THE BELKA OF ELEMENTAL3話

魔装機神 THE BELKA OF ELEMENTAL ラ・ギアス編3話

「なるほど」
フェイルロード達はリィンフォースからすべてを聞いた。
あのとき現れたデモンゴーレムの異常な強化と再生能力。
それはリィンフォースの根底に存在した暴走プログラムのせいだったこと。
「君がこの世界へ召還されたとき、自身の中に存在するはずだった暴走プログラムと完全に分離した状態で召還されて、そのプログラムをルオゾールが見つけてデモンゴーレムに取り込んだということか」
フェイルの言葉に頷くリィン。
ルオゾールがたくらんでいることはよく分からないが、自分の事で言えばそんな感じだった」
「夜天の書だった私は、科学者に無理やり暴走プログラムをつけられた」
誰が、どんな理由で暴走プログラムをつけたのかわからない。
ただの興味本位か、それとも暴走プログラムでも使って。
「けどよ、そいつの根っこをぶっ潰したんだったら再生されないんじゃねえのか?」
そうだといいが、とリィンフォースはまだ悩む顔をする。
まあ、少しは前向きに考えよう。
また現れたのなら倒せばいい。
あれだけではリンカーコアの収集は出来ないから、自分だけでも倒せる事は可能だ。
もしなにかあれば、自分を犠牲にすればいい。
そうすればそれ以降は暴走プログラムがうまれる心配は無い。
「だが、まずはルオゾールだな。あいつ、どうやってこの結果から入ってきたのだ……」
毎回結界を強化してもルオゾールはいつものように難なく通過している。
一体彼はどのようにして入ってくるのだろうか。
それと聞いてふとリィンはあることに気づいた。
「ですが、私が張った結界にはてこずっていたようですね」
リィンフォースが張った結界には、そこまで強固でもない結界を張ったが、それは破るのに少々時間がかかっていた。
それを聞いてさらに考え込む。
「おそらく、この世界の結界と私の結界とでは用途や術式が違うからだと思います」
リィンフォースが張る結界は、相手を閉じ込めて逃がさないようにして、主に戦うための結界。
大してこの世界を結界は守りの結界。
その違いがルオゾールが結界をとくのに時間がかからせたのだ。
だが、暴走プログラムを倒し、ほっとした気の緩みで結界がゆるくなってしまったとはいえ、全く術式の違うリィンの決壊をルオゾールはどのようにして破ったのだろうか。
何か高威力の攻撃をぶつけたのだろうか。
しかし、暴走プログラムをあの魔物に取り付けるあたり、術式を解読したのかもしれない。
管理局の魔術師達に自分を消してもらってから自分はどれほど眠っていたかは知らないが、かなりの時間を眠っていたはずだ。
その間に暴走プログラムが離れてしまい、ルオゾールが研究していたのだろうか。
「とりあえず、防衛機能の見直しだな。皆は帰ってくれていい」
こうして5人は解散し、それぞれの家に戻る。
「ただいまー、腹減ったー」
二人が帰ってきたときにはお昼を回っていた。
まだ昼食を取っていないので二人ともおなかが空いている。
「お帰りなさーい」
二人が帰ってきて、プレシアが出迎える。
ゼオルートは既に帰っていた。
「おそかったですね、どうしたのですか?」
ゼオルートに言われてマサキは昼食を食べながら、またルオゾールが攻めてきた事を言う。
それを聞いてしばし考えるゼオルート。
そして……
「マサキ、お昼が終った後、久しぶりに手合わせしませんか?」
ゼオルートの言葉にマサキは考え、いいぜと返事をした。
ちょうど自分が今どれくらい強くなったのか知りたかった。
こうして、二人は久しぶりに刃を交わすのだった。

変ってここは地上世界。
ここはなのはたちが通っている小学校。
あのときの会議から、時々はやての様子がおかしい。
ずっと何かを考えているようだった。
その理由は以前の暴走プログラムに酷似した反応が出たことだろう。
「はやてちゃん、大丈夫?」
なのはがはやてを心配して声をかけても、「なんでもない」というだけ。
「シグナムに聞いたけど、家でもあんな感じなんだって。あの時シグナムたちいなかったから、何かあったのかって逆に切れたんだよ」
はやても自分達と同じで考えるときは一人で考えてしまうクセがある。
はやての場合はずっと一人暮らしだから仕方ないかもしれないが、ヴォルケンリッターという家族が出来てからもその性格は変ってないらしい(石田医師談)
ついになのはが耐えかねてはやてに聞く。
「闇の書さんの事考えてるの?」
なのはの言葉に、はやては言葉をつまらせ、まあ、と苦い言葉を出す。
あんな分かれ方をした後にこの騒動。気になる事はわかるけど……
「はやてちゃん。一人で考えないで、私達にし相談してよ、力になるから」
なのはの言葉に頷くフェイト。
そんな言葉に、少し涙ぐみながらありがとうと礼を言うはやて。
そのなか……
「なのはにそれ言われても、説得力全然ないわよ」
その言葉に今度はなのはが固まる。
思いっきり的を得ているからだ。
その言葉を言ったのはこの3人の友人アリサ・バニングス。
決して某聖戦士に出てくる仮面の男とは関係はないのでご注意。
その横でくすくす笑っているのは同じく3人の友人である月村すずか。
「3人とも、すぐに自分で考え込んじゃうもんね」
すずかの言葉がフィニッシュとなり、3人とも固まる。
その中、はやてはまた考えてしまう。
リィンフォースの事を……
そして思い出す、リィンフォースと別れたときの事を。
(あかん、こんな事考えとったらリィンフォースに失礼や)
自分がこんな状態では、夜天の主として恥ずかしい。
そう思い深呼吸するはやて。
「あ、もう授業始まるよ、そろそろ席につかんとな」
いきなりのはやての言葉に、皆はきょとんとする。
さっきまであんなにうんうん悩んでいたのに……
そんなはやての顔は笑っていた。
それに……
(それに、リィンフォースは生まれ変わる)
そう思ってはやては胸にしてあるペンダントを見る。
もう少しで、これに新しい家族が宿る。
その新しい家族のためにも、前の事を気にしてはいけない。
もし、まだ暴走プログラムがあるなら、自分達でとめたらいい。
そう思いはやては席に着く。
一方、その頃のリィンフォースは……
「リィンお姉ちゃんが来てからほんとに助かってるよ」
「そうなのですか」
「お兄ちゃんはたまに手伝ってくれるけど、お父さんが全然手伝ってくれないから」
「なら、私でよければ手伝うから、いつでも呼んでください」
「うん!」
プレシアと仲良く食器洗いをしていた。

