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日常哲学としての物語


 物事の意味は、全体との関係において決まります。ところが、我々は、つねに人生の半ばにあって、自分の生涯が全体としてどのようなものであるかを知らず、また、歴史全体や世界全体についても知りません。それゆえ、我々は、日々、何をしているのか、何をすべきなのか、見失いがちです。

 この問題に対し、物語は、地図のように、ひとつの出来事の全体を整理して示してくれます。それはそのまま自分の人生ではありませんが、おおいに参考になるでしょう。

 とはいえ、物語は、ありきたりの人生やありきたりの出来事の縮小コピーであってはなりません。それについては、読者や観客もよく知っており、わざわざ物語として読んだり見たりするまでもないものです。そうではなく、それを大きな全体の中に位置づけるような物語、ありきたりの人生やありきたりの出来事が持っている意味を明らかにするような物語であってこそ、聞くに値するのです。

理由となるもの


 我々の日常そのものは、積極的な理由が欠けています。なぜ起きるのか、なぜ働くのか、なぜ生きるのか。実際は、なんとなく起き、なんとなく働き、なんとなく生きているだけでしょう。ずっと寝ていても退屈だから起き、何もしないのもつまらないから働き、死んでしまうのも面倒だから生きている。しかし、これらは消極的な理由にすぎず、起きて働いて生きてみたとしても、ムダに過ごしていることに代わりはありません。

 ところが、因果律を知り、あることを自分がするかしないかによって、歴史や世界が大きく変わりうることを思うとき、そのことは、大きな「意味」を持ってきます。つまり、因果律によって、物事は、その物事だけで完結せず、大きな物事の一部となるのです。そして、人間は、この大きな物事を前提に、それに因果律で連なる物事をしたり、しなかったりするのです。くわえて、このように大きな物事との因果律が前提となるとき、その因果律を大きく発揮させるやり方が、より良いとされ、ただやるのではなく、より良くやろうとします。

 このように理由となるべき物語は、日々次々と多くのものが提案され、展開され、改善されています。たとえば、勧善懲悪でも、昔は善人が悪人を皆殺しにする、などという乱暴な物語でしたが、近年は、さまざまな熟慮と淘汰の結果、もっと繊細なものが好まれるようになっています。そして、我々は、自分が行動するときにも、これらの物語を参考にして、自分の理由とするのです。

理念物語

 どんな物事を前提とするのか、それは、それぞれの人の自由です。しかしながら、自分一人でかってにでっちあげる、というわけにもいきません。社会の中において、人々はさまざまな係わりを持っており、少なくともその係わりに関しては、その前提となる物事、すなわち物語を共有しているのでなければ、うまく協働できないからです。

 社会で共通に信奉されている物語を「理念物語」ないし「イデオロギー」と言います。たとえば、キリスト教や資本主義、民主主義のようなものです。それらは、たんになにかを大切にする、というだけでありません。むしろ、ひとつの壮大な歴史的物語であり、我々はつねにその途中にいることになっています。そして、このことを理由として、我々には役割が与えられ、その物語の実現のために、その役割を果たす義務があることになっています。

 多くの理念物語は、しかし、限定的であり、他の理念物語と相互乗り入れすることが可能です。プロテスタンティズムにおいて、キリスト教と資本主義とが一体化した、という話は有名でしょう。けれども、両立不可能な理念物語もあります。資本主義と共産主義のようなものがそうです。この場合、社会的な協働ができないので、社会そのものが分断され、相互不理解のまま対立し抗争することになります。もとより社会と対立的なカルト的な新興宗教や政治信条のようなものも、珍しくはありません。

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