- 川崎町
JR東川崎駅から太田という所に向かう途中、左手の田んぼのあぜに一本の杉の木が立ち、その根元に小さな
石のほこらがあります。地元の人から「いぼ神さま」「歯の神さま」と親しまれているこの一本杉大明神は、
英彦山修験者のお墓だと伝えられています。
山から山へ、水ごりをとったり荒行を重ねることおよそ五十日。疲れきった英彦山豊前坊の修験者たちが
この村を通りかかりました。一本歯の下駄を引きずる足どりも重く、修業の苦しさをうかがわせます。
と、みると、なかでも杖にすがってようやく歩いていた修験者がみるみるうちに一行から遅れ、ついにその場に
うづくまってしまいました。そして間もなく息を引き取ったのです。あわれに思った村人は、修験者をその場に
とむらい、小さなほこらを建ててまつりました。
それからいく日かたったときのことです。修験者が杖にしていた小枝が根付き、芽をふき出しました。
やがて大きな形の木となって小さなほこらを守るように枝を広げました。田んぼの中の一本杉ですから、
今までに何回も雷にうたれ、枯れかかったこともありましたが、そのたびに根元から新しい芽を出し、
決して枯れてしまうことはありません。
これも全て修験者の霊験であろうと、いつの間にかほこらに供えられている石でいぼをこするとなおる
といわれるようになりました。お礼にはいぼの数だけ小石をあげるのだとか。また、歯が痛いときは、
年の数だけつまようじを作って供えると不思議に歯の痛みがとれるそうです。
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