は私が正常な判断が出来ない時を見計らって、彼女らをこの部屋に招いたのだ
―この一連の出来事だ。暴漢への対処と看病、そして手紙。これで何とか嘘を吐き続けることが出来た。そして暴漢がやってきたことについても、洗脳が解けきらない君が地上軍を呼んでここに来させたのだとそれらしく嘯いた―
「そう、だったんだ…」
これまでの疑念が全て氷解した気分だ。上手く説明できなかった事象が、男の独白によって明確なものへと変化していく。ただしそれは清々しいものではなく、むしろ知りたくもない泥に塗れた真実だった
―他に何か質問はあるかい?―
「……最後に一つ……」
私は濡れた目尻を親指と人差し指でほぐしながら、男に一番訊きたかったことを質問した
「どうして、こんなことをしたの…?」

報告中断

経過報告47 その3

1

「どうして皆に嘘を吐いてまで、私をこの部屋に閉じ込めたの?」
―それは前にも言った通りだ。ただ前に言った時は少し嘘も混じっていたが、根幹は同じだ。君を地上軍から助け出した時、君に一目惚れしたんだ。その時にエゴが生まれてしまった。君を自分の物にしたい、君に俺を好きになってもらいたい、そういう想いが込み上げてきた。でも戦時中に悠長に告白している暇はない。だからこうやって拷問官と捕虜という立場を利用することによって、無理やり君と恋仲になりたかったんだ―
「そうそこ、前は確か、敵対してる者同士だったから調教するしかなかったって言ってたわよね。でも最初から話せばよかったじゃない、自分はもう月の人間で君の敵じゃなく仲間だ、って。それなら私も警戒しなくて済んだし月面戦争が終わればいくらでも話し合うことが出来たはずなのに」
男がそっと頭を振った。それは無理なんだ、と静かに話した
―この戦争が終われば、俺は死ぬ―
「だからどうして死ぬのよ? もう月の仲間になったのなら、ここで暮らしていけばいいじゃない」
―穢れだらけの人間が、ここで暮らせると思うかい?―
男の声はひどく重かった

2

―俺はどうあがいても、地上軍を裏切って月の味方になっていたとしても、地上の人間であることには変わりがないんだ。俺が月で暮らしていくことなんてできやしない。そもそもの環境が違うんだから。かと言ってもう地球に戻ることもできない。戦犯として俺の名前は地上に広まるだろう。俺の帰る場所なんてどこにもない。死ぬしかないんだ―
「でも、だからって」
―それにたまたま聞いてしまったんだ。俺は地上の人間にしては月のことを知りすぎてしまったし、戦争が終わって用無しになったら処分されるだろう、って―
「そんな…」言葉が出なかった。絶句し、涙が溜まっていく。「じゃあ」と顔を歪ませながら叫んでいた。「じゃあ貴方は、自分が死ぬと分かってて月の味方をしてたの?」
男が顔を上げて微笑む。無理に笑っている印象はない。心からの笑顔だ
―あくまで自分の出来る範囲だけど、玉兎が傷つかなくてよかった―

3

男が立ち上がる。それに釣られて私も腰を上げた
―さあレイセン、君に拳銃を渡してあったはずだ―
ハッとした。私は棚に置いてあった銃を目で見やった
―護身用というのは半ば建前で、本当はこの日の為に渡しておいたんだ。それで俺を撃てばいい―
「なんで…」
―当然だ。俺は今まで君に酷いことをし続けてきた。口に言うのも憚れるようなことを。俺は自分のわがままの為だけに君を穢してきたんだ。君には俺を殺す権利がある―
「そんな、なんで…」
―大丈夫。玉兎の皆には、君の洗脳が完全に解けたと伝えてある。狂人扱いはされない。危うく襲われそうになって咄嗟に撃ってしまったとか、そんな嘘を吐けばいい。それらしい証拠もちゃんと持ってある―
「いや…」
―最後に、本当にすまなかった、レイセン。叶うならもっとマシな形で君に会って、真っ当に付き合いたかった…―
「いやぁ!」
テーブルを両手で叩いた。鈍い音が部屋に響く。顔を俯かせると、ぽたぽたと涙が垂れてきた
「お願い…もうやめて…」

