なのはキャラinバイオ1話

 ――9月23日。その日の天気、晴れ。



(――――銃声)

「……!? な、なんだ、コイツは!?」

(――――再び銃声)

「化け物め……!!」

(――――三度銃声)

(さらに銃声)

「…………こ、こちらの攻撃がが効いていないのか!?」
「そんな馬鹿な!?」


(銃声。銃声。銃声。銃声。銃声)


(――――――何かの生き物の呻き声のようなもの)


「こ、コイツは……まさか…………!?」


(――――――再び何かの生き物の呻き声のようなもの)


「う……うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!」


(銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃――――)




(――――――――――静寂)




 ■


FILE1 惨劇の予兆


 ■


 ――9月24日。天気、晴れ。
 昨日と変わらず、地方によっては暑い一日になりそうだとテレビに映る気象予報士が告げていたが、その予報は見事に的中していた。

「うわっ!? 眩しいっ!」
 ホテルから出たスバルが開口一番に口にした言葉がそれであった。
「う〜ん……。まだ夏の兆しが残ってるって感じだね〜、ティア〜?」
「はいはい……」
 朝から早くもはしゃぎっ放しのスバルに続いて歩きながらティアナは苦笑いを浮かべる。
「――しかし、さすがはラクーンシティ……観光客対策も見事なものね……」
 ティアナは一度後ろに振り返ると、今自分たちが出てきた建物――今回の観光にあたって数日間泊まるホテルを今一度見上げてみた。
 昨日は街に来て早々、疲労のせいでじっくりと外見を見る機会が得られなかったからだ。

 スバルが選んだホテルの名は『アップルイン』といい、おひとり一泊のための値段が25ドルと観光用ホテルとしては比較的安価な所であった。
 しかし、価格は安いが警備は万全で、その値段ゆえに観光客だけではなく、ティアナやスバルのような学生の客も多く利用していることでラクーンではそこそこ名が知れているらしい。
 ――が、スバルがこのホテルを選んだ理由はおそらくこのホテルの売りのひとつである『様々な料理コースが堪能出来る』ということだろう。
(事実、昨日の夕食時のスバルの瞳はまるで宝石のように輝いていた。「……こりゃあスバルが選ぶわけだわ」とはその時のティアナの談である)

「ティア〜。ほら、早く来ないと置いてっちゃうよ〜?」
「やれやれ……。時間はまだまだたっぷりとあるんだから、急ぐ必要なんてないのに……」
 本当にまだ子供なんだから、と呟くティアナの前をスバルは彼女の言っている通り、本当に子供のように駆け回っていた。

「――で? 今日はどこから行くの?」
「そうだね。う〜んと…………じゃあ、まずはここなんかどうかな?」
 そう言ってスバルは手に持っている観光案内の地図の一点を指差した。

 ――ラクーン市立公園。そこにはそう書かれていた。
 地図によるとそこの近くには街の絵葉書にもなっているほどの名所のひとつであるセントミカエル時計塔もあるらしい。

「時計塔も近いし、最初に行ってみるにはピッタリな場所だと思うんだけど……?」
「へえ……いいんじゃない? 大通りの方から歩いていけばウインドウショッピングとかも出来そうだし……」
「うん。じゃあ決まりだね。えへへ……実はあたしも大通りから行こうと思ってたんだ〜」
「あんたのことだから、どうせ何か食べ歩きとかでしょ?」
「あ……あははは…………バレてた?」


 ■


 ――24日、昼過ぎ。ラクーン市立公園前。


「やれやれ……とりあえず今のところは異常無しってところだな…………」
 青年はそう呟くとパトカーの運転席で一度軽く伸びをした。
「……ま。昼間っから凶悪殺人犯なんてそう簡単に現れるわきゃねーけど…………」
 あ。いや……人食い犯かな? などと付け加えると彼は無線で一度仲間に連絡を入れる。

「あ〜……。こちらブロックE担当グランセニック、現在のところ周辺エリアには異常無し。どーぞ?」
 数秒したところで無線越しに仲間から返答が来る。
『こちらブロックB、了解』
『ブロックD、了解』

 一通り仲間から返事が戻ってきたところで、青年は無線を切ると座席に深くもたれかかった。
「…………しかし、本当にどうなってんだ、最近のこの街は……?」
 彼――ラクーン警察署(通称R.P.D.=racoon police departmentの略)の若き警察官、ヴァイス・グランセニックはフロントガラスから空を眺めながらそう呟いた。



