[350] 愛する者の為に sage 2007/09/30(日) 06:52:18 ID:ygu4SnhH
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[363] 愛する者の為に sage 2007/09/30(日) 07:05:48 ID:ygu4SnhH

「エリオ・モンディアル」
「は、はい!」

普段から呼ばれ慣れている相手でも、改めて名前を呼ばれると常に無く緊張してしまう
まして、魔導師ランクの昇格試験の直後となれば尚更である。

「……成績、効率共に文句無し。おめでとう、AAAランク合格っ」
「あ……ありがとうございます!」

今この場ではエリオの試験官である高町なのはの言葉に歓喜の表情を露にする
彼の隣では、パートナーであるキャロが笑顔で惜しみない拍手を送っていた。


レリック事件が終結して三年が経過した春
本来の目的を終えた機動六課は研修期間の終了と共に解散となるはずだったのだが
その対応力と戦闘能力、扱い易さから本局の提督他上層部に目を付けられ
『ジェイル・スカリエッティの情報を宿した戦闘機人の一機が逃走した』という名目の下に存続が決定し
八神はやてもこれを聞いて渡りに船と快諾し、現在に至る
幸いにも主要隊員の入れ替えは行われず、家族のような六課の雰囲気は未だに保たれていた。


「すごーい!エリオ君もうAAAランクになったんだ〜」
「うん、ありがとう、キャロ」

僅か13歳にしてAAAランクを保有している魔導師は非常に珍しい、その上エリオは先天性の才能が有った訳でもない、
そんなエリオが事件以降、AランクとAAランクを両方一度でパスした事には、流石の教導官も驚いている、
まだ幼い彼がどれ程の修練を重ねたのかは、誰にも容易に想像出来るものではない。

「それじゃあ、エリオ君は今日伝え―――」
「エリオ、おっめでとー!」
「凄いわね、あたし達抜かされちゃったわよ、スバル」
「ありがとうございます。でも、スバルさん達もAAAランク最有力候補じゃないですか」
「いやいやーどうも試験本番になると運が逃げちゃうみたいでねー」

同じく機動六課所属のティアナとスバルは、一年前にAAランク試験に一発で合格、
その後も順調に経験と訓練を重ね、いつ昇格してもおかしくない程の能力を保有しているのだが
いざ本番となるとミスが連続し、つい先日二人一組枠の試験に揃って不合格となってしまっていた。

だが、それを差し引いても六課の面々の成長速度は異常を軽く凌駕している気さえする
濃い訓練や実践経験を重ね、仲が良く実力の近い者同士の競争という状況の為か鍛錬への意識が弱まる事は無く
むしろそれを楽しんでいる様にさえ見られる
『好きこそ物の上手なれ』という言葉が管理外の世界に有ったが、それが綺麗に当てはまっていた。

「それにしてもエリオ、いつの間にそんなに訓練したの?」
「そうだよね、基本的な訓練の時はいつもあたし達と一緒だったし……」
「あ、あはは……まあ、そこは色々と言うことでお願いします」
「ふ〜ん、それじゃあ、今からその色々について話し合おうか!」
「え、ええっ!?」
「そうね、今後の為に是非聞いておきたいわ」

言葉を濁すと余計に追求されるのは定石である
その日、エリオは半ば強制的に拉致され、日が暮れるまで修練について語り明かす羽目になった。

開放されたのは、月も高い深夜になってからだった
キャロは先に部屋に戻って既に休んでいる、スバルとティアナも満足のいく結論が出たのか
自室に戻って対昇格試験の会議の続きをすると意気込んでいた。
そんな中、一人とある部屋の扉の前に立ち尽くしているエリオ
まだ吉報を伝えていない人が居る、どうしても自分から伝えたくて、なのはにも言わないよう頼んでおいた、
だが無事合格した今にして、自分の口から伝えるのが恥ずかしくなってくるが
それでも伝えたかったから、と意を決して部屋に入る

