17 名前:SandyBridge ◆UKXyqFnokA [sage] 投稿日:2012/02/20(月) 22:44:42 ID:bpm6rB4c [2/6]
20 名前:SandyBridge ◆UKXyqFnokA [sage] 投稿日:2012/02/20(月) 22:46:11 ID:bpm6rB4c [3/6]
21 名前:SandyBridge ◆UKXyqFnokA [sage] 投稿日:2012/02/20(月) 22:47:42 ID:bpm6rB4c [4/6]
23 名前:SandyBridge ◆UKXyqFnokA [sage] 投稿日:2012/02/20(月) 22:48:50 ID:bpm6rB4c [5/6]

 身体の火照りを誤魔化すように熱いシャワーを肌に打ち付け、バスルームを出てくると、男はベッドに腰掛けて何も映っていないテレビを眺めていた。
 バスタオルを巻いて胸元を押さえ、一歩ずつ、歩み寄る。
 白衣は脱いだら、と促すと、男は面倒くさそうに、着込んでよれよれになった上着をシーツの上に放り投げた。

「君らしくもない」

 この男には動揺という感情がないのだろうか、とヴィヴィオは思った。
 夜更け、周囲の目を盗んで、クラナガン郊外のひとけのないホテル街にこうしてしけこんでいる。自分も彼も、それなりの身分があり外を歩けば窮屈さを感じている種類の人間のはずだ。
 今頃、皆は大慌てで自分たちを探しているだろう。
 なのはやシャッハはもちろんのこと、ディードにオットー、そしてフェイトは二重の意味で、行方をくらました自分たちの行き先に焦りを覚えているだろう。
 陛下、陛下と青い顔をするディードの様子を想像すると哄笑が漏れそうだ。

 背伸びしたい、大人になりたい盛りの年頃。
 それだけではないんだという強い気持ちを、自分に言い聞かせるように、薄暗い路地を歩いてこのホテルに入るまで、ヴィヴィオはずっと胸に抱えていた。

「あのときもそうだった」

「何時のことを」

「私は今、すごく、歯がゆい気持ちがわきあがって、どうしていいのか、わかんなくて」

 左手は空をつかむように、右手でバスタオルをぎゅっと握りしめる。
 単なる欲望。いや、そんなことじゃない。

「親に反抗したい年頃なのかね」

「違う」

 振り払うように否定の言葉を吐き、身体を覆っていたバスタオルを振り落とす。
 あれからもう10年以上が経った。身体が大きくなっただけではなく、その内に秘めた力と、欲望がむくむくと、心の中で膨張しようとしている。
 暖房の効いたベッドルームの中、見下ろすと、自分の胸の上で勃起した乳首が見える。
 今にも襲い掛かりたい。だが、それは何かに負けたような気がして、踏み切れない。
 スカリエッティはゆっくりとヴィヴィオを見上げ、どこか懐かしむように目元を緩めた。

「今でも私を、聖王だと思ってる?」

「むしろ聖王でなければなんだというのだね」

 言葉を紡ぐ唇の動きに目が奪われた。雌豹のように飛びかかって覆いかぶさるように、肩をつかんでヴィヴィオはスカリエッティの膝の上に跨った。

 はやる気持ちで、シャツのボタンをはずそうとする指先が震える。
 科学者という言葉で一般的にイメージされるようなやわな肉体ではない、その風体に似合わず、鋼のように筋張った筋肉がついている。

「高町君の教えを破ることになるね」

「……ママのことは、感謝してる──でも、でも私は、それなら私のこの気持ちは何なのよ──」

 スカリエッティの肩に抱きついて、首筋に頬を寄せる。そこでやっと、二の腕をさするように抱きかかえてくれた。
 12人の女性型戦闘機人を作りながら、彼女たちは娘として大切にされた。
 無限の欲望という悪名を付けられながら、しかしこの男には性欲というものは無いようにさえ感じられた。
 この男もまた、人工的に遺伝子を弄られた歪な人間だ。人間である以前に、生物としての機能を奪われた。

