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Wind -a breath of heart-

8 :Wind -a breath of heart-【第一部】:05/02/12 16:52:36 ID:iOW1aHlL
風音市に住む人間は、全員ではないが不思議な力を持っていたのだった。
それは、あれば便利という程度のもので、その力は当たり前の物として受け止められているのだった。
十数年ぶりに、そんな故郷の町に帰ってきた丘野真・ひなたの兄妹。
彼らは、失踪した母の言いつけに従ってこの街に帰ってきたのだった。
同じ街の学園に編入した真とひなたは、クラスメートの橘勤、その幼馴染の紫光院霞と意気投合するのだった。
やがて、その知り合いである一つ年下の藤宮望・わかばの姉妹とも出会うことになるのだった。
真達がこの街に帰ってきてから半年後のある日のこと、ハーモニカの音に誘われるように学園の屋上に向かう真。
そこで真を待っていたのは、引越しによって離れ離れになった幼馴染、鳴風みなもだったのだった。
みなもとの感動の再会を果たしたのち、もう一つの出会いが真を待っていたのだった。
珍奇な道具を売る店、九月堂の店主・月代彩(ひかり)であったのだった。
彼女は度々真の前に姿を現しては、謎めいた言動や、他人を拒絶するかのような振る舞いを見せていたのだったが
紫光院の知り合いということもあってか、いつの間にか真グループの一人と数えられるようになっていたのだった。
真グループは、体育祭、期末テスト、海、夏祭……そんな行事を経てより交流を深めていくのだった。
そんな中で、彩とも打ち解けてきたと思われたのだった。

9 :Wind -a breath of heart-【ひなた編】:05/02/12 16:55:44 ID:iOW1aHlL
ひなたの提案で、風音市を飛ぶ謎の飛行船を追いかけることになった丘野兄弟。
休日、山の頂上で飛行船を見つけるが、飛行船は空に溶けるようにして消えてしまうのだった。
腑に落ちないひなたは全速力で探しに走り去り、真を振り切ってしまうのだった。
程なくしてひなたは戻ってくるが、結局飛行船の謎はわからずじまいで、家に戻るのだった。
家に着いた途端、変調をきたすひなた。しかし真は疲労の為だとして、それを軽く流すのだった。
翌日、具合が良くなったかに見えたひなただったが、すぐにまた具合を悪くしてしまうのだった。
それ以来、ひなたは高熱をよく出すようになってしまったのだった。
調子が戻ってきた頃、ひなたは無理して学園に行くのだったが、また倒れてしまうのだった。
ひなたを気遣う真は、そこで保健の先生から奇病の存在を教えられるのだった。
眠ったまま起きなくなる病気があるといい、ひなたの症状はそれに似ているというのだった。
治療法は無いが、力を使いすぎると眠くなる、それに関係しているのではないかと言うのだった。
力について何も知らない真は、無力感に打ちひしがれるのだった。
そんな時、真は九月堂の存在を思い出すのだった。
珍奇アイテムを扱うそこなら、何か希望があるのではないかと思ったのだった。
しかしそんな都合のいいものはあるわけもなく、素気無く追い返される真なのだった。
(つづく)

10 :Wind -a breath of heart-【ひなた編】:05/02/12 16:57:09 ID:iOW1aHlL
不幸は重なるもので、みなもの父親・秋人が死んでしまったという話をみなもから聞かされる真。
そこに駆けつけた真は、考古学者であるみなもの父親の資料の中から、奇病に関するものを発見するのだった。
それによれば、街に伝わる神木の葉を煎じて飲めば治るかもしれないというのだった。藁にも縋るつもりで神木に向かう真。
しかし神木で出会った彩は、その説を否定する。代わりに真実を教え、奇病に効く薬をくれるというのだった。
その薬によってひなたは回復するのだった。だがそれは一時的なものに過ぎなかったのだった。
そんな中で、兄妹の一線を越え、男と女の関係になってしまうのだった。
しかし、ついに薬の効き目も無くなり、あせる真は再び彩のもとを訪れるのだった。
真を待っていた彩は、自分の力ならひなたを救うことができると言うのだった。
彩の力とは、人の心を別の人へ分け与える力だというのだった。そのために真に犠牲になれというのだった。
真が彩の刀の錆にならんとするその時、秋人の遺した力によって彩の正体を見破ったのだった。秋人は彩に殺されたのだった。
彩は、真の父と母も殺したことを告げるのだった。街の力を維持するために必要だったというのだった。
この街は夢を見ている。夢は想いがなければ見続けることはできない。想いと心は同じもの。
彩は人を斬り、心を街に与えるための存在だったのだった。
そしてひなたの病気の原因は真にあることも告げるのだった。真の力は他人の力を弱めるものだというのだった。
そのために、街の外へ出て行ってしまおうとするひなたに反作用が起き、力を失ってしまったのだった。
力は心そのものなのだった。心を失ったものは奇病を患ってしまうのだった。
斬りかかる彩に、真は九月堂の珍奇アイテム・決して割れない壷で斬撃を防いでしまうのだった。
跳ね返った刀で致命傷を受ける彩。彩が死んだことにより、街の力は消え、ひなたは再び目覚めるのだった。
……それでいいのか?

