マスカレード12話A

『Standing by(スタンディングバイ)』
良太郎はステップを踏みながら片手に持ったデルタフォンを起動させる。
「変身!」
『Complete(コンプリート)』
なんと良太郎はデルタギアを装着、さらにデルタへと変身してしまったのだ。

何回もデルタへとムチ攻撃をしかけるセンチピードオルフェノク。
だがデルタはセンチピードオルフェノクのどの攻撃もブレイクダンスで華麗に回避。
しかもダンスの振り付けで反撃する人間など、琢磨からしても始めての相手だ。動きが全く読めない。
「ファイアっ♪」
『Burst Mode(バーストモード)』
さらに踊りながらデルタムーバーに音声コードを入力。
「ヒッ……!」
「ばぁ〜ん!」
そのまま一回転、零距離でデルタムーバーを連射するデルタ。
それによりセンチピードオルフェノクも一気に距離を離される。

そして、そのままデルタムーバーを乱れ撃ち。公園はどんどん破壊されていく。
「ヒ……ヒィイイイイイーーーーーー!!」
もはやセンチピードオルフェノクに戦闘続行の意思も無いようで、ただ逃げ回っているだけだ。
声からして少し泣いているようだが……。

こんな目茶苦茶な攻撃をこれ以上許せば公園は完全に破壊されてしまう。
できればそれは避けたい。
「もういい加減にして下さい!」
「あ、そっかぁ……猫達が驚いちゃうね」
見兼ねたフェイトはデルタを止めさせる。
センチピードオルフェノクも泣いて逃げるだけだ。こうなるとデルタが弱い者いじめをして楽しんでいるようにしか見えない。
良太郎から見た優先度は猫達>>>>>>>越えられない壁>>>>>>センチピードオルフェノクなのだ。

で、今に至る訳だ。
「これ面白いね〜!ボク貰うけどいいよね?」
両手を広げて嬉しそうに回りながら言うデルタ。しかも脚のステップからして立ち去る気満々だ。
「ちょ……ダメに決まってるでしょ!」
そんなことを許せるはずが無い。里奈が慌ててデルタに駆け寄るが……
「……え?」
デルタは華麗に一回転、さらに里奈の顔にデルタムーバーを突き付けているのだ。
「答えは聞いてなぁい♪」
言いながらゆっくりと引き金を引くデルタ。

そして……
「ばぁ〜んっ!!」
「ッ!!」
デルタの声に目をつむる里奈と、フェイト達。
「(あ……あれ?)」
だが里奈は死んでいない。それどころか無傷だ。
恐る恐るデルタを見る里奈。すると……
「あははははは!じょ〜だんだよ〜!」
デルタは仮面の下で笑いながら言う。
腰が抜けた里奈もその場で固まっている。

「……って、デルタギア!」
我を取り戻したフェイトがデルタを追おうとした時、既にデルタの影は小さくなっていた……。

数分後。
「あ〜楽しかったぁ〜!」
言いながらデルタフォンをデルタムーバーから取り外す良太郎。
それによりデルタの変身は解除され、同時に良太郎の体から紫色をした何かが離れる。

「ん……ココどこ?」
良太郎はすぐに意識を取り戻し、手に持ったデルタフォンを見つめる。
「……え?」
さらに腹に巻かれている白いベルトに良太郎は目をパチクリさせる。
「な……何……コレ?」


ACT.12「学校の怪談でG−3起動?」


翌日、ビストロ ラ サル。

太田と里奈はデルタギアが奪われたという旨を草加に伝えていた。
その為にこの店を選んだのに特別な理由は無い。話せればどこでもいいのだ。

「で……キミ達はそのデルタが立ち去るのを黙って見ていた……という事か」
席に座りながら里奈と太田の説明を纏める草加。顔には出していないがそれなりに怒っているようだ。
「ああ……すまない、草加……。」
「時空管理局っていう人達もデルタギアの捜索には協力してくれるらしいわ」
謝罪を続ける太田をフォローするように言う里奈。それに対し、草加はピクッと反応する。
「時空管理局だと……?」
「ああ、彼らもデルタギアを探してくれるって」
一瞬元の表情に戻った草加だが太田の顔を見て再びその表情を険しくする。
「何を悠長なことを言っているんだ……太田?」
「え……?」
「お前のせいで父さんが送ってきたデルタギアが奪われてしまったんだぞ……?」
草加は陰湿な表情で太田を睨み付ける。それに耐え兼ねた太田も気まずそうに目を反らす。
しかし、この険悪なムードを破るのは意外な人物だった。

ドン!

