717 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:13:49 ID:Yfcdc46o
718 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:14:21 ID:Yfcdc46o
720 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:15:01 ID:Yfcdc46o
721 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:16:10 ID:Yfcdc46o
722 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:17:26 ID:Yfcdc46o
723 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:18:02 ID:Yfcdc46o
724 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:18:40 ID:Yfcdc46o
725 名前:烈火の将のメイド日和 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 00:19:20 ID:Yfcdc46o

烈火の将のメイド日和


 冬もじき終わる、そんな時節だった。
 これが最後の勢いと、粉雪を孕んだ大気が寒風となってビルの谷間を駆け抜ける。
 そんな中を、人々は皆足早に家路に着く。
 男、ヴァイス・グランセニックもまたそんな一人だった。
 我が家たるマンションの一室にたどり着くや、彼はそそくさとドアを開こうとした。
 そしてドアノブを握った瞬間、気づく。
 今朝家を出た時はしっかりと掛けた筈の鍵が開いている事に。
 空き巣、という可能性は即座に消えた。
 通路側に面したキッチンの窓から明かりが漏れ、なんとも美味しそうな料理の匂いが漂うのを感じる。
 誰かが料理をしている証拠だ。
 ヴァイスの家の鍵を持つ人間は、彼を除いて二人。
 事前に連絡を聞かなかった事を考慮し、彼は即座に相手が誰かを憶測した。


「ただいまー。ラグナ、来てたのか?」


 妹の名を呼びながら、彼はドアを開けた。
 だがしかし、彼の予想は一瞬で裏切られる事になる。


「おかえりなさいませごしゅじんさま」


 と。
 かなり棒読み気味なそんな台詞と共に頭を垂れた女性が帰宅した彼を出迎えた。
 黒を貴重とした派手さのない服装、清楚さをかもし出すロングスカート。
 豊満でめりはりのある身体を包むフリル付きのエプロンに同じくフリルのカチューシャを装着したポニーテールの頭。
 顔はどこか恥ずかしそうに紅潮し、はにかんだ笑み。
 どこに出しても恥ずかしくないメイドが、そこにはいた。
 そんな女性の姿に、ヴァイスは愕然としつつ、問う。


「な、なにやってんすか……シグナム姐さん?」


 妹以外にもう一人、自分の部屋の合鍵を持つ者。
 数年来の上司にして、プライベートでは恋人でもある女性、シグナムに。





 メイド姿のシグナムは、格好だけでなくその所作や家事の腕も中々に見事だった。
 一人暮らしの男らしくやや不精気味なヴァイスは、無論自宅も散らかっている。
 だがそれが、シグナムの手によって綺麗に整頓され、今では塵ひとつない。
 そして普段は手軽なインスタント食品で済ませる事の多い食卓も、栄養バランスの取れた立派なメニューが作られ。
 さらには食後のコーヒーまで完璧に淹れられるという様だ。
 普段の生活様式ではまず味わう事のないその充足に、ブラックコーヒーの苦味を味わいながらヴァイスは思う。


「いや、すいませんね姐さん」

「気にするな、これも約束だ。ご主人様」

「ちょ、その呼び方はどうにかなんないんすか?」

「こうした方が気分が出るだろう?」


 食事の後片付けをしながら、どこか悪戯っぽく、同時に少し恥ずかしそうな表情でシグナムは言った。
 言いながらもてきぱきと食器を台所に運び、てきぱきと後片付けを進める姿はもはや熟練の家政婦さながら。
 剣だけでなく家事の腕前もそれ相応にあるという、彼女の意外な事実にヴァイスは胸のうちに感嘆を覚えた。
 そして、また同時に思う。