一年後……力の存在は消え、それは誰からも忘れ去られたのだった。真とひなたを除いては。
のだった。

11 :Wind -a breath of heart-【第二部】:05/02/12 16:59:49 ID:iOW1aHlL
夏の盛りも過ぎた頃、変化は徐々に訪れたのだった。
突然、力を失う者たちがあらわれ始めるのだった。
そんな折に、真は街で傷ついた彩を見つけるのだった。
真は彩を自宅に保護し、わかばの癒しの力によって彩の傷を治すのだったが
翌朝には彩を寝かせていた部屋は、もぬけの空になっていたのだった。
何も語らない彩に、真はなにもできないもどかしさを感じるのだった。
しかしこれは始まりに過ぎなかったのだった。

12 :Wind -a breath of heart-【みなも編】:05/02/12 17:03:14 ID:iOW1aHlL
雨宿りのために立ち寄った鳴風家で、秋人がいないこといいことに急接近する真とみなもなのだった。
みなもを押し倒したその時、秋人が帰ってきたのだがその姿は血塗れだったのだった。。
そして血塗れの秋人は、みなもを真に託し、二人の前で消えてなくなってしまうのだった。
それによりナーバスになったみなもに狼狽する真は、何もしてやることができないのだった。
その余りの何もしなさ加減に堪りかねた紫光院は、真が会いに行くべきだと諭すのだった。
鳴風家に向かった真はみなもに実時間で9分ほど問い詰められ、ついに観念しお互いの想いを確認するのだった。
そして秋人の遺言である、一人の少女を救って欲しいという言葉により二人はその手がかりを探し始めるのだった。
秋人の資料の中から、それらしき記述を見つけ、現場へと向かうのだった。そこで彩に出会うのだった。
彩が立ち去ったその時、みなもが気付いたのだった。資料の中にあった『aya』という記述。
それは「ひかり」を「あや」とミスリードしていたものだったのだ。秋人の探していた少女とは彩のことだったのだ。
そのことに気付き九月堂に向かうが、来ることがわかっていたかのように店は閉じられていたのだった。
そして彩の行方がわからぬまま数日が過ぎたのだった。
行き詰まったその時、わかばが彩に襲われたという電話を受ける真。彩は、わかばの強い治癒の力を狙ったのだった。
(つづく)

