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gordonschumway 2011年06月03日(金) 19:03:49履歴
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登場人物 | 詳細 | 配役 |
戒理 [カイリ] | 22歳。男。魔族。とある国の研究者。 | ベア |
水梛 [ミズナ] | 14歳。男(女でも可)魔族。戒理の助手。苦労人。 | 谷風結香 |
時雨 [シグレ] | 23歳。男。魔族。戒理の同僚でライバル。犬猿の仲。 | 谷風結香 |
弓月 [ユヅキ] | 22歳。女。魔族。戒理(かいり)の元恋人。もう死んでる。 | 長谷川絢香 |
水梛(mizuna01_01)「(N)ある日の事だ。
僕がいつもと変らず資料室の掃除をしていると、
そこの窓から戒理(かいり)が何やら空を見上げ、
ボーッとしてるのを発見した。
いつも研究室からほとんどでない戒理(かいり)だけに、
中庭なんかになんかにいるなんてほんとに珍しい事だった。
いつもでは絶対にありえない光景に僕は何かを感じ、
資料室の掃除を一時中断し、僕も中庭のほうに向かった。
中庭に出ると、ずっと部屋の中にいたせいか、
ちょっとまぶしすぎるような気もしたが、
木の上からは小鳥の泣く声も聞こえてくる。
天気もとてもよく、まさに絶好のピクニック日和と
言えそうなほど外はすがすがしかった。
僕は戒理(かいり)に近づくと、そっと肩を叩き、呼びかけた」
水梛(mizuna02_02)「なあ、戒理(かいり)……」
戒理(kairi03_01) 「うお!!み…水梛(みずな)っ。お前、資料室の掃除はどうしたんだよ!?」
水梛(mizuna04_03)「な、何そんなに驚いてるんだよ…いや、
いつも研究室にこもりっきりの戒理が中庭なんかに出てるから。
どうしたのかと思ってきてみたんだ」
戒理(kairi05_02) 「ちっ……余計な事を……(さみしげに)今日は…特別なんだよ」
水梛(mizuna06_04)「特別……?」
戒理(kairi07_03) 「そっ。だから俺はこれから出かけなきゃならないの。あ…、絶対ついてくるなよ?」
水梛(mizuna08_05)「どうして?」
戒理(kairi09_04) 「どうしてって……どうしてもだっ!!じゃあなっ!!」
水梛(mizuna10_06)「あ、戒理っ……(少し考えて)ついてくるなと言われて、
ついていかない奴はいないぞ?戒理……」
水梛(mizuna11_07)「(N)そういうと僕は、戒理の残留思念をたどって、追いかけることにした」
※
水梛(mizuna12_08)「とりあえず戒理の残留思念を辿ってここまで来たけど……
ここってどう見ても墓場だよな……?
もしかして戒理の奴、死者を掘り起こして
また変な実験をするつもりじゃないだろうな……」
水梛(mizuna13_09)「(N) そう。戒理は以前にもここと同じ墓場に来て、
自分の研究のためにここにある死体をいくつかくすねていった前科がある。
確かその時も「特別な理由で…」とかなんとか言ってたから、
その可能性はなきにしもあらずだ……」
水梛(mizuna14_10)「ったく…今回もそれじゃなきゃいいがな……って、みつけた。
つか…あいつ、墓の前につったって何してるんだ?」
戒理(kairi_15_05)「(遠くでしゃべってる雰囲気でお願いします)弓月(ゆづき)……
あれからもう何年がたったんだろうな……?
お前が…死んでしまったあの日から……」
水梛(mizuna16_11)「え?死んだ……?それに弓月(ゆづき)って……
一体誰だ…?って、あれ?いな……」
戒理(kairi17_06) 「やっぱついて来やがって。お前、そんなに俺の事知りたいのか?」
水梛(mizuna18_12)「か…戒理っ!?何時の間に俺の後にっ……!!」
戒理(kairi19_07) 「お前気配消すの下手だな〜。そんなんじゃスパイ活動は出来ねえぞ」
水梛(mizuna20_13)「僕は別になる気もないしする気もない」
戒理(kairi21_08) 「あっそ。ったく……お前がそんなに聞きたいなら
話してやってもいいけど、後で高くつくぜ?」
水梛(mizuna22_14)「(N)……やはりそう来たか……。いっつもそうだ。
戒理の事を聞こうとすると必ずこのセリフが返ってくる。
そのせいでどれだけ僕が悩んだことか……」
水梛(mizuna23_15)「戒理ッ!毎度の事ながら卑怯だぞっ!!」
戒理(kairi24_09) 「俺から情報をもらうってのはそういう事だ。
何かを得る為にはそれなりの代価が必要となる。等価交換ってね」
水梛(mizuna25_16)「これのどこが等価交換だッ!」
戒理(kairi26_10) 「どうすんだ〜?聞くか?やめとくか?」
水梛(mizuna27_17)「くっ……(戒理にされるのは絶対に嫌だ。でも気になるし……
まあ一回ぐらいなら……でも戒理だし……)」
戒理(kairi28_11) 「ってかさ、なんでお前ってそこでいつも悩むんだ……?
普通ここって悩み所じゃねえだろ!?」
水梛(mizuna29_18)「そ、そりゃそうだけど……」
戒理(kairi30_12) 「だぁもう、めんどくせぇ!!わかったよッ!
(しぶしぶと)弓月は、俺の恋人だったんだよ」
水梛(mizuna31_19)「こ、恋人!?」
戒理(kairi32_13) 「な…なんでそんな驚くんだよ…?」
水梛(mizuna33_20)「だ、だって戒理って、恋とかにぜんっぜん興味持たなそうだし、
それに……戒理って……」
戒理(kairi34_14) 「何だよ……」
水梛(mizuna35_21)「え…いや…だから…その……」
戒理(kairi36_15) 「あー、わかった。俺が男にしか興味ないとか思ってんだろ。
別に俺だって男だけが好きってわけじゃないぞ?
