マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。




初めて  BYアヤ




くわっと勝手に大口が開いて、欠伸がとび出た。
「いや〜ん。姫が欠伸してるわ〜。」
(阿呆か。誰が姫だ、誰が!)
女共の声は無視して、机に突っ伏した。
美星の教室は何時もと変わりなく、クラスメイトの笑い声やざわめきが響く。
それを無視して、俺は半分夢の世界に足を突っ込んだ。




昨日は、SMSの任務でこの惑星の調査で飛び、疲れて戻れば慰労会と称した飲み会で娘々に連れ込まれた。
オズマ隊長を筆頭に、酔っ払いの男共に代わる代わる絡まれて。
「ランカ・リーが彼女なんて、羨ましい奴め。」
「もう彼女とヤッたのかぁ?」
「なっ!?」
「まあ、・・・無理だろうな。」
ちらりとランカの兄2人に視線を向ければ、ギラリと凶悪な顔が二つ。
「早乙女、健闘を祈る!」
そう言って、そそくさと逃げやがった。
無駄に疲れて早く帰って休みたいが、ランカからのただいまメールが来て、俺はランカの家に向かった。
ランカも忙しいから、会えても5分か15分。
疲れてるなら無理しないで、と言われるが、不思議に会いたくて堪らなくなる。
「アルトくん!」
この腕に納まる小さな身体を抱きとめて、見上げてくる紅玉の瞳に笑い掛ければ、嬉しそうに瞳を細める。
頬染めて何をして欲しいのかバレバレの顔で俺を見てくるから、内心誘惑に負けそうになるが、俺は笑うだけで動かない。
「ん?」
「・・・イジワル。ちょっと屈んでよぅ。」
俺が着ているSMSのジャケットの襟近くをぎゅっと握るのを合図に膝を折る。
ヒールを履いている足元をちょっと浮かせて、触れる唇。
それに気を良くして逃げられない様に腰を抱く。
片手はランカの頭に添えて、より密着する。
長い口付けの後、とろんと蕩けたランカを押し倒してしまいたくなるが、家の中には兄2人。
「おやすみ、ランンカ。」
「おやすみなさい、アルトくん。」
離れがたい想いを振り切って、短い逢瀬を終える。




「おいっ!ランカ・リーの新曲PVだ。」
その声で夢の世界から浮上して、ぴくりと肩が反応した。
誰かがPCでも開いているんだろう。
イントロが流れ終わると、ランカの歌声が響きだした。
「何だ、彼女そっちのけでランカ・リーに夢中なのか?」
「それは、それ。それにな・・・。」
「うおっ!彼女とヤッたのかよ?」
美星でもSMSでも、男同士の会話なんてそうそう変わらない。
恋人が出来て、抱きしめてキスをして、その先も。
さけど、俺は今のままでも十分満足してるんだ。
別にシタいから恋人になったわけじゃないんだし。
プラトニックな関係のままでも、満たされるものがあるから。
俺達はまだ、このままで良い。




プラトニックでも良いと思ってた。
アルトくんが私の事、大事にしてくれてるのが分かるから。
アルトくんの、あの大きな身体にすっぽりと包まれて。
蕩けそうなキスを交わして。
頭を撫でてくれるだけで良いの。
ほんの少しの時間でも、会いに来てくれる。
だけど時々イジワルだから、キスしてほしいのに笑うばかり。
だからちょっとだけ勇気出して、私からキス。
お兄ちゃん達に隠れて、ぎゅっと抱きしめてくれて。
それだけで、満たされていく。
だけどね、私とアルトくんの事を知るメイクさんやスタイリストさんが言うの。
「彼氏とはうまくいってるの?」
「もしかして、・・・もう?」
「コラコラ。焦らなくて良いのよ。」
私も私達のスピードで、って思ってる。
だけど、私だって女だもん。
私だって、もう子供じゃないんだよ?
キスの先の事だって、望んでる気持ちと身体。
そりゃ怖かったり、恥ずかしいとか色んな気持ちが渦巻いてるけど。
好きだから、触れたいし触れられたい。
「じゃあ、頭の先から足の先まで可愛くして、準備万端にしなきゃ、ね?」
きゃあきゃあとガールズトークで盛り上がって、歌番組の収録に向かった。