「フェイトさん!」
「あ、エリオ、どうしたの?……その傷、大丈夫?」

入り込んだ隊長達の部屋には、執務官の仕事を終えたフェイトが部屋着でソファーに座っていた
開口一番、エリオの事を心配するのがフェイトらしいと言えばフェイトらしい
大丈夫だと手当てを断ると、エリオは少しだけ胸を張って

「ありがとうございます!お蔭様でAAAランクに合格する事が出来ました!」
「本当!?おめでとう、エリオ!」

自分の事のように満面の笑みで喜ぶフェイト、同じ様に笑顔が零れるエリオの顔は
直後に抱き締めてきたフェイトの姿によって戸惑う様に慌てていた

「……凄く頑張ったんだね、偉いよ、エリオ……!」
「フ、フェイトさん、苦しい……」
「あっ、ご、ごめんエリオ!」

少し力を入れ過ぎたのか、苦しむエリオから慌てて離れる
恥ずかしそうに照れ笑いをするフェイトに、エリオも同じく恥ずかしそうに頭を掻く

「そ、そういえばなのはさんは今日はいらっしゃらないんですか?」
「うん、今夜はユーノとお出かけするって、明日はオフだし、私は一人でお留守番」

もう一人の部屋の住人であるなのはは、以前から休暇を調整しては、ユーノと遊びに行く事がよく有った
本当にたまにしか会えない為か、そういった日は必ず深夜遅くまで帰って来ない
二ヶ月前に至っては、朝方に泥酔状態のなのはがユーノに引き摺られて帰ってきたのを覚えている
それ以来、何処からか二人が付き合っているという噂が流れるようになった
当の本人に問い質しても丸分かりなはぐらかし方をされてしまうので、六課の皆で見守ろうという結論に至っている。

「でも、もうエリオが機動六課に来てからもう三年になるんだね……お仕事、大変じゃなかった?」
「いいえ、その間ずっと六課の皆さんに良くしてもらってましたから」
「だけど、私はあまり構ってあげられなかったから……」
「そんな事ありませんよ、僕もキャロもフェイトさんが忙しいのは十分分かってますから」
「そう……」
「僕もキャロも大丈夫です、だから、あまり心配しないでください」

何十回と気にかけて、何百回と返された言葉
頑張っている人に「大丈夫?」と問いかければ「大丈夫です」と返ってくるのと同じくらいに当たり前な返答である

「それにしても、AAAランクか……そろそろ、私やなのはに追いついちゃうかもね」
「いえっそんな、僕なんかまだまだで……」
「ふふっ、私もAAAから今のSSになるまで何年もかかったんだから、そう簡単にはいかないよ」
「はい、精進します」
「でも、なのはの教導ならそう遠くはないかも……ね」
「そうですね、なのはさんの訓練は凄く厳しいですけど、とても良い経験になります」

実の所、学業や執務官試験と様々な事が有って自己鍛錬だけに集中出来なかったからなのだろうが
その事には一切触れずに悪戯っぽく笑うフェイト
だけど、いつもと同じ違和感がフェイトの頭を過ぎる
エリオは元々弱音を吐くような子ではなかったものの、最近は殊更に一歩も二歩も距離を置いている様な、そんな感じがしていた。

「でも、言ってくれれば私も手伝ってあげられたのに」
「いえ、そこまで面倒を見てもらうわけにはいきませんので、心配しないでください」
「私はライトニング隊の隊長で君やキャロは隊員、だから気にしないの」

フェイトが少し得意げに話すが、エリオは申し訳なさそうに

「大丈夫ですから、僕達もちゃんと自主訓練やってますし」
「そうなんだ……頑張ってるんだね」
「はい、僕もキャロももっと強くなりたいんです!」
「うん、良い心がけだね」