ちゃんと女も好きだし、どっちでもいける口なんだよ」
水梛(mizuna37_22)「………あんまり説得力ないけど……」
戒理(kairi38_16) 「うっせーな!別にいいだろ、バイだって」
水梛(mizuna39_23)「そ、そりゃあ否定する気もないけど……」
水梛(mizuna40_24)「(N) って…なんか…どんどん話しがすごい方向に行くような気が……
ってゆうか戒理からこんなセリフが出るとは思っても見なかった……」
戒理(kairi41_17) 「ともかくっ!!弓月は…俺が愛した唯一の人。
結局そいつも…不治の病で死んじまったけどな……」
水梛(mizuna42_25)「ふ…不治の病って……?」
戒理(kairi43_18) 「(少し悲しげに)……その病気はな、脳に腫瘍が出来て、
初めは頭痛とかのたいした症状しかでないんだが、
それに侵されるとだんだんと脳が侵食されていき、
今言った事をすぐ忘れたり、すぐ前の事が思い出せなくなる。
そして終いには自分すらもわからなくなり死んでいく……。
そんな病気だ……」
水梛(mizuna44_26)「そんな病気が……あるのか……?」
戒理(kairi45_19) 「そ。まぁその病気が発病するのは何千万人に一人というごく稀な病気で、
当時はまだその病気の治療法は解明されてなく、
未だに解明されていない。俺は弓月がその病気にかかっている事を知り、
その治療法を研究したんだが…結局間に合わず、あいつは……」
水梛(mizuna46_27)「……死んだんだな……」
戒理(kairi47_20) 「ああ……。あの時の思い出は…忘れたくても忘れられないことばかりだ……」
※
戒理(kairi48_21) 「(N)俺とあいつが出会ったのは、何百年も前、魔界にあるとある研究所だった。
俺はその時医療部の主任研究員で、日々魔界医学の研究をしていた。
そんな時、新しい奴がこの部署に配属されることになり、
そして来たのが弓月だった……。」
戒理(kairi49_22) 「で?お前が弓月か?」
弓月(yuzuki50_01)「はい。今日からここで働くことになった弓月という者です、
どうぞよろしくお願いします」
戒理(kairi51_23) 「お、おう……」
戒理(kairi52_24) 「(N)その時の弓月の第一印象は、ともかく「キレイな奴」だ。
顔立ちもルックスもすべてパーフェクト。
優しい口調と微笑みは、この俺ですら見とれてしまうほどだった……」
戒理(kairi53_25) 「で?え〜っと……ここに来る前は…特殊医療部って……
お前そんなエリートんとこにいたのか!?」
弓月(yuzuki54_02)「あ…はい……まぁ…」
戒理(kairi55_26) 「お前行ったい何やらかしたんだよ?こんなとこに回されるなんて……」
弓月(yuzuki56_03)「ちょっと…色々ありまして……(苦笑)」
戒理(kairi57_27) 「あ…わりぃ……」
戒理(kairi58_28) 「(N)あっちゃ〜……そういう理由かよ……。そう。
この部署はぶっちゃけこの研究所の中では一番どうでもいい……
っていうか、やる気のない連中が集まったっていうか……
ともかく、この研究所ではあまり必要とされていない部署なんだ。
ま、そんなわけからここに回される奴は他のとこの主任研究員とぶつかったか、
リストラされたか奴がほとんどだ。
そんな中でもごくたまに、弓月みたいな奴がいんだよな〜。
ま、ぶっちゃけほとんど男ばっかの世界だしな。
特に弓月なんて、ぶっちゃけ格好のいいカモなわけで……
まあしょうがないと言っちゃあそれまでなんだがな……」
戒理(kairi59_29) 「ま、まぁ理由はどうあれ、今日からお前もこの部署の一員だ。
エリート部みたいな扱いはねぇけど、しっかりがんばってくれよな」
弓月(yuzuki60_04)「はい。よろしくお願いします」
戒理(kairi61_30) 「あ、俺の自己紹介がまだだったな。俺は戒理。
この部署の主任研究員だ、一応ここで一番上の立場だから、
何かわからない事があったら全て俺に聞け。んじゃ、早速で悪いんだけど、
このレポート用紙に書いてある実験をしてくれ。
エリート部ならこれぐらい楽勝だろ?」
弓月(yuzuki62_05)「はい。わかりました」
戒理(kairi63_31) 「じゃあよろしくな」
弓月(yuduki64_06)「はい」
戒理(kairi65_32) 「(N)実際、弓月は不思議な奴だった。
エリート部の奴等はどうもこういけすかないというか……
ぶっちゃけ生意気な奴ばかりなんだが、
こいつからはそんな事を微塵も感じさせなかった。
とても素直でそれでいて実験もパーフェクトにこなす。
そんな弓月に、俺はだんだんとひかれていった。
もちろん優秀な俺の部下としてだが、日が経つにつれて、
弓月に対する俺の想いは、日に日に強くなっていった。
そんなある日の事だ……。弓月がここに来てから数日後、
また俺の下に新しい奴が来ることになった。
そいつの名前は時雨(しぐれ)といい、データによると、そいつも元エリート部らしい。
ただそいつがここで働くようになってからというもの、
弓月はあまり元気がない様子だった。
相変わらず笑顔で仕事をしているとはいえ、様子がおかしいのは明らかだった」
戒理(kairi66_33) 「……おい、弓月ッ!弓月ッ!!」
弓月(yuzuki67_07)「あっ!はい……。なんでしょう?」
戒理(kairi68_34) 「それ、量間違ってる」
弓月(yuduki69_08)「え!?す…すみません……」
戒理(kairi70_35) 「お前最近変だぞ?実験も間違いが多いし、何かあったのか?」
弓月(yuduki71_09)「い、いえ…別に…なんでもないです……」
戒理(kairi72_36) 「ならいいんだけどさ、最近明らかに元気がないみたいだし、本当に何もないのか?」
弓月(yuduki73_10)「だ、大丈夫です。ご心配おかけしてすみませんでした。戒理さん」
戒理(kairi74_37) 「ん〜……まぁいずれにせよ、何か困った事があったら何でも俺に言えよ。
いつでも相談に乗るから」
弓月(yuzuki75_11)「はい。ありがとうございます(にっこり)」
戒理(kairi76_38) 「(N)そういうと弓月はにっこりと笑う。でも俺には、弓月のその笑顔が、
どうも哀しい笑顔にしか見えてならなかった。
心の底から笑っていない、とても違和感のある笑顔。
その笑顔の意味を知りたかったが、これ以上聞いても
「何でもないです」が返ってくるだけだろうと判断し、
俺はあらかじめ用意しておいた実験のレポートを弓月に渡す」
戒理(kairi77_39) 「じゃ、これ新しい実験のレポート。今のが終わったらすぐとりかかってくれ。
あ、くれぐれも、量は間違えないようにな」
弓月(yuzuki78_12)「はい。気をつけます……」
戒理(kairi79_40) 「んじゃあよろしくな〜」
弓月(yuzuki80_13)「はいっ」
戒理(kairi81_41) 「(N)そして数日がすぎた、ある日の事だった……」
時雨(sigure82_01)「弓月、ちょっといいか?」
弓月(yuzuki83_14)「し…時雨……。な、何ですか……」
弓月(yuzuki84_15)「(N)ある日の事、僕が机に向かい、
昨日の実験のレポートを書いていると、時雨が突然僕の隣の席に現れました」
時雨(sigure85_02)「ちょっとこの実験でわかんないことがあるんだけどさ、ちょっと教えてくんない?」
弓月(yuzuki86_16)「い、いいですけど……」
時雨(sigure87_03)「なぁ弓月〜、そんなにおびえるなよ。
俺はわざわざここまでお前を追いかけてきたんだぜ?
