392 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 19:34:27 ID:ZaB/eNYB
3.
 
「おほほほほ、愉快じゃのう。なんとまあ綺麗に燃えたことよ」
「それはもう寧姫様、私達、女中一同、丹念に仕込みましたので」
ほとんどの者が寝静まる夜中に二人の女のささやき声が、寧姫の寝室からこぼれている。
寧姫の声にまだ三〇になるかならずの妖艶な雰囲気をもった女中頭が答える。
「さて、次は何をして楽しませてくれるのじゃ?」
「そうですねぇ…今度は丹波屋に忍びこんであやつめが貯めこんだ財で
 この部屋を埋めて見せましょうか。」
「あはははは。丹波屋のおやじの顔が見物じゃな、それでは期待しておるぞよ」
「ははぁ」
深くお辞儀をし、退出する女中頭−朱路。女中とは仮の姿、彼女もお美代同様、姫様付きのくの一である。
本来なら雇い主である藩主の手前、いさめなければならぬものを、
盗んだ金はどうしてもよいという姫の言葉に眼がくらみ、姫の狂気の道楽に付き合っていた。


393 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 19:37:31 ID:ZaB/eNYB
退出すると、早速次の指令を伝えるため、部下の女中のもとへと急ぐ。
        ガサッガサッ
庭の茂みから何か音がする。曲者かと朱路は警戒する。
「私です」
そこから現れたのはつい、朱路が最近知り合った浪人の継輔と名乗る男だった。
明日をも知れぬ貧乏侍だったので、これは利用できると先日、朱路が身体と金で買った男だ。
男の甘い顔が気に入ったというのもある。
「ああ、丁度よい。」
静かに庭に出て、今度の計画の実行犯にさせるべく、彼の側へと近よろうとした瞬間、
急に首が絞まったかと思うと木を擦る摩擦音と共に宙に吊り下げられる。
「ハフゥゥゥゥファアッァァァ……」
手足をバタつかせ、悶え苦しむ。声がほとんど出せない為、目と手で助けを継輔に請うが、
何も動こうとしない、暗いために表情はわからぬが助けてくれるつもりはないようだ。
死にたくない。その思いがこの状況において少し冷静にしてくれる。
女中頭は懐に短刀を差し入れていることを思い出し、
あわてて取り出し、自分を吊り下げている糸を切ろうとする。
彼女は必死でわからなかったが、その動きをみて継輔は刀を抜いて歩み寄っていた。


394 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 19:38:50 ID:ZaB/eNYB
朱路の抵抗が功を奏し、やっと首を絞めていた糸が切れた。
継輔の構えていた刀がここぞとばかりに、
股間から彼女の落下に逆らうように下から上へと斬り上げる。
彼女の身体は着物と共に真っ二つに裂かれるはずであったが、さすがはくの一。
空中で身をひねることで朱路はなんとか避けた。
しかし着物は見事に斬られブルンッと熟れた豊満な肉体を晒した。
数歩後ろに下がりながら態勢を立て直す朱路。
月明かりに照らされた白く熟れつつもひきしまった裸体が美しい。
「あんた、ただの浪人じゃないね。何者だい」
継輔を睨みつけながら訊ねる。
「始末屋ですよ。表じゃ裁けぬ悪を始末するね。
 しかし、私も驚きました。あなたを抱いたとき、
 いやに鍛えられた身体だと思いましたが、忍とはね。」
どうやら、姫様の悪事は露見していたようだと朱路は舌打ちする。


395 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 19:41:10 ID:ZaB/eNYB
さて、逃げて助けを呼ぶか、このまま戦うか。なんせ継輔だけでなくあと一人いる。
はたして逃げられるものだろうか。
「もう一人には手を出させません、一対一で勝負をつけましょう」
朱路の逡巡を解したかのように継輔は彼女にむかっていう。
「闇討ちしようと考えていた奴のいうことか!」
そういいながらも、朱路の腹は決まった。継輔を倒し(いや牽制するだけでもいい)、
もう一人をふりきってそのまま逃げる。姫などもう知ったことではない。
十分稼がせてもらった。他藩に落ちのびて、悠々と暮らそう、と。
継輔に小刀を構え豊満な乳房を躍らせながら迫りよる朱路。
継輔の一太刀をかわしきり、その勢いのまま塀をとびこえ逃げる算段である。
だが彼女は見誤っていた。継輔の剣技の鋭さを。
        一閃!!
朱路は継輔の横をなんとかくぐり抜けられたと安堵し、そのまま走り抜けようとする。
しかし、足がどうにも前に進まない。怪訝に思いおのれの裸体に目をやる。
そこには肩から腰に斜めに走った一筋の赤い線。そして、その線がズズッとずれていく。
「ひぃっ」
数瞬遅れて斬られた一筋の線から血飛沫が噴き出し、
朱路の裸体を朱に染めながら身体の上半身が斜めに地面にむかって落ちていく。
「いやぁっ」朱路そのか細い叫びが最期の叫びとなった。
朱路の地面にぶつかると視認した数瞬後、視界が暗転し意識が永久に霧散する。