照れるエリオの頭を軽く撫でるフェイトだが、何と無く疎外感を感じてしまう
あの事件以来、エリオとキャロは一層仕事に訓練にと真剣に取り組み始め
親子でこの様に向かい合って関わる時間は数週間、時には隔月に一度と非常に少なくなっていた
勿論、フェイトも寂しさを感じていない訳ではない
しかし、事件の事後処理や管理局の混乱による一騒動に巻き込まれ、長い時間を執務官として過ごして居た為
禄に暇も貰う事が出来ずに膨大な仕事をこなしていたのであった。
自分が執務官という立場でなければどれほど一緒に居る事が出来たのだろうと考えるが
執務官でなければと逆の思考をぶつけて考えない様に打ち消す

「そういえば、キャロはどうしてるの?」
「先に部屋で休んでます。キャロ、僕の力に合わせようと一生懸命に無茶してくれていますから……
今日だって、練習中に何度か倒れそうになってましたし」
「そ、そうなんだ……」

知らなかった。今日の昼休みに食堂で見たキャロはいつもと全く同じで
いつでも笑顔を忘れないような印象は今でも変わらない
もしフェイトが倒れそうになるキャロを目にしていたら必ず叱り、無茶を止めさせるはず
だからこそ、気付かせなかったのだろうか

「でも、キャロも頑張って、今度AAランクの試験を受ける事になったんです!」
「えっ!?キャロももうAAランクに?」
「はい、それに実力はなのはさんのお墨付きで、余程の下手を踏まない限り大丈夫だと―――」

最後の方の言葉は、フェイトにはほとんど聞き取れていなかった
フェイトの知るキャロは、まだBランクに成りたての頃で止まっている
エリオも同じだったが、今の今まで二人は自分達の事を殆ど話してくれていなかったからだ。
保護責任者として、エリオとキャロの親の代わりとして、誰よりも何よりも二人の事を見守ってきた、
時には叱ったり、一緒になって泣いた事も有った、それ以上に喜び合った。
あの二人の事ならなんでも知っているつもりだと思っている、
だけど、フェイトの中の二人は三年前で止まっていたかのように、目の前のエリオが別人の様に見えた、
そう思っていたのは自分だけの、自惚れだったのだろうか

「――ィトさん、フェイトさん?」
「っ、エリオ……」
「どうかしたんですか?もの凄い汗ですけど……」
「ううん、なんでもない……ちょっと眩暈がしただけだから」
「今日はもう休んだ方が……」
「ううん、もうちょっとお話しよ、せっかく二人きりなんだから」

確かに執務官の仕事は忙しい事が多く、あまり二人との時間を取れていなかったのは事実である
訓練も、常に全員を見てきたわけではないが、出来る限り教えてきたつもりだった

だが、交じり合わない時間は三人の関係をここまで変えてしまうものか

「…………フェイトさん」
「なに?エリオ……」

先程までとは違う、低く、強い口調でエリオが話しかける

「僕とキャロはこの三年間、必死に頑張ってきて、ここまで駆け上がってきました
今の僕達は、フェイトさんに助けて貰った時のような弱弱しい子供じゃありません、
僕達は……僕達は、大丈夫ですから。一人一人でも、生きていけます。だから……」

その先は聞きたくない、聞けば今という幸せな時が過ぎ去ってしまうから
それでも耳を塞ぐわけにはいかない、ずっと見守ってきた子の、意思だから。

そして、深い決意を込めて、その言葉は告げられた


「フェイトさん、僕達の保護責任者を、辞めてもらえませんか」


いつか来ると分かっていた瞬間が、今はっきりと言葉として投げかけられる

「エリ、オ……………」

胸が痛いほどに詰まる
これを子供の反抗などとは思わない、あの優しくて強いエリオとキャロに、思いたくない

「どうして……もしかして、モンディアルの家に戻るの?」
「違います……、僕とキャロで一生懸命考えた結果です」
「それなら、今のままでも……!」
「駄目なんです!」
「でも!」

