リリカル龍騎2話

H14.2.1 PM3:40 アースラ艦内
「例の怪物の反応を確認!」
「すぐにモニターに映して!」
 なのは達が戦いを始めるより少し前、アースラでもバクラーケンの出現を確認していた。
モニターに映ったそれは、今までに戦ったものとは違う、桁外れの高エネルギーを持つ化け物だ。
モニターには近くにいたなのは達の姿も映っている。
「艦長、僕も行きます」
「…そうね、もしもの時のために、いつでも出られるようにしておいて」
 今回の相手はこれまでとは一味違う。
いくらAAAランクが二人いても、それに匹敵しかねないようなのが相手だ。万一の備えは必要だろう。
「艦長!なのはちゃんが!」
 エイミィの声に気付き、すぐにモニターに目線を移す。
その目に飛び込んできたのは、なのはが縛られ、池に引きずり込まれそうになっている姿だった。
すぐさまクロノに出撃命令を下すリンディ。それを聞いた刹那、クロノは転送装置へと一目散に駆けていった。
その直後に手塚がバイクでバクラーケンをはね飛ばす姿が映り、クロノ以外のアースラメンバーが目を丸くしたのだが。

同日 PM3:45 公園
「あなた…今朝の占い師さん?無茶です!普通の人が太刀打ちできる相手じゃ…」
「心配するな、ああいうのは俺の専門分野だ」
 そう言った手塚は、エイのようなレリーフが刻まれたカードデッキを取り出す。
 そのカードデッキを池の水面にかざすと、どこからか現れたバックルが手塚の腰に巻きついた。そして…
「変身!」
 右手を前にかざしながらそう言い、カードデッキをバックルにはめ込む。すると…彼の姿が変わった。
簡単に言えば、銀色の仮面とピンク色の鎧をつけているような感じだ。
手塚はなのは達を見てうなずくと、池の水面からミラーワールドへと飛び込んでいった。
 クロノが到着したのはそのすぐ後だった。

第二話『仮面ライダー』

同日 同時刻 ミラーワールド
 池からバクラーケンが現れる。先ほどの手塚のバイクによる突撃が効いているのか、足取りは重く、ふらついている。
しばらく休めば回復するだろう。そう判断したのか、その場で休憩を始めた。
 だが、その突撃を仕掛けた張本人が近づいているとは気付いていないようだ。
そうでなければ…出てきた池の前で休憩するはずが無いのだから。
 ブロロ…
 何かの音が聞こえる。
 ブロロロ…
 それはエンジンのようなものを動かすような…
 ブロロロロ…
 そう、例えるならアクセル全開のバイクのエンジン音のような、そんな音だ。
その音を聞いてから一秒もしないうちに、その正体を知ることになった。
ライドシューターに乗ったライアが池から出てきたのだ。
「!?」
 予想もしなかった事態に驚くバクラーケン。その数瞬後にはもっと予想できない事が起こった。
ライドシューターがバクラーケンの方へと向きを変え、そして落ちてくる。
ライアの狙いを本能で察知し、紙一重で転がってかわす。着地後ライドシューターを降りるライア。
そしてバクラーケンが立ち上がる前にエビルバイザーを開き、一枚のカードを装填する。
『SWINGVENT』
 どこからともなくエイのようなモンスター、エビルダイバーが飛んで来てエビルウィップをライアへと渡す。
そして立ち上がったバクラーケンへと飛びかかった。
 右に飛んでかわすバクラーケン。そこから鞭のような触手を放ちライアをからめ取る。
縛られ、身動きが取れないライア。頭突きなどでもがくが、触手が緩む気配は無い。
だが腕は動く。それを利用して一枚のカードをバイザーに装填。
『ADVENT』
 再び飛来するエビルダイバー。だが今回は武器を渡すためではなく、戦うために飛んできた。
鋭いヒレ・エビルフィンで触手を斬り落とし、そのおかげでライアが自由になる。
その後すぐさまエビルウィップを拾い、叩く、叩く、叩く。
さらに、スイングベントとエビルダイバーの尾、二つのエビルウィップでどんどん弱らせる。
そして、とどめの一撃がバクラーケンを急襲した。
『FINALVENT』
 エビルダイバーが今度はライアの方へと飛んでいく。
そしてそのライアはエビルダイバーに乗り、もの凄い速度でバクラーケンへと向かう。
エビルダイバーに乗っての特攻、これがライア最大の必殺技『ハイドベノン』だ。
バクラーケンにはもう、これを避けるだけの体力は残っていなかった。
ハイドベノンの直撃を受け、砕け、斬られ、痺れ、そして爆散した。
ライアは現れたエネルギー光をエビルダイバーに食わせ、そして現実世界へと戻っていった。