なのになんでそんなよそよそしいんだよ……
あんなに愛し合った中じゃねえか……」
弓月(yuzuki88_17)「(N)そういうと時雨は腕をすっと僕の腰に手をまわす」
弓月(yuzuki89_18)「いい加減にしてくださいっ!あなたと僕はもう何でもないはずですっ!
なんで僕につきまとうんですか!?」
時雨(sigure90_04)「今でもお前を好きだからだよ……」
弓月(yuzuki91_19)「し…時雨……こんなところでっ……」
時雨(sigure92_05)「今夜、俺の部屋で待ってる……。来るだろ?来れない訳ねえよなぁ……。
今までの事、全部戒理さんにばらすぜ……それでもいいのか……?」
弓月(yuzuki93_20)「それはっ……」
時雨(sigure94_06)「嫌だろ?愛しの戒理さんに今までの事をばらされるのはさ……」
弓月(yuzuki95_21)「なっ…なんでその事をっ……」
時雨(sigure96_07)「この俺が知らないとでも思ったのか?
お前がこんなとこに来たのだって、戒理さんがいたからなんだろ?」
弓月(yuzuki97_22)「そ、それは……」
時雨(sigure98_08)「ふ……。だったら今夜は必ず来るよな?今夜も楽しもうぜ?いつもみたいにさ……」
弓月(yuzuki99_23)「……はい……」
時雨(sigure100_09)「今夜も楽しみにしてるぜ?弓月……」
(SE:去っていく音)
弓月(yuzuki101_24)「……時雨……。あなたはいつまで僕を苦しませればきが済むんですか……?」
(しばし間)
(で、場面はその問題の夜)
弓月(yuzuki102_25)「し……時雨……も…もう…やめて…ください……」
時雨(sigure103_10)「嫌だね。お前まだ達ってねえだろ?それにまだ夜は始まったばかりだぜ……?」
弓月(yuduki104_26)「あぁっ……いや……!ど…どうしてです……?」
時雨(sigure105_11)「何が?」
弓月(yuzuki106_27)「僕とあなたは……もう…終わった……はずです。なのに…こんな事までして……
どうして僕につきまとうんですか……?」
時雨(sigure107_12)「お前が忘れられないからだよ……。こんなに俺を愛してくれた……お前だから……」
弓月(yuzuki108_28)「くぁ……い…いや……いやぁ……」
時雨(sigure109_13)「お前だって俺の事…忘れられないだろ……?」
弓月(yuzuki110_29)「僕はもう…あなたの事はっ……」
時雨(sigure111_14)「うるせえんだよっ!!お前がどう思っていようが、そんなの関係ねぇ!!」
弓月(yuzuki112_30)「いたっ……や…やめ……くっ……あぁ…いやぁっ…!」
時雨(sigure113_15)「お前がどんなに戒理さんを好きかは知らねえが、
俺とお前の方がいいにきまってるだろ!?」
弓月(yuzuki114_31)「そんなの…勝手すぎますっ!!」
時雨(sigure115_16)「はんっ。お前にそんな事言えた義理かよ?お前だって俺の事を捨てたじゃねえか」
弓月(yuzuki116_32)「捨てただなんて……あぁっ……くぁ……いや…」
時雨(sigure117_17)「違うってのか?だったら、なんでそんなに俺と会うのを嫌がるんだよ……」
弓月(yuzuki118_33)「そ、それはっ……」
時雨(sigure119_18)「ほ〜らな。やっぱ否定できねえじゃん。だから今夜は……いつもより派手に行こうぜ……」
弓月(yuzuki120_34)「くぁ…ぁっ……くっ……あぁ…いやぁっ…!(戒理さんっ……助けてっ……!)」
戒理(kairi121_42) 「おや〜?随分といいことしてるじゃないの?時雨くん?」
時雨(sigure122_19)「か…戒理さんっ……!どうしてここに……」
戒理(kairi123_43) 「いや〜、最近弓月の様子がおかしかったからさ、ちょっと気になって調べてたんだよね〜。
そしたら、お前がエリート部で弓月と付き合っていたという噂を聞いてね。
まさかと思って来てみたら、この有り様ってわけ」
時雨(sigure124_20)「だったら何だって言うんです?誰がなんと言おうと、弓月は俺のモノです。
後からでて来たあなたなんかに渡しはしない……」
弓月(yuzuki125_35)「なっ……し、時雨っ…やめてくださいっ…戒理さんがいるのに……」
時雨(sigure126_21)「誰がいたってかまわねえよ。丁度いいじゃねえか。
俺とお前がどんなに愛し合っているか戒理さんに見せ付けてやれば……」
弓月(yuzuki127_36)「いや…だめっ……!」
戒理(kairi128_44) 「ったくよ〜、これだからエリート部の連中はムカツクんだよ……。時雨っ!
てめえもいい加減に弓月を放せっ!!」
(SE:何か音)
時雨(sigure129_22)「なっ…体がっ……動かない……。戒理さん…何をっ……」
戒理(kairi130_45) 「見ててまじうぜえから、薬を打ち込んでやったのさ……。
だからてめえは大人しく、とっととエリート部に帰んなっ!!」
(SE:殴る音)
時雨(sigure131_23)「ぐはっ……。くそっ!俺は……まだあきらめねえからな……」
(SE:倒れる音)
戒理(kairi132_46) 「けっ!しばらくそこでおねんねしてな……。おい、弓月、大丈夫か?」
弓月(yuzuki133_37)「は、はい……何…とか……」
戒理(kairi134_47) 「ったく、何か困った事があれば俺に言えっていつも言ってるだろ?
