「無題」初代スレ558

初出スレ:初代558

属性:保守用


「しのぶ。忍」
名を呼ばれたことに気づくと、彼は自分の主に近づいた。小さな小さな、お姫さま。彼にとって少女こそが唯一の存在。
「お嬢さま、どうしました?」
闇のベールが世界を覆っている。外はしとしとと涙していた。月は隠されている。仄かな青と淡いオレンジの光だけが、ふたりを照らしていた。
「しのぶ。眠れないの」
「またですか?」
少女は唇を尖らせて、仕方がないじゃない…とこぼす。そんな幼さの残る行為が愛しくて、彼は知らぬうちに微笑んだ。
少女の額をなでてやる。柔らかな髪が気持ちよい。
「眠れるまでここにいてあげますから」
「手ぇつないでくれる?」
「ええ」
差し出された小さな手を握る。柔らかな手。ほのかな暖かさ。雨の音。愛おしさが募る。
少女は安心したように目をつむった。
「おやすみ忍」
「おやすみなさい、お嬢さま」




そんなふたりによって保守。 
2007年01月30日(火) 03:46:01 Modified by ssmatome




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