大きな音をたてて水の入ったコップを置く店員。
草加は「何かな?」という表情で店員を睨み付ける。
「喧嘩ならよそでやれ。迷惑だ」
店員も冷たい表情で草加を睨む。
「これは俺達の問題だ。よそ者のキミに関わって欲しく無いな……」
「ほぅ?ならばここは俺が働いている場所だ。よそ者の『キミ』に問題を起こされたく無いな」
『キミ』という言葉を強調する店員。相手の神経を逆なでするような店員の言葉に、草加はかなり苛立つ。
「一体何なのかな……キミは?」
「…………。」
席を立ち、店員に顔を近付けて言う草加。相変わらず嫌味な表情だ。
すると店員は窓の向こうで輝く太陽を指差す。
「おばあちゃんが言っていた。俺は『天の道を往き総てを司る男』……」
「…………。」
「俺の名前は天道総司。」
店員−天道−の自己紹介を聞いた草加はしばらくポカンとしていたが、やがて「ククク」と笑い始める。
「キミ……少し頭がおかしいんじゃないのか?」
自分の頭を指先で突きながら嫌味な作り笑いを浮かべる草加。
天道は黙って腕を組んだまま草加を睨む。
「フン……まぁいい。せいぜい店に迷惑をかけないように気をつけさせて貰うよ」
「……ならいい。」
草加はそのまま席に戻り、天道も厨房へと戻って行く。
どうやらこの二人はかなり相性が悪いようだ。


数分後、時空管理局の情報を聞いた草加は不敵な笑みを浮かべながらサルを後にした。
天道も料理をしながらそれを見届ける。
その直後……
「こんにちわー!」
草加と入れ違いになるように店に一人の男が入ってくる。
両手に持ったダンボールにはたくさんの野菜がはいっているようだ。
「あら津上くんじゃない!また持ってきてくれたの?」
厨房から出てきた弓子が男に駆け寄る。天道は「誰だ?」という顔をしているが。
「はい!家の菜園で捕れた野菜です。今回も捕れたてですよ〜」
言いながらダンボールをドサッと置く男−翔一−。

「ほぅ……確かに質のいい野菜だな。お前が育てたのか?」
「おっ……店員さん、なかなか見る目がありますねぇ。」
天道に聞かれた翔一は嬉しそうに言う。
「当たり前だ。俺を誰だと思っている」
「誰なんですか?」
聞かれた天道はさっきと同じように窓の向こうを指差す。
「俺は天の道を往き……」
「あ、彼は天道くん。たまにここで手伝ってくれてるのよ」
天道の自己紹介を遮る弓子。
天道も「……え?」という顔で弓子を見つめている。
まさか自分の自己紹介を遮られ、さらにこんなに簡単に説明を終わらされるとは思っていなかったのだ

「へぇ……俺は津上翔一って言います!ここにはたまに野菜をおすそ分けしに来るんですよ」
満面の笑みで自己紹介する翔一。
「……そうか。」
天道は翔一の自己紹介を聞きながら、何かに気付いたような表情をする。
「(この男……まさか……!)」
「(天道さんってもしかして……)」
そしてそれは翔一も同じだ。
「二人共……どうしたの?」
「いえ……天道さんはもしかして……料理が得意じゃないですか?」
「ほぅ……それに気付くということは津上……お前もか?」
弓子が心配そうに見守る中、二人の間に見えない火花が走る。
これは料理対決フラグということか。
「もしかしてまたうちで料理対決?」
それに気付いた弓子は少し期待しながら言うが……
「……残念だが、俺はこれからパンを売りに行かなければならない。料理対決ならまた今度だな」
「じゃあパン対決……ですね?」
「いいだろう……受けて立つ。」
睨み合う天道と翔一。
どうやらこの二人はそれなりに相性がいいようだ。


数時間後。

「あんた達最近屋上に来ないけど、天道さんと何かあったの?」
「にゃはは……ちょっとね」
下校中、突然アリサに聞かれたなのはは気まずそうに笑う。
それはフェイトもはやても同じようだ。
そんな時、前方で待ち伏せしていた男がなのは達の前に現れる。
「キミ達……時空管理局の人だよね?」
「そうですけど……貴方は?」
不審そうに聞くフェイト。
「驚かせてすまない。俺の名前は草加雅人。キミ達と話がしたいんだ」