何で今まで黙ってたんだ」
弓月(yuzuki135_38)「戒理さんに…迷惑をかけたくなかったから…です……」
戒理(kairi136_48) 「違うな。お前、時雨におどされてただろ?」
弓月(yuzuki137_39)「そ、それは……はい…。戒理さんには…すべてお見通し…ですね……」
戒理(kairi138_49) 「別に。ただそんな気がしただけだよ。
そんな事より、これからも何かあったら必ず俺に言え。
俺が…絶対にお前を守ってやるから……」
弓月(yuzuki139_40)「戒理さん……」
戒理(kairi140_50) 「これからは、何があってもお前を守る。お前だけは…絶対に……」
弓月(yuzuki141_41)「はい……ありがとうございます……」
戒理(kairi142_51) 「(N)こうして俺達は、互いに恋人と呼べるようになった。
それからも時雨はこりもせず何かとちょっかいを出してきたが、
俺がどでかい鉄拳を食らわしてやったら、
すごすごとエリート部に帰っていきやがった。
これで平和になったと思ったのもつかの間、
運命の女神は、俺達にほほえんでくれることはなかった……」
(その一ヶ月後ぐらい)
戒理(kairi143_52) 「さてと……。今日も昨日の実験の続きをしねえとな。いい加減ケリをつけねえと、
次の段階に進めねぇからな。……それにしても、
今日は弓月の奴いつになく遅ぇな。何かあったのか?」
(SE:ドアの開く音)
弓月(yuzuki144_42)「すみませんっ!遅くなりましたっ!!」
戒理(kairi145_53) 「お〜、弓月。今日は随分と遅いじゃねぇか。
お前にしてはめずらしいな。何かあったのか?」
弓月(yuzuki146_43)「いえ、朝起きたら、あまり気分がよくなくて……。
ちょっと休んでから行こうと思ってたのですが、
気付いたらもうこんな時間で……。すみませんでした」
戒理(kairi147_54) 「別にかまわねぇよ。気分がよくないって……来て大丈夫だったのか?」
弓月(yuzuki148_44)「はい。少し休んだらだいぶよくなりましたので」
戒理(kairi149_55) 「そうか?ならいいんだが……もし気分が悪くなったらすぐ言えよ。早退させてやっから」
弓月(yuzuki150_45)「そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ。ご心配おかけしてすみませんでした。
今日は昨日の実験の続きですよね?」
戒理(kairi151_56) 「あ、あぁ……」
戒理(kairi152_57) 「(N)その時はただの風邪の初期症状か何かだと思っていたんだが、
日を追うごとに、弓月がかかっていた病気が
明らかにフツウの病気ではないという事が明らかになっていった……」
(その数週間後)
戒理(kairi153_58) 「おい、弓月。それ、お前昨日も間違えてたぞ?昨日が俺が言ったこと、覚えてるか?」
弓月(yuzuki154_46)「え?あっ…はい。えっと……」
戒理(kairi155_59) 「この実験は試験薬を間違えるだけで
まったく別の結果が出ちまうから、絶対に試験薬は間違えるな。だろ?」
弓月(yuzuki156_47)「あっ、そうでしたね……。すみません……」
戒理(kairi157_60) 「ホントにお前大丈夫か?
最近物忘れが激しいみたいだけど、まだ老け込む年じゃねぇだろ」
弓月(yuzuki158_48)「あはは。そうですね。ほんとになんでもないんです。ただ、最近、偏頭痛が多くて……」
戒理(kairi159_61) 「あ?偏頭痛?」
弓月(yuzuki160_49)「ええ……。前はそんな事はなかったんですけど、最近いやに多くて……。
あ、でも大丈夫です。
薬もちゃんと飲んでますし、睡眠もとってますし、たぶん、すぐに治りますよ……」
戒理(kairi161_62) 「でも……」
弓月(yuzuki162_50)「ほんとに平気です。ご心配おかけしてすみません……」
戒理(kairi163_63) 「いや、それは別にいいんだが……(でも……何か気になるんだよな……。
この不安は…一体何なんだろう……)」
戒理(kairi164_64) 「(N)この時の俺は、俺の不安が現実のものになるなんて、
夢にも思ってなかったんだ……」
(その数週間後)
(SE:ドアを開ける音)
戒理(kairi165_65) 「おい、弓月。今日は久し振りにオフだし、どっか一緒に出かけねぇ?」
弓月(yuzuki166_51)「あなたは……誰です?」
戒理(kairi167_66) 「は?お前、何言ってんの?俺は俺に決まってるだろ?」
弓月(yuzuki168_52)「あなたこそ何言ってるんです?僕はあなたなんて知りませんよ」
戒理(kairi169_67) 「お…おい。弓月……?」
弓月(yuzuki170_53)「僕の名前を気安く呼ばないで下さいよ。僕の名前を呼んでいいのは、彼だけです」
戒理(kairi171_68) 「彼……?おい、弓月、お前どうしちまったんだよ!?俺の事がわからねえのか!?」
弓月(yuzuki172_54)「放してくださいっ!!僕はあなたなんて知りませんっ!!」
戒理(kairi173_69) 「お前、もしかして時雨になんかされたのか!?それとも何か言われたのか!?」
弓月(yuzuki174_55)「いい加減にしてくださいっ!!
時雨なんて人も知らないですし、あなたも知りませんっ!!
僕はずっと一人で生活してきたんですっ!!」
戒理(kairi175_70) 「くそっ……弓月っ!!」
弓月(yuzuki176_56)「なっ……放してくださいっ!!押し倒すなんてっ……卑怯ですよっ!!」
戒理(kairi177_71) 「弓月っ!ほんとに俺の事忘れちまったのか!?なぁ弓月っ!答えろよっ!」
弓月(yuzuki178_57)「いやっ!!放してくださいっ!!なぜこんな事をするんです!?」
戒理(kairi179_72) 「俺を思い出させるには、これしかねぇだろ!?」
弓月(yuzuki180_58)「んんっ……あっ…かっ…戒理……さん……?」
戒理(kairi181_73) 「……想いだしてくれたか……?」
弓月(yuzuki182_59)「かっ…戒理さん……僕…何か言いましたか……?」
戒理(kairi183_74) 「あ?お前……おぼえてねえのか……?」
弓月(yuzuki184_60)「……また…言ってしまったんですね……」
戒理(kairi185_75) 「また?どういうことだ……?」
弓月(yuzuki186_61)「……僕、たまに自分が何を言ってるかわからなくなる時があるんです……。
記憶がないというか……」
戒理(kairi187_76) 「何…だって……?」
弓月(yuzuki188_62)「…戒理さん……お願いがあります。僕の事は忘れてください……。
このままでは、また僕は戒理さんに変な事を言ってしまうっ!
戒理さんに、これ以上迷惑をかけたくありませんっ!!」
戒理(kairi189_77) 「な、何言ってんだよ……弓月……。そんな事、出来るわけねえだろ!?」
弓月(yuzuki190_63)「いいえ……。僕、恐いんです。自分が自分でなくなっていくのが……。
それにこのままでは、僕は戒理さんまで忘れてしまいますっ!
今は一時期だけでも。きっと、明日にはそれがもっと長くなって、
明後日には、もっと長くなる……。そしたら僕はっ……!!」
戒理(kairi191_78) 「構わねぇよ……」
弓月(yuzuki192_64)「戒理……さん……?」
戒理(kairi193_79) 「たとえお前が俺を忘れても、俺はお前と一緒にいたいんだっ!
お前が苦しんでるなら、俺がその苦しみからお前を解放してやるっ!!
