最終更新: nano69_264 2011年09月29日(木) 21:49:26履歴
125 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2011/01/03(月) 00:31:36 ID:JyayV.OM [2/5]
126 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2011/01/03(月) 00:32:18 ID:JyayV.OM [3/5]
127 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2011/01/03(月) 00:32:54 ID:JyayV.OM [4/5]
つかつかと、ラボから培養庫へと続く廊下を歩くスカリエッティ。
「ウーノ、ガジェット製造ライン3から6までの起動準備を。それから、第二次製造分ガジェットの最終チェックは予定通り明朝0700より開始する」
「最終チェック準備はできています。それから、明日はノーヴェ、ウェンディ、ディエチの定期検診の予定ですが」
「スポンサーからは何か?」
「表向きは何も。加えてドゥーエからの連絡もありません」
「では我々の予定に変更はない……ああ、いや、定期検診にはセインも加えてくれ。時間のある内に前倒ししておこう」
「調整します。助手はいつも通りでよろしいですか?」
手伝うのはクアットロ、あるいはウーノかチンクになる。
「ああ。それからもう一人だ」
「もう一人……ですか?」
ウーノはスカリエッティの言葉を繰り返すと、振り返って視線を背後に向ける。
「……お手伝い」
スカリエッティの予備の白衣を拝借し、裾をずるずると引きずりながらついてきているのはルーテシアであった。
「ドクターの……お手伝い」
「ふむ。なかなか将来有望な助手だよ。そうは思わないかい? ウーノ」
「そうですわね」
ウーノは思わず微笑んでいた。
ぶかぶかの白衣を被るようにして、真剣な顔で歩いているルーテシアの姿はとても愛らしい。
「きっと、いい助手になりますわ」
「ふふ、どうだい? ルーテシア。君はついに、私の最高の片腕にお墨付きを得たようだよ」
「……頑張る」
「それは心強いね」
「……ドクター?」
「なんだい? ルーテシア」
「……手は、二つあるの」
「ああ、それがどう……」
どうしたんだい、と言いかけて、スカリエッティは笑う。
「そうか。ウーノが片腕なら、君は残った片腕というわけかい?」
頷くルーテシア。
「その意気や良し、だよ。まったく、君には驚かされるよ」
そして、その姿を見ている眼鏡、もとい視線が二組。
「何をやっているのかしら、あのお嬢ちゃんは」
三人のいる通路には、非常用の監視カメラが設置されている。
管制室でそのモニターを眺めているのはクアットロ。そして彼女に従うようにディエチが。
いつものように上から目線の口調だが、ディエチには微妙なニュアンスがわかる。
今のクアットロは、苛ついているのだ。
「あんな所で遊んでいるなんて、ドクターのお邪魔じゃないのかしら。困ったモノだわ」
「ルーテシアお嬢さまは、ドクターを手伝っているんだよ」
「お手伝い?」
「うん。ウーノ姉さまがそう言ってた」
ウーノ、ドゥーエ、トーレ。この三人姉さまの名前を出せばクアットロは静かになる。なんだかんだ言っても、クアットロも姉に真っ向逆らったりはしない。
あとは、場合によってはチンクの名前も有効だろう。
ディエチの発見した、クアットロ操縦法だった。
「お嬢さまが手伝うくらいなら、私が手伝った方が効率良いわよねぇ? ディエチちゃん」
「クアットロは、忙しいから。ドクターも気を遣っているんだよ」
「ドクターが? この私に」
「うん。ドクターはクアットロのこと、ちゃんと見てるから」
「それなら……別に……その……いいんですけれど……」
あまりにも希少な、この場にノーヴェやウェンディ、セインがいれば卒倒しそうなクアットロの反応。これを知っているのは三人姉さまとチンク、そしてディエチだけ。
さらに、間近で見られるのはディエチだけ。なかなかにレアなのだ、デレたクアットロ、略してデレットロは。
「だから、私たちはこっちの作業を続けよう」
「そうねぇ。ディエチちゃんもたまには良いこと言うわ、ドクターの期待に応えるべきよねぇ」
いそいそと、モニターから離れるクアットロ。
ディエチはそれに従うように歩を進めようとして、一旦足を止め、モニターに目を向ける。
そこには、いつの間にかルーテシアを真ん中に挟んで歩いているドクターとウーノが。
ルーテシアは、両手をそれぞれ繋いで歩いている。
「まるで……」
言いかけて、ディエチは口を噤む。
ナンバーズである限り、きっとそれは許されないだろうから。
だから、ウーノにとってもそれは夢。
ドクターにとっても。
勿論、ルーテシアにとっても。
けれど……夢を見ることは出来る。それがわずか一瞬でも。
「ディエチちゃん、行くわよ」
「うん。今行くよ」
ディエチはクアットロへと歩く。もう、足は止めない。
