マスカレード5話

アギトのベルトが青く光り輝く。
そしてベルトの中心から薙刀状の武器、『ストームハルバード』を取り出す。
同時にアギトのボディは青くなり、風の力を宿した『ストームフォーム』へとフォームチェンジした。
「変わった!?」
アギトのフォームチェンジに驚くフェイト。
さらにアギトのストームハルバードは変型し、左右が伸びる。
「伸びた!?」
はやても驚きの声をあげる。

一方アギトのフォームチェンジを目の当たりにしたアラクネアワームは、アギトに向かって走っていく。
そして−−
「フンッ!」
真っ二つに切り裂かれ、緑の炎に消えるワーム。


「変身!」
『Turn up(ターンアップ)』
そしてブレイド−剣崎一真−は仲間の仇を討つためにブレイラウザーを構え、アギトに迫る。
「うぉぉぁぁ!」
「…………!」
ブレイドはブレイラウザーでアギトに斬り掛かり、アギトも上手く避ける。

「互角か?」
「いや……金色の方がちょっと優性だよ」
はやてとフェイトは二人の戦いを見て実況している。冷静に実況などしている場合では無いのでは、と思うかもしれないが、
敵なのかわからないアギトとかなりキレているブレイドの戦いにどう介入していいのか正直わからないのである。

だが二人の戦いはほぼ互角に見えるが、良く見ればアギトはブレイドの攻撃をすべてさばき、逆にカウンターを入れている。
お互い特にセリフの無いまま戦闘が続く。ブレイドはブレイラウザーを振るうも回避され、アギトにカウンターを入れられる。この繰り返しだ。
そして次第にアギトの攻撃はエスカレートしていく。
「ハッ!フン!」
「く……ぐぁっ!」
アギトのパンチやキックはどんどんブレイドの鎧を傷付けていく。ブレイドはもはや攻撃などする余裕はなく、ただブレイラウザーを受けに使うのみだ。
「あかん!」
「うわぁ……っ!」
はやてが叫ぶと同時に、アギトのライダーパンチがブレイドに炸裂し、数メートル飛ばされ、ガレキの山に埋もれる。

ブレイドはよろよろの体でガレキを払いのけ、前方を見る。するとアギトの角、『クロスホーン』は展開され、地面には赤い紋章が浮かんでいるではないか。
「はぁぁぁぁ……」
アギトはライダーキックの構えをとる。ついにブレイドにトドメを刺すつもりだ。
「いけない!はやて、止めないと!」
「うん!わかっとる……!」
しかし、はやて達が止めようとした時……
「……ハッ!?……お、俺は?」
アギトが突然喋り出す。
「「え!?喋った?」」
はやてとフェイトも驚く。突然アギトが喋り出し、地面の紋章も消え、クロスホーンも戻ったのだ。
アギトは少しキョロキョロし、すぐに乗ってきたバイクへと走っていく。
「ま……まて……」
ブレイドは起き上がりアギトを追おうとするも、流石にあれだけボロボロにやられた後ではそう自由に動けるはずもなく、すぐにその場に膝をつく。

「フェイトちゃん!はやてちゃん!」
「なのは!」
その直後、フェイト達を呼ぶ声。倒壊したBOARDからなのはと一人の女性が現れる。
「……剣崎くん!?」
その女性はボロボロになったブレイドを見て、ブレイドの方へと走っていく。
「栞……さん……よかった……。」
ブレイドは最後にそう呟き、気絶する。


ACT.5「愛惜の旋律」


翌日、アースラ。
「ん……ここは……?」
剣崎はどこかのベッドの上で目覚め、「ここはどこだろう?」と起き上がる。
「あ……気がつきました?剣崎さん。」
「あ……ああ。キミは?」
目覚めた剣崎に、金髪の女性が話かけてくる。
「あ、私は湖の騎士、シャマルといいます。」



