182 名前:cross emotion01[sage] 投稿日:2009/02/09(月) 14:53:56 ID:EulhrzO/
183 名前:cross emotion02 [sage] 投稿日:2009/02/09(月) 15:50:27 ID:EulhrzO/
184 名前:cross emotion03[sage] 投稿日:2009/02/09(月) 16:01:12 ID:EulhrzO/

良くない。これは絶対に良くない。良いわけが無い。
フェイト・T・ハラオウンは一人頭を抱えて悩んでいた。

「まぁ、私も女だから、そういう気分になるコトもあるわよ…でもよりにもよって相手が…ハァ〜〜〜。」

周りから奇怪の眼差しで見られているのにも気付かない程に、フェイトは考え込んでいた。
はやてに相談すれば、間違いなくある事無い事騒ぎ立てられ、こっちの立場が悪くなるだろう。
いや、はやてだけじゃない。管理局の誰に相談したとしても、自分の立場が怪しくなるだけだ。

「とは言え、いつまでも悩んでいたら、あの子達に示しがつかないし…」

無限ループの思考を断ったのは、親友であった。

「大丈夫?フェイト隊長。」
「…」

苦虫を噛み潰したような表情(かお)でフェイトはなのはに顔を向けた。
…そう、彼女だ。彼女だけには絶対に知られたくない。否、知られてはならない。
万が一、彼女に知られようものなら、自分が築いてきた全てを崩壊させられかねない。
だが、藁にも縋りたい気分だったフェイトは、意を決した。

「なのは、この後少し時間を貰えない?ちょっと話をしたい事があって…」

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「二人。禁煙席でお願いね。」
「かしこまりました。ではご案内したします。」

業務終了後、フェイトはなのはを連れ、管理局近くにあるカフェへと向かった。

「へぇ、結構良い感じのお店だね。こんなのあったんだ。」
「ちょっとオフの日に散歩してたらたまたま、ね。管理局内でもあんまり知られてないみたいだから、一人で良く来るのよ。」

二人で他愛も無い話をしながら食事をし、デザートが運ばれてきたあたりでフェイトはふと表情に陰を落とした。

「でね、なのは。その…話の事なんだけど…」
「うん。フェイトちゃんの悩みだったら何でもきくよ。一人で悩むより、皆で考えるほうが良いもんね。」

なのははフェイトに、慈愛に満ちた眼差しを送った。その視線がより、フェイトを苦しませるとは思わずに。

「あ〜…いや、その、別に皆で考えなきゃならないような悩みじゃない…というか、一人で解決しなきゃならない事というか…」

気まずい。物凄く気まずい。なのはが真摯に向き合ってくるものだから、良心の呵責に押しつぶされそうになる。
だからと言って、ここで適当にお茶を濁して、なのはの親切をふいにするのも、正直なところ耐えられない。

「それでも、フェイトちゃんが一人で塞ぎ込んでいるところは見たくないな。キャロとエリオが見たら悲しむよ?」
「!」

なのはとしては何気ない発言のつもりだったのだろう。だが、フェイトとしては心中穏やかになれなかった。
何しろ、その悩みの原因となる人物の名前があったからだ。

「?…ひょっとして、キャロかエリオの事なの?二人は頑張ってるじゃない。あの二人、同い年だし仲も良いみたいだから、良いコンビになれると思うよ。」
「…よ」
「へ?」
「エリオの事なのよ。」
「エリオが…どうかしたの?」
「別にエリオが何かしたとか、そういう事じゃないのよ。」
「じゃぁ…どういう事…?」

さぁ、本題だ。覚悟を決めろ、フェイト・T・ハラオウン。もう逃げ道は無い。自分で臨んだ道だ。
そう何回も自分に言い聞かせる。だが、口の中が異常に渇く。タンブラーの中の水を飲む。それでも口の中が渇く。
今、自分が発する一言はパンドラの箱を開けてしまうかもしれない。管理局、いや、世間からの風当たりが強くなるだろう。
だが、自分の気持ちにウソをつけるのか?否、つけられない。つけたくない。

「エリオの事が…好きなのよ。」
「へ?」

さぁ、言った。とうとう言ってやった。どうだ、軽蔑したいか。
軽蔑したいならしてくれ。自分でも普通じゃないと思っているくらいだ。
半ば自暴自棄でフェイトは心の中でなのはに蔑みの言葉を求めた。
だが…

「うん、わたしも好きだよ、エリオの事。」

ガタンっ!!

一瞬、フェイトは盛大に姿勢を崩した。今、彼女は何と言ったか。
エリオの事が好きだと言ってなかったか。冗談じゃない。彼女にはユーノが居たはずじゃないか。
それなのにも関わらず、エリオが好きだと?それとも二人は別れたのか?いや、それはありえない。あの二人の絆を例えるなら、「断金の交」。
鋼すら断ち切れそうなほど、なのはとユーノは強い絆で結ばれている。ならば何故?
まさか…

そんなドス黒い感情がフェイトの中で渦巻いているのに気付いてないのか、なのははまだ笑顔を浮かべている。
怒りやら嫉妬が入り混じった感情が爆発しかけた、その時…

「エリオってホントに頑張り屋さんだよね。自分もがんばらなきゃ、って思えるもの。ティアとスバルもあの純粋な直向さを見習って欲しいんだよね。」

ガタタンっ!

完全に出鼻を挫かれた。まぁ、ある程度予想はしていた発言だが、いざ実際に言われると脱力してしまう。

「ま…まぁ確かに、エリオの直向さには色々と刺激を受ける所はあるわ。でも、上司として部下じゃないのよ。」

少し気の抜けた、でもどこか思い悩んでいるフェイトの声。
さすがのなのはも、ここで答えに気付いた。だが、あえてその答えを口にせず、違う答えを望んでいた。

「じゃ、家族…として?」

フェイト、首を微かに横に振る。
部下としてじゃない、かと言って家族でもない。となると、やはり…

「一人の…男の子…として?」
「その言い方に語弊があるから、ちょっと訂正するけど、一人の男としてエリオの事を見てるの。」

伏せられたなのはの表情は見ることができない。だが、その体はわずかに震えている。
動揺するのも無理は無いだろう。相手は10歳になったばかりの少年なのだから。
どんな言葉を投げかけられるのだろうか。フェイトはなのはの言葉を待った。


著者:AILD

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