クアットロとは違った意味でディエチは、ウーノを少しだけ羨ましく思っていた。
著者:野狗 ◆NOC.S1z/i2
126 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2011/01/03(月) 00:32:18 ID:JyayV.OM [3/5]
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つかつかと、ラボから培養庫へと続く廊下を歩くスカリエッティ。
「ウーノ、ガジェット製造ライン3から6までの起動準備を。それから、第二次製造分ガジェットの最終チェックは予定通り明朝0700より開始する」
「最終チェック準備はできています。それから、明日はノーヴェ、ウェンディ、ディエチの定期検診の予定ですが」
「スポンサーからは何か?」
「表向きは何も。加えてドゥーエからの連絡もありません」
「では我々の予定に変更はない……ああ、いや、定期検診にはセインも加えてくれ。時間のある内に前倒ししておこう」
「調整します。助手はいつも通りでよろしいですか?」
手伝うのはクアットロ、あるいはウーノかチンクになる。
「ああ。それからもう一人だ」
「もう一人……ですか?」
ウーノはスカリエッティの言葉を繰り返すと、振り返って視線を背後に向ける。
「……お手伝い」
スカリエッティの予備の白衣を拝借し、裾をずるずると引きずりながらついてきているのはルーテシアであった。
「ドクターの……お手伝い」
「ふむ。なかなか将来有望な助手だよ。そうは思わないかい? ウーノ」
「そうですわね」
ウーノは思わず微笑んでいた。
ぶかぶかの白衣を被るようにして、真剣な顔で歩いているルーテシアの姿はとても愛らしい。
「きっと、いい助手になりますわ」
「ふふ、どうだい? ルーテシア。君はついに、私の最高の片腕にお墨付きを得たようだよ」
「……頑張る」
「それは心強いね」
「……ドクター?」
「なんだい? ルーテシア」
「……手は、二つあるの」
「ああ、それがどう……」
どうしたんだい、と言いかけて、スカリエッティは笑う。
「そうか。ウーノが片腕なら、君は残った片腕というわけかい?」
頷くルーテシア。
「その意気や良し、だよ。まったく、君には驚かされるよ」
そして、その姿を見ている眼鏡、もとい視線が二組。
「何をやっているのかしら、あのお嬢ちゃんは」
三人のいる通路には、非常用の監視カメラが設置されている。
管制室でそのモニターを眺めているのはクアットロ。そして彼女に従うようにディエチが。
いつものように上から目線の口調だが、ディエチには微妙なニュアンスがわかる。
今のクアットロは、苛ついているのだ。
「あんな所で遊んでいるなんて、ドクターのお邪魔じゃないのかしら。困ったモノだわ」
「ルーテシアお嬢さまは、ドクターを手伝っているんだよ」
「お手伝い?」
「うん。ウーノ姉さまがそう言ってた」
ウーノ、ドゥーエ、トーレ。この三人姉さまの名前を出せばクアットロは静かになる。なんだかんだ言っても、クアットロも姉に真っ向逆らったりはしない。
あとは、場合によってはチンクの名前も有効だろう。
ディエチの発見した、クアットロ操縦法だった。
「お嬢さまが手伝うくらいなら、私が手伝った方が効率良いわよねぇ? ディエチちゃん」
「クアットロは、忙しいから。ドクターも気を遣っているんだよ」
「ドクターが? この私に」
「うん。ドクターはクアットロのこと、ちゃんと見てるから」
「それなら……別に……その……いいんですけれど……」
あまりにも希少な、この場にノーヴェやウェンディ、セインがいれば卒倒しそうなクアットロの反応。これを知っているのは三人姉さまとチンク、そしてディエチだけ。
さらに、間近で見られるのはディエチだけ。なかなかにレアなのだ、デレたクアットロ、略してデレットロは。
「だから、私たちはこっちの作業を続けよう」
「そうねぇ。ディエチちゃんもたまには良いこと言うわ、ドクターの期待に応えるべきよねぇ」
いそいそと、モニターから離れるクアットロ。
ディエチはそれに従うように歩を進めようとして、一旦足を止め、モニターに目を向ける。
そこには、いつの間にかルーテシアを真ん中に挟んで歩いているドクターとウーノが。
ルーテシアは、両手をそれぞれ繋いで歩いている。
「まるで……」
言いかけて、ディエチは口を噤む。
ナンバーズである限り、きっとそれは許されないだろうから。
だから、ウーノにとってもそれは夢。
ドクターにとっても。
勿論、ルーテシアにとっても。
けれど……夢を見ることは出来る。それがわずか一瞬でも。
「ディエチちゃん、行くわよ」
「うん。今行くよ」
ディエチはクアットロへと歩く。もう、足は止めない。
クアットロとは違った意味でディエチは、ウーノを少しだけ羨ましく思っていた。
著者:野狗 ◆NOC.S1z/i2
- カテゴリ:
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