4

部屋がしんと静まり返る。私の嗚咽だけが小さく聞こえる。男は黙ったまま目の前に立っている
―すまないレイセン、もう時間だ―
男の声で顔を上げる。彼は壁の時計を確認して、首を横に振っていた
―俺は一旦玉兎達の所へ戻る。今夜地上軍の基地を襲撃するからその会議をしないといけないんだ。ただその間、レイセンに会いたがっていた数人の玉兎がこの部屋に来る。だから、君には二つの選択肢が残されている―
鼻を啜りながら男の話を聞いた
―まず一つは、この後やってくる玉兎にこれまでの全てを話すこと。そうすれば俺は正式に月に罰せられるだろう。もう一つは、今までの事は全て隠し、俺を殺すこと。会議が終わった後にまたこの部屋にやってくる。その時に俺を撃てばいい。後者なら君がされてきた恥辱の数々を話さなくて済む―
男は踵を返して扉に向かう。ノブに手をかけて、別れの挨拶をする
―それじゃあレイセン、会うのならまた―
扉が閉まる。私は混乱と共に部屋へと置き去りにされてしまった

報告終了

経過報告48 その1

1

一体どうすればいいのだろうか。今までの全てが嘘だと分かった途端、私は途方もない虚無感に苛まれていた。目がぐるぐると回り、耳鳴りが聞こえる。身体の重心が覚束なくなっている。目の端からは音もなく涙が流れていた
「私…私…」
これから何をしたらいいのか。何を取り戻すべきなのか。考えようとするが頭が回らない。脳が思考を拒んでいる。このまま何も考えず路傍の石にでもなってしまえば楽になるだろうか
ノックが聞こえた。部屋の外から、誰かが扉を叩いている。「レイセン、入っても大丈夫?」
仲間の声だ。知り合いの玉兎の声だ。私は袖で涙を拭うと椅子から立ち上がり、ドアを開けた
「レイセン!」目の前には顔見知りの玉兎が3人いた。皆が一様に心配そうな顔つきをしている。「大丈夫? 気分は平気?」
「う、うん…」しどろもどろになりながら答えるが、嘘だ。今は平気とは程遠い
「心配してたんだよ? レイセンが洗脳されたって聞いて。でもあの人が何とか解いてくれたって」
あの人とは、拷問官のことだろう。彼女らは未だ真実を知らないのだ

2

この時私は悩んでいた。本当のことを言うべきか、言わないべきか。男は本当は私の洗脳を解くつもりはなく、と言うよりそもそも私は洗脳にかかっておらず、私を好きにしたいが為に玉兎隊に嘘を吐いていたと、そう真相を伝えるべきだろうか
考えた時間は一瞬だった。もしかしたら考えることなくその選択肢を選んでいたのかもしれない。私は「うん、まだ頭がふわふわしてる気がするけど、何とか大丈夫だよ」と男の嘘に乗ることにした
何故本当のことを言わなかったのか理由は分からない。ただ、仲間に自分がされてきた恥辱を話したくなかったから、と言う理由ではないことは確かだ
「本当に大丈夫? 脳みそとかに穴開けられてない?」
玉兎の一人がべたべたと頭を触ってくる。その遠慮の無さに「開いてるわけないでしょ」と噴き出してしまった。私の笑顔を見てほっとしたのか、3人もようやく笑ってくれた
「よかったぁ〜! じゃあもう平気なんだね!」
「だから言ったじゃない。あの人はスパイじゃなくて私たちの味方なんだって」
「そうだねぇ。あとできちんと謝らなきゃ」
彼女たちのやり取りを見て私は懐かしさを覚えた。一か月ぶりの再開は、とても良好なものだった

3

「ねえ、分かってると思うけど、私は長い間洗脳されてて、戦況とか今の状況とかよく分かってないの。よかったら教えてくれる?」
取り敢えずの落ち着きを取り戻した私は、3人から情報を聞き出そうとした。今自分がするべきことは兎に角情報を集めることだとそう直感したからだ
「あーあの男の人から聞かなかった?」
「一応は聞いたけど、まだ脳がこんがらがってて…」
「じゃあ最初から説明したげるね」彼女は嬉しそうに腕を組むと、これまでの戦況を説明してくれた。「レイセンが地上軍の奴らに捕まって洗脳された時から数日間は、一種の停戦状態にあったんだよ」
それは確か男も前に言っていた。地上軍は月に太刀打ち出来る決定打が無く、月は地上軍の基地の場所が掴めずにいたから停戦状態にあった、と
「そう言えばレイセンはどうしてあんな場所に一人でいたの?」
「ん、あぁ、私は地上軍の秘密基地を探し出す単独任務を言い渡されていたのよ」
「あっそうだったんだ。だから地上軍に襲われた時に成す術が無かったのね」
「まあ、そうね…」本当は自分の不注意から起こった不祥事だったのだが、それは言わないでおこう