同日 PM3:53 公園
 一台の車が近づいてくる。その車がなのは達の前で止まり、見覚えの無い男が降りて来た。
「アリサちゃん、今帰りですか?」
「…えっと、どちら様ですか?」
「いや、今朝会いましたって!今日から使用人として働いてる佐野満!」
「冗談よ。帰るつもりだったんだけど…ちょっとした用事が出来たから少し遅れるわ」
 知り合いだろうか。そう考えている一同の考えを察したのか、アリサが紹介する。
「あ、この人は佐野満さん。今日からうちで働いてるの」
 ここから互いの自己紹介になるかとも思ったが、その前に一つやる事が出来たようだ。
バクラーケンとは違う怪物、ギガゼールが現れたのだ。
「く…まだいたのか!」
 クロノの言葉をきっかけに、なのは達が身構える。
ふと、佐野はあることを思い出していた…
そう、神崎から教えられたライダーバトルに関する重要事項を思い出していたのだ(第一話参照)。
その中には当然こういう怪物…ミラーモンスターのことも含まれている。
「じゃあ…あれがモンスター!? だったら!」
 だったらやり様はある。そう判断した佐野は、神崎から受け取ったカードデッキを取り出す。
「佐野さん?まさかあなたも…!」
 カードデッキに気付いたアリサに聞かれ、うなずく。
だが、彼のカードデッキはモンスターと契約していないブランクのデッキだ。そんなもので対抗できるとは思えない。
かといって、佐野には他に戦える人間がいるとも、それがこれから来るとも思えなかった。
佐野は賭けに出た。カードデッキから一枚のカードを取り出し、ギガゼールに向ける。
すると次の瞬間、ギガゼールが消えた…否、佐野が取り出したカード『CONTRACT』に取り込まれたのだ。
この瞬間、佐野とギガゼールとの契約が成立。仮面ライダーインペラーの誕生だ。
契約が吉と出るか凶と出るかの賭けだが、タイムベントの別方向を見たのならこれが吉だと理解できるだろう。
 ちょうどライア…いや、手塚もミラーワールドから戻って来た。クロノは話を聞くため、自己紹介を始めた。
「時空管理局のクロノ・ハラオウンだ。あの怪物やカードについて話を聞かせてもらいたい」

同日 PM3:57 アースラ艦内
「神崎士郎からそのカードデッキを受け取った13人の仮面ライダーが願いを叶えるために殺しあう、その主な戦場になるのは鏡の世界『ミラーワールド』、あの怪物は人食いで、対抗するには他の怪物と契約しないといけない…と、つまりこういう事か?」
「ああ、それで合っている」
 ここはアースラのブリッジ。あの後転移魔法でここまで移動し、そこで手塚がこの戦いのことを教えていた。
先ほど戦っていたなのはやフェイトもこの話を聞いている。
ちなみに佐野は買い出しの帰りだったそうで、アリサとすずかを乗せて帰っていった。おそらくこの二人も佐野から話を聞くだろう。
「…手塚さんも、他のライダーの人を…その…」
 何かを聞きたそうにしているなのは。おそらく手塚もライダーを殺すのかと聞きたいのだろう。
聞き辛そうにしているなのはの質問を察し、手塚が答える。
「俺はライダーを殺さない。いや、むしろライダーの戦いを止めたいと思っている」
 それを聞き、安堵の表情を浮かべるなのは。そこでリンディが切り出す。
「手塚さん、あなたを見込んで一つ頼みたいことがあるんだけど…」
 もしかして…予想は付くが一応聞き返す手塚。
「頼みたいこと?…モンスター退治か?」
「分かっているなら話は早いわ。全面的に戦えとまでは言わないけど、なのはさん達が戦っている時には手を貸してあげてほしいの」
 手塚としてもモンスターは倒さねばならない。さらに協力者まで得られるとなれば、選択の余地は無しだ。
「…分かった。協力しよう」
 笑顔で礼を言うリンディ。ふと、手塚が呟く。
「占いで出ていた『運命を左右する出会い』…この事だったようだな」

   次回予告
「デッキの解析は済んだか?」
「娘から話は聞いたよ」
「なのは、フェイト、これを持って行け」
「凄い…こんなに強化されたんだ…」
仮面ライダーリリカル龍騎 第三話『新たな力』

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2007年06月15日(金) 17:35:36 Modified by beast0916




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