前にも言ったろ?お前は俺が絶対に守るって……。
だから、そんな事……言うなよ……」
弓月(yuzuki194_65)「戒理さん……」
戒理(kairi195_80) 「俺の事……信じて欲しいんだ……」
弓月(yuzuki196_66)「……はい。戒理さん……」
戒理(kairi197_81) 「(N)こうして俺は弓月を助けるためにあらゆる手をつくし、
弓月の病状について調べ始めた。
こうして調査を進めていくうちに、弓月がかかったのは
当時では治療法も見つかっていない、不治の病だと
言う事がわかった。俺をそれを知った直後、
その治療法を見つけるために、様々な実験を繰り返した。
それでも治療法は見つからなくて……
日を追うごとに弓月の病状は悪化していくばかりだった。
そしてとうとう……」
弓月(yuzuki198_67)「戒理……さん……」
戒理(kairi199_82) 「ん?なんだ?」
弓月(yuzuki200_68)「僕…あなたに会えてほんとによかったと思っています……。
そして、最後まで僕の事を気遣ってくれて…
ほんとにありがとうございました……」
戒理(kairi201_83) 「そんな事はどうだっていい。そんな、最期の言葉みたいなの、やめろよ……。
絶対に、俺がお前を治してやるから……!!」
弓月(yuzuki202_69)「…ありがとうございます……でももう…僕…だめみたいなんです
……あなたの名前が……わからない……」
戒理(kairi203_84) 「ゆ、弓月っ!」
弓月(yuzuki204_70)「僕は…なんて名前でしたっけ……?あなた…知ってますか……?」
戒理(kairi205_85) 「くそっ!なんでいきなり病状が悪化すんだよ!?
俺は戒理。お前は弓月っ!!わかるか!?」
弓月(yuzuki206_71)「そう…でしたっけ……?」
戒理(kairi207_86) 「ああそうだよっ!!
お前はエリート部から俺のとこにきて今や俺の助手となった弓月っ!」
弓月(yuzuki208_72)「……僕は……あなたなんて知りませんけど……?」
戒理(kairi209_87) 「くっそぉっ!!なんでこうなっちまうんだよっ!!
俺は戒理でお前の上司っ!!わかるだろ!?」
弓月(yuzuki210_73)「…わかりません……。でも…その名前…彼と一緒ですね……」
戒理(kairi211_88) 「え……?」
弓月(yuzuki212_74)「僕が心から愛した……唯一の人の名前と……。
そして彼は…僕を助けてくれたんです……」
戒理(kairi213_89) 「それって……」
弓月(yuzuki214_75)「もし…その彼に出会ったら、伝えてもらえませんか……?
僕は…ずっとあなたを愛していると……。
僕が死んでも…ずっとあなたのそばにいると……」
戒理(kairi215_90) 「弓月……。あぁ……。伝えて…おくよ……」
弓月(yuzuki216_76)「ありがとうございます……これでもう……思い残すことはありません……。
でも最期に一目だけでも…彼に会いたかったで…すね……」
戒理(kairi217_91) 「……そいつは…今お前の目の前にいるぜ……」
弓月(yuzuki218_77)「…ほんと…だ……。最期に会えて…ほんとに……よかった……」
戒理(kairi219_92) 「弓月っ!!」
弓月(yuzuki220_78)「さようなら……そして…ありがとう……戒…理…さん……」
戒理(kairi221_93) 「弓月ぃぃぃぃ!!!!」
(回想シーン終わり)
戒理(kairi222_94) 「そうして…弓月は静かにその姿を消した……
俺が…絶対守るって約束したのに……」
水梛(mizuna223_28)「戒理……」
戒理(kairi224_95) 「さっ、もう思い出話はいいだろ。
お前、早く資料室の掃除すませろよ。まだ途中だろ?」
水梛(mizuna225_29)「あ、うん……。じゃあ、先に…戻ってるよ……」
戒理(kairi226_96) 「ああ。早く済ませろよ」
水梛(mizuna227_30)「わかった……」
(SE:消える音)
水梛(mizuna228_31)「それにしても…あんな戒理、初めて見た……。よっぽど好きだったんだな……
その弓月って人が……。僕は……何にも知らないんだな。戒理の事…。
ここに住むようになってからもうしばらく経つのに……。
ま、そんな事いちいち気にしてもしょうがない…か……。
さて…早く片付けないと、また戒理にどやされるな……」
戒理(kairi229_97) 「弓月……俺の声が聞こえているか……?
結局俺は…お前を死なせちまったんだよな……俺のせいで……お前は…」
弓月(yuzuki230_79)『そんな事はないですよ。戒理さんは僕を助けるために、
あそこまでしてくれたんです……。
僕はそれだけで…十分ですよ……』
戒理(kairi231_80) 「弓月っ!?ふっ……そんな事あるわけねえよな……あ〜あ。
幻聴まで聞こえちゃったよ……。
やっぱ今日は…なんか変だな…俺……。
さてと。花も添えたし、帰るとするかっ!弓月…さんきゅうな……」
(SE:消える音)
弓月(yuzuki232_80)『戒理さん……愛しています……。
いつまでも…いつまでも……僕はずっとあなたのそばに……』
僕がいつもと変らず資料室の掃除をしていると、
そこの窓から戒理(かいり)が何やら空を見上げ、
ボーッとしてるのを発見した。
いつも研究室からほとんどでない戒理(かいり)だけに、
中庭なんかになんかにいるなんてほんとに珍しい事だった。
いつもでは絶対にありえない光景に僕は何かを感じ、
資料室の掃除を一時中断し、僕も中庭のほうに向かった。
中庭に出ると、ずっと部屋の中にいたせいか、
ちょっとまぶしすぎるような気もしたが、
木の上からは小鳥の泣く声も聞こえてくる。
天気もとてもよく、まさに絶好のピクニック日和と
言えそうなほど外はすがすがしかった。
僕は戒理(かいり)に近づくと、そっと肩を叩き、呼びかけた」
水梛(mizuna02_02)「なあ、戒理(かいり)……」
戒理(kairi03_01) 「うお!!み…水梛(みずな)っ。お前、資料室の掃除はどうしたんだよ!?」
水梛(mizuna04_03)「な、何そんなに驚いてるんだよ…いや、
いつも研究室にこもりっきりの戒理が中庭なんかに出てるから。
どうしたのかと思ってきてみたんだ」
戒理(kairi05_02) 「ちっ……余計な事を……(さみしげに)今日は…特別なんだよ」
水梛(mizuna06_04)「特別……?」
戒理(kairi07_03) 「そっ。だから俺はこれから出かけなきゃならないの。あ…、絶対ついてくるなよ?」
水梛(mizuna08_05)「どうして?」
戒理(kairi09_04) 「どうしてって……どうしてもだっ!!じゃあなっ!!」
水梛(mizuna10_06)「あ、戒理っ……(少し考えて)ついてくるなと言われて、
ついていかない奴はいないぞ?戒理……」
水梛(mizuna11_07)「(N)そういうと僕は、戒理の残留思念をたどって、追いかけることにした」
※
水梛(mizuna12_08)「とりあえず戒理の残留思念を辿ってここまで来たけど……
ここってどう見ても墓場だよな……?