4

「それでえーと…。どこまで話したっけ? ああそうそう、それで暫くは停戦状態が続いたんだけど、例の彼が秘密基地の場所を突き止めてくれたのよ」
「どうやって?」
「あいつらだよ。ほら、この基地にやってきた4人組の地上軍」
恐らくあの暴漢達のことだ。「あいつらの内3人を彼が拷問して、それで秘密基地の場所が分かったんだ」
「…あれ、ちょっと待って? 確か彼は地上軍を裏切ったのよね?」
「うん、そうだよ」
「それなら拷問なんかしなくても、彼が秘密基地の場所を知ってたんじゃないの?」
「それがさぁ…」玉兎の一人が溜息を吐いた。「彼は月に来た瞬間に私たちの仲間になちゃったから、秘密基地がどこにあるのか知らなかったのよ。地上軍の大規模な基地が出来たのはそれから少し後だし」
「あぁ、そうだったんだ…」納得しかけたが、次の疑問が浮かび上がってくる。「でもあいつらが来たのって大分前だったよね。その日から拷問を始めてたとしたら、もっと早い段階で秘密基地の場所が分かったんじゃないの? どうして今夜地上軍を攻めることになったのよ」

5

「うーん確かにそうだけど、その考えはちょっと間違えてるね。拷問を始めたのはあいつらが捕まってから一週間後だったから、少し遅れたのよ」
「一週間? なんでそんな期間を空けたの?」
「その時レイセンが高熱でうなされてたから」
「あっ…」
「彼が言ってたんだけど、洗脳状態が悪化したせいで熱が出たらしいのよ。危険な状況だったから付きっ切りで看病するしかなかったんだって」
「因みに私たちもこっそり看病してたんだけど気付いてた?」
「う、うん…何となくだったけど」
「まあそんな理由であいつらに構ってる余裕が無かったんだけど、レイセンの熱が無事下がったから拷問を始めることにしたんだって。でもあいつらも中々強情だったから、白状するまで10日くらいかかっちゃったの」
「……それでそいつらはどうなったの?」
得意げに話していた玉兎が急に押し黙った。バツの悪そうな顔をして、互いに視線を交えている。「まだ生きてるらしい、けど…」
「その、実は私、一度だけ見たんだ…」一人が少しどもりながら呟くように言った。「人ってあんな状態になっても、生きていられるんだね…」

報告中断

経過報告48 その2

1

「一週間くらい前かな、秘密基地があると言われた場所へ調査しに行ったのは。玉兎隊の数人と、男の人が出かけていったんだ」
「そこで地上軍の基地が見つかったの?」
「いや、その時はまだはっきりとは見つからなくて…おまけに男の人が地上軍に撃たれて…」
撃たれた、という言葉に耳がぴくりと動く。「撃たれた個所って、もしかして左腕?」
「そうそう! 二の腕のあたり! 骨には当たらなかったらしいけどあれも大変だったなぁ」
「……」
私は男との会話を思い出していた。彼は他の兵との口喧嘩が発展してああなったと説明していたがそうではない、ただ単に敵と見做されていただけなのだ
「それで3日くらいの安静が必要だってことで探索が一時中断、翌日からまた調査を開始してようやく2日前に地上軍の本拠地を探り当てることができたってわけ」
「…その日に攻め込まなかったのはどうして?」
「そりゃあ準備が必要だったからだよ。いくら月の技術力が上回っているからと言って、油断してたら負傷者が出かねないからね。でも攻撃の準備は昨日の段階で済ませておいて、段取りを念入りに確認してから今夜襲撃するって寸法ね」

2

そこでようやく私は昨日の男の態度を理解した。彼はあの時、地上軍の秘密基地を攻め落とす準備をしていたのだ。それは即ち、月面戦争の終わり、ひいては私との秘密の逢引が終わりを告げるということを意味している。だから彼は希望の失せた顔で私との抱擁を求めたのだ。今まで隠してきたことの全てが白日のもとに晒されるから
「あの、レイセン…実は謝りたいことがあって…」
「え?」
ふと玉兎達を見ると、彼女らは一様にすまなそうな表情をしていた
「実は私たち、一度レイセンを見捨てようとしちゃったんだ…」
「…どういうこと?」
「レイセンが地上軍の奴らに捕まて連行されていく時、私たち黙って見てたんだ。あのままこっそりと後を付けていれば秘密基地の場所が分かるかも、って…」
「でも彼が」別の玉兎が口を開く。「それはあまりにもリスクが高すぎるし何よりもレイセンが酷い目に合ってしまうって言って飛び出して…」
「あぁ…」
「ごめんなさい…本当は私たち、同じように捕まるのが怖かっただけなのに…本当にごめんなさい…」
3人が頭を下げる。私は唇を結び、涙をこらえながら「ううん、いいの」と彼女らを許した