「しかしまあ、姐さんも律儀っすねぇ」

「気にするな、それが性分だ。どんな些細な事とて、約束を違える事はできん」


 約束。
 それこそが、今こうして烈火の将を家政婦たらしめている理由であった。





 事の始まりは先週の日曜日の事だ。
 職場では上司と部下である二人も、私生活では愛し合う恋人同士。
 ならば出来る限りの時間は共有するのが自然である。
 一人暮らしであるヴァイスの家にシグナムが足を運ぶのも珍しい事ではない。
 そして、きっかけは食事中に見ていたTVだった。
 とあるスポーツ中継、二つのチームの試合。
 一方は毎年優勝を狙える強豪チーム、もう一方は毎年最下位争いに甘んじる弱小チーム。
 奇しくも前者はシグナムが好きなチームで、後者はヴァイスが好きなチームだった。
 応援するチーム同士の対決に、その勝敗を二人は予想した。
 もちろんだが、両者の意見は真っ向反対。
 シグナムは強豪チームが勝つと信じて疑わないし、ヴァイスは弱小チームが勝つことを切に望む。
 こちらが勝つに決まっている、いいや今日こそはこちらが勝つ。
 まったくくだらない言い合いだった。
 そんな時、彼女は戯れにこんな事を言った。
 “もしそちらが勝てば何でも好きな事を聞いてやる”と。
 食後に飲んだアルコールのせいもあってか、物静かなシグナムにしては剛毅かつ大胆な物言い、バトルマニアの気性。
 同じくアルコールをたっぷり煽っていたヴァイスがこれに応じぬ道理はなく。
 望むところだ、と彼は受けてたった。
 そして、勝敗は意外な結末を迎えた。
 降水確率十%以下だというのに突然降り始めた豪雨、大量の雨によりぬかるむグラウンド、ぬかるみに足を取られて負傷してしまった強豪チームのエース。
 まるで神の気まぐれか、はたまた悪い冗談か、それとも奇跡か。
 幸運の継ぐ幸運によって弱小チームは順当な予想を大きく覆して大勝利を収めた。
 試合終了後の勝利者インタビューを見ながら、シグナムもヴァイスもあまりの事に呆然とテレビ画面を見つめていた。


「……で、どうするんだ?」


 とは烈火の将の言葉。
 何を、何故、と投げかけられたヴァイスは一瞬思案し、そして察する。
 試合開始前に交わした約定に他ならない。
 だが、どうする、と言われても困る。
 元よりヴァイス自身もまさか本当に勝ってしまうなんて想像していなかった。
 それに今更恋人に何か特別にお願いしたい事なんて、正直に言ってあまりない。
 既に口付けはおろか、もっと深い愛の契りも交わしている。
 一瞬、結婚、という言葉が脳裏を過ぎったが、それはいつかもっとちゃんとした場面で言おうと胸にしまいこむ。
 明らかに迷い顔のヴァイスに、シグナムはきりっとした眼光で、さっさと言え、と告げていた。
 ああもう、何でも良いか、っていうかメンドクセー。
 そう判断したヴァイスは、とりあえず視界の隅で見ていたテレビ画面のCMに登場した衣装を見て即決。
 

「じゃあメイドさんで」


 と、言った。





 そして現在に至る、という訳だ。
 飲み終えたコーヒーカップをソーサーの上に置きながら、食器洗いに専念するメイド姿のベルカ騎士へとヴァイスは口を開く。
 

「ところで、その服どうしたんすか?」


 彼の問いに、シグナムはポニーテールの髪をふわりと揺らして顔だけ振り返る。
 口元に微笑を浮かべた彼女がするそんな仕草は、それだけで無性に男心をくすぐる破壊力。
 だが彼女自身はそんな事など露ほども知らず、濡れた手でエプロンの裾を持ち上げた。


「ん? これか? これは一応、騎士甲冑だ」

「騎士甲冑、なんすか?」

「ああ、本で調べてこういう風にデザインを変えただんだ。さすがに……実物を買うのは気が引けてな」


 その言葉に、シグナムがコスプレ衣装の店に足を運んでメイド服を所望する様が一瞬夢想する。
 なんだか妙に笑えて、ヴァイスは口元に手を当てて笑い声を押し殺した。
 そんな彼に、食器洗いを再開したシグナムが後ろを向きながら声を掛けた。


「あ、もしかして……やはり似合っていなかったか?」


 と。
 自分の服装と、メイドの真似事をする様に対する問い。
 不安と期待の入り混じった言葉。
 ヴァイスは即答する。


「そんな事ないっすよ。凄く似合ってます」


 嘘偽りない信実だった。
 鋭い美貌を持つ生粋のベルカ騎士たるシグナムと、ひらひらのフリル付きエプロンを纏ったメイド。
 主人に仕えるという点以外、どう考えても似合わない組み合わせに思える。
 だが実際はどうだろうか。
 清楚で落ち着きのある立ち振る舞い、行き届いた家事の腕前。
 普段の凛々しく勇ましい姿が嘘のように、今の彼女はなんとも実に正しくメイドだった。
 ヴァイスの言葉に、シグナムは幾分か嬉しそうな恥ずかしそうな色を孕んだ声音で答える。
 

