190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 22:56:41 ID:2BJJO0l9
191 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 22:57:16 ID:2BJJO0l9
192 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 22:57:49 ID:2BJJO0l9
193 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 22:58:22 ID:2BJJO0l9
194 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 22:58:56 ID:2BJJO0l9
195 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 22:59:31 ID:2BJJO0l9
196 名前:野狗[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 23:00:09 ID:2BJJO0l9


 ヴァイスは、いつも通り寝酒をたしなんで眠りについた。
 なにか、いつもと酒の味が違うような気がしたけれど、気のせいだと思った。

 気のせいじゃなかった。
 気がつくと、見知らぬ倉庫のような一室に後ろ手に縛られて転がされていたのだ。
 部屋は暗くてよくわからないが、自分以外の誰かがいることは雰囲気でわかる。

「誰かいるのか?」
「……その声は……たしか六課で聞いたことがある……」
「はいはい、静かにね」
「今の声……なのはなのか?」
「はいそこ、喋っちゃ駄目」
「フェイトの声!?」
「だから喋っちゃ駄目だって」
 
 鈍い音。そして広がる静けさ。ヴァイスは口を閉じることにした。

(誰だか知らないが、あんたの犠牲は無駄にはしない)

 ライトが煌々と照らされる。目を細めながらヴァイスは、周囲の人間を確かめる。
 ヴェロッサ、ゲンヤ、グリフィス、エリオ、カルタス。全員が後ろ手に縛られている。
 そして頭に大きなコブを作って気絶しているのはハラオウン提督である。
 さらに、部屋の隅には人が一人入れる程度の大きな袋。しかも、もぞもぞ動いている。

「はーい、皆さんこんにちは」

 先ほどのクロノの指摘は当たっていて、そこにいるのはなのはとフェイトであった。

「ではこれから、予選を行うの」
「予選って、なんの?」
「フェイトちゃん、垂れ幕準備」
「ウン、できてるよ、なのは」

 ジャーンというかけ声とともに広げられる垂れ幕。

「輝け第一回、精子提供者オーディション」
「わー、どんどんパフパフ〜〜。なのは素敵〜〜」
「えっと、すいません。なのはさん、フェイトさん、お酒入ってますか?」
「珍しいことに二日連続の休みが取れたので美味しいワインをフェイトちゃんと一ダースほど空けたけれど、この上なく素面なの」
「あんたたち完全に酔ってるよ!!」

 ヴィヴィオには弟か妹が必要だと思いました。
 だけど、女同士では子供が作れません。
 プロジェクトFは問題外。
 クローン&戦闘機人? ふざけるな。
 だったら、精子を提供してもらって子供を作ろう。優秀な男性の精子だったら子供も優秀で文句なし!
 何しろ聖王の弟か妹になるわけだから、それなりに優秀な子じゃないと困る。

「というわけで、精子提供者をあまねく募集します」
「いや、これどう考えても強制だからっ! 第一、なのはさんにはユーノさんがいるでしょうに!!」
「それは、語るも涙、聞くも涙の悲劇なの。ねえ、フェイトちゃん」
「うん。初めて聞いたときは私も爆笑したものだよ」
「爆笑かよ!」

 □ □ □ □ □

 一時期、なのはの故郷の次元世界でフェレットとして暮らしていたユーノ。
 しかもなのはとは同居の身。家族には単なるフェレットと思われていたけれど、それでもユーノは幸せでした。
 だけど、家族から見たユーノは単なるフェレットなのです。
 ある日、学校から帰ってきたなのははユーノ不在に気付きました。

「お姉ちゃん、ユーノ君は?」
「ああ、寝てる隙に、恭ちゃんが獣医に連れて行ったわよ」
「え? ユーノ君病気なの?」
「ううん。去勢」
「去勢ってなあに?」
「おチンチンを切り取ること」
「ふーん。そっかぁ……って、えぇええええええっ!?」

 帰ってきたユーノ君は一晩泣き明かしました。でも三日もすれば立ち直りました。吹っ切れました。
 というより吹っ切りました。というより吹っ切るしかありません。
 おちんちん復活の魔法なんて、ありません。ジュエルシードも役には立ちません。
 ジュエルシードに「おちんちん返して」と祈るなんて、恥ずかしくてできません。