「あの未確認、結局逃げられちゃったね……」
「うん。途中で反応が消えちゃったんだ」
なのはとエイミィが話している。
エイミィが言うにはアギトの反応は途中で消えてしまったという。それはつまり人間に戻ったということだが、今のなのは達は知る由も無かった。
「また現れたら、今度こそ話を聞こうよ」
フェイトが言う。できるかどうかはわからないが、フェイトはそれでも話し合いをするつもりだ。
「何言ってんのよ?アイツは間違いなく私たちの敵でしょ」
「栞さん……。」
BOARDの生き残り、『広瀬 栞』が言う。本部が壊滅し、色々と聞きたいこともあったなのは達は、栞をアースラへと招いたのだ。
「だがアンノウンやワームを倒したのも事実だ。」とクロノ。
「だからって何よ?アイツはブレイドを破壊したのよ?敵と決めつけるには十分な理由だわ」
「だが……!」
栞は完全にアギトを敵と見なし、敵対心をあらわにするが、納得のいかないクロノは反論しようとする。
しかし、クロノのセリフは遮られる。
「あの〜……剣崎くん、目が覚めましたよ?」
シャマルが言いながら剣崎連れてアースラのブリッジへと入ってくる。


所変わって食堂。
「じゃあ、BOARDを壊滅させたのはアイツじゃないんですか!?」
「ええ。アイツはBOARDを壊滅させたワームを倒しただけよ。」
「……そうだったのか。」
「だからってアイツが敵なのに変わりは無いわ。今度会ったらボッコボコにしてやりなさい」
「…………。」
栞と剣崎がアースラの食堂で話をしている。時空管理局についてもある程度説明を受けた後だ。
しかも一度ボコボコにされた相手をボコボコにしろとは、栞さん……アンタは相変わらず無茶な人だ。
「だから、まだ敵かどうかわからないだろ」
「ダリナンダアンタイッタイ!」
「ああ、僕は執務官のクロノ・ハラオウンだ。」
クロノが割り込みをかけ、自己紹介する。剣崎のセリフになのは達は一瞬「ん!?」という顔をしたが気にしてはいけない。
「アンタもしつこいわね。剣崎くんをこんなにした奴なんだから、敵に決まってるでしょ!」
「だからといって……」
「まぁまぁまぁ、落ち着きぃや!あのアンノウンについては今は保留ってことでええやん。な?」
「…………。」
再び言い争いになりそうな栞とクロノをはやてが遮る。っていうかクロノよく遮られるな。
「とにかく!次は負けませんから!」と、剣崎。
すると……
「それとブレイバックルだけど……」
「え?」
なのはがブレイドに変身するためのベルト『ブレイバックル』の話をする。
「今、データを取らせて貰ってるよ。」
「時空管理局でも未確認の敵に対抗するために新たなシステムを作ろうとしてるんだよ。」
エイミィとクロノが言う。
「新たなシステムですって?」
栞の質問に、クロノが説明を始める。
「ああ。ZECTとBOARDのマスクドライダーシステムを元に時空管理局でも新兵器を開発しようとしてるんだ。」
「確かプロジェクトD……『電王計画』……だったかな?」
エイミィがクロノの解説に割り込み、サラっと計画名をネタバレする。
「「デンオウ計画?」」
声を揃えてクロノに質問する一同。
「なっ……エイミィ……!それはまだ極秘だ……!」
「たは……ごめん、クロノくん。つい」
エイミィは「てへっ」て感じに謝罪する。本当に反省しているのだろうか。
「こ、これ以上口を滑らす訳にはいかない。僕は失礼するよ!」
そう言ってクロノは立ち去ってしまうのだった。
「……で、ブレイバックルはいつまで預けておけばいいのかな?」
「う〜ん……まだわかんないけど、多分もうちょっとかな」
剣崎の質問にエイミィが答える。いつアンデッドが現れるかわからないのにそれでは困るのだが……

「とりあえず、壊滅したBOARDの変わりに私達は時空管理局に協力することになったわ。」
栞は剣崎が寝てる間にBOARDに変わり時空管理局の協力をすることになった事を告げる。
そしてその間フェイトの暮らすマンションの別室で生活することとなった事も告げる。