3

「それじゃあそろそろこの部屋を出よっか。レイセンも一か月近くこんな場所にいて窮屈だったでしょ? 早く皆の所へ行こうよ」
仲間がドアノブに手をかけたが、「待って」と私は短く言った。「ごめん、私、まだここにいなきゃ…」
「え? もしかしてまだ調子が悪いの?」
「うん…その…そうなんだ…」
「そんな、大丈夫? 私たちもここにいようか?」
「いやそれはいいの。ただもうちょっと一人でいさせて…」
「……分かった! じゃあ元気になったらまた会おうね!」
そう言って3人は部屋から出ていった。一人きりになれた私は室内をぐるぐると歩き回りながら思考を整理させた
今日は色々な事実が一辺に押し寄せてきて頭がこんがらがっている。だから、確かなことだけを集めて本当に大事なことを確認しておかなければならない。私自身のこと、今回の戦争のこと、そして勿論男のこと。それら全てを一つずつ、割れ物を扱うように慎重にまとめあげていく。やがて最終的な「答え」を導き出し、これしかない、と拳を強く握った
時計を確認する。男はまだ来ないのだろうか。私は彼が戻ってきた時のことを考え、拳銃を棚から取り出した

報告終了

経過報告49 その1

1

時刻は午後の3時を回った。扉が音もなく開き、彼が姿を現した。堂々としながら歩いているが傲慢さは感じない。全てを受け入れようとしている者の顔つきだ
そんな彼に私は拳銃を向けた
―……―
男は訝しげに眉を曲げながら、向けられたグリップ部分を手で掴んだ。私はフロントサイトから指を離し、ピストルを彼に返した
―…どういうことだい、レイセン―
「拳銃なんかいらない。貴方を殺すつもりはない」
―……―
沈黙が続く。こちらから話を切り出そうとしたが、先に男が口を開いた
―さっき玉兎達に会ってきたよ。彼女らは俺を咎めなかった。君は俺がしてきたことを説明しなかったのかい?―
「うん。洗脳されてたって嘘を私も吐いたの」
―何故? 俺を許すつもりか?―
「うん」私ははっきりと首を縦に振り、真剣な眼差しで男の顔を見た。「許すわ」

2

「私、考えたのよ。何を信じるべきで、何に従うべきか」ぽつりぽつりと語り始める。男は黙って私の話に耳を傾けている
「正直なところ今もまだ混乱してる。いきなり真実を伝えられて、今までのほとんどが嘘だと知って、自分が何をしたいのかさえ分からなくなってる。でも、そんな状況でも、確実な事は私にも理解できた」
顎を引いて視線を床に向ける。「貴方は私をこの部屋に閉じ込めて、自分の欲を満たすために私を騙して、私の仲間にも嘘を吐いて、色んなことをしてきた」
―……―
「はっきり言って最低だし、真っ当な人間のすることじゃない。でも…」顔を上げ、縋りつくような目で言った。「でも、貴方は私を助けてくれたじゃない」
男の頬がほのかに動いた
「例の4人組がここへやってきた時、危険を承知で私を助けてくれた…」
―それはレイセンを誰にも奪われたくなかったからそうしただけだ。邪な心があったからそうしたんだ―
「じゃあ私を最初に救ってくれた時はどうなの? あの時はまだ私を閉じ込めようだなんて考えずに、ただ助けたいって理由だけで地上軍に立ち向かってくれたじゃない。他の玉兎は諦めていたのに、貴方だけが私に手を伸ばしてくれた」

3

「私だけじゃない。貴方は月の為に戦ってくれてたのよ。地上軍を裏切って自分の死を覚悟して、私たちの為に貴方は命がけで戦ってくれた。それなのに…私は…」
スカートの裾を握り締めた。ここで何とか耐えないとつかえていたものがとめどなく溢れてくると重々分かっていたが、無理だった。気付いたら涙が頬をつたっていた
「私は…捕虜だからって理由で……戦争にも参加しないで……ここでダラダラと毎日を過ごして……なかっ仲間が……頑張って戦って、戦ってたのに…私だけ…」
―違うレイセン、それは俺が騙してたからだ。レイセンは悪くない―
「皆頑張ってたのに、私だけここで…戦争が終わらなければって……そんなことを考えて……ほんと私って……最低……」
―レイセン!―
男が両腕を伸ばして私を抱きしめた。彼の胸板が私の顔に当たる
―俺が悪かった。全部俺のせいなんだ。俺が最低だっただけなんだ―
男の声が鼻の詰まったものに変化していた。震える私を力いっぱい抱き寄せ、嗚咽を零した
私も男を抱きしめ返し、溜めてきた涙を垂れ流し続けた