396 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 19:42:25 ID:ZaB/eNYB
「やれやれとんだ手間をかけさせてくれますね」
闇の中へとつぶやく継輔。その暗闇からがたいのいい男があらわれた。
「懐刀を持ってるなんて思わなくてよ……やっぱり普通の女中ってわけじゃなかったようだな。」
「詰めが甘いのが剛三の悪いところです。匙彦みたいに新米じゃないんですから……
 まあ過ぎたことはいいですけど。さて残るは姫様だけですね……」継輔が答える。
「大丈夫、銀次が上手くやってくれるだろうさ」


401 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:17:29 ID:ZaB/eNYB
2. 2/2

「一緒に逃げよう」
おせんは匙彦の目をじっとみてそういう。
「さっきの銀次とかいう人とのやりとりでわかったよ。
 あんた、あたしにまだ未練あるんだろう。ねぇったら」
「だめだ。あんたにはここで死んでもらう」
目をそらしながら匙彦はつぶやくようにいう。

お美代が指摘したとおり、
匙彦は情報を得るため、おせんに近づくうちに少しずつであるが心を奪われていた。
始末屋になって日の浅い匙彦には無理からぬことである。
未だ心を鬼にすることができずにいたのだ。
もちろん、掟を破れば、銀次のいうように他の始末屋が彼らを追ってくるだろう。
そして、匙彦にはおせんを連れて逃げ切る自信もなかった。


402 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:18:19 ID:ZaB/eNYB
「あたしを殺しちゃったら、もうあたしを抱けないんだよ。
 ねぇ、また一緒に気持ちよくなろうよぉ」
そういいながら着物をはだけ上半身を外気に晒す。
白い肌と大きな乳房があらわになる。
左の乳房を持ち上げるとその桃色の乳首をチロリと舐める。
顔は十人並みだが、身体の方は女中にしておくには惜しいほど卑猥である。
「いいじゃないか。まぁ悪いことをしたと思うけどさ、
 まぁ死んだ奴には運がなかったってことだよ。」
「運がなかっただと……」
もし、おせんが本音をださずに必死で匙彦を口説いていれば、
二人の逃避行は難しいとしても、心中くらいはできたかもしれない。
しかし、いくら言葉でごまかそうとしても、おせんは心からの悪党であった。
仕方なくではなく、率先して悪事に加担していたのだ。
それがポロリと口からこぼれてしまった。
「てめぇらがしでかした悪事の犠牲になった奴らを『運がなかった』ですまそうってのか」
怒気を強めた声とともに匙彦はそらしていた目線をおせんにもどして睨みつける。
「え、そ、その」
口ごもるおせん。しまった、と思ったがもう後の祭りである。


403 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:20:32 ID:ZaB/eNYB
「悪党に情けをかけようとした俺は本当に馬鹿だった。
 身体はどうか知らないが、あんたの心は犬畜生にも劣る鬼畜だよ」
そういうとあらわになった右の乳房をつぶれるほどに強く左手で握りしめる。
右手で懐から小さな一つの筒を取り出した。
「ひぎぃっ痛ぃっ、いたいよ匙彦ぉ。」
そんな、おせんの言葉などお構いなしに匙彦は器用に右手だけで開け、
中のどろっとした液体を手につける。
「今日は三つ薬を持ってきた。一つは他の奴らに使ったすぐ死に至る薬。
 一つは本当はおせんっ………、あんたに使おうと考えていた楽に逝ける薬。
 そしてもう一つ。これは使うことはないと思ってたんだがな。
 苦しみのたうちまわり、その果てに逝く薬だ!」