「はぁ……そうなんですか。」
「剣崎くんもアパート追い出されたんだし、調度いいじゃない」
「は!?追い出されたぁ!?」
「ええ。家賃の滞納でね。……剣崎くんが寝てた間に決まったのよ。」
「そんなぁ……。」
「そんな暗い顔しないの!時空管理局も協力してくれるんだから!」
「はぁ……。じゃあ、所長や橘さんは?」
ここで剣崎は気になる質問をする
「あの二人は今行方不明よ。大丈夫、そのうち帰ってくると思うから!」
「はぁ……そうですか。」
かくして、剣崎も海鳴市で生活することとなったのだった。

一方、海鳴市某所のアパート。

水泳部のコーチがアパートの一室の前で立ち止まる。表札には「葦原」と書かれている。入院していた涼は突如として姿を消してしまったのだ。
「涼……いるんだろ?開けてくれ。」
「……。」
「安心しろ。どんな相談にも乗ってやる。」
すると、玄関が開き、涼の顔が見える。
「わかりました。コーチだけには……俺のすべてを見せます。」
コーチは黙ってアパートの中へと入ってゆく。そして扉はしまり、鍵をしめる音が響く。


それからさらに翌日、放課後、ハカランダ。

「へぇ〜結構いい感じの店だね〜」
「えへへ♪そうでしょ?」
「うん。翠屋にライバル現るだねぇ」
「そうだね〜。うちも頑張らないと!」
いつもの5人と、今日は同級生の天音も含めて、天音の母親が経営する喫茶店『ハカランダ』へと遊びにきたのだ。
「やぁ、みんないらっしゃい」
なのは達が色々と世間話をしていると、奥から若い茶髪の男が6人分のジュースを持って現れる。
「あ、始さん!ただいま!」
「おかえり、天音ちゃん」
笑顔でただいまを言う天音ちゃんに、始と呼ばれた青年はこれまた優しい笑顔でおかえり、と言う。相当なイケメンだ。
「ねぇねぇ天音、アレ誰?」
「もしかして、お兄ちゃん?」
「まさかお父さんとか!?」
「いやそれは無いやろ!」
アリサ、フェイト、なのはが順に天音に質問する。はやてはツッコミだが。
「あの人は、うちの居候の相川始さん♪カッコイイでしょ?」
天音は自慢げに始を紹介する。紹介された始も常に笑顔を絶やさない。なかなかの好青年といった雰囲気だ。
「でもなんでやろ?始さん、うちとどっかで会えへんかった?」
始ははやての顔を見て「……!」と、一瞬険しい顔をする。何かに気付いたのだ。その表情の変化を見逃さなかったなのはとフェイトは「え?」という表情をする。
「いや……無かったと思うな」
また元の笑顔に戻る始。
「何、はやて?逆ナン〜?」
「な!そんなんちゃうて!」
アリサに冷やかされたはやては慌てて否定する。
「(なのは……見た?)」
「(うん……すごい顔したよね?一瞬……)」
始の表情を不審に思ったフェイトは念話でなのはと話す。はやてもなんとなくだが、確かにどこかで会った気がしたのだ。
や、それもそのはずだろう。はやては一度カリスとしての始と会っているのだから。始もその事に気付いたのだろう

「あ、そうだ始さん!ギター弾いてよ!」
「あはは、仕方ないな。いいよ」
天音の提案で始はギターを手にした。そして、演奏が始まり−−
「上手いねぇ♪」
始のギターを聴き、なのは達はとてもリラックスしていた。ギターの美しい音色がなのは達全員の心に響く。
始のギターの調べがハカランダに満ちる。
未来へと流れる愛惜の旋律……その果てに待つものは、悲しみなのだろうか?……それとも……?