「そうか? なら、良かったのだが……」


 よく見れば耳たぶがほんのりと上気して赤くなっている。
 彼に褒めてもらえたのがよっぽど嬉しいらしい。
 凛とした大人の女の雰囲気を漂わせる彼女が見せる、うぶな反応は普段とのギャップもあってとても愛くるしい。
 瞬間、ヴァイスは強烈にシグナムが欲しくなった。
 思い返せばこの一週間、ろくに二人の時間は取れずキスもしていない。
 そう思うや、自然と足は彼女の元へと進み、後ろから抱き寄せるように腕を腰に絡ませる。


「ちょ、ヴァイス?」


 突然の事に驚き、シグナムは思わずびくりと身を震わせた。
 だが、ヴァイスは構わずその豊麗な肢体に指を這わせる。
 くびれたウエストを撫で、その上でエプロンを押し上げて山を作っている乳房をなぞり、白く艶やかな首筋に達し、顎先に添え。
 そして後ろに立つ自分へと顔を向かせ、強引に唇を奪った。


「んッ……」


 突然の口付けにシグナムは身体を強張らせるが、それも一瞬。
 彼女は従順に愛する男のキスを受け入れ、舌を絡ませる。
 重なった唇の合間からは舌と舌が絡み合う淫らな水音が響き、空気は甘く爛れていく。
 しばし、二人は時を忘れて互いの唇に溺れるように没頭した。
 そして口付けの時間は、終わりは始まりと同じく唐突だった。
 透明な唾液の橋をかけながら、そっとヴァイスが顔を離す。
 甘い口付けが恋しいのか、シグナムは軽く舌を出して物欲しそうな顔をした。
 だが、そんな彼女の耳元で囁くヴァイスの声。


「じゃあ、続きはベッドで、な?」


 彼の言葉に、シグナムは言葉ではなく小さく頷いて返した。





「さて、それじゃあどうしようか……」


 ベッドに腰掛けて、ヴァイスは言葉を連ねながら目を細める。
 瞳に宿るのは冷気さえ感じるような獰猛な光。
 情事の時に見せる彼の一面、普段の飄々とした顔が嘘のような黒く冷たく情欲に燃える雄の様。
 シグナムは、自分に向けられるその眼差しに下腹部が熱を帯びるのを感じた。
 そんな彼女の爛れた期待に答えるように、ヴァイスは口元を吊り上げて笑みを作り、言う。


「じゃあ、メイドらしく奉仕でもしてもらおうかな」


 言葉と共に、彼は大きく両脚を開いた。
 その所作と言葉が告げる意、シグナムに求める性的な愛撫。
 彼女は頬をうっすらと赤く染めながらもこくりと小さく頷き、ヴァイスの脚の間に跪いた。
 そしてゆっくりと、だが淀みなく手を彼の股ぐらに伸ばすとファスナーを下ろしていく。
 既に張り詰めていた男の怒張は解放されるや、雄雄しく天を突いて屹立した。
 見慣れたものだとは言え、シグナムは思わずごくりと唾を飲む。
 漂う蒸れた性臭、エラの張ったカリ首、浮き上がり脈動する血管、太く硬い幹。
 正しく凶器と称して有り余る肉棒のその威容に目を奪われる。
 そして彼女は、これが見た目以上に凶悪であるという事も十全に知っていた。
 一体幾度、この凶器で突かれ、抉られ、掻き乱されて、快楽の果てに追いやられたのだろうか。
 そんな詮無き事を思いながらシグナムは硬くなった肉棒へと奉仕を始めた。
 強すぎず弱すぎない、絶妙な力加減で握り、軽く上下に扱きあげながら亀頭に舌を這わせる。
 先端の鈴口に、カリ首に、裏筋に、今まで覚えこんだ彼の性感帯の隅々を舌先で舐めあげていく。
 メイド衣装の一部である手袋が幹を擦る音と、シグナムの舌が剛直を味わう水音。
 荒い息遣いも交えたそれらが、静かな部屋に淫猥な響きとなって奏でられた。
 