数分後、一同はハラオウン家で雅人から事情を聞いていた。

「じゃあ、貴方も仮面ライダーなんですか?」
「ああ、俺も平和の為に戦っている。キミ達とは気が合いそうだ」
雅人の前向きな言葉に一同は少し嬉しくなる。
最近は天道や良太郎……それからアギトなど、訳のわからないライダーが多かっただけに
草加のようないい人タイプの人間はさらにいい人に見えてしまうのだ。
「へぇ……あんたもライダーなんだな」
一通り自己紹介を終えた所で、横に座っていた剣崎が雅人に話し掛ける。

「キミは……?」
「ああ、俺は剣崎一真。仮面ライダーブレイドだ」
「そうか、キミも……」
剣崎の素性を知り、誰にも解らないような角度で不敵に笑う雅人。
「俺もカイザとして人々を守りたいと思ってる。よろしく頼むよ」
またすぐに元の爽やかな表情に戻った雅人は剣崎に握手の手を差し延べる。
「ああ、こちらこそ、同じ仮面ライダーとしてよろしく頼むよ!」
二人はがっちりと握手をかわし、微笑み会う。


「あの、草加さん……」
「何かな?なのはちゃん」
草加に質問したい事があったなのはは、思い切って疑問をぶつけてみる事に。
「オルフェノクって……何なんでしょうか?」
「……オルフェノク?」
途端に険しい表情になる雅人。
「オルフェノクは……人間の敵だ。奴らは心が腐ってる……だから平気で人を襲えるんだ」
「心が……腐ってる?」
「ああ、奴らはその力を楽しみ、人々を殺す事で仲間を増やしていく……」
「仲間を増やすって……どういうこと?」
リンディが質問する。
「オルフェノクに殺された人間は極稀にオルフェノクとして覚醒するんだ……」
「そんな……!じゃあ、オルフェノクは元は人間なんですか!?」
驚いて質問するフェイト。
「……その通りだ。だがオルフェノクになった時点で人の心は完全に無くなる……
オルフェノクになった人間は体だけじゃなく、心まで腐りきってしまうんだ」
「…………。」
「俺はオルフェノクはいずれ滅ぼさねばならない人類の敵だと思ってる。そしてそのオルフェノクを操っているのが……」
そのままテレビの画面を指差す雅人。そこに写っているCMは……

「「スマートブレイン?」」
声を揃える一同。
なのは達だって大企業であるスマートブレインのことは知っている。
「ああ……スマートブレインはただの企業じゃない。オルフェノクを操り、次々と人間を虐殺していく……悪の組織だ。」
「「…………。」」
そんな漫画みたいな展開、信じられ無いといった表情だ。
まさか天下のスマートブレインがオルフェノクを操り人を殺しているなんて……

「そうなんですか……」
「草加さん、物知りなんですね。
乾さんもオルフェノクについては何も知らないみたいだったのに……」
フェイトが何の他意もなくそう言うと、雅人の表情はまた険しくなった。
「草加さん……?」
「乾巧……奴も何とかしなければならないな……」
「ちょっと待て、どういうことだよ?あの巧って奴はファイズとして人間を守る為に……」
「騙されるな!!」
驚いて聞き返す剣崎を遮り、叫ぶ雅人。それによってさらに驚く剣崎。
「……怒鳴ってすまない。だが、乾巧は人間の敵だ……!」
「はぁ?」
「奴はファイズの力を楽しんでるんだよ……オルフェノクと同じにね……!」
「ちょ……ちょっと待ってよ!巧くんはいい人じゃないの!?」
なのはも慌てて確認する。
「ああ……乾巧は人間の為に戦うような奴じゃない!ファイズの力を楽しみ……人々を脅かす存在だ……」
「でも……私の目の前でワーム達を倒してたよ!?」
「それも乾巧にとって都合が悪かったからだろう……
奴は自分にとって都合が悪い者は何だって排除する……そういう奴なんだよ、乾は」
「そんな……」
確かにあの時巧は「遊んでくれた仕返し」のような形で戦っていた。でも、だからといって人間の敵とは言い過ぎでは無いか……
「でも、巧くんだって人を守りたいって……」
「口が上手いんだよ乾は……ッ!
あいつはそうやってまだ出会ったばかりの君達を利用しようとしているだけに過ぎない……!」
雅人の言葉により、なのは達は巧を信用できなくなり初めていた。
「じゃあ、結局奴も天道総司と同じということか……」
「天道総司……?」
クロノの言葉に反応する草加。
確か草加が今日の朝、レストランで会ったいけ好かない店員がそんな名前をしていたが……
「ああ、奴もカブトであることを楽しんでいる、時限犯罪者だ」
「お前なぁ……まだ理由も聞いてないのにそれは無いだろ!」
クロノの言葉に、聞き捨てならないといった感じに剣崎が割り込む。
「果たして理由なんてあるのかな……?
それに天道総司は時空管理局を潰すとまで言ったらしいじゃないか。それでも信じろっていうのかい?」
「それは……!」
「落ち着け、キミ達……!」
またしても言い争いになりそうなクロノと剣崎を制する雅人。
「俺は、天道総司も乾巧も同じだと思うけどね……」
「そんなこと……」
「無いと言い切れるのか?どっちにしろ、敵か味方か解らないなら最悪の場合の対処方も考えておいた方がいい。違うか?」
「確かに……そうだけど……」
雅人に言われた剣崎はすっかりさっきまでの剣幕を無くし、座ってしまう。