4

時計の針が進む音が聞こえる。いつしか涙は止まっており、私たちはただ黙って抱き合っていた
「……ねぇ、訊いてもいい?」
男の返事は返ってこない。沈黙を肯定だと解釈し、質問をぶつけた
「一つだけ、本当かどうか分からないことがあるの。……貴方は本当に私を愛してるの?」
当然だ、と男が即答した。それだけは嘘を吐かない、と耳元で力強く言葉を発する
「ならお願い。私のことを愛しているのなら、私の話を聞いて」
彼は私から身体を離し、一体何のことだい、と訊ね返した
「とても重要なことなの。私はこれまで、貴方の言うことを聞いてきた、だから今度は、私の言うことを聞いて」
―…分かった、レイセンの言う通りにしよう。それで俺はどうすればいいんだ―
「うん。でも、その前に…」
男の頬に両手を当て、そっと口付けをした。唇同士が軽く触れあう。彼の顔に手を添えたまま、わがままを言った
「お願い…抱いて…」

報告中断

経過報告49 その2

1

男の舌が私の舌に絡みつく。腕を背中に回し合い、身体を密着させ、機械的と言えるほど淡々とディープキスを行った。衣服を脱いで全裸になった私たちは、じっとりと汗を滲ませながらベッドの上でキスを続ける
まるで水中を漂っているかのようだ。息苦しいが全身が穏やかな快感に包まれていて心地がいい。肺が酸素を欲したら急いで水面から顔を出し、またキスと言う名の潜水を繰り返す。身体の特定の箇所が濡れ始めていくのが分かる
何度目かの深呼吸の後、男が本当にしてもいいのかと訊ねてきた。これ以上君を穢してもいいのか、と
「いいの。私はもう貴方で染まっちゃったから。それに、今は貴方と繋がっていたい」
この後に自分がやろうとしていることを思い浮かべ、肩が震え出す。上手くいくかどうか、上手くいったとしてもまともに生きていけるかどうか。次から次へと湧き出てくる不安が私の焦燥を駆り立てる。この恐れを落ち着かせてくれるのは彼以外にいないのだ
「お願い。私を穢して」

2

胸の柔肉が男の手で掴まれた。五本の指が肌の木目細かさを確かめるように蠢く。乳首は手のひらに当たり、手首を動かされる度に軽く擦られる。弾力のある胸は男の指を包み込み、興奮するに足ろう感触を与えていた
どうやら彼は愛撫を続けるらしい。私の陰部は既に受け入れの姿勢を整えているが、もう少し前戯に励みたいようだ。男は下乳の部分を鷲掴むと胸全体を揉み回した。何周かしたところで親指と人差し指を伸ばし、乳首を摘んだ。痛くならないよう程よい力で突端を摘まれ、私は艶めかしげに腰をくねらせた
それから男は顔を乳房に近づけて、乳首を吸い始めた。唇を窄めつつ舌先で乳輪を刺激する。いよいよ我慢出来なくなった私は男の頭を撫でると、「ねえ」と挿入をねだった。「お願いだから、そろそろ…」
男も焦らす気は無いらしく、胸から顔を離すと少し上半身を上げて、自身の性器の位置と私の性器の位置を確認した。右手で根元を押さえ、亀頭が秘裂と触れ合うようにする。位置の調整を終えた彼はベッドに両腕を伸ばしたが、私はその手を取って無理やり恋人繋ぎを作った。男は泣き出しそうな顔を一瞬だけ見せ、静かに腰を突き出した

3

幾回と子宮に精子を出し続けてきたペニスが再び膣内へやってきた。これが最期のまぐわいだと思っているのか、陰茎は死ぬ直前にせめて子孫を残そうと奮闘し、今までよりも一段と大きくなって私の下腹部を突っついた
「ぅく…」
これまでと比べ物にならないほどの太さに私は戸惑いと喜びを覚え、きゅっと彼の手を握った。彼も幸せに満ちた顔で目を閉じながら、私の手を握り返してきた
合図らしい合図もなく、男は腰の往復運動を開始した。何とか私に子どもを作らせようと躍起になって膨らんでいる陰茎が、膣壁と自身を擦り合わせる。こうして擦り続ければやがて子種が噴き出て子宮を満たすと本能的に理解し、必死になって裏筋や雁首を膣で摩擦させる
「うぅぅ…ああぁぁぁ…♡」気の利いた言葉は一つも出てこなかったし、不要だと思った。今必要なのは互いを愛し合った結果として出てくる他愛の無い嬌声だけだと確信していた。男も何も言わずに黙ってピストン運動をするだけだった
単調な、それでいて幸福に満ちた時間は、あっという間に過ぎていった。私の限界と彼の限界が顔を覗かせ始めた。男は鋭く、レイセン、と名前を呼ぶと、竿をぶるりと震わせた

