『シェーンベルクの旅路』

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『シェーンベルクの旅路』（春秋社）

目次

　プロローグ “長い冒険の旅”の前に　3

Ⅰ　伝統と現代独学精神の発露

1.果敢なる試行　9

　旅のはじまり／熱中の日々―アドラーとツェムリンスキー／最初の作曲の冒険／時代の波―ウィーン、1897年／なぜルター派か―プロテスタントへの改宗／初期歌曲

2.詩人への共感デーメル歌曲集　21

　出会い／デーメルの足跡／新しい響きの模索／デーメルの革新性／シェーンベルクのデーメル作品／愛と苦悩

3.標題音楽への志向 ≪浄められた夜≫　31

　技法を越えて／テキストと楽曲構成／舞台芸術への影響

4.技法の変革 ≪グレの歌≫　40

　作曲の経緯／ヤコブセンの詩／構成上のオリジナリティ／めくるめく大管弦楽と動機変容―第一部／合唱の饗宴―第二部以降／シュプレヒシュティンメの萌芽

5.ウィーンからベルリンへ交友の拡がりと二人のシュトラウス　57

　芸術キャバレーにて／マティルデとの結婚／キャバレー・ソング《夢遊病者》／リヒャルト・シュトラウスとの出会い

6.交響詩への道 ≪ペレアスとメリザンド≫　65

　オペラか、交響詩か／楽曲構成の概略／標題と指導動機／調性構造から

Ⅱ　音楽の造型思考

1.再出発、ウィーン　79

　「創造的音楽家協会」とマーラー／教壇に立つ／歌曲への志向

2.大規模室内楽の構想 ≪弦楽四重奏曲第一番≫　85

　標題的発想にまつわる謎／標題と形式構造／形式思考の転換／初演の時―聴衆の反応

3.あふれ出る楽想 ≪室内交響曲第一番≫　94

　単一楽章形式の深化―簡潔な様式への傾斜／楽想の彫琢―放射と濃縮／「四度」の堆積とポリフォニーの密度／楽器編成と音響設計

4.孤独の受容　106

　合唱曲《地上の平和》／運命の年―マーラーの場合／他者の顔―グルストルの存在

Ⅲ　無調・表現主義

1.ゲオルゲの詩と二つの作品　115

　告白―《弦楽四重奏第二番》／表現と形式の理想―歌曲集《架空庭園の書》／詩人の運命―シュテファン・ゲオルゲ／新しい表現活動へ

2.表現主義的ピアニズム ≪三つのピアノ曲≫　130

3.“雑色・雑多・非論理” ≪五つの管弦楽曲≫　135

　ブゾーニへのメッセージ／大胆なオスティナート用法―第一曲／抒情の旋律―第二曲／音色旋律の極致―第三曲／尖鋭なコントラストの妙―第四曲／無限旋律の饗宴―第五曲

4.音楽的表現主義の典型モノドラマ≪期待≫　148

　マリー・パッペンハイム／構成と台本の変更／新しいドラマツルギー／指導動機と音楽的象徴

5.色彩象徴の舞台音楽劇≪幸福な手≫　159

　孤独の分析―《期待》との比較／全四場の構成―実験的な象徴劇／カンデンスキーの《黄色い響き》／「舞台の諸手段で音楽する」―新しい総合芸術の試み／第三場の音楽構成

6.惜別と邂逅マーラーとカンディンスキー　172

　巨星墜つ／葬儀の印象―《六つのピアノ小品》／シェーンベルクとカンデンスキーの”共有”／祈りの象徴としての音楽―《心のしげみ》

7.主題としての死 ≪月に憑かれたピエロ≫　185

　女優ツェーメ／ベルギー象徴派アルベール・ジロー／選曲と曲順―シェーンベルクの変更／「月」のキーワード―第一部／「死」のキーワード―第二部／伝統的なもののパロディ化―第三部

Ⅳ　十二音技法への道

1.1912年、新たな地平へ「セラフィタ」計画　205

　指揮活動と試行錯誤のはじまり／バルザック『セラフィタ』とストリンドベルィ「ヤコブの格闘」／「セレフィタ」計画―現代人の信仰

2.室内楽的伴奏の万華鏡 ≪四つの管弦楽伴奏付き歌曲≫　213

　機能的な総譜の案出／リルケへの傾倒／和声語法の開拓

3.「大交響曲」構想未完の創造の地平　222

　デーメルのオラトリオ・テキスト／全体構想の足跡―作曲家の私的宗教的精神史／草案のなかのマーラーと十二音技法／魂の精神世界の体験を綴る／交響曲フィナーレ構想から《ヤコブの梯子》へ