404 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:21:26 ID:ZaB/eNYB
「ひぃっ!!」
そういうと乳房をはなし、左手で足をつかんで女の秘部をまんぐりがえしの要領で
さらけださせる。
「やめっ、やめて匙彦ぉっ!」
それなりに大きな声を挙げるが、
夜這いをふせぐために護衛の侍の部屋とはかなり離れているため聞こえるはずもない。
「苦しみながら死ね!」
液体のたっぷりついた右手の人差し指と中指二本を彼女の肛門に突き入れた。
「あぎぃっ!!」
十分に濡れていないところに突き入れられたのだから痛みも相当のもの。
そして、痛みとともに恐怖がやってくる。
「いやぁ、いやぁっ!!!」
涙と鼻水がとめどもなくあふれでる。
「ほんの一分程度で効いてくるはずだ。
 あんた達に殺された奴らがどんな思いで死んでいったか地獄に行く前にしっかりと身体に刻みつけな」


405 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:24:02 ID:ZaB/eNYB
「助けとくれ、助けとくれよぉ。お願いだよぉぉ!!」
必死で匙彦にしがみつくおせん。柔らかな感触が匙彦を包む。
彼女の焦燥をよそに匙彦の頭はどんどん冷えていく。
「なあ解毒の薬はないのかい。ねぇいやだよぉっ!」
さすがに声が大きいと思ったか、おせんの口を手でふさぎ身体を布団に押さえつける。
「んぐぅっんん!」
そして一分と数秒の後、
おせんの呻きがピタッとやんだかと思うと、今まで以上の呻きとともに
匙彦の力でもおさえきれないほどの力でのたうちまわる。
おせんは肛門に焼け付くような痛みをさきほどから感じていたが、
それが全身に広がっていき、形容できないほどの痛みに襲われていたのだ。
目を白黒させながら痴態を晒し続けるおせんに匙彦も少し憐憫の情がわいてきた。
「あと十数分は続くだろう……どうだ苦しいか」
泣き叫びながら(もちろん口をふさがれているためくぐもった声しか出せないが)
必死でうなづくおせん。


406 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:27:53 ID:ZaB/eNYB
そしてこの世のものと思えぬほどもがき苦しむこと数分、
何度も愛し合ったおせんがこれ以上苦しむのを匙彦が我慢できずに音をあげた。
「これを飲みな、楽に逝ける。」
そういって取り出した薬を、おせんは奪い取るように掴み、口から流し込んだ。
二分後、全身を焼けただれるような痛みはひいていき、変わりに身体が火照ってきた。
「なん………だい……これ」
息を切らしながらも必死で言葉をつむぐおせん。
「媚薬入りの毒薬だ。あと数分で逝ける。
 まあ自分で身体を慰めていれば、忘我のうちに逝けるだろう。」
「優し……いんだ…………こんな……悪…党にさ。匙彦は…」
さっきまでとはうってかわって、優しげな表情のおせんに匙彦は少し罪の意識を覚える。
「ねぇ。最期に………抱い…て……よ」
「………それはできない。掟だ」


407 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:28:39 ID:ZaB/eNYB
始末屋が裏でつくられた後、対象が女である場合、犯し殺すという者が後をたたなかった。
その行為には悪を誅するという理のなかに下衆な劣情が入り交じる。
人を殺すということはどれだけ大義名分があろうと下の下の行為。
そこに女を犯すという行為を加えれば悪党と何も変わらない。
そう判断した当時の元締め(女であったことも少なからず要因としてあろう)は
これを禁止したのである。破れば死をもって償うという厳しい罰とともに。