(ん……もうすぐ、出るのか)


 奉仕を続けながら、シグナムはヴァイスがもうじき達するのを感じ取った。
 剛直の張り詰め具合、幹の震え、舌先に広がる我慢汁の味の変化、彼女はそれらの変化から彼の絶頂のタイミングを完璧に熟知しているのだ。
 限界が近い事を察したシグナムは幹を扱く手と亀頭を吸い上げる。
 瞬間、ヴァイスの口から呻きに近い声が漏れ、同時に彼女の口の中で熱い精が弾けた。
 口の中に広がる塩見を帯びた苦味、独特の臭気。
 だがシグナムはそれらを少しも嫌がらず飲み干す。
 

「んぅ……ぷはぁ」


 口を離せば、肉棒との間に唾液と精液の交じり合ったカクテルが橋をかける。
 味わった精の余韻に陶然としながら、シグナムは眼前の剛直がまだその硬さを微塵も失っていない事に気づいた。
 一度くらいの射精では満足しないその強欲とも呼べる威容。
 下腹部の子宮が一段と熱を帯び、疼く。
 この熱を、口でなく“ここ”に注いで欲しいという浅ましい欲求が、彼女を騎士でなく女へと変えていた。
 頬は上気して赤く染まり、瞳はとろんと蕩けていく。
 そして、そんな彼女に、酷薄な微笑を浮かべたヴァイスの声。


「ふぅ、気持ちよかったですよ、姐さん。それじゃあ、今度はこっちの番っすね」


 言うや、彼の瞳はギラついた輝きを見せる。
 雄の眼。
 雌を喰らう情欲に燃える、男の眼差し。
 そして続くのは、いつもと違うどこか冷たい口調の言の葉。


「まず立って、それからスカートをたくし上げてもらおうか」


 静かだが高圧的、最初から反論を許さぬ残響。
 それは年下の部下ではなく、一人の男が自分の女へと命じる意思。
 逆らう事などできない、しようとすら思わない。
 シグナムは無言にて、ただ彼の言う通りにする事で答える。
 静かに立ち上がり、丈の長いスカートの裾をたくし上げる。
 そうして現れた景観に、ヴァイスの口から、ほう、と感嘆の声。
 ロングスカートの下に隠されていたシグナムの肢体は、それほどに色めいていた。
 引き締まった下腹部、肉付きの良い腰から尻へのライン、そこからすらりと伸びるむっつりとした太股。
 それだけでも男を滾らせて止まない女体の美観だというのに、さらにそれを彩る装束もまた淫猥だった。
 両脚を包む黒いストッキングに、それを腰から吊るすガーターベルト、それらに色を合わせた黒のレース地のショーツ。
 彼女の肢体は既に見慣れているヴァイスだが、それでも今目の前に晒されたその様に、一段と劣情が燃え上がるのを感じずにはいられない。
 そして、彼は言った。
 嗜虐なる愛欲のままに。
 

「こりゃまた、エロい格好だ。しかも……中身も劣らずいやらしいときてやがる」


 言葉と共に伸びる手。
 ヴァイスの指はゆるりと動き、シグナムの股ぐらに触れた。


「……んぅぅッ」


 そして静かな部屋に、ぬちょり、と響く小さな水音、上ずった女の喘ぎ。
 ストッキングにまで垂れる湿り気が、何とも言えぬ発情した雌の良い香りを漂わせる。
 濡れるシグナムの女を、ヴァイスは責めた。


「俺のをしゃぶって興奮してたのか。なんとも、酷い淫乱メイドだな」

「やぁ……ちが、ひゃぁッ!」

「違わないだろう? 後から後から、どんどん溢れてくるぞ?」



 彼女が発しようとした否定の言葉を、甘い快楽が中断させた。
 下着を浅くずり下ろし、彼の指がより深く、より激しく膣肉を掻き分ける。
 指を締め付ける感触が面白いのか、責められるシグナムが愛しいのか、言葉も愛撫も加速を止める事はない。
 蜜壷を抉り、陰核を転がし、秘裂をなぞり、恥じらい喘ぐ様をたっぷりと言葉で苛めてやる。
 淫らでいやしい、恥知らずな淫乱、そんなに入れて欲しいのか、達したいのか。
 既にいつもの部下としての、年下の後輩としての仮面は脱ぎ捨てて、彼女を愛し支配する一人の男としての顔で。
 ヴァイスは入念に愛撫を成す。
 いつもならもう我慢できずに押し倒し、獣のように貪っているのだが、今日は我慢する。