「(天道総司と乾巧……か)」
その時、雅人は確かに笑った。
何を考えているのかは知らないが、「いい話を聞いた」と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべていた。

……その時。
「剣崎くん、アンデッドだよ!」
エイミィが大きな声で言う。アンデッドがサーチャーに反応があったらしい。
剣崎と雅人はお互いに目を合わせ、そのまま走って家を出て行った。


「「変身!!」」
『Complete(コンプリート)』
『Turn Up(ターンアップ)』

雅人と剣崎はお互いのバイク、『サイドバッシャー』と『ブルースペイダー』に乗りながら変身する。
公道を走りながらカイザ、ブレイドへと変身を完了した二人はアンデッドが現れたという山奥へと急ぐ。

それからしばらく走り、二人のバイクが山に入りかけた、その時だった。
後ろからやってきた赤いバイクがカイザとブレイドを追い越し……
「……うわッ!」
「なんだ?」
二人のバイクの目の前で急に止まった。
「何なんだ、お前は!」
「…………」
怒鳴るブレイドに対し、赤いバイクに乗った男は黙ってヘルメットを外し、立ち上がる。
「カテゴリーAは俺が封印する。お前達に邪魔はさせない」
同時に男の腹に赤いハートのような形をしたベルトが現れる。
「……変身」
『チェンジ』
そして男はカマキリのような絵柄のカード−チェンジマンティス−をベルトにラウズした。
「お前は……カテゴリーA!」
「……コイツもライダーか?」
驚く二人−といってもカイザはブレイド程驚いてはいないようだが……−。
目の前で男は漆黒のライダー−カリス−へと変身したのだ。
「俺は53番目の存在……カテゴリーAでも人間でも無い……」
言いながらカリスアローを取り出すカリス。
「人間じゃないだと……?」
『Ready』
それに対し、カイザはカイザブレイガンをブレードモードにし、構える。
「はぁッ!」
「ク……!」
刹那、カリスが斬り掛かってきた。咄嗟にブレイガンで受けるが、なかなかの威力だ。
「チッ……!」
「…………。」
カイザも負けじとブレイガンを振るうが、それをカリスアローで軽く受け流すカリス。
「お前は一体何者なんだ!一度は俺達と一緒に戦ったのに……!」
さらにそこへブレイラウザーを振るいながらブレイドが乱入する。
「あの時はお前達の力を利用しただけだ……!」
「何だと!?」
ブレイラウザーとカリスアローが激突する。
「何を言っても無駄だ……!所詮コイツも人間の敵なんだよ……!」
「…………。」
今度はカイザがブレイガンを振り下ろすがやはり回避され、逆にカリスアローの一撃を受ける。
そして次に、ブレイドがブレイラウザーで斬り掛かるが、それもカリスアローで受けられてしまう。
「じゃあお前はあのオルフェノクを倒すために俺達を利用しただけだっていうのか!?」
「そうだ……!」
ブレイドとカリスはお互いの武器を衝突させながら走り回る。
カリスにとってカイザは割とどうでもいい存在らしく、スルーされ気味だ。
「やっぱりお前もただのアンデッドだったのか……!」
「…………ッ!」
ブレイラウザーの一撃を受けたカリスは少しのけ反る。
カリスはただのアンデッドという言葉に少し反応したようだ。
以前にもバヂスに「人間の臭いがする」と言われ、少し反応していたが……。
二人はお互いの武器をぶつけ合い、少し距離をとる。
「許さない……許さないぞ、カテゴリーA……」
「お前と戦ってると……俺の中のアンデッドの血が目覚めてくる……」
言いながらカリスラウザーをアローにセットするカリス。
そして二人はほぼ同じタイミングで一枚のカードを取り出す。

