参考
『心のパラドックス』 http://www1.accsnet.ne.jp/~hosinots/self.html
星野力先生
『心のパラドックス』 http://www1.accsnet.ne.jp/~hosinots/self.html
星野力先生
さて、脳の中の誰が錯視をでっちあげたのでしょう？ 意識？ 心？何と呼んでもいいですが、ここでは「心」としておきましょう。この考え方には、まず「ドラマ」が脳の中の劇場で上映され、それを見ている「心」という観客がいるというイメージが基本になっています。肉体と心という二元論を主張したデカルトにちなんで、これは「デカルト劇場」と呼ばれています。
認知哲学者ダニエル・デネットは、デカルト劇場は間違っていると主張しています(ref.1)。デネットは「まず感覚器から信号（ドラマ）が入り、つぎに逐次処理コンピュータ（心）がそれを認識する。そのあとで、必要なら心が決断して、筋肉に行動指令を出す」というモデルをデカルト劇場と言っているようです。単なるドラマと観客の分離しているというモデル以上に、時間的に刺激から認識へ経過するモデルで、しかも逐次処理に限定されています。デネットはこのモデルに対する反証として、錯視などを取り上げて論じています。そして、心は脳全体に分散しているドラフト（草稿）だと主張しています。脳は部分部分で統一がとれていない並列処理コンピュータなのだ、心はハードウェアではなく、ソフトウェアの活動であり、文化的な遺伝子（ミーム）なのだ、と言っています。
私はオリジナルな並列コンピュータを自分で設計・製作し、大きなソフトウェアを書いていました。だから言わせて貰います。並列コンピュータのハードにも、そのソフトにも神秘性はまったくありません。並列だからといって意識が発生することもない。並列処理プログラムがソフト技術者にとって設計しにくいからといって、それが心だという証拠にはなりません。並列コンピュータは、多くの逐次コンピュータが同時に（同期したり同期しなかったり）動いているだけで、そのバカさ加減は逐次型とまったく同じです。それから脳をコンピュータに喩えることは止めた方がいいです（事実１）。