その日は突然やってくる。
ぽたりぽたりと、床にシミが広がっていく。
畳に水分が吸い込まれていって、大丈夫なのかなって心配になるけど、身動き取れない。
「ランカ。タオル使え。」
「うわっぷ。」
真っ白なバスタオルが頭から被さって、少しづつ水分を吸っていく。
タオルを投げて寄越したアルトくんも、全身びしょ濡れ。
歌番組の収録が思いの外早く終わって、今日の仕事も終了。
アルトくんの部屋にお邪魔しようとしたら、突然の雨。
傘なんて持ってないから、走ったけど二人して濡れ鼠。
「風呂にお湯溜めたから、入れ。着替えも何か用意しとく。濡れた服は乾燥機にかければすぐ乾くだろ。」
「でも、アルトくんも濡れてるのに。」
「じゃあ、一緒に入るか?」
「えっ、えええええっ!?」
一緒にって、明るい浴室で?
無理、ぜったい無理。
「冗談だ。俺は大丈夫だから、先に温まってこい。」
「・・うん。ありがと。」




無事だった下着と美星の白いワイシャツ一枚。
お風呂のおかげで温まって、ほかほかと湯気が上がるくらい。
だけど、下着が見えそうで落ち着かない。
ボリュームの足りない胸元に自分でがっかりして、ちょっと恥ずかしい。
「じゃあ、俺も風呂はいるか。寒かったら勝手に何か羽織ってろよ。」
そう言って、アルトくんも浴室に入って行った。
どうしても足元が気になって、畳んであったSMSのアーミーパンツを履いてみた。
裾を何度も折り返して、ウエストはベルトしてみたけど、手を放した途端に足元に落ちた。
仕方ないから畳み直して、壁に掛かってたSMSのジャケットを羽織った。
肩も袖も丈も、全部が大きくてぶかぶか。
確か丈が短いデザインだったはずなのに。
ああ、アルトくんってこんなにも大きいんだ。
袖を振ればふわっと洗剤とアルトくんの香りがして、ジャケットの合わせに顔を埋めてみた。
「何してるんだ?」
「あっ、アルトくん。」
タンクトップにスウェットのパンツ姿で、長い髪をタオルでガシガシと拭きながらお風呂から出てきた。
「ジャケット勝手に借りちゃった。」
「あ、・・・ああ。」
そう言ったアルトくんは一瞬固まって、すぐに向こうを向いて座り込んだ。
「アルトくん?どうかした?」
「あ、否。何でもないから。」
「??」
ずりずりと畳の上を這いながら、近付こうとすれば。
「良いから!そこでゆっくりしてろ。な?」
「どうしたの?アルトくん。私・・何かした?」
避けられてる気がして、しょんぼりしてしまう。
「したっていうか・・・。俺も男だから、お前のそういう恰好見て平気じゃいられないんだよ。」
良く見れば耳が真っ赤に染まってる。
アルトくんが言ってる事がどんな事か、分からない程子供じゃない。
私の頬も熱い。
「だけどお前は、まだそういう事怖いだろ?だから、今は近づくなよ。」
身動きしちゃいけない気がして、しんと静かな空間が息苦しい。
だけど、ねえ知ってる?
私もちゃんと女なんだよ?
そっと近づいて、アルトくんの背中に頬を寄せた。
びくっと反応する背中。
「ランカ?お前・・。」
「私は甘ったれだし、子供っぽいのは分かってる。でもね、怖かったり恥ずかしかったり、胸が五月蝿いくらいドキドキしてるのは一緒。」
「アルトくんと一緒。だから。」
暖かい腕に包まれたと思った瞬間、視界が反転した。
今見えるのは、天井と彼の胸板。
少し視線を上げれば、大好きなアルトくんの真直ぐな瞳。
「気の利いた事は言えねえ。・・・良いか?」
何がとは言わないよ。
私はこくりと頷いた。




触れて、触れられて。
こんなにもお互いだけを想う事、無いと思った。
ねえ、次は何が待ってるかな?
私とアルトくんの初めて。



END

このページへのコメント

ととまるさん
YF‐29さん
コメントありがとうございます(^O^)
やってしまいましたよ(笑)二人は長く待ちそうかな、とも思ったんですがマクロスFではもう成人してるし、恋人なら流れ的に自然かと( ̄∀ ̄)
同棲もさせたいけど、こっちは兄二人が許さなそうかな(笑)

0
Posted by アヤ 2013年01月31日(木) 23:13:24 返信

あら〜
未成年でやっちった(笑)

でも、アヤさんの作品とても読んでて楽しいから毎回うきうきしてます。
これからも期待してます

0
Posted by YF-29 2013年01月31日(木) 21:10:42 返信

ありがとうございます(*≧∀≦*)

姫…お兄ちゃんズがいるところでこっそりとかやりますね(笑)
背伸びしてキスなんて最高です!

0
Posted by ととまる 2013年01月31日(木) 20:33:35 返信

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