哀願する様にエリオに縋るフェイト、随分と前から自分でも分かっていたのに、改めて気付かされる、
エリオとキャロ、二人がフェイトの子供として居てくれた時間は、何よりも大切で、
幼馴染であるなのはやはやてとは違う、『家族』を感じていた
二人がフェイトを必要としているのと同じく、フェイトもまた二人を必要としている
ずっとそばに居て欲しいと願ってしまっている。

「いつまでもフェイトさんの所で、子供として扱われているだけでは、一人前になんてなれないんです……」
「エリオ……」

少年と少女の決意は固い
今にも涙が伝い落ちそうなフェイトだが、見えない様に拭い

「うん、分かった。二人が決めた事だから、応援するよ」

はっきりとした言葉で、それを受け入れた。

「嬉しい……のかな、何て言うのか分からないけど、ちょっと寂しいし……
でも、子を見守る母親って、こんな気分なのかな」

気持ちは落ち着かないものの、不思議と笑顔を見せるフェイト

「立派になったね、エリオ。もう子供扱いしちゃいけないね」

涙で潤ませた瞳で改めてエリオを見る
この三年間で大分背も伸び、フェイトを超さんばかりに成長したエリオには、子供という印象は全く見られない
顔立ちも少し男らしくなり、その目には力強さと強い意思を感じられていた。

お互いに握手し合い、ソファに腰掛ける
用意してきたジュースを軽く引っ掛けると、大分落ち着きを取り戻せた気がした。

「フェイトさん」

一杯目を飲み干してから、真っ直ぐにフェイトを見つめ、再度エリオが話し出す

「僕はもう子供ではありません、フェイトさんの子供でも、家族でも有りません」
「うん……」

少し悲しげに俯くフェイト
改めてその現実を突き付けられると、嬉しさより寂しさが勝ってしまう

「だから、僕は六課の同僚として、言います」

フェイトの顔を見て口が止まる、ここまで来ておいて、と自らに喝を入れるエリオ

(フェイトさんの悲しい顔は見たくない、僕はその為にここまで頑張ってきたんだ、
フェイトさんに笑顔で居て貰いたいから……フェイトさんの笑顔が、好きだから!)

意を決して、閉じようとする口を無理矢理開き

「僕は、フェイトさんの事が好きです。
家族としてじゃなく、一人の女性として、大好きなんです!」

ずっと心に秘めてきた想いを伝える
母と子ではない、姉と弟でもない、男女としての関係を望んだエリオ

突然の展開と告白に、沈み気味だったフェイトが驚かないはずも無い

「エ、エリオ!?それって、その、あの、えっと……」

白い肌が一気に真っ赤に染まり、両手をオーバーに振り回すフェイト
実に危なっかしいのでそれを宥めるエリオ、数秒かかって落ち着きを取り戻させる

「ごめんなさい、急に……」

ジュースをもう一杯注ぐと、フェイトは一気に流し込み、深く息を吐く

「も、もう……」
「ごめんなさい……でも、本気なんです、あの時から、助けてくれた時から、ずっと」

自分が自分のして来た事に気付いた日、フェイトはそれまでの行為を咎める事無く喜んでくれた
その笑顔に惹かれていたのかもしれない、或いは、惜しみ無い優しさに
既にどちらでも構わないが、今のエリオの想いは確かに本物である
だから、その笑顔に近付く為に今自分はここに居る、例えささやかなその願いが叶わなくとも。

