トピック解説レポート ９
｢海外生産法人における課題｣
三宅 晴之
円高が進行したときに、これからは国内で物づくりをしていたのではペイしないと、積極的に東南アジアに進出した企業も多いかと思います。しかし、創業期の赤字でとどまらず、その後のバブル崩壊の影響はあるものの、いまだに経営状態がおもわしくない企業も多いことと思います。
変化に追随し、最適生産拠点として生産を継続していくためには、これまでの「海外だから」という言い訳が、品質（Ｑ）、原価（Ｃ）、納期（Ｄ）すべての面で許されなくなってきているのが現実です。
（１）品質面の課題
従来、中国や東南アジアの製品は安かろう悪かろうというイメージがありましたが、それに甘んじていては、現在のＣＳが重視される時代では顧客から逃げられてしまいます。
品質改善のために次のような課題が挙げられます。
・社員への品質意識の醸成（品質教育、ＱＣ・小集団活動の活性化等）
・会社としての品質レベルの向上（ＩＳＯ取得、ＴＱＣ・ＴＰＭ活動）
・設計部門、部品ベンダーを巻き込んだトータルな品質改善活動の実施
（２）原価面の課題
本社で設計しているものをただ作るだけでは、海外従業員のローディングが安いというメリットだけに終わってしまいます。メリットを生かすためには、原価の大半を占める資材費にメスを入れる必要があります。その上で、さらに生産ラインの改善を図り、トータルコストを低減すべきです。そのための対応としては次の課題があげられます。
・現地調達の推進
・生産の効率化（リーン生産、生産革新活動、ＩＥ改善活動、外注指導等）
・日本サイドと一体化した原低活動
（３）納期面の課題
海外のデメリットとして良く言われるのが、国内生産に比べ時間がかかるというリードタイムの問題です。確かに「ＯＵＴ−ＩＮ」の場合、変動対応力があるレベルとは言えず、リードタイムの短縮活動が重要です。
・リードタイムの短縮活動（資材調達、製造、物流、情報）
・資材調達方法の改善（ＪＩＴ調達、自国内調達，Ｆ／Ｃ制度改善等）
・情報システムの整備
（４）共通課題
（１）〜（３）の課題は、レベルの差はあるものの国内生産においても改善テーマとして検討されている内容です。海外生産固有の課題としてはさらに次の二点が重要な問題としてあげられます。
（現地従業員の育成および定着化）
ＱＣＤ改善を実現するなかで、主役となるのはやはり現地従業員です。しかし、現地従業員の育成はなかなか難しく、戦力化には時間がかかります。また、会社への帰属意識が薄く、育成するとやめられるという悪循環もあり、いかに教育訓練を行い、早く立ち上げ、帰属意識を高めながら、定着化を図ることが重要です。日本人中心でやったら、いつまでも日本人がやらなければならないということを意識する必要があります。
（為替リスク、金利負担の回避）
アジアに端を発した通貨危機問題は現地法人に大きなインパクトを与えています。ドル建て、円建てでの資材調達は一気に資材費の高騰を生みました。自国内調達等の為替リスクの回避が必要です。また、直接関係するわけではありませんが、こういった諸国では高金利という問題も発生しています。これを回避するためには、棚卸削減という収支改善施策が必要です。
2008年04月13日(日) 10:38:28 Modified by mifken