THE BELKA OF ELEMENTAL1話

魔装機神 THE BELKA OF ELEMENTAL ラ・ギアス編1話。

リィンフォースは、目覚めたときにそばにいたテュッティとマサキにこの世界の様々な事を聞かされた。
ここは地球の裏側の世界ラ・ギアスにある国、神聖ラングラン王国であること。
ここでは科学ではなく魔法と錬金学が主になっていること。
宗教は精霊信仰が行われ、万物に生命が宿っていると考えられていること。
そして、面白いものを見せてあげるといって、テュティはリィンを外に連れ出した。
外に出ると、様々な主に仕えていたリィンでも驚く光景だった。
だが、同時になるほどと納得も出来た。
さっき、地球の裏側の世界だといっていたが、本当に裏側で、なんと説明したらいいのだろう。
とにかく、裏側なのだ。
見上げても、向こう側の大地が見え、ボールの中に住んでいるようだった。
だが、ちゃんとこの球体の世界の真ん中に太陽もある。
話によれば、ちゃんと夜もあるらしく、その時は太陽の光が消えて、やがて太陽も消え、少しずつ月が現れ、地上では体験できない神秘的な光景が見れるらしい。
「どう、面白いでしょ?」
テュッティの言葉に、リィンは静かに頷いた。
そして、自分がどうなっているのかを確かめる。
魔力は……闇の書の主といわれてきたときの同じ魔力を感じられる。
さらには……
(!!…闇の書の暴走プログラムが消えている?)
こんな都合のいいことが……何か理由があるのだろうか?
もしくは暴走プログラムだけがこの世界へ来た衝撃で自分と離れたか……
だが、自分が存在している以上、暴走プログラムが無いということはもう主に危険は無いということであり、その点についてはほっとし、ありがたいと思っている。
最も、夜天の書がない今はやてを主と呼べるのかどうかは微妙だが、最後の、そして、自分にリィンフォースと言う名前をくれた最も敬愛すべき人物なので、これからも主と呼ぶことにしようとリィンフォースは思った。
もしも破壊プログラムが離れていて、別のところにあるのなら、自身を犠牲にしてでも破壊するだけだ……
そう考えていた時だった。
「マサキ、彼女が目を覚ましたのかニャ?」
やけに下のほうから声が聞こえてきたと思い、下を見ると、そこには猫が2匹いた。
「私はクロ、よろしくニャ」
「オイラはシロっていうニャ」
この、何故かしゃべっている2匹を見て、リィンは問いかける。
「誰かの使い魔か何かか?」
リィンフォースの言葉に、あたりは黙り込む。
何故彼女が使い魔、もといファミリアの事を知っているのだろうか。
「そ、それで、あなたがここに来た本当の理由だけど……」
彼女のことも気になったが、テュッティは、何故彼女がこの世界へ来たのかを説明する。
なんでも、約10年ほど前に、予言でこのラングランに「魔神の脅威」により、ラングランに不幸が訪れるという。
それを回避するために、ラングランは「魔装機計画」を進めていた。

「これは、実際見てもらったほうがいいわよね。マサキ」
テュッティに言われ、さっきから説明するのが下手なのかずっと黙っていた少年、マサキ・アンドーは静かに意識を集中させ……
「サイバスター、GO!」
と言う掛け声と共に胸のペンダントがひかり、姿を瞬時に変える。
その姿は、どこかロボットのような、だが騎士の甲冑にも見えなくも無い。
特徴的なのは、全体のモチーフが鳥っぽいところで、背中の羽のようなものも印象的であった。
その後、マサキは瞬時に元の姿に戻る。
「ペンダントに宿っている精霊の力を借りて戦う力を得る。それが『魔装化』といって、この魔装化によって変化した姿を「魔装機」というの
魔神の脅威に立ち向かうのが『魔装計画』なの」
さらに言えば、その精霊のうち、上位の4種は『魔装機神』と呼ばれること。
マサキの『サイバスター』、そしてテュッティの持つ『ガッデス』は魔装機神らしい。
そして、精霊と魔装化するものを「操者」という。
ただし、魔装機神は精霊に選ばなければ魔装化することは出来ない。
そして、この魔装機計画には一つ難点があった。
それは、ラ・ギアス内で魔装化が行える人物がほとんどいないこと。
魔装化するためにはプラーナと言う精神エネルギーが必要になる。
プラーナは一般的に激しい感情を持つ人ほど高いといわれている。
しかし、ラ・ギアスの人々は精神的に落ち着いているので、プラーナが高いものはなかなか見つからないのだ。
そこで地上に目をつけたのである。
こうして、地上にいる人々をこのラ・ギアスに呼び、協力してもらおうとしたのだ。
「まあ、まずは国王に会いましょう」
そういって、3人は第287代神聖ラングラン王国国王、アルザール・グラン・ビルセイアの元へと向かう。

