82 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/10/24(金) 23:20:32 ID:9hyPLp96
83 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/10/24(金) 23:21:13 ID:9hyPLp96
84 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/10/24(金) 23:21:53 ID:9hyPLp96


「隠し芸を手伝って欲しい」

 シャッハに真顔で言われたセインは首を傾げた。

「はい?」
「だから、隠し芸を手伝って欲しいと言っているのです」
「隠し芸……。もしかして、無限書庫の司書長と某提督……」
「それは隠しゲイです」

 あっさりと管理局最大のスキャンダルを暴露する二人。

「手伝うって何?」
「ですから、ちょっとした隠し芸です」
「だから、なに?」
「手品ですよ」
「手品というと、ポケットからハンカチを出したり……」
「当たり前すぎて何のインパクトもありませんね」
「……ポケットから鳩を出したり」
「そんな感じですね」
「胸ポケットから鳩を出したり」
「はい」
「尻ポケットから鳩を出したり」
「まあ」
「内ポケットから鳩を出したり」
「何匹いるんですか。そんな鳩まみれの手品師は嫌です」
「こう、ディープダイバーで工夫すれば大量の鳩を……」
「そんなことにISを使わないように」

 デバイスを構えて笑顔で言い含めるシャッハ。

「はい」

 神妙な顔で座り直したセインに、シャッハはデバイスを片づけた。

「少々大がかりになりますが、大脱出のマジックを手伝って欲しいのです」
「大脱出……って、箱の中とかに閉じこめられて……」
「はい」
「鳩が見事に脱出するという……」
「鳩に何かトラウマでもありますか? なんなら、今すぐトンファーにトラウマを作りますか?」
「いえ。結構です」
 
 セインは快く手伝うことにした。





 手品と言っても種などない。要は、ディープダイバーで脱出すればいいのだ。
 それは果たして手品なんだろうか。

「要は、皆を楽しませるのが目的ですから」

 年に一度、最大規模で執り行われる集会でのゲストとしての出し物。それが毎年の恒例になっているのだと。
 そして、前から一度、はやての故郷で見た脱出マジックというものがやってみたかったのだと。

「しかし、私が脱出する側に回ると、旋迅疾駆を使ったと思われてしまうので、私は脱出する側にはなれないのです」
「だったら、あたしのディープダイバーでも似たようなもんだと思うけど」
「魔法の反応がなければ良いのです、普通の人はISなど知りませんから」
「でも、見ている人の中には騎士カリムとか八神さんとかもいるんでしょ?」
「あ」
「マジで忘れるなよ関係者」
「良いのです、騎士カリムはもとより、はやても関係者ですから。事情はご存じです。見逃してくれるでしょう」
「見事な言い訳ですシスター」
「何か言いましたか?」
「いえ。なにも。お願いですからトンファーは片づけてください」 
「では、打ち合わせをしておきましょう」
「じゃ、着替えてきます。シスター服のままでやるわけにはいかないでしょう?」
「それはそうかもしれませんね」

 十分後、何故かナンバーズのスタイルで現れるセイン。

「何故、ナンバーズ?」
「これが一番動きやすいんです。普通の動きはまだしも、ディープダイバー使うにはやっぱこれですね。私の場合、それも念頭に置かれて作られた服ですから」
「なるほど、さすがはジェイル・スカリエッティね。服まで特別製だったとは。だけど、その服だと問題ね」
「え?」
「貴方はノーヴェやウェンディたちと違って、ニュースで顔は知られていない。だけど、その特徴あるボディスーツを見ればすぐにわかってしまうわ」
「……バリアジャケット……には見えませんか、やっぱり」
「そう、できるだけ普通の格好でね」
「ん〜。わかった」

 そして当日。
 いかにもな衣装で登場するセイン。とは言っても、エナメルっぽいバニーガール風だが露出は抑えていて、色気というより可愛さがメインの扮装だった。
 シャッハもうなずいている。

「ま、慣れない服だけど、セインさんは何とかしてみせるよ」

 舞台に登場するセインに拍手の嵐。
 見ると、関係者席にはどこかで見たような人たちだらけ。

(おお。みんな来てる………あ、ディードオットーもちゃっかりあんな所に……げっ、チンク姉まで!? ウェンディも………うわっ、みんないる!?)