13 :Wind -a breath of heart-【みなも編】:05/02/12 17:05:34 ID:iOW1aHlL
わかばは、彩と話をしたいがために自由にしてほしいと言い、みなもを付き添いにすることでしぶしぶ賛同する真。
そんな時、路面電車で突然彩と遭遇するのだった。秋人を殺したのは自分だと、誰も自分を救うことはできないと言うのだった。
そして自分はこの街の管理者であると、自分がいなければこの街は滅びると告げ、姿を消したのだった。
家に帰ると、望からの電話が掛かってきて、わかばが行方不明になったというのだった。
望と共に探すも、あてがなく途方にくれるのだった。その時、ハーモニカの音色が聞こえてくるのだった。
それにより真は、二人は学園の屋上にいると確信し向かうのだった。
しかし学園では彩が目の前に立ちはだかったのだった。望は家から持ち出した剣で、彩の刀と斬り合うのだった。
望は彩の足止めに成功するが、持病により動けなくなるのだった。望は真に剣を託し、学園屋上に向かうように促すのだった。
辿り着いた屋上にはみなもしかいなかったのだった。そこに追いついた彩は、わかばを殺したことを告げるのだった。
事情を知ったみなもは、彩に人斬りを止めるよう説得するが聞き入れられず、彩は真に斬りかかるのだった。
劣勢の真はついに彩に斬られてしまうが、効果がなかったのだった。真の力は、相手の力を無効にしてしまうものであり
力によって作り出した彩の刀は通用しないのだった。そこで彩は真の剣を奪い、真を突くのだった。
だがその瞬間、みなもが真をかばい身体を貫かれてしまうのだった。
そのことにショックを受けた彩は、身を挺したみなもの友情論によって改心し、自分の残りの力を使いみなもを救うのだった。
まばゆい閃光の後、彩は消え、傷の癒えたみなもがそこにいたのだった。

不思議な力が消えしばらくした後、彩の話に花を咲かせる真とみなもの前に、生前彩が飼っていた猫があらわれるのだった。
みなもは、その猫の名前に、彩が託したメッセージを受信するのだった。その猫の名前は、フォルテというのだった。

14 :Wind -a breath of heart-【望・わかば編】:05/02/12 17:08:14 ID:iOW1aHlL
真は望とわかばと共に、九月堂へ怪我の見舞いに行くが、彩はそれを拒絶するのだった。
そして数日後、わかばが彩に襲われたという連絡を受ける真。望は彩を危険視するが、わかばは事情があるに違いないと言うのだった。
それからまた数日後、再びわかばが襲われるのだった。なんとか彩を退ける真だったが、わかばは意識を失うのだった。
わかばを自宅に保護する真。彩に、全てを話して貰いたいがために、望と共に再度九月堂に向かうがやはり留守なのだった。
今度は真が彩に襲われるのだった。自分の苦しみは誰にもわからない、癒せないと心情を吐露する彩なのだった。
しかし彩は真にトドメを刺さずに去るのだった。だが、わかばは望の病気を治すために、自分の命を犠牲にすると言うのだった。
真は、望とともにわかばを助けに行くのだった。立ちはだかる彩と激しく斬りあう望。病気のせいで劣勢になる望だったが、自分の髪を犠牲にし、彩を倒すのだった。
望とわかばは、望の心臓病のこと、わかばとは知が繋がっていないことをお互いに労わりあい、姉妹愛を確認するのだった。とんだ茶番なのだった。
姉妹の犠牲的精神によって改心した彩は、一人消えていくのだった。真は事の始まりから終わりまで、ただ見ていただけなのだった。
(つづく)

15 :Wind -a breath of heart-【望・わかば編】:05/02/12 17:10:39 ID:iOW1aHlL
(望ED)
わかばの治癒の力によって病気の進行を遅らせていた望だったが、彩が消えたことによって治癒の力も消えてしまったのだった。
そして十数年後……丘野 望の墓前に立つ真とわかばは、忘れ形見である娘・空に望の生前の姿を重ね、思いを馳せるのだった。

(わかばED)
わかばの治癒の力によって病気の進行を遅らせていた望だったが、彩が消えたことによって治癒の力も消えてしまったのだった。
四年後、真とわかばの結婚式で、みなもによる大暴露大会が開かれるのだった。実はみなもとわかばとひなたは実の姉妹なのだった。な、なんだってー!のだった。
みなもは、望からそれを聞いたというのだった。望は全て知っていたのだった。

それから時は過ぎ、みなもは秋人が藤宮父に宛てた手紙を読み返すのだった。それは望が亡くなる前に、みなもに渡したものだったのだった。
それによれば、秋人は力の強かった妻の子供の危険を分散させるために、二人の娘を余所に預けたのだった。
そしてそのうちの誰かが、彩を救ってくれると信じていたのだった。
舞い散る桜の中に、一瞬彩の姿を見るみなも。それは本人だったのか、それとも幻影だったのか。それは誰にもわからないのだった。