 □ □ □ □ □

「いやぁ、何度聞いても笑えるね、この話」
「フェイトさん、あんた人の皮を被った鬼だねっ!!!」
「ううん。皮を被ってたのは、ユーノの切り取ったおチンチンだよ?」
「だれか、この女なんとかしろ」
「無理ですよ」

 エリオがさらっと言った。
 突然、外から聞こえる怒鳴り声。

「ぐぉるぁ!!! 開けんかい! 中におるのはわかっとるんじゃあ!!!」
「主はやて、お退きください、ドアを破壊します」
「はやてちゃん、落ち着いて」

 ヴァイスは思わずゲンヤを見る。

「……あんな下品な言葉遣いの女なんて知らね。なぁ、グリフィス」
「当然です、あんな下品な部隊長なんて存在しませんから」
「いや、シグナム姐さんとシャマルさんの声も聞こえるんですけど」
「あの、あれだ。そっくりさんだよ。仏像マニアとか、生徒会執行部長とか」
「両方とも女子高生じゃねえか、ハーレムじじい」

 怒鳴り声に続いて、まるでシュベルトクロイツで金属壁を叩いているような音が聞こえてくる。

「ゲンヤさん返せぇ!!! 後はあげるから、ゲンヤさんだけ返さんかーーーい!! ゲンヤさんの種は私のものやぁ!!」
「……はやて、必死だよ。どうする、なのは?」
「もてない女はしつこいの。これだから異性愛者は困るの。仕方ないから、ゲンヤさんは返すの。
考えてみたら、スバルやギンガみたいな大食いが生まれたら困るの」
「今何言うたーーーー!!! 聞こえてるで、なのはちゃんーーー!!!」
「ちっ。地獄耳め。ま、いいの。フェイトちゃん、お願い」
「わかったよ、なのは」

 ゲンヤをぶら下げて、別の出口から出て行くフェイト。
 少しすると外の騒音は止み、フェイトが戻ってきた。

「話はついたよ。後のメンバーは好きにしていいって」

 隊長、ひどすぎます。

「でも、そろそろエイミィも気付くんじゃないかな」
「やっぱり妻帯者はまずかった?」
「うん。いくらエイミィでも、クロノの種は分けてくれないと思うよ。クロノはどうでもいいけれど、エイミィとは喧嘩したくない。ごはん、美味しいから」
「じゃあ、クロノ君もいいや。フェイトちゃんお願い」
「うん」

 提督を抱えて出かけていき、少しして帰ってくるフェイト。

「さて、残りから選ぼうか、なのは」
「そうだね。あれ? ちょっと待って、フェイトちゃん。知らない人がいるよ」
「……本当だ。間違えたのかな」
「いや、あの、俺、ほら、陸士の……」
「ごめんなさい、知り合いと間違えたみたい」
「いや、知り合いですから。俺、カルタスですから!」
「知らない名前なの」
「ギンガさんと一緒に六課に出向してたでしょ!!」
「ギンガは一人で出向してきたの」
「記憶捏造してる!?」

 あっさり捨てられるカルタス。

「気を取り直して」
「飲み直そうか」
「まだ飲むのかよっ! って、ワイングラスも無しに……ラッパ飲みですかーーー!!!」
「ヴァイス陸曹! あれを見るんだ」
「なんですか、グリフィスさん……って、あれはっ!!」
「ワイングラスとかボトル一気飲みとか言ってる場合じゃないぞ……」
「あれは………紛れもない……」
「ああ、どうみても、ワイン樽だ」
「うわっ、フェイトさんが樽持ち上げた!!」
「飲んでる! 樽から飲んでるよ!!!」
「あんたらどんだけ酒豪だよっ!!!!」
「なのはさん二樽目に行ったぁっあああああっ!!」

「あ、こんちわ」

 壁を抜けてやってきたのはシスター服のセイン。

「なんだか、ヴェロッサ迎えに行って来いって言われたんだけど……。連れて行っていいよね?」
「誰に言われたの?」
「えーと、騎士カリムとシスターシャッハとオットーとディード」
「……セイン、一番下っ端なんだ……」
「ち、違うよ!! 下っ端なんかじゃ……………オットーとディードは腐っても騎士カリム付きだから、シスター見習いのあたしより格が上だとか……」
「あ、セイン、泣いてる」
「泣いてないよっ!! 最近、オットーとディードが本気であたしがお姉ちゃんだって忘れてるとか……そんなこと、全然……ひっく……ない……えぐっえぐっ」
「セインが泣いてるの」
「……ユーノのおチンチン切りほどじゃないけど、これはこれで面白いね」
「フェイトさん、どんだけ鬼畜なんだよ!!」
「あ、エリオくんが目をつぶってなんか呟いてますよ?」
「……フェイトさんは優しい人、フェイトさんは優しい人……フェイトさんは優しい人……」
「確実にトラウマ作ってるな、これ」