「はあぁーー!」
ガン、キン、ガンと、刀がぶつかり合う音が聞こえる。
皿洗いを終えたリィンフォースは外へ出て、二人の手合わせを見ている。
プレシアによれば、彼の剣の腕はこのラングランでも1,2を争うほどの剣豪らしい。
確かに見ていてもかなりの腕と言うのが解る。
一度烈火の将に魔法抜きで手合わせさせたら面白い勝負になるかもしれない。
「づああ!」
マサキが刀を振るうと、ゼオルートはそれを受け止める。
「なかなかですが、もう少しですね」
そういってマサキの一撃をはじき返し、すぐにマサキの喉元に剣を突きつける。
勝負あった。
ゼオルートは剣を戻して自分の鞘に入れる。
その後マサキはその場所にすべるように倒れこむ。
「やっぱまだおっさんにはかなわねーか」
流石剣皇といわれるだけはある。
笑いながら言うマサキにゼオルートはいやいやと言う。
「まさかこの2年でここまで強くなるなんてそうはいませんよ。マサキ自身、かなり才能がありますよ」
この世界へ召還されてゼオルートに家に世話になってから、暇なときにゼオルートに剣の手ほどきをしてもらっている。
ボクシングや空手をしていたマサキは剣など握った事もなく、最初は初心者丸出しだったが、ここ最近めきめきと上達している。
「今日はこの辺にしておきましょうか」
そういってゼオルートもよっこいしょと地面に座る。
「そういえば、あなたがここにてからもう少しで2年くらいになるのですか?」
マサキは2年前ここに召還され、ゼオルートの養子になってから1年半になる。
そうだな、とマサキはこの2年を振り返る。
この2年の間にいろいろな事があった。
思えばすべての始まりが、家族をテロで失った事だろうか。
そしてこの世界へ召還され、戦いに身を投じた。
その戦いで初めて人を殺してしまった。
そして、サイバスターに選ばれた事。
思い返すだけでもたくさんあった。
「けれど、養子に迎えてしばらくたちますが、あなたは私をお父さんと呼んでくれないんですね」
ゼオルートの言葉にガクッと肩を落とすマサキ。
「あのなあおっさん。親父なんて呼ぶほどの年ははなれてねえだろ?」
兄弟と言うには年は離れすぎていてるが、親と呼ぶほどの年の差でもない。
それに、マサキは本当の父親の顔を覚えている。
それなのにそれとは別の人物を流石に父親とは呼べない。
それもそうですね、とゼオルートは苦笑する。
そこに。
「お父さん、お兄ちゃん。汗かいてると思ってお風呂沸かしておいたよー!」
そこに元気よくプレシアがやってくる。
ちょうどいいですねぇとゼオルートは言う。
こうやっていると平和だ。
ラングランがもう少しで災いに見舞われるなんて嘘のようである。
だが、それは近づいている。少しずつ……

「ここも久しぶりですねえ」
ラ・ギアスに一人の男が舞い降りた。
紫の髪をしていて、紳士的で落ち着いた感じがする男性。
その男性はこのラ・ギアスの世界を見渡す。
「変わっていませんねえ……」
男性はつぶやくと、肩に乗っている鳥が男に話しかける。
「シュウ様、この後どうするのですか?」
肩に乗っている鳥は男、シュウ・シラカワに問いかける。
そうですね、とシュウは思案し……
「やはり、あの方達にご挨拶をしなければなりませんね」
そういって怪しい笑みを出しながら言う。
「再開の祝福と、解明の報告をね」
そういってシュウは歩き出す。
行き先は、聖都ラングラン王国。
おそらく、彼の存在がラングランに訪れる災いの序幕だったのかもしれない……

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2007年06月15日(金) 18:05:09 Modified by beast0916




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