福岡県の郷土のものがたりです。


読み方は「おんじゃくものがたり」

耳納連山の西南端、久留米市高良内町温石の山あいに、静かな宿があります。

ここは、古くから温石温泉として知られた所で、不思議な由来が残っています。

天保十四と言いますから、今からおよそ百五十年前のことです。

大善寺玉垂宮(だいぜんじたまたれぐう)の拝殿の下に座り、気がぬけたように空を仰いでいる

一人の武士がいました。

彼は板垣伸次郎(のぶじろう)といい、久留米有馬藩でも指折りの猛者でしたが、体をこわし、

今では歩くのがやっとという哀れな姿になっていました。

そこで、毎日欠かさず玉垂宮にお参りにくるのが彼の日課になっていたのです。

この日は、特に激しい足の痛みのため、思わず腰をおろしてしまったのです。

「ああ、この足さえ治ってくれたらなあ」と、伸次郎はため息をつくのでした。

「こんな思いをして生きていくくらいなら、いっそ武士らしく切腹して……」

と思いわずらっているときでした。どこからともなく一人の白髪の老人が現れたのです。

老人は東南の方を指さして、「わしがよいことを教えてやろう。ここから一里ほど行った谷間に

泉がわいている。その水に足をひたせば、お前の病気は必ず治るであろう」

と、言い終えると、森の中に姿を消してしまいました。

これこそ神のお告げに違いないと、伸次郎の心は躍りました。さっそく、このあたりの地理に詳しい

石工に案内を頼み、来る日も来る日も“幻の泉”を探し歩きました。

しかし、老人の言い残した泉はなかなか見つけることができません。日も暮れかかり、探し疲れた

二人は、ものを言う元気も無くなりました。そして、谷あいの向こうに雄大に流れる筑後川と、

きらきら光る有明海をぼんやりと眺めていました。

突然二人は、耳をそばだてました。小さな水の音が聞こえます。その音に導かれて行くと、

なめらかな一枚岩の下から、こんこんと清水がわいてくるではありませんか。

二人は抱き合って喜びました。伸次郎の足が治ったのは言うまでもありません。

この付近一帯にある滑石は温石や薬湯としても効能のあることから

ここは温石湯と呼ばれるようになり、足腰の痛みなどに効果のある温泉として、多くの湯治客が

訪れるようになったということです。

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このページへのコメント

訪れた方ならわかるが、温石から筑後川は見えませぬ。
身分制度の中、武士と石工が抱き合って喜ぶ?
ホントに地の人から聞いたの?
ネット情報に創作加筆したって感じ?
言い伝えに変遷は当然だけど、それにしても
脚色多すぎ。
日も暮れかかり云々のくだり初めて聞きました。

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Posted by 野十郎 2015年12月28日(月) 00:04:14 返信

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