『Ceonsoyclopedlia』は、Censor(検閲)にまつわるEncyclopedlia(百科事典)です。旧称『表現規制用語集』。民主主義社会の根幹をなす最重要の「人権」である表現の自由――その規制・弾圧・バッシングにまつわる事例や用語について、あらゆる知識を保存伝達するためのサイトです。

 裁判中の法廷で傍聴人がメモを取ることの禁止が【取材の自由】侵害にあたるかどうかを争われた有名判例。法廷メモ採取事件などとも呼ばれる。
 1982年10月から、アメリカ人弁護士ローレンス・レペタ氏は、日本の証券市場とその法的規制の研究のため、ある所得税法違反事件の裁判を傍聴していた。
 法廷警察権といって、日本の裁判所では、裁判長が法廷内の秩序維持のために退廷命令などの強制力を行使する権限が与えられている(刑事訴訟法288条2項)。当該事件の裁判長はあらかじめメモ採取を禁じており、レペタ氏の再三の願い出にもかかわらず認められなかった。そのため精神的損害を被ったとしてレペタ氏は国家賠償請求を提起している。
 第一審・控訴審でレペタ氏の請求は棄却された。

 最高裁は判決において
・裁判長は、傍聴人のメモを取る行為といえども、公正かつ円滑な訴訟の運営の妨げとなるおそれがある場合は、刑事訴訟法288条2項に基づいて、当然これを禁止又は規制する措置を執ることができる。これは国際人権規約19条3項の、表現の自由の制限の限界についての規定にも反するものではない。
・しかしながら、憲法21条1項(表現の自由)の精神に照らし、裁判長は傍聴人がメモを取ることをその自由に任せるべきである。その制限や禁止は、特に具体的に公正かつ円滑な訴訟の運営の妨げのおそれがある場合に限ることが望ましい。
 として、裁判長がメモを取ることを禁止する措置自体は憲法違反ではないとして、原告レペタ氏の損害賠償請求を退けた。

 しかし、実質的には本判決は、裁判長がゆえなくメモを取ることを禁止するべきではないと判示したものであって、その後、日本の法廷では原則として法廷でのメモを自由することとなっている。

 なお、四ツ谷巌裁判官は「傍聴人がメモを取ることによる証人・被告人に対する心理的影響」や「一般傍聴人のメモ内容が不正確なものであっても真実と認知され誤解を広める可能性」などを挙げ、むしろメモ採取を報道陣以外にはあらかじめ一般的に禁止すべきだとし、申出をまって裁判長の裁量で許否を決するべきだと、意見を付している。

参考リンク・資料:
最高裁判所判例集 昭和63(オ)436 メモ採取不許可国家賠償請求事件

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