「お前は俺の手で倒す!」
『サンダー』
「ぶちのめしたくなるッ!!」
『トルネード』
ほぼ同時にカードをラウズし、走り出すカリスとブレイド。
「「うぉおおおおおおッ!!」」
疾風を纏ったカリスアロー、稲妻を走らせたブレイラウザーを構えた二人は道路の真ん中で激突する。
「ク……!」
「なに……!?」
そして、ぶつかり合う二人の攻撃力はほぼ互角だ。
爆発と一緒に弾き飛ばされる。

「……お前は……俺が封印する!」
「お前は……俺がブッ潰す!」
同じようなセリフを言いながら立ち上がる二人。
『剣崎くん、何やってるの!?アンデッドに逃げられちゃうよ!』
そんな時、エイミィからブレイドに通信が入る。
「今は目の前のアンデッドが先だ!」
「……ならこれで終わらせてやるよ」
『Exceed Charge(エクシードチャージ)』
「な……!?」
突然カリスの体が黄色い光に捕縛されたことに驚くブレイド。
横を見ればすでにカイザがゴルドスマッシュの体勢に入っている。
「終わりだ……アンデッド。」
呟いたカイザはカリスの前に現れた円錐目掛けて一気に飛び上がった。
「ク……!」
カリスも諦めかけた、その時……

『始さん!』

カリスの脳裏を過ぎったのは楽しそうに自分の名を呼ぶ天音の顔。
「(そうだ……俺はこんな所で負けられない……!)」
「シャドーチェイサーッ!」
カイザが円錐に入ろうとした瞬間、カリスは大きな声でその名を呼んだ。
すると、さっきまで始が乗っていた赤いバイクは
漆黒の『シャドーチェイサー』に変身、さらにカイザに向かって走り出したのだ。
「何ッ!?」
そしてシャドーチェイサーに突進されたカイザは地面に落下、同時に円錐も黄色い光も消える。

カリスはそのままシャドーチェイサーに跨がり、立ち去ろうとしている。
「待て……逃げるのか!?」
「ブレイド……決着はいずれつける!」
この勝負は次回に預けるとでも言わんばかりにシャドーチェイサーで走り出すカリス。
「待て、カテゴリーA!」
「……カリスだ。」
そして最後にそう言ったカリスの姿は、だんだんと小さくなっていった……。

数分後、さらに山奥。

「カテゴリーAには逃げられたか……」
『スピリット』
言いながらラウザーから現れた透明のゲートを通るカリス。
すると全身のカリスベイルが消え、その姿は相川始のとなった。
「次は封印する……」
始はシャドーチェイサー『だった』赤いバイクに跨がり、ヘルメットを被りながらそう言った。

翌日。なのは達の通う学校、その屋上。
何故か焼きそばパン屋が二つ並んでいる。
「なるほど……ここでパン対決をするということか」
腕を組みながら横にいる翔一を見る天道。
「はい!どっちの方が売れたかで勝負しましょう!」
「いいだろう……。」
翔一もかなり張り切っているようだ。
「あ、そうだ!そこの加賀美さん?ちょっと試食して下さいよ!」
「え!?なんで俺が……」
突然話を振られた加賀美も驚いている。
「そうだな……勝負を始める前に津上の実力を見てやる」
言いながら自分のパンを差し出す天道。
「まずは俺のからだ。」
「わかったよ……。」
仕方ないのでパンを食べる事にした加賀美。
天道の焼きそばパンを一口口に運び……
「うまい……!流石天道だ!」
いかにもおいしそうに頬張る加賀美。そのまま一気に完食した。
「じゃあ、俺のも食べてくださいよ!」
今度は満面の笑みを浮かべた翔一が自分の焼きそばパンを持ってくる。
加賀美はそれをゆっくりと口にいれ……
「しあわせだ〜」
今にも天に昇ってしまいそうな幸せな顔でガツガツと焼きそばパンを食べ始める加賀美。
天道も軽く驚いているようだ。まさかここまで上手いとは……
「で、どっちが美味しいんですか、先輩?」
気になる答えを求める蓮華。
「う〜ん…………」
加賀美は腕を組んで悩んでいる。そんなにどっちも美味しかったのか……
「……うん!俺には決められない!」
大きな声で言う加賀美にガッカリする一同。
「先輩……散々悩んでソレですか?」
「いや、ホントにどっちも美味いんだって!」
蓮華に白い目で見られた加賀美は慌てて言い訳を言う。
そんな二人を尻目に、天道と翔一は黙って火花を散らせるのだった。
昼休みまでもうすぐだ……。