「さて、こんなもんかな」


 言葉と共に彼は指を秘所から引き抜いた。
 指と秘裂の間に透明な蜜の糸が引き、シグナムの顔が責められている時よりも苦しげになった。
 ヴァイスはタイミングを合わせ、彼女が達する寸前で愛撫を止めたのだ。
 自分を焦らして苛める気なのだと、シグナムはすぐに察する。
 そして背筋がぞくぞくするのを止められなかった。
 普段は凛々しく気高いベルカ騎士である彼女だが、男との情交においては被虐的な性癖が垣間見える。
 身も心も激しく責め立てられるほどに乱れ、深く快楽の中に沈んでいくのだ。
 もっと苛めて欲しい、もっと責めて欲しい。
 決して守護騎士の仲間や主、部下や同僚には見せられない、知られてはいけない、彼女の淫猥な恥部。
 それを知る唯一の男は、知っているが故に、期待に応えた。


「物欲しそうな顔してるな。それじゃ、そろそろ本番と行こうか」


 ヴァイスの発した言葉に、その意に、シグナムは瞳をさらに蕩かせて、ごくりと唾を飲んだ。
 本番。
 これから犯される、犯してもらえる、貫かれる、注がれる、蕩かされる。
 昂ぶる期待に下腹部が熱くなり、子宮が疼き、秘所から伝う蜜が量を増した。
 だが、ヴァイスが次に発した言葉は意外なものだった。


「メイドらしく、自分から跨って、俺を満足させろ」


 と。
 彼が欲したのは、騎乗位、自分が上になっての行為だった。
 二人が床の上で身を重ねる時、その主導権は大概ヴァイスにある。
 故に自然と彼がシグナムを責める形になり、騎乗位などの体位で交わる事は少なかった。
 今日はこの服装、メイドという雰囲気を重視するという事だろうか。
 シチュエーションはさておき、普段する事のない形での結合に彼女の胸中には期待と不安がない交ぜになる。
 だが、彼女に拒否する権利などないし、する気もなかった。
 言われるままに、請われるままに、シグナムは彼の言に従う。
 既にびしょ濡れになったショーツを脱ぎ、スカートの裾を腰のところで押さえて尻を彼に腰の上に下ろしていく。
 背後がちゃんと視界に入らないので挿入できるか心配だったが、ヴァイスが尻肉を鷲掴みして軌道修正。
 果汁で濡れそぼる秘裂に小さな水音を立てて亀頭が押し当てられ、互いの熱が伝わりあう。
 位置が正しい事を悟り、シグナムはそのままゆっくりと腰を下ろしていった。


「んぅ……はぁぁ」


 鼻にかかった甘い声を漏らし、メイド姿の美女騎士は喘ぐ。
 待ちに待った結合、愛する男のいきり立った肉棒に貫かれ、痺れるような快感が身を焼いた。
 体重を掛けて根元まで剛直を飲み込み、亀頭の先端で子宮口を叩かれた瞬間、シグナムは背筋に電撃が走るのを感じた。
 

「はぁあッ!」


 背を弓なりに反らせ、全身をしならせ、震わせ、一際甲高い嬌声がこぼれる。
 昂ぶりきったシグナムの身体は、たった一突きで達してしまったのだ。
 膣肉はまるで、美味しい美味しい、と言うように肉棒を締め付けて愛液が一層と溢れる。
 結合部から滴る蜜、自分の剛直を食む媚肉、喘ぐ雌に、ヴァイスは快楽に酔い痴れながら嗜虐の炎を加熱させていった。


「はは、もうイったのか? ったく、本当にとんでもない淫乱メイドだ」

「そ、そんなこと……ひぅ!!」


 否定の言葉を遮る快楽、後ろから伸びた手に服の上から乳房を強く揉みしだかれた。
 豊満な乳房を力強く揉み、先端の肉豆を指先でこりこりと弄りながら、ヴァイスは彼女の耳元に顔を寄せ、囁く。