4

細い子宮の入り口から精液が流れ込んできたのが伝わった。ぴったりと密着した鈴口から直接、精子が飛ばされてくる。彼は射精したのだ
一度目の痙攣の後、直ぐに二度目の痙攣がペニスを襲った。今まで蓄積されてきた快感をちょっとずつ発散するように、精液が尿道を通って子宮へと排出される。竿のひくつきは大きなものから小さく連続的なものへと変化し、白濁液を垂れ流し続けた
男は絶頂の影響によって口をだらしなく開け、無言で喘いでいた。腰を奥まで押し付けて、一滴もこぼすまいと陰嚢から精液を送り出している。力が抜けてしまったのか恋人繋ぎをしている指が開いていった。私は逆に手の力を強め、男の代わりに指を深く絡ませた
射精は驚くほど長く続いた。勢いは最初の方よりも弱まっているものの終わりが見えない。細い管から粘性のある体液を吐き出し続ける。ちょろりと鈴口から雀の涙ほどの精子が出た時には、私の子宮は彼の命で満ちていた
私は手の繋ぎをほどくと両腕を彼の背後に回し、耳元で彼の名前を呟いた後、「愛してる」と告白をしていた

報告中断

経過報告49 その3

1

そろそろ行こう、と男が袖に腕を通しながら言った。私も服を着つつ時計を確認する。夜の6時を過ぎていた
―攻め込むのは今夜の零時丁度だ。大まかな段取りは既に決めてあるが、この後の会議に出席する必要がある。この部屋を出ないと―
「私はどうすればいいの?」
―…レイセンには危険な目に合ってほしくない。正直、安全な場所で戦争が終わるのを待っていてもらいたい。でも、君は参加するつもりなんだろ?―
その通りだ。最後の最後くらい、私も月の為に役に立ちたい。それにもう一つの目的の為にも、この襲撃に参加する必要がある
―さあ、出ようか―
彼は扉を開けると先に廊下へ出ていった。私も後に続いて扉の外へ足を伸ばす。驚くほどあっさり、私は一か月間も閉じ込められていた部屋から脱出した
「ねえ…」歩き出そうとした男を呼び止める。男は身体をこちらに向けると、どうした、と穏やかに訊ねてきた
「さっき言ったわよね。貴方に言いたいことがあるって…」

2

「貴方はこの月面戦争が終わったら死ぬって言ってたけど、どうして?」
―前に言ったじゃないか。俺には帰る場所がない。地球に戻っても戦犯として追われるだけだし、月に居続けることもできない。惨めな思いをするくらいなら今夜の襲撃で潔く散る。月の為にも、レイセンの為にも―
「私の上官の一人がね、言ってたの」無意識の内に両手の指を絡ませ、俯き気味になって話す。「『逃げなさい』って」
男の眉がぴくりと動いた
「『もし命の危険を感じたら、無様でもいいから、逃げなさい。生きるということが最も大事なことだから』って。そう教えてくれたの」
自分で想像していたよりもゆっくりと、心を落ち着かせながら話すことが出来ていた。顔を上げ、男の顔を見据える。「だから逃げるのよ。貴方は逃げなくちゃいけないの。どんなに辛くても、死にたくなっても、いつか必ず報われる日が来るから」
彼は無言で私の言葉に耳を傾けていた。最初は険しい顔つきをしていたが、徐々に穏和な表情へと変化していった
―レイセン…君の言っていることはもっともだ。だが、俺はどこへ逃げたらいいんだい?―

3

静かな微笑みを湛えながら彼は口を動かした
―月には当然いられない。かと言って地球に戻る気もない。俺はもうあそこには行きたくない。家族もいないし、俺を待っていてくれている者は誰一人として存在しない。軍はとっくに地球へ向けて俺の犯罪行為を伝えてある。地上へ降り立ったとしても直ぐに捕まるだけだ―
彼の話を聞き終えた私はふっと息を吐くと、不適に笑って見せた
「じゃあ、今言ったことを全部解決すればいいのよね?」
男は私の発言に驚いたようで、何か考えでもあるのか、と喰い気味に顔を寄せてきた
「ずっと前から考えてた計画なの。貴方が死ぬって知った日から、私が貴方を好きになってしまった日から」
一度深呼吸で間を空けて気持ちを整えてから、自身の計画の全てを彼に話した
私の話を聞いていた男は始めこそ眉に唾を付けるような顔をしていたが、段々と聞き入る姿勢をとりだし、最後の方では生きる希望が彼の瞳を輝かせていた
―まさか、そんな場所があるなんて。けどその計画だと、レイセンは…―
「いいの」鋭く、それでも優しく、笑って首を振った。「どうせ私も、もう月にはいられないんだから」