「……だから僕は強くなって、男としてフェイトさんを守ってあげたかったんです」
「エリオ……」

シグナムの言葉を思い出す、命を賭してでも守りたいものが有るから、歩んで来た道に迷いは無い。

そして、フェイトは表面上は落ち着いているものの、内心は非常に揺れていた、
仕事に熱心な執務官であるフェイトも、仕事から離れれば一人の女性であり、こういった言葉に心が動かされないはずも無い
なのはとユーノの関係を見て羨ましく思ったりする事も有った。
だが、今目の前に居て好意を寄せてくれている相手はエリオである
長い間同じ時を過ごし、家族としての関係を築いてきたフェイトにとってエリオは見守るべき相手であり
そのエリオから守られるなどとは考えた事も無かった。
だが、三年前の事件で崩落する洞窟から救い出された時から、彼の中に男を感じていた時も有る、
それ以来度々エリオを意識する事も有ったが、保護者であると自らを律し、押さえ込んできた
あの時の不思議な感情は忘れた事はないが、立場上流されたいとも言えない、そんな奇妙な葛藤を引き摺っていた。

そして今、二人を隔てる『家族』という壁が取り除かれたなら
積もり積もった想いを伝える事も出来るだろう。


「……うん、私も好きだよ、エリオ」

言葉と一緒に強く抱きしめるフェイト、
ただ目の前に居るエリオを何よりも大切に思えるという気持ち、経験が無くても仄かに感じる、人を好きになるという感情で思考が一杯になる
そして、どちらからともなく唇を重ねる
以前にふざけてなのはやキャロとしてしまったキスとは違う、真剣にお互いを想う者同士の触れ合いには
限りない愛情が込められ、形ではないものまで受け取ろうと深く交わる。

やがて二人が離れると、突然フェイトが微笑んで

「エリオが私の騎士さん……か、ふふっ」
「な、何かおかしいんですかっ?」

妙に気になる言葉に食いつくエリオだが、それをフェイトが手で押さえると

「違うの、ただちょっと嬉しかっただけ」

そう言って満面の笑顔を見せるフェイトに連られて、エリオも軽く微笑む
そんな最中、ふと何かを思いついた様に軽く手を叩くフェイト、その様子にエリオが不思議がっていると

「エリオ、私達はもう家族じゃ無くて………恋人……なんだよね?」
「え、あ……う……は、はい……」

緊張の糸が切れてしまったのか、現在の状況に急に顔を真っ赤にするエリオ、

「それじゃあ、ライトニング分隊隊長命令!」
「え?」

急にフェイトの調子が上がり呆気に取られてしまうが、続いて命令が読まれる

「今夜はこの部屋で私を守る事、絶対だよ」
「は、はい!」

おかしな命令に顔を見合わせると、一緒に笑い出す二人
確かに二人は家族ではないが、隊長と隊員という関係をエリオは忘れてしまっていた。

そのまま二人は少しの間他愛の無い話を続けるが、エリオの顔色が何と無く嬉しそうではないと感じたフェイトが
グラスを飲み干し、エリオの様子を問い質してみる

「どうしたの?何か心配事でも有るの?」
「いえ、その……なんというか」
「?」
「フェイトさん、まだ心の切り替えが出来て無いんじゃないかなって……いきなり親子やめてくださいとか好きだとか言っちゃいましたし……」

まだ新たな関係に至ってからあまり時間も経っていない為か、フェイトの言葉の節々に恋人らしからぬ言葉が見え隠れしている様に思う
長い年月の癖は中々抜けないものである。

「やっぱり、フェイトさんはまだ僕の事を子供としか見てくれてないのでは……」

見た目で言うのなら明らかに子供なのだが、今更の事ではある
だが、フェイトはその言葉にムッとしたのか、急に立ち上がると

「……じゃあ、こうしたら信じてくれるのかな……?」

気を取られた瞬間、先程より深いキスを受けるエリオ

「フ、フェイトさ……むぐっ」

フェイトの方から力強く抑え付けられる形に抵抗すら忘れてしまう
少しして、離れた唇の辺りから、お互いの顔全体が赤みを帯びていく

「私が真剣だって事……」

フェイトの類稀な美貌による艶やかな誘いに乗らない男はまず居ないだろう、まだ経験の浅いエリオでもそれが分かる程に気分が高揚し、
何も考えられないまま誘われるままにふらふらとベッドの上に座り込む