「良いから早く動いて俺を満足させろ――い・ん・ら・ん・め・い・ど」


 一言一言を区切って、シグナムの被虐心をたっぷりと嬲る低い声。
 彼の言葉責めに、淫蕩な雌騎士はぞくぞくと肌が粟立つのを感じる。
 肉も魂も、その全てを彼に貪られる悦び、マゾヒズムの充足が愉悦を呼ぶ。
 淫靡で背徳的な悦びのままに頷き、シグナムはヴァイスの言葉に従った。
 快楽の余韻に震える脚に力を込め、腰を振る。


「ひぁッ……あああ!!」


 雌がその身を上下すれば、自然と彼女を貫く雄が媚肉を容赦なくそのエラの張ったカリ首で抉り、掻き乱す。
 先ほど達したばかりで敏感な身体を容赦なき快楽の電撃が駆け抜けて、甘く蕩かせていく。
 もはや理性など意味を成さず、シグナムはただ欲するがままに動いた。
 上下に左右に、膣肉を抉る肉棒を求め、強く激しく腰を振りたくる。
 たくし上げたスカートの裾を強く握り、髪を振り乱し、雌は乱れた。


「ふぅんッ……ひゃぁあんっ! ああぁ……ああああ!!」


 鼻に掛かった甘い声で鳴き、喘ぎ、悶え、シグナムは一気に腰の動きを速め、彼を求めた。
 思考は既に桃色に染まり、快楽に溺れきっている。
 早く行きたい、たどり着きたい。
 たっぷりと体重を掛けて剛直を味わうほどに、悦楽の頂が近づいているのを察して、シグナムはさながら発情した雌のように必死に屈伸を繰り返す。
 あと少し、ほんのあと数回突かれれば、イケる。
 身を焼く快楽のままに、烈火の将は身体を沈めようとして……できなかった。
 後ろのヴァイスが彼女の腰を掴み、動きを制したのだ。
 あと少しで達する事が出来たのに、それを止められたシグナムは髪を振り乱し、眼にいっぱいの涙を溜めて懇願する。


「や、やめて……後生だから……焦らさないでくれ」


 振り返り、眉尻を下げた力ない表情で哀願するが、ヴァイスは彼女のその様に口の端を吊り上げて微笑。
 凄まじく嗜虐的な黒い笑みを浮かべ、言った。


「違うだろう? 淫乱メイドは淫乱メイドらしく、ちゃんといやらしくご主人様にお願いしなきゃ」

「そんなぁ……」

「嫌なら今日はここでおしまいだ」


 彼のその言葉に、一切の嘘偽りはなかった。
 シグナムがだんまりを決め込めば、本気で終わらせる気だ。
 恋人同士、目を見ればそうだとすぐ分かった。
 ヴァイスは言わせたいのだ、自分が淫らに堕ち、彼の女であるという事を。
 もはや理性など肉欲の波に飲まれた雌騎士は、淫乱メイドは。
 次の瞬間、堰を切ったように彼の望むままに口を開いた。


「わかった……いう、いうからぁ! わたしはぁ、スケベで淫乱なマゾメイドですぅ! だから、いかせ、ひゃあああ!」


 言い切るより前に快楽の洪水が身をつんざく。
 シグナムの言葉を受けたヴァイスが手を離し、体重のままに腰が沈んだのだ。
 瞬間、シグナムは達した。
 凄まじい悦楽の電流が身を引き裂き、背筋を駆け巡っては脳髄に満ちていく。
 エプロンに包まれた乳房を、ぶるん、と音がしそうなくらい揺らし、背を折れんばかりに仰け反らせ、瑞々しい女体の隅々がしなる。
 蜜壷はその肉ヒダの一つ一つを蠢かせ、己を貫く雄をこれでもかと食み、咀嚼し、締め付ける。
 媚肉を貫くヴァイスもまた、その快楽に限界を迎える。
 押し殺しきれぬ呻くような声を漏らし、腰が浮くように震えた刹那、白濁の脈動が雌騎士の中へと解き放たれた。
 どくどくと溢れる粘着質な白い洪水、とても一度射精したとは思えぬ盛大な射精。
 身を内側から焼くような甘い灼熱に、シグナムは蕩けきった顔で恍惚と震えた。