もしかして戒理の奴、死者を掘り起こして
また変な実験をするつもりじゃないだろうな……」
水梛(mizuna13_09)「(N) そう。戒理は以前にもここと同じ墓場に来て、
自分の研究のためにここにある死体をいくつかくすねていった前科がある。
確かその時も「特別な理由で…」とかなんとか言ってたから、
その可能性はなきにしもあらずだ……」
水梛(mizuna14_10)「ったく…今回もそれじゃなきゃいいがな……って、みつけた。
つか…あいつ、墓の前につったって何してるんだ?」
戒理(kairi_15_05)「(遠くでしゃべってる雰囲気でお願いします)弓月(ゆづき)……
あれからもう何年がたったんだろうな……?
お前が…死んでしまったあの日から……」
水梛(mizuna16_11)「え?死んだ……?それに弓月(ゆづき)って……
一体誰だ…?って、あれ?いな……」
戒理(kairi17_06) 「やっぱついて来やがって。お前、そんなに俺の事知りたいのか?」
水梛(mizuna18_12)「か…戒理っ!?何時の間に俺の後にっ……!!」
戒理(kairi19_07) 「お前気配消すの下手だな〜。そんなんじゃスパイ活動は出来ねえぞ」
水梛(mizuna20_13)「僕は別になる気もないしする気もない」
戒理(kairi21_08) 「あっそ。ったく……お前がそんなに聞きたいなら
話してやってもいいけど、後で高くつくぜ?」
水梛(mizuna22_14)「(N)……やはりそう来たか……。いっつもそうだ。
戒理の事を聞こうとすると必ずこのセリフが返ってくる。
そのせいでどれだけ僕が悩んだことか……」
水梛(mizuna23_15)「戒理ッ!毎度の事ながら卑怯だぞっ!!」
戒理(kairi24_09) 「俺から情報をもらうってのはそういう事だ。
何かを得る為にはそれなりの代価が必要となる。等価交換ってね」
水梛(mizuna25_16)「これのどこが等価交換だッ!」
戒理(kairi26_10) 「どうすんだ〜?聞くか?やめとくか?」
水梛(mizuna27_17)「くっ……(戒理にされるのは絶対に嫌だ。でも気になるし……
まあ一回ぐらいなら……でも戒理だし……)」
戒理(kairi28_11) 「ってかさ、なんでお前ってそこでいつも悩むんだ……?
普通ここって悩み所じゃねえだろ!?」
水梛(mizuna29_18)「そ、そりゃそうだけど……」
戒理(kairi30_12) 「だぁもう、めんどくせぇ!!わかったよッ!
(しぶしぶと)弓月は、俺の恋人だったんだよ」
水梛(mizuna31_19)「こ、恋人!?」
戒理(kairi32_13) 「な…なんでそんな驚くんだよ…?」
水梛(mizuna33_20)「だ、だって戒理って、恋とかにぜんっぜん興味持たなそうだし、
それに……戒理って……」
戒理(kairi34_14) 「何だよ……」
水梛(mizuna35_21)「え…いや…だから…その……」
戒理(kairi36_15) 「あー、わかった。俺が男にしか興味ないとか思ってんだろ。
別に俺だって男だけが好きってわけじゃないぞ?
ちゃんと女も好きだし、どっちでもいける口なんだよ」
水梛(mizuna37_22)「………あんまり説得力ないけど……」
戒理(kairi38_16) 「うっせーな!別にいいだろ、バイだって」
水梛(mizuna39_23)「そ、そりゃあ否定する気もないけど……」
水梛(mizuna40_24)「(N) って…なんか…どんどん話しがすごい方向に行くような気が……
ってゆうか戒理からこんなセリフが出るとは思っても見なかった……」
戒理(kairi41_17) 「ともかくっ!!弓月は…俺が愛した唯一の人。
結局そいつも…不治の病で死んじまったけどな……」
水梛(mizuna42_25)「ふ…不治の病って……?」
戒理(kairi43_18) 「(少し悲しげに)……その病気はな、脳に腫瘍が出来て、
初めは頭痛とかのたいした症状しかでないんだが、
それに侵されるとだんだんと脳が侵食されていき、
今言った事をすぐ忘れたり、すぐ前の事が思い出せなくなる。
そして終いには自分すらもわからなくなり死んでいく……。
そんな病気だ……」
水梛(mizuna44_26)「そんな病気が……あるのか……?」
戒理(kairi45_19) 「そ。まぁその病気が発病するのは何千万人に一人というごく稀な病気で、
当時はまだその病気の治療法は解明されてなく、
未だに解明されていない。俺は弓月がその病気にかかっている事を知り、
その治療法を研究したんだが…結局間に合わず、あいつは……」
水梛(mizuna46_27)「……死んだんだな……」
戒理(kairi47_20) 「ああ……。あの時の思い出は…忘れたくても忘れられないことばかりだ……」
※
戒理(kairi48_21) 「(N)俺とあいつが出会ったのは、何百年も前、魔界にあるとある研究所だった。
俺はその時医療部の主任研究員で、日々魔界医学の研究をしていた。
そんな時、新しい奴がこの部署に配属されることになり、
そして来たのが弓月だった……。」
戒理(kairi49_22) 「で?お前が弓月か?」
弓月(yuzuki50_01)「はい。今日からここで働くことになった弓月という者です、
どうぞよろしくお願いします」
戒理(kairi51_23) 「お、おう……」
戒理(kairi52_24) 「(N)その時の弓月の第一印象は、ともかく「キレイな奴」だ。
顔立ちもルックスもすべてパーフェクト。
優しい口調と微笑みは、この俺ですら見とれてしまうほどだった……」
戒理(kairi53_25) 「で?え〜っと……ここに来る前は…特殊医療部って……
お前そんなエリートんとこにいたのか!?」
弓月(yuzuki54_02)「あ…はい……まぁ…」
戒理(kairi55_26) 「お前行ったい何やらかしたんだよ?こんなとこに回されるなんて……」