4

「あっ、レイセン! 待ってたよー!」
基地の大広間と言うべき場所に辿り着いた。中には玉兎隊が机上の地図を取り囲んで何やら話し合っていた
「遅れてごめん。ちょっと大事な用事があってね」
「いいのいいの。気にしないでね」
「それより、ちょっと訊いてもいいかな。今夜の襲撃ってもしかして私たちだけでやるんじゃないわよね?」
「まさかぁ。敵の本拠地を潰すんだから全員総出で攻撃しにいくよ」
―これはあくまでグループ間での作戦会議だ。この後一旦他の玉兎隊とも合流して全体での計画手順を煮詰めていく―
「そう、よかった。なら私も参加出来るのよね」
「え」仲間が一様に心配そうな目を向けてきた。「でもレイセン、大丈夫なの? ずっと洗脳されていたんだし、安静にしていないと」
「大丈夫。これで最後なんだから、私も月の為に戦わないと」
レイセン…と皆が涙ぐむ。チームが一丸となって最終決戦へ臨まんとする中、私は彼女らに嘘を吐いたことによる罪悪感と密かに戦っていた

5

その後はとんとん拍子に事が進んでいった。小隊での話し合いを終え、この基地から離れて他の玉兎隊と合流し、地上軍の情報を交えての作戦会議が始まった。それも滞りなく進行し、秘密基地を攻撃する時間が目前に迫っていた
「あそこだ。あそこに地上軍の基地がある」
上官が地平線へ指を向けた。岩だけが転がっているあの地帯の下に、地上軍の基地が隠れている
「分かっていると思うが、この戦いは私たちの一方的なものとなるだろう。だが油断はするな。追い詰められた人間は何をしでかすか分からない」
上官の話を聞きながら周囲に意識を配る。大勢の玉兎が銃を手に持ち、攻撃の合図を待っている。私の傍らには彼もいる。彼は私が見ていることに気付くと、大丈夫、と唇だけを動かした
大丈夫、と私も声を出さずに口を動かす。大丈夫、私が付いている
「最後に一つ」上官が息を止め、もっとも言いたかったであろう言葉を我々に飛ばした。「敵前逃亡は恥と思え」
あぁ先にそれを言われちゃうか、と私は苦笑する。首を上に向けると数多の星が煌めいていた

報告終了

経過報告50 最終報告

1

首を上に向けると月が見えた。私が住んでいた故郷、穢れの無い大地だ
―今日は月がよく見えるね―
隣で彼が感慨深げに呟いた。私たちは窓を開けて掘っ立て小屋の中から雲一つない夜空を見上げていた。爽やかな風が竹林を揺らして笹の音を鳴らしている
件の月面戦争の終戦から早一週間が経とうとしていた。あの襲撃の時に何があったのか説明しておかないといけない
率直に言うと私たち二人は逃げ出したのだ。頃合いを見計らい、地上軍の乗り物を一つ拝借し、地球へと逃げた
玉兎隊の攻撃は驚異的の一言に尽きるだろう。地上軍の兵士を圧倒し、あっという間に基地を占領した。夜襲に参加していた私たちはその場の混乱に乗じて地球へと飛び立ったのだ
己の名誉の為に言っておくと、襲撃が始まってすぐに逃げたしたわけではなく、それ相応の活躍は見せた。敵軍の何人かを戦闘不能に陥れ、ほとんど勝負が決した所で月を離れた。だが他の玉兎達の目には、私が敵前逃亡をしたように見えていることは間違いないだろう

2

月を離れて地球のどこへ向かったのか。男の故郷には帰ることは出来ない。では私たちはどこを目指していたのか
その昔、とある場所の話を私は聞いていた
そこでは現世で消えたはずの者達が我が物顔で日々を謳歌しており、特殊な結界によって外と隔絶されている。誰にも見つからず、介入もされず、しかしこの世で否定された存在の全てを受け入れてくれる。かつて月で暮らしていた輝夜様や八意様も今はそこで生活をしているらしい
その場所は、幻想郷と呼ばれている
幻想郷に辿り着けるかどうか不安だった。大体の場所は把握していたが正確な位置までは特定出来なかった。だから私は震える手で操舵を握りながらひたすら祈った。どうか彼と無事に幻想郷へ行けますように、と
気付いた時には地面に降り立っており、私たちは幻想入りを果たしていた。どこか浮ついた足つきで土を踏みしめながら、穢れに満ちた世界の空気を吸ってみる。背後では男が、信じられない、と実感の湧いていない声で空を仰いでいた。そんな彼に私は太々しさを交えつつ「ようこそ、幻想郷へ」と微笑んでいた。理由は分からないが私はここが幻想郷なんだと直感していた