フェイトもエリオと向かい合う様に座ると、ゆっくりと衣服を脱ぎ出す
惚けた表情のままのエリオに見せ付けるかのように、惜しげもなく下着姿を晒した

「フェイトさん……綺麗です」

何とか離れかけていた理性を取り戻して、それだけを言う、
その言葉にフェイトが微笑むと、まるで着替えるかのようにあっさりと乳房を露わにする
そして、白い柔肌を晒しながらエリオの手を取り、自らの胸に押し当てるフェイト

「好きにして、いいよ」

何もかも溶かし尽くしてしまいそうな言葉に、エリオの中で抵抗する最後の感情が難無く陥落した。
柔らかくもしっかりとした未知の感覚に戸惑いながらも、ゆっくりと乳房を撫で回す
たまに指先で押し込んだり乳首に触れてみると、深く息を吐くフェイト
その様子を見ながら優しく舌を乳房に這わせると、小さく身体を震わせながら声を漏らす

「んっ……はぁっ、エリオ……何処でこんな事を……?」

その手つきは明らかに未経験者のそれではないと、感じ始めている身体がフェイトに告げる
その間にもエリオの空いた左手はフェイトの身体に触れ、敏感な部分を探し始めている

「その……八神部隊長がくれた雑誌で、勉強しました」

一体どんな雑誌を読ませたのだろうかとフェイトは呆れそうになるが、
エリオの手によって身体に火が灯されていく感覚は悪くないと、心の片隅で感謝もしておいた。

「ひゃ、んっ。何……?」

やがてある一点にエリオが触れると、大きい反応を示すフェイト、脇腹の上辺りが弱いらしい
そこを優しく擽りながら乳房への愛撫を再開すると、先程より大きな反応を返す

(すご……い、気持ち良い……)

女としての快楽の経験の少ないフェイトの身体は、エリオの細かい技に少しずつ感覚を刻み込まれていく
頭がぼうっとしながらも、身体は確実に感じているのがはっきりと分かった
フェイトの息遣いが荒くなってくると、エリオは乳房を撫でていた右手をフェイトの太股に置いてみる

「あっ……、んぅ……」

先程までは何も意識せずに晒していたものの、いざ触れられるとなると恥ずかしさが込み上げてくる
フェイトの足に力が入っているのが分かると、エリオが耳元で優しく囁く

「大丈夫です……力、抜いてください」

小さな一言を頼りに恐る恐る身体を預けるフェイト、その見事なラインを持つ足をエリオの指がなぞる
そのままショーツに触れると、そこは僅かに湿り気を帯びており、女としての主張をしていた。

「フェイトさん、気持ち良いんですね……」
「う、うん……」
「良かった……何だか、僕も嬉しいです」

やはり知識が有っても不安が残るのか、ショーツの湿り気に安心するエリオ
ゆっくりとその場所を撫でながら、胸と脇腹への愛撫を再開する

「あうっ、あっ、エリ……オ……んんっ!」

先程までとは違う、強い快楽に流されたフェイトは姿勢を保てずにベッドに横たわる
背中をベッドに預ける事で楽になったのか、身体の力を抜き、ただエリオのなすがままにされるフェイト
そうする事でストレートに快楽を受け入れる事が出来、深く快感を得る事が出来た
先程までより喘ぎ声が大きくなり、ショーツの濡れ方も夥しくなってくる

「凄い濡れてます……フェイトさん」
「うん、エリオがしてくれてるからかも……」

大好きな人だからこそ、全てを委ねる事が出来て、より素直に感じられる
フェイトが身を任せてくれる事を嬉しく思うと共に、もっと気持ち良くさせてあげたいという願望がエリオに芽生えてきていた
下半身を撫でていた手で少しだけショーツを下ろしてみると、大分愛液に濡れた秘部が晒される