一方、アースラ・ブリッジ。
リンディは通信で本局のスタッフと通信していた。
『リンディさん、デンライナーはもういつでも発車できますよ』
「そう……Gライナーの調子はどうなの?」
『良好ですよ!』
「それは心強いわね」
クスクスと微笑むリンディ。
『Gライナーはスタッフも有能な人ばかりですからね。まぁ三人しかいませんけど』
通信の相手もモニターの向こうで苦笑している。
「三人でも立派なチームよ。確か、SAULだったかしら?」
『ええ。氷川くんも初陣に備えて張り切ってますよ』
ちなみに初陣とは外ならぬカブト捕獲作戦の事だ。
「(天道総司……か……)」
リンディも「どうしたものか……」といった表情をしていた……。

数時間後。

「どっちも売切れ……か。」
「引き分けですねぇ……」
屋上の屋台で落胆する天道と翔一。
「まぁいいじゃないか!どっちも完売したんだから!」
「それはそうと加賀美……」
「ん……何だ、天道?」
「何だ?じゃない。何か新しい情報は入ったのか?」
天道達はパンを売るためにわざわざZECTの力を使って学校に潜入している訳ではない。
ワームが絡んでいるであろう学校の怪談事件を解決するために学校に来ているのだ。
まぁ天道は少し違う理由だろうが……。

「ああ……それならいい情報が入った」
「ほぅ……言ってみろ」
「この学校には何年か前に、全国大会に出場する程の合唱部があったんだ」
今日手に入れた情報の説明を始める加賀美。
加賀美が言うには、その合唱部はある日突然消え、
それからこの学校では合唱部の幽霊の歌声が聞こえるようになったらしい。
「学校の怪談……か。他には?」
「まぁそんなところだ。どうせただの噂だと思うけどな」
「……ッ!?」
それに対して天道が「いや……」と言いかけた時、突如として歌声が聞こえてくる
「うわ〜……タイミングいいなぁ、コレ」
「世の中そういうモンですよ♪」
余りのタイミングの良さに驚く翔一だが、あっさりと蓮華に丸め込まれてしまうのだった。

「行くぞ、天道!」
「幽霊だったら、お前に任せる」
急いでグラウンドに向かおうとする加賀美にサラっと言う天道。
加賀美も流石に頭にきたようで……
「そんなワケ無いだろッ!!」
鼻息をフンフンと鳴らしながら持っているタオルを地面にたたき付けながら立ち去る加賀美。
「……いいんですか?」
それを見た翔一も苦笑いしながら天道に話し掛ける。
「ああ……アイツはな。」
腕を組んだまま表情を変えない天道。翔一は「この人達仲いいんだなぁ」と心底思ったという。
「さて……行くぞ、津上……!」
「はい!」

グラウンドには濃い霧が立ち込め、いかにも何かが現れそうな雰囲気だ。
加賀美もゆっくりと霧に近付いていく。
その時……
「気をつけて下さい!居ますよ……」
「居るって何が!?」
突然の翔一の声に驚いた加賀美はビクッとしながら後を見る。
「ワームだ。」
さらに翔一に続いて天道も現れる。翔一も天道もやけに落ち着いている−まぁそれが心強いのだが……−。
加賀美は再び霧を見つめる。
すると中から喪服姿の女と、数匹のサリスが現れる。