 泣きながら、それでもしっかりとヴェロッサを連れて帰っていくセインだった。

「さて、残りは三人に絞られたね」

 大地が揺れる。
 巨竜の雄叫びが聞こえる。

「なのは、何か聞こえた?」
「なんにも」
「いや、どう考えてもヴォルテールの雄叫びと、地雷王の地震ですよ!?」
「つるぺたロリっ子に参加の資格はないの。帰ってもらうの」
「馬鹿なっ! つるぺたは正義! ロリっ子は人類の宝ですよ!」
「……グリフィス君にも帰ってもらおうか」
「そうだね。ロリは死すべきだね」
「ロリは死すべきなの」
「どうせ鬼畜眼鏡だしね」
「それ別次元ですから!!!」

 ヴァイスは冷や汗をかいていた。この調子だと、残るのは自分。
 キャロとルーテシアがエリオを奪回し、ロリ鬼畜眼鏡が追い出されたら残るのは自分だけである。
 この二人に精子を提供するのは勘弁である。男には男の意地がある。
 男として。
 兄として。
 兄として。
 兄として。

 …………シスコンですけど何か?

 誰もいない空間に問うてみたとき、壁が崩れて外の空間が見えた。
 そこには、ヴォルテールとフリードとガリューと地雷王と白天王がひしめき合っていた。

「エリオ(くん)を返して!」×2

 なぜかグリフィスが満足そうな、慈しむような目で二人を見ていたりした。
 結局、グリフィスとヴァイスが残されていた。

「ロリは困るね。立たないよ。私たちの魅力が通じない相手だよ」
「……十年前なら見事に通じてたのに……」
「そうだね。あの頃なら向かうところ敵なしのロリだったよね」
「天真爛漫。影有りトラウマ持ちパツキン露出狂。さらにはマニアックな車椅子少女萌え兼関西弁少女萌えまで」
「なのは、それ違うよ、露出狂じゃないよ。まじまじと見られたら恥ずかしくて、ちょっと気持ちよかっただけだよ」
「フェイトちゃん、それを露出狂って言うんだよ」
「知らなかったよ。さすがなのはは物知りだね。ご褒美にワインもっと飲んでいいよ」
「もう飲んでるの。それにしても、永遠のロリータ騎士ヴィータなら魅力が通じてたのにね」

 ここでグリフィスが激しくうなずき、レイジングハートで殴られる。

「このロリ野郎はどうするの?」
「シャーリーが欲しがるかも知れないよ」
「じゃあ命は助けようか」
「そうだね」
「じゃあ、こっちは?」

 ヴァイスは後じさりしようとするが、縛られていてはうまくいかない。

「待て。俺はあれだ。ほら、男としては色々あれなんだ」
「精子提供者にはなりたくない?」
「そんな得体の知れない実験に……」
「直接体内に提供するとしたら?」
「是非協力させてください」

 バルディッシュで殴られた。

「やっぱり男は獣だったね、なのは」
「うん。よくわかったよ。保険を準備しておいてよかったの」 

 残った袋を開く二人は、そこから最後の犠牲者を引きずり出す。

「さあ、女同士でも子供作れる方法を開発してもらうの」
「無理だとか言ったら、クローン百体作って全部神経繋いで百回殺すからね?」
「ごめんなさいごめんなさいこめんなさいこめんなさい…………」

 引きずられていくスカリエッティの姿を見ながら、ヴァイスの意識は薄れていった……

 翌日。酔いの覚めた二人の二日目の休暇は、関係方面への謝罪に費やされたという。

 ちなみにその数年後、本気で開発したスカリエッティによって、女同士でも子供が作れる方法が確立されたという。


著者:野狗 ◆gaqfQ/QUaU

このページへのコメント

ちゃんちゃん

0
Posted by 新井君 2009年01月17日(土) 14:50:03 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます