THE BELKA OF ELEMENTAL4話

いつもどおりの朝。
「お父さん!野菜を食べなきゃいけないって言ってるでしょ!」
「トホホ……」
いつもどおりの生活。
「これは、ここにおいておきますね」
「うん、ありがとう」
だが、そんな生活も終わりを迎える。

魔装機神 THE BELKA OF ELEMENTAL ラ・ギアス編4話

「そういや、最近はあんまりテロとか起こんないよな?」
マサキはふと思った事をつぶやく。
ここ最近は平和で、テロが起こる回数は極端に減ってきている。
「いいことじゃないか、結界が効いている証拠だ。カークス将軍のお手柄だな」
ヤンロンはその傾向を好意的に受け止める。
彼が言っていたカークスとは、カークス・ザン・ヴァルハレピア。
ラングランの将軍で、首都防衛計画を任されている。
だが仕事をよくサボり、昼行灯としても有名。
「けど、なんつうか、緊張の糸が切れたというか…嵐の前の静けさと言うか……」
だが、マサキはまだどこかふに落ちないといった感じである。
「だが、何も起きないよりはいい」
リィンの言葉に、ヤンロンは頷く。
「今までが異常だっただけさ」
そういった瞬間、どこからか爆発音が響く。
「って、言った瞬間に侵入者かよ!!」
マサキは自分が行ったことに突っ込み、3人は爆発が聞こえたほうへ向かう。
そこは王都近くの町で、そこには一人の男が浮いていた。

「この町も久しぶりですねえ」
シュウは王都を見て以前の事を思い出す。
そして、さらに懐かしい人物が目の前に現れる。
「お久しぶりですね、皆さん」
シュウはウォの人物を見て挨拶をする。
だが、もう一人の人物、フェイルロードは驚いて彼を見る。
「クリストフなのか……お前、一体今までどこに行ってたんだ!?」
彼はシュの事をクリストフと呼ぶ。
彼の本名はクリストフ・グラン・マクソード。
グランというミドルネームのとおり、王位継承権を持っている。
だが、彼は突然地上へと姿をくらませた。
そこへマサキたちもやってくる。
「お前は…シュウ?シュウ・シラカワか!?何で手前がこんなところに」
マサキも以前気まぐれで地上へ降りたときに出会った人物との意外な再開に驚く。
「どういうことだマサキ?シュウ・シラカワ?」
マサキはクリストフの事をシュウと言う名前で呼ぶ事に疑問に思った。
「クリストフ…そう呼ばれるのは懐かしいですね」
シュウは数年間聞く事のなかった自分の本名を聞く。
「ですが、今の私はもうクリストフ・グラン・マクソードではありません。
強いて言えば、クリストフ・ゼオ・ヴォルクルスになります」
シュウの言葉に一同は衝撃を覚える。
ヴォルクルスと言うことはつまり……
「クリストフ、貴様!王位継承権を持っている人間がヴォルクルスの信者に成り下がったのか!?」
フェイルは怒りを込めてシュウに向かって叫ぶ。
「さあ、どうでしょうか……」
フェイルとは対照的に、シュウは冷静に言う。