4.ファウスト的なるものオラトリオ≪ヤコブの梯子≫　238

　作曲プロセスとテキスト／全体構想／マーラーの《千人の交響曲》とゲーテの『ファウスト』／「精神の巡礼」の証しとして／音楽的特徴／作曲ゼミナール開講と公開リハーサルの実験／「大交響的間奏曲」―十二音列の偏在／浮遊感の表出

5.モダニズム音楽の開花　259

　旧体制の崩壊／「私的演奏協会」とその影響／様式的転向の兆し／音列技法の実験―二つのピアノ曲集

6.「十二音技法」確立への道 ≪セレナード≫　268

　ある心情の吐露―作曲の経緯／音列主義の最終段階／「ペトラルカのソネット」／シンメトリックなアーチを閉じる

7.十二音技法の公開シェーンベルクとハウアー　278

　ヨーゼフ・マティアス・ハウアー／「連合性」への着眼―《管弦楽五重奏曲》と《七楽器のための組曲》／自由な作曲のアプローチ―《四つの混声合唱曲》／シェーンベルクの”逆襲”―《混声合唱のための三つの諷刺詩》

8.「十二音技法」探求の意味探求の意味　287

　《弦楽四重奏第三番》とルドルフ・コーリッシュ／技法の集大成―《管弦楽のための変奏曲》／皮袋論争／「シェーンベルクは死んだ」―ブーレーズの見解／新しい形式の美学―ローゼンの見解

9.反・時事オペラ ≪今日から明日へ≫　299

　音楽劇三部作の構想／現代を諷刺するドラマ／構成とストーリー／音列操作の熟達／台本と音楽的アイディア

10.ベルリン時代最後の作品群　311

Ⅴ　シェーンベルクのアイデンティティ

1.反ユダヤ主義事件　317

　マットゼー体験／バウハウス事件／宗教と政治思想のメッセージ／ユダヤ人としての思索の足跡／信仰と芸術

2.戯曲『聖書の道』　331

　現代劇としての視座―聖書との関係／舞台効果と登場人物／理念としての演説―第一幕のアルンス／「アフリカに新パレスチナを」／フロイトの解釈／宗教的・民族的ロマン主義／登場人物、さまざまな人間模様

3.≪モーゼとアロン≫　352

　『聖書の道』から『モーゼとアロン』へ―その段階的展開／ヨセフス文献から／聖書との比較／”指導者論”的解釈／音列技法への視座／モティーフの研究／音名象徴・音程象徴―モーゼのパート／十二音音列の分割法―マイケル・チェーリンの方法

4.反ユダヤ主義との闘い　386

　ユダヤ教回帰／シェーンベルクのユダヤ人問題解決案／四つの提案／提言の意味と背景―ラカーのシオニズム論

5.ユダヤ教徒としての所産 ≪コル・ニドレ≫　398

　テキストが意味するもの／調性様式への独自の回帰／ジェイコブ・ゾンダーリンク博士／”新しいユダヤ人”―ユダヤ教改革運動

6.≪ナポレオンへの頌歌≫　410

　アメリカ参戦を機に／バイロン詩への共感／音楽の構成と音列操作の自在性

7.≪ワルシャワの生き残り≫　417

　終戦へのメッセージとして―音楽と政治／アンガージュマンとしての芸術行為／「シュマー・イスラエル」の象徴

Ⅵ　あくなき創造の地平後期十二音技法の進展

1.新しいロマン主義二つの多楽章制十二音音楽　427

　カリフォルニアへ／《ヴァイオリン協奏曲》／《弦楽四重奏曲第四番》／《室内交響曲第二番》と《オルガン変奏曲》

2.後期ロマン主義的表現主義の権化 ≪ピアノ協奏曲≫　440

　小品が大曲に―委嘱の経緯／各楽章の標題が意味するもの／音列作法と旋律

3.異常な音楽力の総合 ≪弦楽三重奏曲≫　447

　死と音楽／楽曲構成の要点／音楽の推移／分析　タイムテーブル／ワルツ楽想／特殊な十二音技法―十八音音列と十二音音列

4.変幻する旋律 ≪ヴァイオリンのためのピアノ伴奏付き幻想曲≫　462

　旋律重視の記譜法／ヘクサコードの活用と構成／テトラコードの圏域／作曲技法の統合として

5.最後の作品群へ ≪千年が三度≫　472

　ルーネスの詩「神の帰還」／晩年の十二音技法／イスラエルへの眼差し

6.十二音技法の新境地 ≪詩篇第一三〇番「深き淵より」≫　479

　霊感の赴くままに／十二音技法の新境地／全体の音楽構成／十二音技法のなかの調性

7.祈りの調べ ≪現代詩篇≫　489

　探究はつづく／テキストの思索、祈りの内容／奇跡の音列

　エピローグ “旅路”は続く　496
　あとがき　502
　索引（人名・作品）／年譜／主要参考文献　巻末