弓月(yuzuki56_03)「ちょっと…色々ありまして……(苦笑)」
戒理(kairi57_27) 「あ…わりぃ……」
戒理(kairi58_28) 「(N)あっちゃ〜……そういう理由かよ……。そう。
この部署はぶっちゃけこの研究所の中では一番どうでもいい……
っていうか、やる気のない連中が集まったっていうか……
ともかく、この研究所ではあまり必要とされていない部署なんだ。
ま、そんなわけからここに回される奴は他のとこの主任研究員とぶつかったか、
リストラされたか奴がほとんどだ。
そんな中でもごくたまに、弓月みたいな奴がいんだよな〜。
ま、ぶっちゃけほとんど男ばっかの世界だしな。
特に弓月なんて、ぶっちゃけ格好のいいカモなわけで……
まあしょうがないと言っちゃあそれまでなんだがな……」
戒理(kairi59_29) 「ま、まぁ理由はどうあれ、今日からお前もこの部署の一員だ。
エリート部みたいな扱いはねぇけど、しっかりがんばってくれよな」
弓月(yuzuki60_04)「はい。よろしくお願いします」
戒理(kairi61_30) 「あ、俺の自己紹介がまだだったな。俺は戒理。
この部署の主任研究員だ、一応ここで一番上の立場だから、
何かわからない事があったら全て俺に聞け。んじゃ、早速で悪いんだけど、
このレポート用紙に書いてある実験をしてくれ。
エリート部ならこれぐらい楽勝だろ?」
弓月(yuzuki62_05)「はい。わかりました」
戒理(kairi63_31) 「じゃあよろしくな」
弓月(yuduki64_06)「はい」
戒理(kairi65_32) 「(N)実際、弓月は不思議な奴だった。
エリート部の奴等はどうもこういけすかないというか……
ぶっちゃけ生意気な奴ばかりなんだが、
こいつからはそんな事を微塵も感じさせなかった。
とても素直でそれでいて実験もパーフェクトにこなす。
そんな弓月に、俺はだんだんとひかれていった。
もちろん優秀な俺の部下としてだが、日が経つにつれて、
弓月に対する俺の想いは、日に日に強くなっていった。
そんなある日の事だ……。弓月がここに来てから数日後、
また俺の下に新しい奴が来ることになった。
そいつの名前は時雨(しぐれ)といい、データによると、そいつも元エリート部らしい。
ただそいつがここで働くようになってからというもの、
弓月はあまり元気がない様子だった。
相変わらず笑顔で仕事をしているとはいえ、様子がおかしいのは明らかだった」
戒理(kairi66_33) 「……おい、弓月ッ!弓月ッ!!」
弓月(yuzuki67_07)「あっ!はい……。なんでしょう?」
戒理(kairi68_34) 「それ、量間違ってる」
弓月(yuduki69_08)「え!?す…すみません……」
戒理(kairi70_35) 「お前最近変だぞ?実験も間違いが多いし、何かあったのか?」
弓月(yuduki71_09)「い、いえ…別に…なんでもないです……」
戒理(kairi72_36) 「ならいいんだけどさ、最近明らかに元気がないみたいだし、本当に何もないのか?」
弓月(yuduki73_10)「だ、大丈夫です。ご心配おかけしてすみませんでした。戒理さん」
戒理(kairi74_37) 「ん〜……まぁいずれにせよ、何か困った事があったら何でも俺に言えよ。
いつでも相談に乗るから」
弓月(yuzuki75_11)「はい。ありがとうございます(にっこり)」
戒理(kairi76_38) 「(N)そういうと弓月はにっこりと笑う。でも俺には、弓月のその笑顔が、
どうも哀しい笑顔にしか見えてならなかった。
心の底から笑っていない、とても違和感のある笑顔。
その笑顔の意味を知りたかったが、これ以上聞いても
「何でもないです」が返ってくるだけだろうと判断し、
俺はあらかじめ用意しておいた実験のレポートを弓月に渡す」
戒理(kairi77_39) 「じゃ、これ新しい実験のレポート。今のが終わったらすぐとりかかってくれ。
あ、くれぐれも、量は間違えないようにな」
弓月(yuzuki78_12)「はい。気をつけます……」
戒理(kairi79_40) 「んじゃあよろしくな〜」
弓月(yuzuki80_13)「はいっ」
戒理(kairi81_41) 「(N)そして数日がすぎた、ある日の事だった……」
時雨(sigure82_01)「弓月、ちょっといいか?」
弓月(yuzuki83_14)「し…時雨……。な、何ですか……」
弓月(yuzuki84_15)「(N)ある日の事、僕が机に向かい、
昨日の実験のレポートを書いていると、時雨が突然僕の隣の席に現れました」
時雨(sigure85_02)「ちょっとこの実験でわかんないことがあるんだけどさ、ちょっと教えてくんない?」
弓月(yuzuki86_16)「い、いいですけど……」
時雨(sigure87_03)「なぁ弓月〜、そんなにおびえるなよ。
俺はわざわざここまでお前を追いかけてきたんだぜ?
なのになんでそんなよそよそしいんだよ……
あんなに愛し合った中じゃねえか……」
弓月(yuzuki88_17)「(N)そういうと時雨は腕をすっと僕の腰に手をまわす」
弓月(yuzuki89_18)「いい加減にしてくださいっ!あなたと僕はもう何でもないはずですっ!
なんで僕につきまとうんですか!?」
時雨(sigure90_04)「今でもお前を好きだからだよ……」
弓月(yuzuki91_19)「し…時雨……こんなところでっ……」
時雨(sigure92_05)「今夜、俺の部屋で待ってる……。来るだろ?来れない訳ねえよなぁ……。
今までの事、全部戒理さんにばらすぜ……それでもいいのか……?」
弓月(yuzuki93_20)「それはっ……」
時雨(sigure94_06)「嫌だろ?愛しの戒理さんに今までの事をばらされるのはさ……」
弓月(yuzuki95_21)「なっ…なんでその事をっ……」
時雨(sigure96_07)「この俺が知らないとでも思ったのか?