そして演奏が終わり……
「聴いてくれてありがとう」
始はそう言いギターを置く。鳴り響く拍手。
「素敵だったなぁ♪」
「うんうん♪えらい幸せな気分になったわぁ」
「すごいよねぇ〜始さんって。優しいしカッコイイしギター上手いし……」
なのは、はやて、アリサがそれぞれの意見を述べる。始も天音も鼻高々だ。

そうこうしていると、ハカランダの扉が開き、一人の眼鏡をかけた男性が入ってくる。
「あ、いらっしゃい!」
「……コーヒーを一つ。」
その男、『金居』は静かに注文を言う。
「……っ!?」
始は金居を見た途端にガタッと立ち上がる。そしと金居に近寄り……
バァン!
「何をしにきた?まさか本当にコーヒーを飲みにきたわけではなかろう」
金居の座るテーブルをバァン!と叩き、小さな声で言う。
「フ……いいのか?あの娘達が見ているぞ?」
「……。」
天音達はびっくりした顔で始を見る。なのは達も「やはり何かあるのだろうか?」という顔だ。
「……こい。」
「……いいだろう。」
始が金居を連れだす。このやり取りの後、二人はハカランダから出ていくのだった。
「アレ?お客さんは?」
天音の母、遥がコーヒーを持ってくる。
「始さんならさっきのお客さんと一緒にどっか行ったよ。」
「え〜どうしよう、このコーヒー……」
遥が飲み逃げに近い形になったコーヒーを見てなげいている。
一方、なのは達魔導師組は。
「(やっぱりあの人、なんだか変だよ)」
「(うん。なんかあの雰囲気どっかで見たことあんねんけどなぁ……)」
「(はやてちゃんやあの人を見た途端に表情変わったよね……)」
なのは達は何かに気付き初めていた。



「要件は何だ?」
ハカランダから離れた場所で始と金居が向き合っている。
「……まぁそう怖い顔をするな……。手を組もうと思ってな」
「手を組むだと?」
「ああ。最近グロンギやワームが怪しい動きを見せているからな」
「……断る。貴様と手を組む必要は無い。」
そう言うと同時に始の腹あたりに『カリスラウザー』が現れる。
「フ……今日は戦いにきた訳ではない。言いたいことはそれだけだ。」
金居は踵を返す。
「……待て!」
「あ、そうそう。それと……これをお前に渡しておこう。」
始が呼び止めると、金居は立ち止まり一枚のカードを「シュッ」と投げる。
始はそれを掴み、
「これは……」
受け取ったカードはワイルドベスタ。トンボの絵が書かれている。
『フロートドラゴンフライ』のカードだ。
「待て!何故貴様がこのカードを!?」
「フ……」
だが金居は始の問いに答える事は無かった……。


数日後、葦原家(アパート)。

「コーチ、お願いします。俺と会って下さい。話がしたいんです」
涼はコーチと電話をしている。
『ああ、もちろんだ。話そう。』
コーチからはほとんど棒読みのような返事が帰ってくる。
涼はコーチに会うために聖祥大学へ向かう……

その頃、小学校では。
今日は天音はいない。いつも通り5人で屋上にいる。ただし一人、中等部の『天道樹花』がいるが……
「やっぱりここの焼きそばパンはおいしいね!」
「当たり前だ。なんせ『俺様』が作ったんだからな」
「あはは……相変わらずだね、天道さん」
すずかの言葉に天道が当たり前だと言う。相変わらずの天道になのはも苦笑だ。
「さっすがお兄ちゃん!今日もバッチグー!」
天道の妹、樹花もおいしそうに食べている。
「お兄ちゃん……ってことは、天道さんの妹さん?」
「うん!そうだよ!」
そこでふと疑問に感じたフェイトが問い、樹花も自慢げに言う。
やたらとハイテンションだ。言うなれば「自慢のお兄ちゃんっさ!めがっさ幸せにょろ♪」って感じだ。