「レリックはもうない、聖王の鎧も、ゆりかごももうない──、だけど私は、このまま、生きていくのが怖い──」

 手のひらで、いっぱいに体温と抱き心地を感じ取ろうとするように背中をさする。
 押し付け合う胸が、切なさを高めていく。
 ひとしきり睦みあい、やがてゆっくりと離れる。スカリエッティは右手を上げ、ヴィヴィオの額からサイドポニーまでの髪をゆっくりと撫でる。

 ヴィヴィオはさらに腰を前に出し、寝そべるよう促す。
 ホテルのベッドに使われる寝具は綿が深く、雲に浮かぶように体位をとれる。ベッドに手をついて、胸を支えてもらうように抱き合う。ゆっくりと、五本の指と手のひらを使い、余すところなく、乳房を揉む。
 男の手が、胸に触れる。ヴィヴィオにとっては初めての経験だ。

「このまま、学校を卒業して就職して、それで──それから先、どうなるの?
いつまでも、友達と遊んでばかりじゃいられない、将来のコト、考えなきゃいけない、私は」

「まあ、聖王教会が黙ってはいないだろうね」

 聖王教会。カリム、シャッハ、シャンテ、シスターたちの澄んだ穢れなき貌が浮かんでは消えていく。

「私を神輿にするっていうの」

「飾り物では不満かね。やはり自分の腕力で者共を従えなければ気が済まないかね」

「そんなこと──」

 やわらかな生地の布を被りながら、男の下着を脱がせていく。迷いなくペニスをつかみ、奮い立たせるように二、三度揉む。
 そのまま、見つめ合いながら、手のひらの中で硬くなっていくのを感じる。

「怒りや憤りをため込むのは体にも心によくない……吐き出して、素直になるのがいい」

「それができたらっ!──それができたら、どんなに楽か──!あなたは、どうしてそんなに──気ままな顔して、浮ついたように飄々として、いつも自分勝手に生きてるだけで──!!」

 言葉に出すと、喉の奥がきゅっと締め付けられるように痛い。
 目じりに、涙があふれてくる。

「あなたが羨ましい──!素直な気持ち、私のこのやり場のない、力をふるいたい気持ちっ、わかってくれるのは……わかってくれるのは、あなただけだよ……っ」

 言葉を、吐き出す。
 息を落ち着けるように、そっと口付ける。求める気持ちを、優しく、鎮めていく。
 キスをしている、という実感は、ヴィヴィオの感情を少しだけ、落ち着けてくれた。

「私のようになりたいか?」

「わかんないっ……でも、胸が、苦しいよ……」

 きつく抱きしめあい、腰を擦りつけあう。触れ合う性器が、体温と湿り気を互いに渡しあう。

「テスタロッサ君も高町君も、このことを知ったら──哀しみ、そして打ちひしがれるだろう」

「やめて!そんなこと言わないで!」

「彼女たちを説得できると思っているのかね」

 言葉に詰まり、腹いせにやり返すように、顔を上げてヴィヴィオは再びスカリエッティの唇を貪った。
 普通の親子以上に年齢は離れているはずだが、この男の肉体には老いが感じられない。造られた生命は異形である。

 右手で肩を抱き、左手でうなじを撫で上げる。一見してこういった情事とは程遠い印象の男が、しかし、手馴れて、愛しい。

「ほしいっ……何もかも!全部、私のものにしてやる、ママにも、誰にも文句は言わせないんだ……!」

「私でよければ存分に」

「このっ……ばかぁ……」

 涙のしずくが、一滴、どこかに落ちた。身体を起こしたヴィヴィオの、胸をそっと撫で、乳房を包み込むように両手で愛撫する。かぶりつくような体勢で下に向かって揺れる乳房を支えるように、手のひらの上で乳首を転がす。
 今夜ずっと荒れ狂っていた心が、癒されているとヴィヴィオは感じていた。
 なのはよりも大きくなったバストはひそかな自慢だった。もちろん学校での友人たちの中でも一番大きい。