 ヴァイスがそう呟いたこと、そして現在、彼らR.P.D.が街一帯を見回りしているのには深いワケがあった。
 ――実は、このラクーンシティ周辺ではここ数ヶ月の間に奇妙な事件が相次いで発生しているのである。

 ことの始まりは今から3ヶ月ほど前の6月の某日――犬のような奇妙な生命体の目撃情報が相次いだ。
 次に、翌7月になるとアークレイ山地で遭難者が続出。さらに郊外の民家に住んでいた一家が10人ほどのグループに襲われて皆殺しにされるという猟奇殺人事件が発生した。
 ――しかも、その事件の被害者は全員、身体中の肉という肉を『食われていた』のだ。
 この謎の『人食い事件』の捜査は難航し、そうしている間に第二、第三の『人食い事件』が発生してしまった。

 これにより、アークレイは全面封鎖され、事件に対処できる唯一の部隊としてR.P.D.内に設けられた特殊部隊『S.T.A.R.S.(Special Tactics And Rescure Serviceの略)』の介入が決定された。


 ――――しかし、その結果は最悪のものであった。


 事件調査のために投入されたS.T.A.R.S.全メンバー12名+派遣されたヘリのパイロットの計13名のメンバーのうち、生還したのは僅か5名。
 他のメンバーは揃って殉職し、これによってS.T.A.R.S.は事実上壊滅してしまったのだ。

 ――さらに、生還したメンバーから報告された事件全貌の内容がさらにトンでもないものであった。
 その内容は『アークレイ山中には古びた洋館があり、実はそこは世界規模を誇る製薬企業、アンブレラの秘密研究施設で、そこでは人間を化け物に変える生物兵器の研究が行われていた』というものであった。

 もちろん、それを聞いたR.P.D.の者たちは驚きを隠せなかった。
 ――――が、誰もその話を信じようとはしなかった。否、信じることなど出来なかった。

 なぜなら、アメリカ中西部にあるただの小さな田舎町であったこのラクーンシティが現在までの飛躍的発展を遂げることが出来たのはほとんどがアンブレラの援助によるものが大きいからだ。
 それはR.P.D.も同じである。
 ゆえに、この事実を民衆に伝えること――すなわち、アンブレラに逆らおうなどという動きはすることなど出来なかったのだ。
 そのため、一部の者からは『洋館事件』と呼ばれるこの一連の事件は一般に知れ渡ることなく幕を下ろしたのである。



 ――――だが、これで全てが終わったわけではなかった。



 『洋館事件』から僅かばかりの月日が経った頃から、街でおかしな事件や化け物と思しき存在の目撃情報が相次いだのだ。
 だが、R.P.D.署長であるブライアン・アイアンズは一般に先の事件の真相が漏れるのを恐れたのか、今回の一連の騒動には何も対策を行おうとはしなかった。
 そのため事態は悪化の一途をたどり、ついには今月になって、先の『人食い事件』が再び発生、頻発するという事態に至ってしまったのだ。


 ――ゆえに、現在ラクーンシティでは戒厳令が発令されるという異常事態となっており、ヴァイスたちR.P.D.は昼夜問わず街を見回っているという有様であった。



「――ったく。これじゃあ本当にS.T.A.R.S.の連中が言っていたことを信じたくなってくるぜ…………ん?」
 ヴァイスがそう愚痴を吐くのと同時に、突然無線に連絡が入った。
「…………何かあったのか?」
 すぐさまヴァイスは無線の電源を入れた。

「はい。こちらグランセニック号。どーぞ?」
『こちらR.P.D.。先ほど本署にラクーンスタジアムにて暴動が発生したとの連絡が入った。なんでも、ファンの1人が試合中に乱闘を始めてそれがスタジアム中に拡大したらしい。
 現在のところ負傷者の数は不明だが、こちらからは既に50名以上の署員を出動させたが収束に少し手間が掛かりそうだ。手が空いているのならば応援を願いたい』
 無線機の向こうから先輩男性警官のそんな声が僅かなノイズと一緒に流れてきた。
(やれやれ……こんな時に…………)
 ヴァイスはそう思いながら一度ため息をつくと、無線に向かって「了解。大至急現場に向かいます」と答えて無線を切った。


「…………忙しくなりそうだな。色々と……」
 ヴァイスはそう呟くとパトカーのサイレンを鳴らして、言われた通りスタジアムへと車を走らせていった。





   To Be Continued...

[前へ][目次へ][次へ?]
2007年06月15日(金) 18:30:38 Modified by beast0916




スマートフォン版で見る