「行くぞ、津上!」
「はい、天道さん!」
次の瞬間、翔一の腹にはオルタリング、天道の腹にはライダーベルトが装着されていた。
ちなみに翔一の姿に驚いているのは加賀美だけだ。
そう……二人はお互いが戦士であることに気付いていたのだ。
最初にサルで出会い、自己紹介をしたあの時から、お互いの目を見た瞬間から。

そして翔一はクロスさせた両手を腰にあて、前方に右手を伸ばす。
一方、天道はカブトゼクターを構え……
「「変身!!」」
二人は大きな声で叫んだ。
次の瞬間、天道と翔一の姿は変わっていた。
銀のアーマーを身に纏ったカブトと、金の装甲に大きな赤い目が特徴的なライダー、アギトだ。

二人はそのままサリスに突進、凄まじい速度で薙ぎ倒していく。
「ちょ、ちょっと待て……変身!」
加賀美も慌てて変身し、サリス達に突っ込んでいく。

アギトはパンチやキックで、ガタックはプロレス技でサリスを爆発させてゆき、
カブトはカブトクナイガン・アックスフォームでワームを斬り捨てていく。
サリスの数も減ってきた所でカブトとガタックはベルトのゼクターホーンを起こす。
「キャストオフ……。」
「キャストオフ!!」
『『Cast off(キャストオフ)』』
そうすることで二人のマスクドアーマーは弾き飛ばされ、近くにいたサリスが爆発する。
一方アギトもストームフォームにフォームチェンジし、ベルトからストームハルバートを抜き取る。
ワームは三人のフォームチェンジに反応し、そのうち一体のサリスが成虫へと脱皮を始める。
茶色の体をしたコノハムシに似たワーム……『フォリアタスワーム』だ。
フォリアタスワームはライダー三人に向かってくるが、その前にカブトが立ち塞がる。
「お前の相手は俺だ。」
言うが早いかカブトはクナイガン・クナイモードでフォリアタスワームを切り裂いていた。
さらに、突然紫のワームが空から急降下、アギトに襲い掛かる。
「クッ……!」
突然の奇襲に怯むアギト。
このワームはキリギリスに似た姿を持つ『レプトーフィスワーム』だ。
最大70mという驚異的な跳躍力を持つ。
こうなると自然にレプトーフィスワームの相手はアギトということになる。
ちなみにガタックはサリス軍団を相手に戦っている。


一方、アースラ。
「艦長、カブトが現れました!」
「場所は?」
エイミィの報告を受けたリンディはすぐに場所を確認する。
「ええと……なのはちゃんの学校です!」
「何ですって!?」
驚いたリンディはしばらく考え……
「クロノと剣崎くんに出動命令を!それから、デンライナーの発車要請もお願い!」
「わっかりました!!」
エイミィはすぐに本局に通信を入れる。


「剣崎!」
「どうした……!?」
クロノに呼ばれた剣崎は慌てて反応する。
「カブトが現れた!すぐに行くぞ!」
「カブトが!?わかった!」
剣崎はすぐにテーブルに置いていたブレイバックルを掴み、ブルースペイダーが停めてある駐車場へと走り出した。
ちなみにクロノは正式なZECTライダーでは無い為にマシンゼクトロンは支給されていない。
仕方がないので、ブルースペイダーに二人乗りだ。


「どおりゃああああッ!!」
ガタックは最後のサリスをダブルカリバーで爆発させる。
周囲を見れば、一方的にフォリアタスワームを斬りまくるカブトと、
空から降ってくるレプトーフィスワームに苦戦するアギトの姿が。
「え〜と……取りあえず、こっちだ!」
ガタックはカブトと戦うフォリアタスワームに向かって走り出した。

「ふん……!」
クナイガンに斬られ続けたフォリアタスワームもかなり弱っている頃だ。
しかも横を見ればガタックまでこちらに向かっている。
カブトはガタックに合図を送り、ガタックもそれに「おう!」と頷く。
天道と加賀美程の仲になると何も言わなくても伝わるのだろう。
……まぁ二人はそんなこと認めないだろうが。

『『One-Two-Three!!』』
ガタックとカブトはほぼ同時にゼクターのフルスロットルを三回押す。
それにより二人の脚にタキオン粒子がチャージアップされる。
そしてガタックは飛び上がり、カブトは回し蹴りの姿勢に入り……
「どぉりゃああああああ!!!」
「……はぁッ!」
『『Rider Kick(ライダーキック)』』
二人のライダーキックが炸裂したフォリアタスワームは見事に爆発、四散した。