「はぁ……せぇし、すごぉ……」





 激しく交わった後の心地良い気だるさのまま、二人は肌を寄せ合って一つのシーツに包まっていた。
 あの後も二人は何度も何度も互いを求め、存分に愛と肉欲を満たした。
 もはやシグナムのメイド服は精の白濁でたっぷりと汚れてしまい、今の彼女の身を包むのはガーターストッキングと髪につけたカチューシャだけ。
 メイド姿とはまた違った趣に、内に秘めたフェティシズムを刺激されたのか、ヴァイスは一段と燃えたようだ。
 ベッドの上で彼に身を預けながら、もし機会があればまたこんな風にするのも悪くないと、シグナムは思う。
 と、そんな時だった。
 今まで静寂に満たされていた部屋に、光と音が生まれる。
 発生源はベッドに正面に鎮座する一つの家電製品、テレビ。
 どうやらヴァイスがリモコンを操作してスイッチを入れたようだと察し、彼女は問うた。


「どうした?」

「いや、ちょっと明日の天気予報を……」


 言いながらヴァイスはせわしくなくチャンネルを変えて行き、そして指を止める。
 シグナムが何気なく視線をテレビに向けると、そこには天気予報やニュースではない番組が映っていた。
 それはスポーツ観戦の生中継で、奇しくもこの前賭けの対象にしたチームの試合だった。
 妙な縁を感じるその光景に、ふとシグナムの口元に微笑が宿る。
 そして彼女は、愛する男の顔を見上げ、告げた。
 
 
「なあヴァイス」

「なんすか?」

「いやな、どうせならまた賭けないか?」


 彼女の言葉に、ヴァイスは苦笑する。
 画面を見れば両チームの得た得点が表示されており、それは馬鹿馬鹿しいくらいにヴァイスの応援するチームの不利を明示していた。


「……今度は明らかにこっちが不利なんっすけど」

「一度勝ったんだから、譲っても良いだろう? それにまだ負けと決まったわけじゃない」


 静かな口調の中に有無を言わさぬ迫力を込め、囁くシグナム。
 どうやら負けず嫌いのバトルマニアの癖が出てしまったらしい。
 こうなった彼女に逆らう事もないと、ヴァイスは不承不承と頷いた。


「はいはい、分かりましたよ」

 
 と。
 そして二十分後、試合終了を告げる審判の声が上がり、見事なくらいにヴァイスは敗北を喫した。
 そんな彼に、シグナムは朗々と告げた。
 今度は自分の番だと。





「今帰ったよー」


 帰りを告げる声と共に、八神はやては玄関を開けて我が家へと帰り着いた。
 だが彼女の顔に浮かんだのは、仕事を終えて家に帰り着いた安堵ではなく、不可解そうな疑問の表情。
 なにせ彼女の目の前にいたのは、なんともありえない格好の人物だったのだから。


「お帰りなさいませお嬢様」
 

 と。
 そう告げて深々と頭を垂れたのは誰あろう、ヴァイス・グランセニックだった。
 そしてその台詞もさる事ながら、格好もまたおかしい。
 ワイシャツに蝶ネクタイ、そしてベスト。
 なんというか、一言で言えば執事的なものである。
 とうか、なんでヴァイスが自分の家でそんな事してるのだろうか。
 はやてはぽかんとしたまま、思うままに問うた。


「あ、あの、なんでヴァイス陸曹がうちでにおるん?」


 その疑問に答えたのは、ヴァイス本人ではなく、居間から訪れたシグナムだった。

 
「ああ、ヴァイスは今日一日うちで執事をやる事になりまして」

「なんでまたそないな事を……」


 ちらりとヴァイスに向けられるはやての視線。
 彼は少し困ったような、それでいて少し楽しそうに苦笑を浮かべ、言った。


「まあ……ちょっとした約束でして」



終幕。


著者:ザ・シガー

このページへのコメント

最高でした!
シグナム超可愛かったです!
このカップリング最高です。

0
Posted by スカル 2010年04月19日(月) 00:55:16 返信

最高でした!
シグナム超可愛かったです。このカップリング最高です!

0
Posted by スカル 2010年04月19日(月) 00:54:17 返信

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