「みんなお兄ちゃんがいるんだね〜」
アリサが唐突に言う。
その言葉に「え?」と言うなのは。
「始さんとか、クロノくんとか、恭也さんとか……私もちょっと前までお兄ちゃんいたんだけどね……」
「「えー!?」」
すずか以外の一同は驚きの声をあげる。まったくもって初耳だ。そんな情報聞いた覚えは無いぞ。
「その様子だと、すずかは知ってたの?」
「うん。確か、血は繋がってないって。水泳やってる人なんだよね?」
「うん……べ、別にあんな奴好きじゃないんだけど……水泳の練習に没頭するようになってから会えなくなっちゃったのよ」
「…………。」
一同はアリサの説明に、へ〜といった表情をしている。
「まぁそんなところがアイツのいいとこなんだけどね……」
アリサは熱っぽい顔で言う。一同は「へぇ〜そうなんだ〜好きなんだ〜」という表情でニヤつく。
「な、何よその顔は!べ、別に好きなんかじゃないんだから!」

……まったくもってツンデレである。この後しばらくいじられたのは言うまでもない。



一方、聖祥大学プール。

「コーチは……」
涼が水泳部員に問おうとするが−
「コーチならいねぇよ」
「ってかお前ちょっと水泳上手いからって調子乗ってたんじゃねぇか?」
「ヘッ……まぁお前はもう終わりだ!水泳部をやめたお前がコーチに会う必要もねぇだろ。帰れよ」
部員達はみんなして涼を帰らせようとする。
そして涼は反論することなく、「……わかった。」とだけ言い、その場を後にするのだった……。

「……行ったか?」
涼が立ち去った後に物影からコーチが現れる。
「はい。言われた通り追い払いましたよ?」
「あいつ黙って帰りましたけど……喧嘩でもしたんですか?」
「いや……これでいいんだ。」
どうやらコーチ達は部員を使って涼を避けていたようだ。まったく正々堂々と会えばいい物を、めんどうな真似をする男だ。
「…………。」
だが、涼はまだ立ち去ってはいなかった。物影からコーチの姿を見た涼は、避けられている事を悟り、今度こそ静かに立ち去るのだった……。
最も信用していた男に裏切られた涼が行く先に待つ者は……

アリサはいつもの4人を家に呼んでいた。特に用はないが、放課後に友達の家に遊びに行くというのは子供の特権である。

アリサを筆頭にバニングス邸の敷地内に入るなのは達。相も変わらず豪勢な家だ。
まったく余った部屋があるなら分けてほしいね。まぁこの家の主になるかと言われれば微妙だが。やっぱり普通の家が一番だ。
失礼、そしてなのは達が敷地内に入ると同時に、庭で日曜大工的な作業をしていた青年に話し掛けられる。
「あ、アリサちゃん、もうすぐ犬小屋直るよ♪」
「うん、ありがとう♪」
アリサは御礼を言う。そして「あ、この人は……」と紹介しようとした時、はやてが口を開く。
「あ!翔一くんや〜ん!」
「おぉっ!はやてちゃ〜ん」
「え、なに?知り合い?」
翔一とはやてはどうやら知り合いのようだ。そして翔一はアリサとも知り合い……変な三角関係だ。
「うん、うちの近所に住んではって、よく壊れた家具とか直してくれてんよ」
「へぇ〜はやてのとこもそうなんだ。うちもほら、犬小屋直して貰ってたの」
「そうゆうことです!津上翔一っていいます!よろしく!」
満面の笑みで挨拶する翔一は始とはまた違った雰囲気で好青年といった感じだ。

数分後。
「じゃあ、俺が皆の分のおやつつくるよ!」とバニングス家のキッチンへと向かっていく翔一。
さらに「負けてられへん!」と共にキッチンへと消えたはやて。
「はやてちゃん達、何作ってるんだろうね?」
「さぁ?でも翔一は何だって作れちゃうからね〜」
「へぇ〜そうなんだ〜。楽しみだね」
なのは達も楽しみに待っている。
すると、しばらくたって二人がキッチンから帰ってきた。
「どぉや!二人で作ったケーキやで〜」
「さぁさ、皆で食べよう!」
はやてと翔一が一番ハイテンションだ。
「待ってました〜」
「おいしそ〜う」
なのはもアリサも目を輝かせている。……今回すずかの出番少ないな……。
そして味の方は……
「「美味しい!」」
「二人の料理の腕、天道さんに匹敵するんじゃないかしら!」
「今度勝負してみて欲しいよね〜」
「天道さん?」
天道の話をし始めたなのは達に翔一が「誰?」と質問する。それに対しすずかが答える。
「すっごく料理が美味しいんです!」
「へぇ〜今度料理対決してみたいなぁ〜」
「じゃあなのはのお母さんもだね♪」
すずかのこれでもかというくらい簡単な説明に翔一が食いついた。アリサも乗って、料理対決な雰囲気だ。