 改めて両ひざをスカリエッティの腰の横につき、太ももを広げて位置を合わせ、ゆっくりと腰を下ろしていく。
 サンクトヒルデの高等部でも、男付き合いなどは意識はしなかった。それゆえに今こうして突っ走ってしまっているのかもしれない。いわゆる初めてのはずだが、自分でも驚くほどに、ヴィヴィオの股の間は貪欲になっている。
 腰の奥にもう一つ口ができたように、スカリエッティに喰らいつくイメージが脳裏に浮かぶ。
 それを知ってか知らずか、スカリエッティは相変わらずのにやけた顔でヴィヴィオを見上げている。
 男を見下ろすということがこれほど嗜虐心を刺激されるのかと、ヴィヴィオは自分の心が燃えるように黒くなっていくと感じていた。

 切ないほどの性感を堪えるように、腰を押し込み、恥骨が押し付けられるのを感じる。
 下になったスカリエッティは自分の動きは最小限に、ペニスの脈動だけでヴィヴィオの膣内をまさぐる。ヴィヴィオの慣れない動きはややもすれば乱暴に扱くように、ペニスを根元から捻り回す。
 それでもスカリエッティは少しも余裕の表情を崩さず、ヴィヴィオを抱き留めてくれていた。滴り落ちてくる愛液に、生温い血が混じっているが、もうそんなことを構う気はない。

 悔しい。

 背徳感、というのだろうか。司法取引で制限付きながら行動の自由がある程度認められたとはいえ、今自分が抱かれている男はれっきとした犯罪者である。
 なぜそんな男に、これほどまでに心を囚われているのだろうか。
 レリックウェポンとして生体実験に使われ、それなのになぜこの男に心惹かれているのだろうか。
 苦しい。胸が苦しい。なぜ苦しいのか、それは心の窮屈さだ。
 一見順風満帆な、恵まれた生活を送っているようでいて、それは世間で偉いとされる誰かに従うままの、既存の権威に沿うものだった。

 単なる反抗心、青臭い悪ぶりっ子、なのかもしれない。しかし、自分の生まれと血筋は事実で、自分には、力を手に入れる素質があった。
 力を手に入れることは善くないことだったのかもしれない。それは無理矢理持たされた力で、それは不幸なことだから──。

「君は何が欲しい」

 スカリエッティの肩にしがみつくように両腕を背中に回して抱きついて、ヴィヴィオは腰を振る。溢れるほどに濡れた媚肉がぬめり、粘つく音を立てる。
 膣口に力を入れては抜き、襞をすぼめながらスカリエッティのペニスを舐めまわす。それに応えるように、膨れた亀頭が膣壁を掻き、粘膜を熱くする。

「ほしい……、もの……っ」

 背を反らし、押さえつけるように腰を立てて動く。胸が上下に激しく揺れ、身体を振りかぶると、スカリエッティはヴィヴィオの豊かなバストを両手で受け止める。
 そのまま、胸の奥まで、いつか命を育てる時のための源をも包み込んで、深く深く揉みしだく。

「欲しいものがあるのなら自分の力で手に入れるんだ。欲望に目をそむけてはいけない、それでは心が歪むだけだ」

「わたしの、ほしいものっ……わたしのっ、あっ、ああっ……ジェイル、うあっ──!」

 快感が乳首から、乳房から、身体全体に広がっていく。息が荒く、嬌声がこらえきれなくなり、ヴィヴィオは声を上げた。スカリエッティをファーストネームで呼ぶ、それのどこがおかしい?人を呼ぶのに名前以外のどんな言葉を使う必要がある。

「君は聖王だ、聖王ヴィヴィオだ──」

 高町。その姓は、何を意味している。
 今のヴィヴィオには、それは枷のようにしか感じられなかった。それが善いとか悪いとか、ではなく、ただ今は自分の欲望を満たしたい。
 身体が溶けるような交わりの中で、しがらみも何もかも捨ててしまいたい。

「私のものになってっ、ジェイル!ああっ、あっ、スカリエッティ──さん──!!」

 悔しさが冷静さを残し、絶頂に手が届かない歯がゆさ。
 それさえもいとおしい。

 もっと、もっと触れ合いたい。これは、欲情なのか、それとも愛情なのか。
 あるいはそれすらも、強い生命力を求める欲望を包括する仮面なのか。
 ただひとつだけ、ヴィヴィオは、自分がもっと強ければ“それ”が実現できるかもしれないという希望を、胸の中で想うことしかできない現実が哀しかった。


著者:SandyBridge ◆UKXyqFnokA

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