年下従者×年上お嬢

初出スレ:二章603〜

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光に満ちた庭園の中央にある東屋。
その壁の影になる部分で一人の少女が、傍らの少年にびっと指を突きつけていた。
「あんたってホント駄目ね! どうしてそうやってすぐ泣くのよ」
その少女は、ひらひらとしたワンピースが良く似合う人形のように愛らしい少女だった。
指を突きつけられた少年は、少女よりも二つ、三つほど幼いような
細い首がいたいけな少年であった。
彼は、少女と変わらぬほど大きな瞳にうるうると涙をためている。

少年は一人屋敷を抜け出した少女を追いかけてきたのだが、途中で
転んでしまったらしく膝の所に泥がついていた。
必死にしゃくりあげながら少女へと訴えている。
「だ、だっておじょうさまが……い、いなくなっちゃうと思って……」
「もー、ほら。泣かないの」
栗色の頭をなでながら、少女は少年の涙を袖で拭いてやった。
すると泣いたカラスがもう笑う、とばかりに少年はにこにこと満面の笑みを向けている。
「ぼく、ずーーっとおじょうさまのそばにいますね!」
その言葉に少女もまた、嬉しそうに微笑んだ。

*******

あの庭園での思い出は今はどこにいったのか。
彼と共に過ごした光の日々はどこまでも遠かった。

女は、精一杯の憎しみをこめて男をにらみつけた。
あまりの怒りに一瞬意識が白く飛びそうになる。
女の家はかつての使用人である男によって崩壊し始めていた。

「あんただったのね……」
「申し訳ございません、お嬢様」
その言葉はあまりにも静かだった。
見つめ合う男女の間に緊迫した空気が流れていく。
すると、男がふと唇を歪めて苦笑した。

「こうするしかなかったのですよ、お嬢様」
そう言うと、男は女の傍へゆっくりと近づいてきた。
「な、何よ……何をするつもり!? きゃ…」
男は女の体を抱え上げると寝台に向かって歩いていった。
彼が何を考えているかを察して、女は顔色を変えた。そして力の限りに暴れる。
「ちょっと、離しなさい! いや、いや、嫌っ!」

だが、それでも男の腕を振りほどくことは叶わなかった。

男はどさりと女の体をベッドへと横たえると、その上にのしかかっていった。
そして微笑んだまま女の唇にそっと指を当てる。
その指は昔と変わらぬ優しさを持っていて女は泣きそうになる。

「お嬢様、僕だっていつまでも貴女の後を追いかけていた泣き虫のままでは
ありません。こうやって貴女を組み敷くことだってできる」
「…………」
何かを口にしたら泣いてしまいそうで、女はただ唇を引き結んだ。
その唇に男が熱く口付けてきた。舌が強引に割って入り込んでくる。

服が脱がされ、肌が夜気にさらされるのを感じる。
次いで彼の唇を感じ、指を感じ、そのまま女は快楽の海にたゆたいながら
遠い過去を回帰するのであった。

(続かない)
2007年01月31日(水) 22:22:29 Modified by ssmatome




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