「ですが、今はそこにいるマサキ・アンドーが言っていたシュウ・シラカワと言う名前が気に入っていますので、しばらくはそれで名乗らせていただきます。シラカワは地上人である私の母親のファミリーネームですしね」
そろそろいいですか?とシュウは周囲を見る。
そろそろ話の本題に入らなければならない。
「本日は、皆さんにお別れの言葉を宣戦布告のために参りました」
シュウの言葉に疑問を持つ一同。
「本日を持って、私は王位継承権を捨て、神聖ラングラン王国と敵対します」
「何!?」
いきなりの宣戦布告に驚くフェイル。
彼は正気なのかと思いたくなる。
「これも破壊神サーヴァ・ヴォルクルスの思し召しとても言いましょうか。
とにかく私はあなた方の敵、と言うわけです」
それと、とシュウは付け加える。
「結界なんて私にとっては役に立ちませんよ。今日は挨拶だけですが、次にくるときは派手なお出迎えを期待しています」
そんなシュウの言葉にマサキの怒りは頂点に足して……
「シュウ!!手前!!」
そう言ってサイバスターを起動させようと思っていたとき、ふと思い出す。
(くそ、サイバスターはウェンディにメンテで預けてるんだった……)
今、サイバスターだけではなくヤンロンのグランヴェールもメンテナンスのためそれぞれの開発者に預けている。
ちなみにマサキのサイバスターの開発者はウェンディ・ラムス・イグナートという女性である。
こういうときに何も出来ない自分に腹が立つマサキ。
ヤンロンも同じ事を思っているのか、握りこぶしを作っている。
その時、シュウの前に立つ人物がいた。
「おや、あなたは?」
シュウは自分の前に立っている人を見る。
「お父さん!?」
プレシアが叫んでいるとおり、ゼオルートがシュウの目の前にたっていた」
「おっさんか!?よせ!!」
プレシアとマサキのやり取りを見て、ああと思い出す。
「あなたは確か、剣術師範のゼオルート大佐ですね?無駄な事はよしなさい、命を無駄に使う事もないのですよ」
だが、ゼオルートの目は変わらない。
「お父さんやめて!!」
プレシアが駆け出そうとするが、それをリィンフォースがとめる。
「あの人の強さがあなたが一番わかってるでしょう?だったら、あなたの父を信頼してあげなさい」
リィンフォースの言葉に、プレシアは小さく頷き、城の中へ避難する。
そして、リィンフォースはゼオルートが持っている剣に特殊な魔法を施す。
「これで少しはまともに戦えるでしょう」
リィンフォースの言葉にすみませんと例を言うゼオルート。
しかし、リィンフォースはこの勝負の結果をほとんどわかりきっていた。
あのシュウの言うととこから発せられる気は異常である。
しかし、今戦えるのは彼と自分だけ。
後は各地に出払っていて、話によればマサキとヤンロンの魔装機は今はメンテナンスの最中だと聞く」
自分も参加しようとしたときだった。
リィンフォースの腕に何かが巻きつく。
ぱっと見た限りでは鞭だろうか。
「あなたの相手はわ・た・し(はあと)」
声が聞こえたほうを見ると、以前現れた女性がいた。
「いいだろう。私が相手になってやる」
そう言ってリィンフォースは甲冑をまとい、空中を舞う。