その頃……海鳴某所。
「兄貴……なんだか兄貴が呼ばれてる気がするよ……」
地獄兄弟、弟、影山が言う。すると兄、矢車は「バッ」と片手を出す。
「相棒……光を求めるな!……どうせ俺に出番は無いぃ……!」
いつになくドスのきいた低い声である。
「ご、ごめんよ兄貴!でももう一回兄貴の料理……食べてみたいな……」
「フン…俺には……眩しすぎる……」

はてさて、これは果たして伏線なのだろうか……答えは神のみぞ知るって奴だ……。

「じゃあ翔一、今日はありがとうね♪」
「うん!ってかお前、呼び捨ては止めろよな〜」
「あははっ、ええやん別に♪」
「うんうん、だって『翔一さん』ってキャラじゃないしね」
「ちぇ、なんだよソレ」
アリサは帰ろうとする翔一達を見送る。本当にほのぼのした空気だ。こんな平和がいつまでも続けばいいのに……と、なのは達は思ったという。
そしてなのは達が立ち去った後、アリサの後ろに一人の男が佇んでいた。

「……。」
「涼!」
「久しぶり……アリサ。」
葦原涼である。水泳に没頭し、アリサの前から姿を消した涼が再び戻ってきたのだ。アリサにとっては嬉しいことである。


「あれ、もしかしてアリサちゃんが言ってたお兄ちゃん?」
「そうみたいだけど……」
しばらく歩いた後、なのはとフェイトは後ろを振り向くと、涼がいることに気付く。
「今更戻ってきて何様やねん?うちが説教したる!」
「まぁまぁまぁまぁ!待ってはやてちゃん!」
はやてが涼の方へと歩いて行こうとした時、翔一が止める。
「なんで止めんねん!」
「はやて、そっとしといてあげようよ」
「うん。野暮なことしない方がいいよ」
「う……しゃあないなぁ……二人がそう言うなら……。」
そう言いはやて達は黙って歩いていくのだった。


数分後。
「涼、どうしたの?水泳は?」
「あぁ……。やめたんだ……」
「やめた?」
「色々あってな……」
「そっか。」
涼はアリサと二人で話している。アリサは心なしか嬉しそうな表情をしている。久々に兄のように慕う涼に会えたのだ。無理も無いだろう。
そしてしばらく話をした後、涼は帰っていくのだった。そんなアリサをアンノウンは影から狙っていることなど、アリサは知る由もなかった……。



「う……!」
翔一が突然何かを感じたような表情になる−アンノウンだ−。
「どうしたん?翔一くん」
「気分でも悪いの?」
「ごめん皆!俺、行かなきゃ!」
翔一はそう言うと、押していたバイクに跨がり一気に翔けていった。
「へ、変な奴やなぁ……」
それと同時にちょうどなのは達の携帯にも連絡が入る。
『みんな!アンノウンだ!場所は−』



「剣崎くん!アンノウンよ!」
「アンノウン!?」
サーチャーにエネミー判定され反応した画面には『ANKNOWN』の文字。元はアンデッドサーチャーなのに、進歩したものである。
「いいから、早く行って!ブレイバックルはもう返ってきたから!」
「わ、わかった!」
こうして剣崎もブレイバックルを手に戦場へと赴くのであった……。
バイクを走らせる剣崎はブルースペイダーに乗ったまま変身する。
「変身!」
『Turn up(ターンアップ)』
バイクの前に現れたヘラクレスオオカブトムシ−スペードA−のゲートが剣崎の体を変化させる。



