悪魔砲少女対生機融合猫5話

「え!?」
「な…何が起こったんだ!?」
『殺して…。』
「え?」
突然聞こえた謎の声に皆は一瞬硬直した。
『おねがい…殺して…私を…殺して…。』
「こ…この声は…。」
その声はデビルの物では無い。紛れも無くなのはの声だった。
『おねがい…殺して…私を殺して…これ以上誰かに…操られて…皆を
傷付けるなんて…嫌だから…だから…いっその事…私を…殺して…。』
なのはは完全にデビルに支配されたワケでは無かった。
そして体をデビル化されながらも顔だけは本来の物に戻ったなのはが
それまで全周囲に展開していた鉄壁の防御魔法を解除し、一歩一歩近寄って来た。
『おねがい…殺して…。今の私じゃ…この位の抵抗しか出来ないから…いっその事…おねがい…。』
「なのは…君は…。」
ユーノが呆然としていたのも束の間、再びなのはの体の支配権がデビルの手に戻ってしまう。
『そんな事出来るかよバーカ!! つかそんなのオレがさせねぇよ!!
生かさず殺さずってなぁ! コイツの体は老いて使い物にならなくなるまで
使い潰してやるぜグヒャヒャヒャヒャ!!』
デビルなのはは再びデビルレイジングハートの先端をユーノと合体クロミーに向けようとする…
が…向けられない。それどころか逆にデビルなのは自身の顔面に向けていたのである。
『な!? 何故だ!? 体が言う事を聞かん!!』
『殺して…私の意識が残ってる内に…殺して…おねがい…。』
その時、なのはの目から大量の涙が流れていた。デビルなのはの中にかすかに残る
なのは自身の意識がこれ以上皆を傷付ける事を拒んでいたのである。
自身の死を選択する程にまで…
『グヒャヒャヒャヒャヒャ!! そんな事出来るワケねぇだろうが!!
特にそこの小僧!! お前はこの女が好きなんだろう!? そうなんだろう!?』
「う…。」
『図星だな!? そうだよなぁ!! 好きな女を殺す事なんて出来ねぇよなぁ!?
逆にそんな事出来たらどっちが悪魔か分かんねぇよなぁ!? グヒャヒャヒャヒャ!!』
顔面にデビルレイジングハートを向けられながらもデビルなのはは大笑いしだした。
『やっぱ好きな女は殺すより抱くに限るよなぁ!! 小僧!! 貴様もそう思うだろ!?
グヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! どうした!? オレの言う通り何も出来ないだろ!?』
デビルなのはの笑いは続く。どうせ殺す事など出来るワケが無いと考えていたからである。が…
「このイタチ野郎には出来なくてもオイラなら出来るぜ!」
合体クロミーが前に出てガトリング砲を構えた。ユーノと違って人を躊躇無く撃てる
タイプであるからこその計らいなのだろうが…しかし…
「いや…僕がやる…。」
「イタチ野郎!?」
『い!?』
ユーノの口から出た意外な言葉にその場にいた誰もが驚いた。
『じょ…冗談だよなぁ!? だってお前…コイツ好きなんだろ!?
と言う以前にお前…人殺せる様なタマじゃねぇだろ!?』
これは流石にデビルなのはも焦る。しかし、ユーノは臆する事無く言った。
「なのはを魔法の道に進む原因を作ったのはこの僕だ…。もしあそこで僕がなのはと
出会わなかったら…もしかするなら今回の様に悪魔に乗り移られる事は無かったと思う…。
だからこそ…ここは僕の手でやらないとダメなんだ…。恭也さんや士郎さんには申し訳無いけど…
なのは…君は僕が一思いに殺してあげるから…。」
『じょ…冗談だろ!? と言うかお前なんかがどうやって殺すってんだよ!?』
すると合体クロミーがガトリング砲をユーノに渡した。
「コレを使え。お前がコイツとどういう関係なのかは知らんが…
お前の心意気と言う奴は分かった。だからこそだ…。」
「ありがとう…。」
ユーノは合体クロミーから借りたガトリング砲を右手に装着してデビルなのはに向けた。
『お…オイオイ…冗談だよな…冗談だよな…ちょっと…。』
デビルなのはは焦り、逃げようとするがなのは自身の意識が妨害しているのか動けない。
『やめろやめろやめろやめろ!! そんな事したらコイツが死ぬぞぉ!?』
「そう…だから僕がなのはを殺す為にこれを向けている…。」
『やめろって!! お前の好きな女なんだろ!? 殺すなんて冗談だよな!?』
デビルなのはの全身から大量の汗が流れ出る。今の状態では防御魔法による防御さえも出来ない。
ガトリング砲が発射されれば忽ち弾丸を受けて死亡は必至。そしてデビルには
流石に死者を蘇らせる様な力は無い。もう絶対絶命であった。
『冗談だろ冗談だろ冗談だろ!? どうせただのハッタリだろ!?』
「大丈夫だよなのは…君だけを死なせたりはしない…。これで君を殺したら…
僕も直ぐに後を追うから…。」
『グヒィ!?』
ユーノは目に涙を浮かばせながらニッコリと微笑む。ユーノは本当になのはを殺し、
また自身も直ぐに死ぬつもりだった。これにはデビルなのはも青ざめる。
そしてユーノがゆっくりガトリング砲の引き金を引こうとした。
『グギャァァァァ!! 殺さないでぇぇぇぇぇ!!』
「あ!?」
この恐怖に耐え切れなかったのか、デビルはなのはの体から出て行ってしまった。
デビルから解放された事により、忽ちなのはの体が元の人間の物に戻って行く。
「なのは!」
全身の力が抜けた様に倒れこむなのはを慌ててユーノが駆け寄り抱き上げる。
「アハハ…ユーノ君…今まで迷惑かけて…ゴメン…。」
「僕こそゴメン! 悪魔に憑かれていたとは言え君を殺そうとして…。」
「それは別に良いの。でも…さっきのユーノ君の平手打ちは痛かったよ…。」
デビルから解放されたなのははユーノ共々に笑みが浮かんでいたが、
まだまだこれでめでたしめでたしとは行かない。何故ならデビルはまだ健在なのだ。
そしてなのはの体から出て行ったデビルが次に憑依した先はデビルがミッドチルダから
こちらへ来る際に使用したアースラであり、再びデビルアースラとなったのである。

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2007年08月01日(水) 09:22:04 Modified by beast0916




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