作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「水墨集・第二」(作詩:北原白秋)

水墨集・第二スイボクシュウ・ダイニ指示速度調性拍子備考
1雨上りアメアガリAllegro4分音符=132ca.ハ長調3/4
2潮鳴の夜シオナリノヨルAndantino4分音符=80ca.ニ短調4/4Tenor Solo
3島の日永がシマノヒナガガAndantino4分音符=80ca.ト長調4/4
4初秋の庭ショシュウノニワLarghetto付点4分音符=63ca.ト長調6/8Bass Solo
5祭のまへマツリノマエAllegro4分音符=132ca.ニ短調4/4
6時雨日和シグレビヨリAndantino4分音符=80ca.ト長調3/4Tenor Solo
7カゼAllegro4分音符=138ca.ヘ長調4/4

作品データ

作品番号:T106:M88n
作曲年月日:2013年7月15日
委嘱団体:関西大学グリークラブOB会千里エコー

初演データ

初演団体:関西大学グリークラブOB会千里エコー
初演指揮者:下井田秀明
初演年月日:2014年7月27日
千里エコー第10回記念定期演奏会(於いずみホール)

楽譜・音源データ


男声合唱組曲「水墨集・第二」
メロス楽譜による出版譜とは別に、初演時のロビーで初演団体による自筆譜私家版が販売された。

作品について

水墨集」の続編。

北原白秋の詩集「水墨集」からテキストを取った無伴奏男声合唱組曲の第2集となります。第1集を委嘱・初演した関西大学グリークラブのOB合唱団からの委嘱ということでこの続編が企画されました。やはり白秋の詩をテキストとした処女作「柳河風俗詩」の作曲から60年が経ったとのことですが、まだまだ今年も新作の初演が予定されているようです。いかに長い間タダタケ作品が日本の男声合唱ファンに愛されているかがわかろうかというものです。 (パナムジカ新刊紹介より)
詩の出典
『水墨集』(アルス、1923年)

歌詩

雨上り
ちりり、
りりり、
巣立ちの小鳥、
一羽、二羽、
三羽、四羽、
翔けて來て、ちりり、
小竹に來て、りりり、
雨脚や迅い、
陽は淺みどり
ちりり、
りりり。
潮鳴の夜
潮鳴の正しい夜頃になつた。
わたくしは早咲きの水仙を七寶の瓶に生けて、
輝く百燭光の電灯の下で、
一つ一つ、四角な細字を抓みあげ、それをまた、
方眼紙の一小間一小間に押し入れてゐる。
あまりに全面が光り過ぎる。
あまりに文字がはつきり爲過ぎる。
あまりに理智に過ぎる、今夜のわたくしは、
この精密な考察と意識とは、また、
あまりに透き徹り過ぎる。
水仙の葉の濃青さ、
花の白さ、つめたさ、
ああ、その早春の香氣さへ
あまりに確か過ぎる。
ましてや正しい閑かな潮鳴、
あまりに社會は眞近に切迫爲過ぎる。
島の日永が
   1
ねんね、ほろろん、
ねんねと遊びや、
島の日永が
わしや泣ける。

ねんね、ほろろん、
ねんねのお鳩、
島の日永が
わしや泣ける。

   2
ゆたり、ゆたりと、
正覺坊と轉びや、
島の日永が
わしや泣ける。

ゆたり、ゆたりと、
岸うつ波よ、
島の日永が
わしや泣ける。

   3
のろりひよろりと、
阿呆鳥を追へば、
島の日永が
わしや泣ける。

のろりひよろりと、
逃げ出す鳥よ、
島の日永が
わしや泣ける。
初秋の庭
薄紅い芙蓉の花と
鞨鼓薊の藤むらさき、
ああ、硝子戸の陽の反射も
もう今朝は秋。

麥程の壁にからんだ
蔦かづらの幽かな花、
その影にも風が立つのか、
何か、羽蟲が消えて、光る。

涼しさとあはれさとが、
早や、庭にある。
このつくろはぬ薫りと撓りとは
何處から來た。

あ、坊やが抱かれて
コスモスの僂愬臚ってゆく。
あ、引きちぎつてゐる、片手で、
笑つてゐる、笑つてゐる。
祭のまへ
祭が來るのか、いよいよ、
さうだ、そのじせつだ。
祭と云へば樂しかつたよ。
したが、もう、過ぎた昔だ。

竹煮草よ、
白芥子よ、
ほのかな月夜に煙つてくれ、
わたしの祭は過ぎて了つた。

遠い田圃の
ころころ蛙、
あ、竹を伐つて
笛を吹くのは誰だ、
そんなに待ち遠しいのか、祭が。

島よ、岬よ、
またあの燈を
ちらちらさすのか。
あれ、また囃子をつづけるのか。

胸さわぎよ、
白芥子よ、
せめては月夜に煙つてくれ。

わつしよわつしよも昔の夢だ、
遠い遠い昨日の夢だ。
幽かな幽かな太鼓の音だ。
時雨日和
   1
紅葉はらはら、
山かげ、日かげ、
何の鳥かよ、
きよきよと鳴く。

   2
水の音聽きや、
わびしうて、寒むて、
紅葉照る坂、
またのぼる。

   3
誰か通るか、
向うの山に
こなた行く影
また映る。

   4
誰かゐやるか、
唐黍からか、
背戸にからから、
冬のかぜ。

   5
風のさいかち、
半は枯れて、
莢が鳴ります、
日の暮は。
   一
遠きもの
まづ揺れて、
つぎつぎに、
目に揺れて、
揺れ来るもの、
風なりと思ふ間もなし、
我いよよ揺られはじめぬ。

    二
風吹けば風吹くがまま、
我はただ揺られ揺られつ。
揺られつつ、その風をまた、
わがうしろ遥かにおくる。

    三
吹く風に揺れそよぐもの、
目に満ちて、
翔る鳥、
ただ一羽、
弧は描けど、
揺れ揺れて、
まだ、空の中。

    四
吹く風の道に、
驚きやまぬものあり、
光り、また、暗みて、
をりふし強く、急に強く、
光り、また、暗む、―
すべて秋、今は秋。

    五
輝けど、
そは遠し。
尾花吹く風。

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