「クリストフ、あなたの気は邪悪すぎます。何があったか知りませんが、野放しには出来ません」
そういって剣を構えるゼオルート。
一緒に暮らしている中で、このような本当に真剣なゼオルートは初めてだった。
ゼオルートの胸にあるペンダントが光り、魔装化を開始する。
ギオラスト。それが彼が持っている魔装機。
ただし、彼は正規の操作ではないうえに、プラーナもそこまで高いとはいえず、100%使いこなす事はできない。
だが、それでもゼオルートはシュウに向かって攻撃を加える。
「はあ!」
ゼオルートは剣を振りかざす。
その瞬間、シュウはや暗い闇に包まれ、瞬時にその姿を変える。
青と黒を基調とした、魔装機とはまた違うが、よく似たようなものに包まれた。
ゼオルートの攻撃はシュウを襲う。
「な!?」
シュウはゼオルートの攻撃を腕だけで防ぐ。
だが、シュウも何故か驚いてみた。
よく見ると、防御した腕にわずかながら傷がついていた。
(このグランゾンに傷を……まさか)
シュウは先ほどの女性がゼオルートの剣に何かをかけている事を思い出す。
(なるほど、あの女性はなかなか強敵ですね)
双思いながらシュウはゼオルートを片腕で吹き飛ばす。
そしてパンチ一つでギオラストを吹き飛ばす。
「ぐ!」
ゼオルートは思いっ切り壁にぶつかる。
「ここまで見せてもわかりませんか?たかが魔装機ではこのグランゾンに叶うはずありませんよ。
先ほどつけた傷も、あの女性が施したものによる所為なのでしょう」
だが、ゼオルートの目はまだ死んではおらず、再度剣を構える。
「おっさん……」
マサキはゼオルートを見る。
シュウはやれやれといった感じで肩をすくめる。
(シュウ様、あんなやつとっととやっつけちゃいましょう)
今回ばかりはチカの言葉に「そうですね」と頷く。
ふと、グランゾンの胸部の赤いレンズのようなものが光り、そして次には何かのゲートのようなものが開く。
シュウはそのゲートに腕を突っ込ませ、何かを引きずり出す。
それは、とても重々しい剣だった。
剣の名はグランワームソード。
「さあ、これで終いとしましょう」
シュウはグランワームソードを構える。
ゼオルートも最後の力を振り絞る。
(マサキ、プレシアの事を頼みましたよ)
心でそう願い、シュウに突撃する。
「おおおおおぉぉぉぉ!!」
シュウも剣を構え、ゼオルートを迎え撃つ。
そして二人が交錯する。
数秒泊まったかのような錯覚が続き……
「がは!」
ゼオルートの魔装化が解け、胸から腹部にかけて鮮血が走る。
「これも、私に逆らった報いです……!」
シュウは、腹部にいたみがある事に気付く。
(なるほど、死に際の一撃というものですか……流石剣皇と呼ばれるほどはありますね)
シュウが心のなかでゼオルートに多少は賞賛を送る。
「おっさん!」
マサキは信じられないような目でゼオルートを見る。
ゼオルートとシュウ。ここまでの差があるというのか。
「お父さん!!!」
ふと横を見ると、プレシアの姿があった。
いつの間に外へ……
「お父さん!お父さん!!」
「やめるんだプレシア!」
プレシアはゼオルートのほうへ向かおうとするが、ヤンロンによってとめられる。
(畜生……)
マサキの自分の無力さに悔いる。
その時だった。
「マサキ!!」
クロとシロがサイバスターをもってこちらへとやってくる。
「メンテナンスは終ったニャ!いつでもいけるニャよ」
クロの言葉にマサキの意思は固まる。
今の自分ではまだシュウに敵わないかもしれない。
だが、このまま指をくわえてみているだけなんてことは自分には出来ない。
「サイバスター、GO!!」
マサキは魔装化スルト自慢のスピードでグランゾンに迫る。
「シュウ!手前ぇ!!」
マサキはシュウに向かって一太刀入れる。
しかし、それは簡単に受け止められてしまう。
「マサキですか、やめておきなさい。あなたもあのようになりたいのですか?」
そういってゼオルートの方を見る。
その言葉を聞いてカッとなるマサキ。
「貴様ぁ!」
今のマサキはがむしゃらにシュウに向かって攻撃を繰り出す。
だが、そのほとんどが交わされ、当たってもダメージを与えられない。
「やめておきなさい。今のままのサイバスターではグランゾンに敵いません」
そういっていってマサキを弾き飛ばすシュウ。
「ましてや今のあなたではなおさら」
シュウはマサキに蹴りを入れる」
「ぐあ!」
そのまま吹き飛ばされるマサキ。
「これで、よく私と戦う気でいられましたね」
シュウの言葉に五月蝿え!と叫ぶマサキ。
「それでも、お前だけは許す事はできないんだ!!」
「彼の敵討ちですか?よくそれで魔装機神の操作になれましたね。そんな下劣な事を言っていては成長しませんよ?マサキ」
マサキの言葉に動きを止めるマサキ。
「くく…は…はは…そうか、そうだな!はははは」
