アルラン二次創作投稿所

「月光」　ＢＹアヤ




「・・・お前達、暇なのか？」
フロンティアで一番忙しいであろう歌姫二人。
大きな荷物を抱えて、当然の様に目の前にいる。
自分の記憶が正しければ、今日はＳＭＳの慰安旅行。
ここにはＳＭＳの従業員のみのはず。
「仕事前倒しで、やっと掴み取った休暇なのよ！」
「今日の為に、すっごく頑張ったんだから！」
今回もこの二人に振り回されることを覚悟した。





青い空、眩しい太陽。
静かなリゾートの白砂のビーチ。
「うわ〜。綺麗な海！」
「早く泳ぎましょう！」
世の男共の視線をクギヅケにする、であろう二人の歌姫が歓声を上げた。
ランカは良い。
正直、白いフリルビキニが眩しいくらいだ。
「アルト君。早く行こう？」
「ほらっ！時間が勿体無いわ。」
俺と一緒にいたブレラに、ランカとシェリルがそれぞれ腕を絡めた。
俺は、ランカの相手しかする気が無いぞ。
「ブレラ。シェリルは任せた。」
「・・・了解した。ランカは任せるが、変なことはするなよ。」
「変なことって、何だよ。」
「貴様！」
「もう、いいから！行くよ！」
俺達は砂浜を駆け出した。




「シーズンなのに、いやに静かだなあ。」
ひとしきり泳いだところで、周りを見回した。
「今頃気づいたの？私とランカちゃんで貸し切ったのよ。変に騒がれたくないしね。」
「一部のエリアだけだから、そんなにしないんだよ？・・そんなには。」
つっと目を逸らした。
ランカにしては奮発したんだろう。
「まあ、静かな方が楽しめるし、な。」
ランカの少し濡れた髪を、撫でてやる。
髪がふわふわと動き、頬染めながら俺の指を握ってくるランカが、可愛いと思う。
その隣からブレラの冷たい視線を感じるが、無視だ、無視。
「ねえ、あれ楽しそうじゃない？」
シェリルの指さした先では、ワイルダー艦長がサーフィンに興じていた。
「艦長、元気すぎだろ。」
「私達もやりましょう。」
「止めておけ。」
興味がないのか、ブレラが止めるが、聞きゃあしないのが女王様。
「仕事に生かせるかもしれないでしょ。何でもやってみなきゃ。」
「はいっ。シェリルさん。」
意気込んで教えてもらいに行ったのは良いが、そう簡単に波に乗れるはずもなく。
ランカとシェリルを、それぞれのボードの先に正座で座らせ、俺とブレラが波乗り勝負をするはめになったり。
笑い声が絶えなかった。




「はい。ライムミントソーダ四つね。」
「どうも。」
流石に疲れて、ビーチにある売店に飲み物を買いに来た。
まあ、所謂パシリなんだが。
「お客さん。良い日に来たね。」
「良い日？何かあるのか？」
「それは、ね・・・・・・・・。」
「へぇ。それは・・・・・・・。」
良き事を聞いたかもしれない。




何もかもがオレンジ色に染まるサンセットビーチでバーベキューの夕食を楽しんだ。
ＳＭＳの皆との騒がしくも楽しいお喋り。
お腹も気分も満たされて、皆がそろそろ部屋に戻り始めた時。
「ランカ。後でビーチに水着で集合な。」
「？？」
誰にも言うなよ。なんて、ちょっと嬉しいお誘い。
赤くなる頬をそっと両手で抑えた。
水着に着替えて、Ｔシャツの裾をサイドできゅっと縛って。
サクサクと砂を踏みしめながらビーチに出ると、アルト君が立っていた。
伸ばされた手に自分のそれを重ねて、波打ち際に立つ。
「キレイ・・・。」
目の前に広がる景色に感動した。
満月が輝いて、その輝きが海面を照らして道を作ってる。
「ムーンロードってやつだな。」
地元の人でもなかなか見れないらしくラッキーだな、なんて。
「ほら、乗れって。」
サーフボードを海に浮かべて、私がまたがって座ると、すいっ、と水面を滑り出した。
星が瞬いて、静かな海面に移りこんで。
ボードがゆらゆらと揺れて。
まるで二人きり、宇宙にいるみたい。
「よっと。」
「わぁっ。」
ザバッと、アルト君がボードに乗って、その振動でアルト君に背中を預ける形に。
「来て良かっただろ？」
「すごくロマンチック。アルト君、知っていたの？」
「ああ。って言いたいとこだが、ビーチの売店で教えてもらったんだ。」
「すっごく嬉しい。ありがとう。」
振り向いた私に、アルト君が顔を寄せて。
星空をバックにアルト君が微笑むから。
私は瞳を閉じて、アルト君に熱を預けた。


「大好き。アルト君。」
「ああ。俺も。」
この景色を堪能しながら、何度もキスを交わした。
少し肌寒くなって、くしゃみが出るまで。