 姉妹たちから目をそらせつつも称賛をたっぷり浴びて、ついでに愛嬌を振りまきながらセインは用意された箱の中に入る。

(んー。なんか緊張してきた。だけど、拍手っていいねぇ、癖になりそ)

 そして、箱の中から合図とともに後方へ脱出、さらなる合図とともに立ち上がれば、大脱出マジック成功である。
 セインは、シャッハの口上を聞きながら合図を待った。
 そして、合図。

 よしっ、とばかりにISディープダイバー発動!

「はい、大脱出!!!!」

 箱から抜けて、観客の前に現れるセイン。抜けた瞬間は死角になって見えていなかったはずだから、どうやって箱を抜けたかはわからない。
 魔法でないと言うことはわかっているはずだから(魔法を使うと反応するセンサーを準備している)、魔法でないことは確か。つまり、不思議なマジック。



 一瞬の静寂、そして間をおいて急激に盛り上がる観客。
 なんだかわからないけれど、盛り上がりに気をよくして、セインは辺りに愛嬌を振りまいていた。

「はーい。やっほー。セインさんだよー」
「し、し、し、シスターセイン!?」
「ほい?」

 顔面蒼白なシャッハの様子に、セインは首を傾げる。

「あ、あ、あ、貴方!」
「ほひ?」
「服! 服! 服! 服!!!!」
「は?」

 セインは自らの姿を見下ろした。

「あ」

 どうやら、緊張のあまりディープダイバーの加減を失敗したらしい。
 服も一緒にすり抜けてる。というか、この服の材質って……透過可能なものだったっけ?

 つまり、現在セインさんは絶賛ストリップ中。そりゃあ、観客も盛り上がるって訳で。
 ちなみに盛り上がっているのはおっちゃんたちとおばちゃんたち。若い男は盛り上がってはいないがガン見。
 若い女性はびっくりしている。

「ぅおおおおおおお!!! 若い娘! 若い娘ぇえええ!!」
「じいさん! 気を確かに! 血圧がっ、血圧があああああっ!!!」
「おおおお、まさか教会で観音様に出会えるとはっ!」
「おかーさん、あのおねーちゃん、裸だよ」
「見ちゃ駄目ですっ!」
「ぎゃははははははははははははっ!!!! セインが、セインが裸ッスよ!!」
「わははははは、何やッてんだあの馬鹿!!!」
「………チンク姉、恥ずかしいよ」
「言うな、ディエチ……姉も我慢しているのだ……」
「僕はそこで騒いでいる二人も恥ずかしい」
「オットーが望むなら、今すぐツインブレイズで黙らせるけれど。何なら永遠に」
「くっ………くっ……あかん、笑ろたらあかん……カリムが気にする……そやけど……ぶっ…ぶわっはははははははっ!!」
「は、はやてちゃん、笑っちゃ駄目です、カリムさんが可哀想です」
「ふむ、これはなかなか……あ、義姉さん、どうして目隠しを……」
「クロノ君、目あけたら来月のお小遣いカットだからね」
「…………はい」
「まさかフェイトちゃん以上の露出魔がいたなんて」
「!!!!! ち、違うよ、なのは。私は違うよ?」
「エリオ君見ちゃだめっ!!」
「噛んでる、フリードが噛んでるよ!!! 頭が、頭が!!!」
「ひゃははははははははははははっ!!!! セイン、おっかしいよっ!」
「……あんなのと、命懸けてやりあってたわけね、私たち…………」


 慌てて、再度ディープダイバーを発動。箱の中へと戻っていくセイン。今度こそ会場は、本来の意味でどよめいた。


 後日、怒濤のごとく押し寄せた再演希望の嘆願書の処理に、カリムは頭を悩ませたという。



著者:野狗 ◆gaqfQ/QUaU

このページへのコメント

非エロの部類に入っていますけど。十分エロいです。

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Posted by subaru-ota 2008年12月07日(日) 13:16:17 返信

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