「エ、エリオ……!?」
「ここも、凄く綺麗です……」
「や、やめ……ひゃんっ!」

自身の最も敏感な部分を直接弄られる感覚に身体を震わせるフェイト
そこがどういった場所なのか分かっているエリオは、出来るだけ優しく愛撫を始める
明らかにフェイトの声と息遣いが荒くなり、秘部から垂れる愛液もその量を増していた
その液を指に絡めて撫で回すと、フェイトが大きく息を吐いて、快楽に支配されていくのが分かる
そして、膣のやや上に有る突起に僅かに触れると

「ひゃっ!んんっ!」

一際大きな声が上がり、華奢な身体が小さく跳ね上がる

「だ、大丈夫ですか!?」

エリオはフェイトの様子がおかしい事に気付くと、慌てて心配しだす

「ううん、平気……凄く気持ち良かっただけだから」

エリオを安心させると、ゆっくりと身体を起こす
そして惚けた目をしたままエリオのズボンに手をかけると、下着と一緒に難なく脱がせてしまった
既に硬く勃起したエリオのそれがフェイトの前に現れる

「エリオの……大きくなったね、ん……」
「フ、フェイトさん!?」

女性には無いそれを見ても臆する事無く、むしろ喜ぶようにキスをするフェイト
ピクリと反応したのを見て微笑み、ゆっくりと口に加えた

「ん……ちゅ、んむ……」
「うあっ、そ……」

エリオの前に四つん這いになって奉仕をし始めるフェイトの姿は扇情的という表現を軽く通り越している
鍛えてきた忍耐力が無ければ、あっという間に放ってしまっていただろう
そんなエリオの様子を上目遣いに見ながら嬉しそうに頬張るフェイトは、悪戯をする子供の様に竿に手を絡ませてきた

「うっ、ああっ、フェイトさ、ん……」

このままフェイトの口の中に突き立て、精を放ちたいという欲望に駆られるが、意地を振り絞ってそれを堪える
しかし、フェイトのペースは落ちないどころか速度を増している気さえしてきた
余りの気持ち良さに思わず果ててしまいそうになるが、辛うじて押さえ込んでいたが

「んっ、いいよ……出して」

そんな短い言葉で、決壊した

「フェイトさん……っ!」

勢い良くフェイトの口内に精液を吐き出す、
その感触に咽込みそうになりながらも、少しずつ嚥下していくフェイト
僅かに入りきらなかった分が口の端から垂れ、それが一層卑猥な姿に彩を加える

「ん……飲んじゃった、エリオの精液」

余りにも綺麗過ぎる艶姿に、萎えかけたエリオのが再び硬さを取り戻していく

「フェイトさん、僕、もう……」
「うん、来て……私も、入れて欲しい」

待ちきれないと言わんばかりに仰向けにベッドに横たわり、目を閉じるフェイト
その身体に上から覆い被さり、再び深く唇を重ねる、離れる頃にはお互いの唾液が糸を引いていた

「それじゃあ、いきます……」

位置を確かめ、決して小さくないエリオのがフェイトの秘部に入っていく

「ぅ……ふぁ……」

まだ経験の浅いその場所はきつく閉まり、入ろうとする異物を押し返そうと蠢いている
それを無理矢理押し破って進めていく内に、フェイトの膣の奥を叩いていた。

「お、奥まで……入っちゃいました」
「う、うん……」

自分でも情けないと思う言葉が口から出る
とりあえずそれを素直な感想だと思っておいて、身体を密着させ合うように倒れ込むと、
成り行きにフェイトの胸が思い切りエリオに押し当てられる形になる
つい先程まで満遍無く触れていたので、仄かに暖かく心地良い鼓動と柔らかさを感じた