不意にマサキは笑い出す。
『どうしたニャ、マサキ?』
クロがマサキに尋ねるが、マサキの笑いはとまらない。
「シュウ、例を言うぜ。そうさ、俺は敵討ちなんてどうでもいい!」
マサキは今の自分の気持ちにやっと気付く。
「俺は、手前が気にくわねえんだ!」
最初に、地上に出会ったときは層でのなかったが、今あってやっとわかった。
「俺の中で何かが叫んでるんだ!手前をこのままにしちゃいけねえってな!」
だからこそゼオルートは無謀とわかっていてもシュウに戦いを挑んだ。
「俺は、おっさんの敵を討つんじゃねえ!魔装鬼神操作として、手前を倒す!!」
そういってマサキはディスカッターをシュウへ向ける。
「これは、俺とサイバスターの意思だ!手前のその邪悪な衣だけは、俺のすべてをかけて振り払ってやる!!」
そういうと、マサキは異変に気付く。
何か、力は体中に染み渡るような気がした。
『ォ…オオオオオオーーーー!』
その次に、サイバスターが咆哮をあげる。
「こ、この力はまさか!?」
シュウは驚いてマサキを見る。
「そうか、お前もそうなんだな、サイバスター」
マサキは、サイバスターと一つになれた気がした。
「これは、精霊憑依(ポゼッション)!?」
クロはこの現象に驚く。
「まさか、マサキが精霊と融合できるとは……」
シュウは予想外の出来事に驚く。
「ですが、本当の力がが引き出されたサイバスター。一度は戦ってみたい相手です」
そう言ってシュウは剣を構える。
「はあぁぁぁーーーーー!」
もう一度ぶつかる二人。
今度はマサキがシュウを押していた。
「な!」
シュウは本当の力を引き出したサイバスターに驚く。
これほどの力でが出るとは……
そのままグランゾンを弾き飛ばすマサキ。
それと同時に
「あん(はあと)」
と、どこか危ない声が聞こえてくる。
どうやらリィンフォースとサフィーネの戦いはリィンフォースが優勢である(ほぼ圧勝といってもいい)
「はあ、はあ、き・くう(はあと)」
「……」
リィンフォースはこの奇妙な相手にいろんな意味で背筋が凍る感じを覚える。
今まで自分と戦って悲鳴や苦痛を浮かべる相手は腐るほどいるが、喜んでいるのはおそらく初めてではないだろうか……
だから何故か奔らないが少し力がブ蹴るような感覚がする。
(新手の罠か?)
そう思うがとが羽陽でリィンフォースは少し悩んでいる。
(状況は不利ですね)
サフィーネのほうを見てそう考えたシュウ。
「残念ですが、今のサイバスターは無敵と言う事ですか。仕方ありません。今回は大人しく引き下がりましょう」
そういって撤退する二人。
待ちやがれ!と後を追おうとするマサキだが……
「!!?」
急激に体の力が抜け、その場に倒れこむ。
リィンフォースもそんなマサキを抱え、追う事が出来なかった。
「大丈夫か?」
リィンフォースの声になんとかな、と簡単に答えるマサキ。
「だが、プラーナを使いすぎちまった」
そういって魔装化が解除される。
「う……」
ふと、小さな声のほうに向くと、そこにはまだかすかに息のあったゼオルートがいた。
「おっさん!」
「おとうさん!」
マサキ、そしてプレシアは二人の元へ急ぐ(マサキはリィンフォースの肩を借りて)
「お父さん、お父さん」
プレシアは叫びながらゼオルートを見る。
既にその顔は涙であふれていた。
「ヤンロン、早く医療班を呼べ」
だが、流石ヤンロン。既に衣料班を呼んではいたが……
「別に…かまいません…この傷じゃ…助からないのは…自分が一番よく分かってます……」
そういってゼオルートはプレシアを見る。
「すみませんね…プレシア……やっぱり…私は父親に向いていないみたいですね……」
あはは、と笑うが既に生気は感じられない。
今度はマサキを見るゼオルート。
「マサキ…一方的ですみませんが…プレシアの事を……お願いします……」
ああ、と返事をするマサキ。
「ガハ!」
その時、ゼオルートが真っ赤な血を吐く。
「おっさん!」
マサキはよろよろとゼオルートの方へ行く。
「死ぬなよおい!父さん!」
マサキの言葉に驚くゼオルート。
しかし、その顔はすぐにやさしいものとなる。
「初めて…私の事を……父…と…呼んで…くれました…ね…」
その後ゼオルートは静かに目をつむる。
「お父さん!」
プレシアが叫ぶが、ゼオルートは二度と目を開けることはなかった。
「おっさん…」
プレシアが泣き叫ぶ中、マサキは歯を食いしばり天に向かって叫んだ……
「おっさーーーん!!」

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2007年06月15日(金) 18:06:30 Modified by beast0916




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