「彼女が新しく召還された地上人か」
ラングランの王都の玉座に座っているのはあるザールの息子、フェイルロード・グラン・ビルセイア王子。
アルザール国王は現在ここを留守にしていて、代理としてフェイルロードが要る。
リィンはフェイルロードにはいといって一礼する
フェイルロードはリィンを見て驚いている。
しかし、その理由はマサキにはテュッティにはわからない。
確かに、国王や王子に対する礼節は完璧と言う言葉にプラスをつけてもいいだろう。
どこでこんなものを学んだのだろうか……
しかし、フェイルは違うところで驚いていた。
「なんということだ。地上の者で父上よりも高い魔力を持っているものがいるとは……」
このリィンと言う女性から無意識のうちに発せられている魔力にフェイルは驚いている。
リィンはフェイルに自分の事を説明する。
「フェイルロード王子、私は地上の人では…いや、人ですらありません」
リィンフォースは説明する。
この世界には様々な次元世界があること。そこにも様々な人々がいること。
そして、自分が人ではなく、夜天の魔道書……いや、リィンフォースの意思、プログラムだと言うこと。
リィンの説明に、フェイルロードは唖然とする。
そんな事を信じていいのかどうかと言うこと、そして彼女の目が本気であること。

「まあ、地球の裏側の世界とかあるんだから、そういうのもあるんじゃないか?」
すでに地上から召還されると言う不可思議な事を経験したマサキは、多少こういうことに免疫が出来たようだ。
とりあえず、とフェイルはリィンにたずねる。
「われわれに協力してはくれないか?ラングランの……いや、この世界のため。だめなのならすぐにでも地上へ戻そう」
そう言われて、リィンは少し考える。
主は騎士達や友人達がいるのでもはや問題は無い。
彼女達なら信頼におけ、安心できる。
おそらく、これは罪滅ぼしなのかもしれない。
今まで数々の文明を破壊してきた自分。
しかし、今回はちがう。
自分の力で、この世界を守って欲しいと言う。
なら、結果は決まっている。
「ご協力いたしましょう、フェイルロード・グラン・ビルセイア王子。この力、存分にお使いください」
リィンの反応を見て、テュッティは静かにマサキにつぶやく。
(あなたもあの人を見習いなさい)
(うるせえ!俺がそんな事で切るわけ無いだろう!!)
フェイルは笑いながら言う。
「そんなにかしこまらなくても、フェイルかフェイル王子でいい。私自身、堅苦しいのは苦手なのだ」
フェイルに言われ、かしこまりました、フェイル王子、と返すリィン。
……本当にわかっているのだろうか?
「と、ところで、話を聞く限りでは君は魔術が使えるというが……」
フェイルは、彼女がどんな魔術を使うのかそれとなく興味があった。
魔法の事を聞かれ、リィンは瞬時に戦闘用の甲冑を装着する。
最も、甲冑と言う名前だが鎧ではなく、ほとんど衣服のようなものである。
フェイル達、この場にいるみんなはリィンを見て言葉を失う。
向こうの魔術師は、魔装化とそう大差はなさそうだ。
ただ、使う力がプラーナか魔力かどうかの違いだけで……

さて、協力することになったのだが、次の問題は……
「あなたの住まいよねー……」
そういってテュッディは考える。
話によれば、彼女はずっと様々な主に仕えてきて、ひとりで生活なんてしたこともないらしい。
ということは……
「マサキ、あなたゼオルートさんに事情を説明して、この人も一緒に住まわせてもらえないかどうか聞いてもらえないかしら?」
まああの家なら問題なくいけいれてもらえそうではあり、一番生活環境が整っているだろう。
それに、テュッティの一緒に生活するのは危険だ。
特に食生活あたりが……
彼女は恐ろしいほどの甘党なのだ。
彼女の味覚についていけるものなどそうはいない。
「ああ、ちょうど今ゼオルートのおっさんが城にいるから聞いてくる」
そういって、ゼオルートなる人物を探しにいこうと思ったときだった。

「さっきから聞こえているよ、マサキ」
現れたのは短い金色の髪、眼鏡をかけていて、優しそうな雰囲気を持つ男性だった。
「どうも、ゼオルート・ザン・ゼノサキスといいます」
ゼオルートなる人物は笑みでリィンを見る。
「私もこれから帰ることですし、家までご案内しますよ」
そういって、ゼオルート、マサキ、リィン、クロ、シロの3人と2匹はゼオルートの家へと向かった。
その帰り道。
「あ、そういえばプレセアに今晩の夕飯の買い物頼まれてましたね……マサキ、すみませんが先に帰っていてください。クロ、シロ。流石にもう迷わないとは思いますが、もしものときは頼みましたよ」
そういってゼオルートは町へと姿を消していく。
「おっさん……いくら俺でももう迷わないっつうの」
だてに1年もあの家で生活しているわけじゃない。
いくら極度の方向音痴のマサキでもそこまでバカじゃない。
こうしてゼオルート家にたどり着く一同。
「もどったぞー」
家に入ると、「お帰りなさーい!」と元気な女の子の声が聞こえてきた。
そして現れたのは、声どおり幼い女の子で、その女の子はリィンフォースの方を見る。
「お兄ちゃん、その人は?」
女の子はマサキにリィンフォースの事を聞く。
「こいつはリィンフォース。俺と同じ地上に召還された奴だ。話し合ってここで住むことになったからな」
マサキの言葉に、わかったといって再びリィンを見る。
「私はプレシア・ゼノサキス。よろしくね」
こうしてリィンフォースは、新しい生活をおくることになった。

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2007年06月15日(金) 18:03:06 Modified by beast0916




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