3

幻想郷へ行く計画は前から建てていた。しかし、赴くのはあくまで男だけの予定だった。彼が死なないように全てを受け入れてくれる場所を伝え、逃走の手助けをするつもりだった
だが私も彼と一緒に幻想郷へとやってきた。理由は二つ。一つは月で暮らしていける自信がなかったからだ。男と性交を重ね、穢れきった身体で月に居座ることは出来ない。無論仲間の誰にも私が潔白の身だと嘘を言えばばれないで済むだろうが、今となっては皆を騙し続ける罪の重さに耐えきれなくなり結局自滅してしまうと確信している
もう一つの理由は、これが一番大きいのだが、彼と離れたくなかったからだ。私の人生を無茶苦茶にし、高潔な存在である玉兎を欲のまま穢し、最後は迷惑をかけたと言って死のうとした類稀なる身勝手な男だが、私を心の底から愛してくれている唯一人の人間でもあるのだ。そんな彼と一生会えなくなるのは嫌だった。もう一人にはなりたくなかった
だから私も幻想郷に行くことにした。ただそれだけだ

4

「優曇華ー。ちょっと蔵からこの薬草を持って来てくれない?」
永琳師匠が薬草名をつらつらと書き連ねたメモを寄越してきた。彼女は新薬の研究で忙しいらしく、机に向かって何やら計算式を書きながら紙を渡してくる。「はーい」と私は元気よく返事をした後メモを受け取り、永遠亭の庭にある蔵を目指した
「あっイナバ。ちょっとこっちに来て」
襖の向こうから姫様が手招きをしている。「お昼寝したくなっちゃって。膝枕してくれる?」
「あーごめんなさい姫様。今は師匠に頼まれて薬草を取ってこなくちゃいけないんです」
「え〜?」姫様はこれ見よがしにほっぺを膨らませると、「じゃああとでちゃんと来てよね」と笑ったまま襖を閉めた
靴を履いて庭を歩く。蔵の一歩手前まで来た瞬間、私の身体は下へと落ちていった。落とし穴に引っかかったと気付くまで時間がかかった
「やーい引っかかったー! 鈴仙のば〜か!」
穴を見上げると小憎たらしい顔つきのてゐが文字通り見下ろしていた。「てゐ〜!」と怒りながら外へ這いずり出る。やんちゃな悪戯兎はけらけらと声をあげながら竹林へと逃げていった

5

永遠亭の皆に受け入れられてもらえたのは幸運と言えるだろう。最初は月の追っ手だと警戒され、私と男諸共射殺される寸前だった。そこにてゐがやって来て、初対面である私たちの為に色々と手を貸してくれた。そのお蔭で姫様や師匠も警戒を解き、永遠亭で働くことを許してくれた。オマケに竹林の中にある掘っ立て小屋を譲ってもらえた。これで衣食住に困ることはないだろう。もっともてゐの執拗な悪戯には辟易とさせられるが
男も直ぐにここの環境に慣れていった。彼は永遠亭での雑務を行ったり、一人で人里に赴いて日雇いの仕事をこなしたりした。いきなりやって来た外の人間を信用してくれるのは、きっと彼お得意の口八丁のお蔭だろう
兎も角こうして四苦八苦しながら幻想郷で過ごしている内に一週間が経とうとしていた

6

竹を掻き分けながら歩いていく。外はすっかり真っ暗だが、笹の間から月明りが私を照らしてくれている。もう少し歩いていけば我が家へ着く
師匠は「二人とも永遠亭の空き部屋で暮らしてもいいのに」と提案してくれたが、私たちは掘っ立て小屋の方を選んだ。二人きりで誰にも邪魔されない空間は魅力的だったし、何より愛を確かめ合っている時の声を聞かれたくなかったからだ
向こうから小屋の明かりが見える。小窓から湯気もうっすらと見える。今日は彼が夕食当番の日だからきっと温かい料理を作ってくれているのだ

さて、唐突だがこの辺りで報告を終わらせておこう。この後も私と彼に様々な出来事が起こるのだが、それは大抵些細で平穏なもので一々記録するものでもない。何より私はもう彼の捕虜なんかではなく恋人として生活しているのだから本記録の趣旨とも反している。よって報告を終わらせるべきだろう

小走りで小屋へと向かった。早く彼と一緒にご飯を食べよう。一緒に笑って、一緒に寝て、少しいやらしいこともしたりして、この幻想郷で暮らしていこう。そして彼に「愛している」と言おう
頭上では月が静かに私たちを照らしていた

全報告終了

経過報告50 補足

幻想郷で過ごす中で私は滑稽で慌ただしく時にはた迷惑でやっぱりちょっといやらしい日常に巻き込まれるのだが、それについての報告はまた別の機会に

補足終了

編集にはIDが必要です