16 :Wind -a breath of heart-【彩編】:05/02/12 17:16:18 ID:iOW1aHlL
彩がわかばを狙ったという連絡を受ける真。真は理由を彩に問い詰めるのだった。
しかし、街のために必要だったという彩の言葉を理解することができないのだった。
そんな真に声を掛けた秋人は、驚くべきことを口にしたのだった。
かつて、秋人とその妻・琴葉、そして真の両親である鳴風信吾・優華は彩に会ったことがあるというのだった。
それは今のょぅι"ょの姿と変わらない姿であったというのだった。十数年の時が経ったというのにだ。
そして彩と少々の交流を交わしたという秋人たちだったが、彩に琴葉を斬られてしまったのだった。
信吾が言うには、力には大きさがあり、彩は力の大きなものを狙っているのだという仮説を立てたのだった。
だがその仮説を証明しようとしたために、今度は信吾が斬られることになってしまうのだった。
身元を知られている秋人と優華はこの街を離れたのだった。十数年前、真がこの街を離れたのは、そういう理由があったのだった。
そして、失踪した母・優華も彩に斬られたのだった。強い力を持っているために狙われるわかばを、救おうとした結果なのだった。
この街に伝わる伝説により、街の人間は力を手に入れたのだった。しかしその代わりの生贄が必要だったのだった。
彩は生贄を狩るための執行人だったが人を斬ることが嫌だったために、最小限にとどめようと強い力を持つものだけを斬ってきたのだった。
秋人は、自分には妻を殺された憎しみがあるから彼女を救うことができない、だが真ならできるかもしれない。
彩を救うことができれば全て丸く収められるだろう、と言い残し彩に会いに行くのだった。真は彩を救うことを決心するのだった。
だが真の決意虚しく、秋人は彩に斬られてしまうのだった。
真は彩に会いに行くが、冷たくあしらわれるのだった。生贄を狩るためには人の優しさは邪魔だと、だから相手にしないでくれと言うのだった。
真はそれに反発するのだった。生贄を捧げなくてもいい方法があるはずなんだと説得するのだった。
自らを傷つける彩を、身を挺して止めることによってようやく彩は真の説得を受け入れるのだった。
彩はこの街を救う方法を試すために、自分の記憶を真に伝えるのだった。
(つづく)

17 :Wind -a breath of heart-【彩編】:05/02/12 17:17:27 ID:iOW1aHlL
彩はかつて、この地の神職の一族であったのだった。ある時、兄が生贄を捧げているところを見てしまうのだった。
彩はその行為を止めさせるために、兄と対峙するのだった。兄は語るのだった。はるか昔、災厄を止めるために神の力を借りたのだと。
自分たちはその神が見せている夢の中にいるのだと。その心地よい夢を見続けるためには生贄を捧げなければいけないのだと。
彩は兄を殺した。だが、それはただの代替わりの行為でしかなかったのだった。
それから彩は人を斬り続けたのだった。そして長い時が過ぎたのだった。そして今に至るのだった。
彩が今の立場から逃れる方法は一つ。自分の子供に代替わりさせることだったのだった。
生贄を捧げなければ夢から覚める、そして街は滅びるのだという言い伝えは、真実なのかどうかは本当は彩も知らなかったのだった。
そこでもう一つの方法を思いつくのだった。それは誰も斬らないこと、なのだった。
そして最後に、自分が生贄になり姿を消せば全て終わるというのだった。消えるまでの期限は3日間。彩は生き延びることができるかのだった。
だが、彩を助ける方法を探すという真。真は決意も新たに、彩の身体を抱きしめるのだった。
――3日間はあっという間に過ぎたのだった。しかしこの3日間にやったことといえば思い出作りとセクースぐらいなのだった。
最後に、指きりを交わす二人。それは真が必ず幸せになるということだったのだった。それと、約束は必ず守ること、というものだったのだった。
それは、かつてみなもと交わした約束のことを言っているのだった。
そして、彩は風に融けて消えたのだった。
真が自宅に帰ると、そこにはみなもがいたのだった。みなもは傷心の真を篭絡……もとい、癒すのだった。いいとこ取りなのだった。

時は流れた。
真とみなもの間に子供が生まれた。その子は彩と名づけられ、すくすくと成長した。
それは月代彩の生きた証、そして自分たちの幸せの証に違いなかった。
のだった。
2006年12月02日(土) 13:10:37 Modified by luc001




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