「きゃああああああ!」
「……。」
アリサの目の前に現れたのは蛇の姿をしたアンノウン『スネークロード』だ。
スネークロードは黙ってアリサに迫る……。
だがその時、突如現れたバイクはアンノウンを弾き飛ばす。
銀と青のライダー『ブレイド』がブルースペイダーでスネークロードに突っ込んだのだ。
「大丈夫か!?キミ!」
「…………ぁ。」
ブレイドがアリサに話し掛けるが、気が緩んだせいかアリサは気を失ってしまう。
とりあえずアリサをその場に寝かせ、ブレイドはブレイラウザーでスネークロードに斬り掛かる。
スネークロードはブレイドの攻撃を受け、取っ組み合いになった……

その時だった。
遠くから聞こえるバイクの音。その音は真っ直ぐにこっちに向かっている。
「何だ?」
剣崎がバイクの方向を見る。
すると−−
「変身!」
バイクに乗った男が叫ぶと同時に、なんとバイクごと変身してしまったのだ。
「あいつは!?」
そう、現れたのは以前自分をボコボコにしてくれた黄金のアンノウンだ。
ついに力を押さえ込んだ金の龍……『仮面ライダーアギト』は専用バイク『マシントルネイダー』に乗り、スネークロードとブレイドに突進する。二人は弾き飛ばされ、アギトはバイクから降りる。
「アァギトォ……!」
「アギトぉ?」
スネークロードの言葉に「何それ?」といった感じに復唱するブレイド。
一方アギトも倒れたアリサを見て驚く。
「(アリサちゃん……!)」
アギトはもう一度スネークロードを見る。こいつは絶対に許せない敵だ。アギトはそう判断し、ベルトを青く輝かせる。
そしてベルトからストームハルバードを取り出し、例によって変形させる。
「青くなった!?」
ブレイドは驚きながらもブレイラウザーを構える。アギトもブレイドの隣でアンノウンに武器を構えている。どうやら今回は敵対する意思は無いようだ。
アギトとブレイドは同時にスネークロードに襲い掛かる。スネークロードはすかさず槍のような武器を取り出し応戦する。


『なのは!すでに現場にはブレイドと、例のアンノウンがいる!』
「例のアンノウン?」
現場に急ぐなのはにクロノからの通信が入る。
「ああ、ブレイドを破壊したアンノウンだ!注意してくれ!」
「わかった!」

こうしてなのはも戦場へと急ぐ……。

次回予告


愛する物を守るため、漆黒のライダーと緑のライダーは戦場を翔ける……

そして戦いの記憶に呼び覚まされる魂……。

守るべきものを知った時、宿命に向かって戦いを挑む……!

『これ以上アリサに触らせない!これ以上アリサの前には立たせない!!』

次回、魔法少女リリカルなのは マスカレード
第6話「覚醒〜ギルス〜」
に、ドライブ、イグニッション!!




スーパーヒーロータイム



「次回……また新たなライダーが覚醒するぅ……!」

「兄貴!対決が楽しみだね!」

「いいよなぁ……必要とされる奴らはよ……どぉうせ俺に光は当たらないぃ……!」

「あ、兄貴……」

「……!出番があるかもしれないだとぉ!?……何?料理勝負だとぉ……?」

「もしかして……また兄貴の麻婆豆腐が食えるの!?」

「……フ。勝利において最も必要なもの……それはパーフェクトハーモニー、完全調和だ。」

「Σ兄貴!?」

「料理勝負なら吾郎ちゃんを忘れて貰っちゃ困るね」

「ええ。絶対勝ちますよ、先生。」

「……テメェ……三島……(ゴゴゴゴゴ……)」

「三島……お前よく俺達の前に顔出せたな……(ゴゴゴゴゴ……)」

「え……吾郎ちゃん、こいつらに何かしたの?」

「い、いえ……特に何もした覚えは……」

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2007年07月11日(水) 19:27:08 Modified by beast0916




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