408 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:30:52 ID:ZaB/eNYB
「ケチ……だねぇ。なら…………みてて。あたしが……あたしを…慰めてる……姿……を」
「わかった……」
おせんは右手を乳房に持って行き、左手を会陰に持っていく。
くしくも寧姫が自慰をはじめるのとほぼ同じ時刻であった。
乳房を手のひらで軽く揉みながら親指と人差し指で、
既に屹立した桃色の乳首をコリコリとつまむ。
同時に左手は二つの指で陰核の皮を剥くとやさしくさする。
「ハァンッッ。フゥフゥ、匙……彦ぉ、すご……く気持ちがいい……よぉっっ」
壁によこたわり、股を大きく開きながらのおせんの自慰行為は
死を間際にむかえ、媚薬の効果以上におせんの身体と心は、
まさに淫の極致ともいえる域に達していた。
匙彦の一物は褌のなかで既にパンパンに勃起している。
その心はなんとも複雑である。
しかし、これが自分の責とばかりに目をそらさず、彼女の淫蕩な行為をみつめていた。
おせんはたわわに実った肉果実を淫猥にムニュムニュ歪ませながら匙彦を見つめ返している。
陰核をクチュクチュと音をたたせながら執拗にいじる指はどんどんとはやまる。
淫水はとめどもなくあふれ、肉付きのよい太股や布団を濡らしていく。
「いい……のぉ。すご…い…こんなの……初めて…だよぉ、
 匙……彦みて……てね、あた……しが逝くのをぉぉっ!!」
悪女の情けはこんなにも深いものか。
愉悦の表情を浮かべながらなおも激しくおせんはおのれの身体を慰める。
逝くのがはやいか、快くのがはいか。
肛門に塗った毒が消えたわけではない、より強力な毒の効果が打ち勝っているだけだ。
相乗の効果もあり、もってあと一分だろう。
匙彦はおせんの最期を目に焼き付けんとする。


409 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:32:38 ID:ZaB/eNYB
そろそろ絶頂が近いようで乳房を揉むのも、陰部をこするのも、すごいはやさだ。
おせんはとろけるような眼で匙彦をみる。
「好きだよぉ………匙彦。あの世……で、待って……るね。今度は……抱い……て。
 あ、けど……あんたと………あたしじゃ……行き先が………違う……かなぁ」
「一緒だよ。先に地獄で待ってな」
多分、今日一番の優しい声でおせんを地獄に送り出す。
いくら町の皆を殺した悪党といえど、惚れた女には違いなかった。
「嬉し……いぃぃ。ハフゥンッ。逝くよぉ快く逝く快く逝く快くぅぅっっ!!!」
脳髄が痺れるかのような忘我と共におせんは逝(快)った。
潮が弾けるようにおせんの会陰から吹き出す。その表情は淫をおびながらも安らかである。

「本当に甘いなぁ俺ってやつは……」
そう匙彦は一人つぶやくとその場をあとにした。


410 :名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 20:35:56 ID:ZaB/eNYB


「来ました……ね」
「おせぇぞ、匙彦。本当にあの女と逃げちまったかと思ったじゃねぇか。」
始末を終えれば、集まることになっていた橋の下に匙彦が歩いてきた。
既に継輔、銀次、剛三の三人は十分ほど前からその場にいた。
誰もが内心、匙彦が掟を破るのではないかと心配していたのだ。
「すまん、ちょっと手間取った。」
「それで……しっかりと殺ったんだろうな」
剛三が匙彦に聞く。
「………ああ。掟を破るようなことは何もしていないよ」
情を交わしたわけでもないことも含ませた言葉を匙彦は選ぶ。
「しっかりと殺れなかったあなたがいう台詞じゃありませんね。」
継輔は微笑を浮かべながら剛三に云う。
「お前、今それはいわないでくれって云ったところじゃねぇか。
 俺の面目はどうするんだよ。ああ、ちょっとしくじっちまっただけなんだ。
 きちんと始末は継輔がつけてくれたしよ」
ごつい体を揺らし顔を赤らめながら剛三が弁解する。
匙彦にもやっと少し笑みがこぼれた。
「まぁ、何にしてもこれで五回だ。一人前とはとてもいえねぇが、もう助けてやらねぇぞ」
鍼師の銀次がそう匙彦にいう。
「すまなかったな。無様な醜態みせちまって。次からは大丈夫だ」
「ホントかよ」
半信半疑の銀次だが、匙彦は今回の始末で成長したことは確かだ。
それが人としていいか悪いかは別にして……

「まぁ無事に終わったんだパーッと遊ぼうぜぇ!」
今回の依頼主は藩の家老であった。寧姫の放蕩な行いのせいで藩を潰されたらたまらぬと、
姫の殺しを頼んだのである。報酬も普段の仕事の四倍はあった。
「そうだな……それもいいかもなぁ」匙彦が何かを押し殺すようにそうつぶやいた。

そろそろ明け方が近い。いらぬ疑いをかけられぬようにと四人はそれぞれの家路を急いだ。
 
                                                         了

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