「本当は、もっとこんな風に甘えて欲しかったんだ」

軽くエリオの頭を撫でるフェイト、子供みたいに身体を寄せるエリオに今は懐かしい日を思い出す

「でも、今の僕はもう大人ですから……」
「……そうだね」

そこで言葉を切り、エリオの方から少しずつ腰を動かし始める
無理はさせまいと出来るだけ優しくしたつもりだったが、その行動に不満を感じたのはフェイトの方であり
急かす様に身体を捩れさせるとその動きが膣に伝わり、エリオをにより刺激を与えた

「な、中……凄……」

十分過ぎる程濡れていたので痛みは感じない、それどころか柔らかい物で強く包み込まれるような感触に
エリオの中で押さえ込んでいた衝動が強くなっていくが、まだ耐え切れないほどではない。
そう気を使っているのが分かったのか、フェイトは優しく微笑みかけると

「うん……私は大丈夫だから、エリオの好きにして……」

途轍もない破壊力の篭もったフェイトの言葉に、遠慮という最後の壁を破壊されたエリオは
攻撃的な勢いで膣内を蹂躙する様に動き出す

「フェイト、さん……!」
「んんっ、あっ、あぅっ!早……ひんっ!」

急に強く突き動かされるが、フェイトは痛がる様子も無く受け止めて悶える
じゅぷじゅぷと溢れ出る液の音だけが二人の耳に入り、目の前で繋がっている二人が二人だけを
感じ、思うままに愛し合う
そうなれば、昇りつめるまで時間はかからない

「くっ、あぁっ、もう、出ちゃいそうですっ!」

言う間にも強烈な快感が射精を後押しし続ける
せめてもう少しとエリオが思うが既に限界は超えている、

「やっ、大きく……んっ!ダメ……もう……!ふぁっ!」
「フェイト……さん……!!」

先に達したのはエリオの方だった
自分の気持ちごと勢い良く放出される様な感覚に腰が抜けそうになるが、それも直後に来る
身を刺す様な快感に流されて何も考えられなくなっていた

「エリ……オ、いいっ!イ……あぁっ!!」

中に広がるエリオの感触に身体を震わせ、フェイトも絶頂を迎える




今だ荒い息を整えると、繋がったままのものを惜しみつつ引き抜く
にゅぽ、という音と一緒に白濁した液が零れ落ちるが、特に気にはならなかった

「分かってくれた……かな?ちょっと自信無かったんだけど……」

少し落ち着いたのか、フェイトが恥ずかしそうに言う
何の自信が無かったのかはエリオには分からなかったが、そんな些細な事が気にも留まらなくなるほど
フェイトが自分を愛してくれている事が感じられた

「いえ……もう十分過ぎる程です」
「ふふっ、ありがとう、エリオ」

エリオの答えに満足したのか、満面の笑みでエリオの腕にしがみつく
腕全部で感じるフェイトの体温が今更ながら恥ずかしくなり、慌てて振り解こうとするが

「……ごめんね、ちょっとだけこうさせて……」

その甘えるような言葉と、幸せに満ちた笑顔を見て思い留まる

「フェイトさん……」

普段見せた事の無い女としての一面を見せるフェイトの姿に、深い安心を覚えるエリオ
執務官としてではなく、友人でも家族としてでもなく、ただ一人の女として愛しい人に全てを委ねる幸せに浸るフェイト
ふと目が合う二人から再度笑顔が零れる、今だけはこうしていたいと、この幸せを共有して居たいとエリオは心に呟く
そしてエリオは誓う、この笑顔を守りたくて自分はこの道を選んだ、だから、どんな苦難が有ろうとも決して負けはしないと

ここに、フェイトというただ一人の為の『騎士』が誕生した。






隊員用の宿舎の一室、暗い部屋の中でベッドに横たわる影が一つ

「エリオ君……」

愛する人の為に全ての事を受け入れた瞳から流れ出でる涙は、誰にも知られる事は無かった


著者:31スレ349

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