「あとは津上か……」
カブトはそう呟き、アギトを見る。
アギトはなんとかストームハルバートで防いではいるが、空からの攻撃に防戦一方だ。
ガタックも急いで助けに行こうとするが、カブトに止められる。
「何するんだよ天道!?」
「俺達が助けるまでも無い。黙って見ていろ」
「はぁ?」
ガタックも何か策があるのかとしぶしぶそれを聞き入れる。


「(クソ……空からの攻撃じゃ、対応できない……!)」
ストームハルバートでレプトーフィスワームのジャンプ攻撃を防ぐアギト。
このままではいつかはやられる。
そして次の瞬間……
「……な!?」
ついにレプトーフィスワームの攻撃が直撃したアギトはそのまま吹っ飛ばされ、地面に転がる。

「天道……!」
「黙って見ていろ。奴は戦士だ……この程度ではやられん」
ガタックは焦って駆け寄ろうとするが、カブトは「手を出すな」の一点張りだ。

「(ダメだ……このままじゃ勝てない……このままじゃ……!)」
アギトは地面に転がりながらレプトーフィスワームを見つめる。
レプトーフィスワームは舌なめずりをしているのか、黙ってこちらを見ている。
かなり挑発的だ。
「(アイツは空から襲ってくるんだ……)」
レプトーフィスワームの動きをよく思い出すアギト。
奴は空に飛び上がり、急降下と共に攻撃を仕掛けてくる。
「(……そうか!)」
何かに気付いたアギトは一気に立ち上がった。
それに対し、レプトーフィスワームもアギトに向かって走り出す。
「…………。」
アギトは精神を集中させ、右腰を力強く叩いた。
同時にアギトの体は赤く染まり、ベルトから赤い刀−フレイムセイバー−を抜く。
これがアギト第三のフォーム、『フレイムフォーム』だ。

レプトーフィスワームは先程と同じように空高く跳び上がる。
アギトは「もう見切った」と言わんばかりにフレイムセイバーを構える。
そうすることでフレイムセイバーのクロスホーンが展開し、その刃を炎が包む。
燃え盛る炎の剣を構えたアギトはレプトーフィスワームを直視し……

「はぁーーーッ!」
そのまま落下してきたレプトーフィスワームの腹にフレイムセイバーを突き刺す。
それによりレプトーフィスワームの体がフレイムセイバーの炎に燃え始める。
さらに重力に引かれたレプトーフィスワームの体はフレイムセイバーに真っ二つに裂かれる。
次の瞬間にはレプトーフィスワームも他のワームと同じように爆発。
フレイムフォームの必殺技、『セイバースラッシュ』だ。
アギトが構えるフレイムセイバーは、美しく夕日に煌めいていた。


そして……

「終わったみたいだね」
突然の声に振り向く三人のライダー。
そこにいるのはなのはとフェイト。
「カブト……それからアギト、貴方達を捕獲します!」
三人にバルディッシュを突き付けながら言うフェイト。
「(え……なのはちゃん……フェイトちゃん!?)」
アギトも声には出さないが驚くアギト。「なんで……!?」と言いたげだ。
まさか自分の知り合いがあんな物騒な武器を構えて自分達を捕獲しようとするとは夢にも思わないだろう。
さらにその後ろからザビーとブレイドまで現れる。
「カブト……今日こそ捕獲する!」
そう叫んだザビーはゆっくりとなのは達に近づいてくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ!!何がどうなってるんだよ?」
慌ててなのは達とカブト達の間に割り込むガタック。
恐らく今最も状況を理解できていないのはガタックだ。
管理局に追われるような事を何一つしていない上に、協力までしているのだから。
「加賀美くん……貴方は何も悪い事してないんだから、邪魔しないで!」
なのはの言葉に驚くガタック。
「そうだ。お前は関係無い……早く逃げるんだな」
「そんなこと出来るかよ!こんな無駄な戦い、させてたまるか!」
カブトも帰れというが、ガタックはそれを拒否。天道は加賀美の事を思ってそう言ったのだが……。
「フ……お前は相変わらず面白い奴だな」
「何馬鹿な事言ってんだよ……!」

こうして第2ラウンドが始まるのだった……。

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2007年08月12日(日) 11:12:05 Modified by beast0916




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