お前がこんなとこに来たのだって、戒理さんがいたからなんだろ?」
弓月(yuzuki97_22)「そ、それは……」
時雨(sigure98_08)「ふ……。だったら今夜は必ず来るよな?今夜も楽しもうぜ?いつもみたいにさ……」
弓月(yuzuki99_23)「……はい……」
時雨(sigure100_09)「今夜も楽しみにしてるぜ?弓月……」
(SE:去っていく音)
弓月(yuzuki101_24)「……時雨……。あなたはいつまで僕を苦しませればきが済むんですか……?」
(しばし間)
(で、場面はその問題の夜)
弓月(yuzuki102_25)「し……時雨……も…もう…やめて…ください……」
時雨(sigure103_10)「嫌だね。お前まだ達ってねえだろ?それにまだ夜は始まったばかりだぜ……?」
弓月(yuduki104_26)「あぁっ……いや……!ど…どうしてです……?」
時雨(sigure105_11)「何が?」
弓月(yuzuki106_27)「僕とあなたは……もう…終わった……はずです。なのに…こんな事までして……
どうして僕につきまとうんですか……?」
時雨(sigure107_12)「お前が忘れられないからだよ……。こんなに俺を愛してくれた……お前だから……」
弓月(yuzuki108_28)「くぁ……い…いや……いやぁ……」
時雨(sigure109_13)「お前だって俺の事…忘れられないだろ……?」
弓月(yuzuki110_29)「僕はもう…あなたの事はっ……」
時雨(sigure111_14)「うるせえんだよっ!!お前がどう思っていようが、そんなの関係ねぇ!!」
弓月(yuzuki112_30)「いたっ……や…やめ……くっ……あぁ…いやぁっ…!」
時雨(sigure113_15)「お前がどんなに戒理さんを好きかは知らねえが、
俺とお前の方がいいにきまってるだろ!?」
弓月(yuzuki114_31)「そんなの…勝手すぎますっ!!」
時雨(sigure115_16)「はんっ。お前にそんな事言えた義理かよ?お前だって俺の事を捨てたじゃねえか」
弓月(yuzuki116_32)「捨てただなんて……あぁっ……くぁ……いや…」
時雨(sigure117_17)「違うってのか?だったら、なんでそんなに俺と会うのを嫌がるんだよ……」
弓月(yuzuki118_33)「そ、それはっ……」
時雨(sigure119_18)「ほ〜らな。やっぱ否定できねえじゃん。だから今夜は……いつもより派手に行こうぜ……」
弓月(yuzuki120_34)「くぁ…ぁっ……くっ……あぁ…いやぁっ…!(戒理さんっ……助けてっ……!)」
戒理(kairi121_42) 「おや〜?随分といいことしてるじゃないの?時雨くん?」
時雨(sigure122_19)「か…戒理さんっ……!どうしてここに……」
戒理(kairi123_43) 「いや〜、最近弓月の様子がおかしかったからさ、ちょっと気になって調べてたんだよね〜。
そしたら、お前がエリート部で弓月と付き合っていたという噂を聞いてね。
まさかと思って来てみたら、この有り様ってわけ」
時雨(sigure124_20)「だったら何だって言うんです?誰がなんと言おうと、弓月は俺のモノです。
後からでて来たあなたなんかに渡しはしない……」
弓月(yuzuki125_35)「なっ……し、時雨っ…やめてくださいっ…戒理さんがいるのに……」
時雨(sigure126_21)「誰がいたってかまわねえよ。丁度いいじゃねえか。
俺とお前がどんなに愛し合っているか戒理さんに見せ付けてやれば……」
弓月(yuzuki127_36)「いや…だめっ……!」
戒理(kairi128_44) 「ったくよ〜、これだからエリート部の連中はムカツクんだよ……。時雨っ!
てめえもいい加減に弓月を放せっ!!」
(SE:何か音)
時雨(sigure129_22)「なっ…体がっ……動かない……。戒理さん…何をっ……」
戒理(kairi130_45) 「見ててまじうぜえから、薬を打ち込んでやったのさ……。
だからてめえは大人しく、とっととエリート部に帰んなっ!!」
(SE:殴る音)
時雨(sigure131_23)「ぐはっ……。くそっ!俺は……まだあきらめねえからな……」
(SE:倒れる音)
戒理(kairi132_46) 「けっ!しばらくそこでおねんねしてな……。おい、弓月、大丈夫か?」
弓月(yuzuki133_37)「は、はい……何…とか……」
戒理(kairi134_47) 「ったく、何か困った事があれば俺に言えっていつも言ってるだろ?
何で今まで黙ってたんだ」
弓月(yuzuki135_38)「戒理さんに…迷惑をかけたくなかったから…です……」
戒理(kairi136_48) 「違うな。お前、時雨におどされてただろ?」
弓月(yuzuki137_39)「そ、それは……はい…。戒理さんには…すべてお見通し…ですね……」
戒理(kairi138_49) 「別に。ただそんな気がしただけだよ。
そんな事より、これからも何かあったら必ず俺に言え。
俺が…絶対にお前を守ってやるから……」
弓月(yuzuki139_40)「戒理さん……」
戒理(kairi140_50) 「これからは、何があってもお前を守る。お前だけは…絶対に……」
弓月(yuzuki141_41)「はい……ありがとうございます……」
戒理(kairi142_51) 「(N)こうして俺達は、互いに恋人と呼べるようになった。
それからも時雨はこりもせず何かとちょっかいを出してきたが、
俺がどでかい鉄拳を食らわしてやったら、
すごすごとエリート部に帰っていきやがった。
これで平和になったと思ったのもつかの間、
運命の女神は、俺達にほほえんでくれることはなかった……」
(その一ヶ月後ぐらい)
戒理(kairi143_52) 「さてと……。今日も昨日の実験の続きをしねえとな。いい加減ケリをつけねえと、
次の段階に進めねぇからな。……それにしても、
今日は弓月の奴いつになく遅ぇな。何かあったのか?」
(SE:ドアの開く音)
弓月(yuzuki144_42)「すみませんっ!遅くなりましたっ!!」
戒理(kairi145_53) 「お〜、弓月。今日は随分と遅いじゃねぇか。
お前にしてはめずらしいな。何かあったのか?」
弓月(yuzuki146_43)「いえ、朝起きたら、あまり気分がよくなくて……。
ちょっと休んでから行こうと思ってたのですが、
気付いたらもうこんな時間で……。すみませんでした」
戒理(kairi147_54) 「別にかまわねぇよ。気分がよくないって……来て大丈夫だったのか?」
弓月(yuzuki148_44)「はい。少し休んだらだいぶよくなりましたので」
戒理(kairi149_55) 「そうか?ならいいんだが……もし気分が悪くなったらすぐ言えよ。早退させてやっから」
弓月(yuzuki150_45)「そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ。ご心配おかけしてすみませんでした。
今日は昨日の実験の続きですよね?」
戒理(kairi151_56) 「あ、あぁ……」
戒理(kairi152_57) 「(N)その時はただの風邪の初期症状か何かだと思っていたんだが、
日を追うごとに、弓月がかかっていた病気が
明らかにフツウの病気ではないという事が明らかになっていった……」
(その数週間後)
戒理(kairi153_58) 「おい、弓月。それ、お前昨日も間違えてたぞ?昨日が俺が言ったこと、覚えてるか?」
弓月(yuzuki154_46)「え?あっ…はい。えっと……」
戒理(kairi155_59) 「この実験は試験薬を間違えるだけで
まったく別の結果が出ちまうから、絶対に試験薬は間違えるな。だろ?」
弓月(yuzuki156_47)「あっ、そうでしたね……。すみません……」
戒理(kairi157_60) 「ホントにお前大丈夫か?
最近物忘れが激しいみたいだけど、まだ老け込む年じゃねぇだろ」
弓月(yuzuki158_48)「あはは。そうですね。ほんとになんでもないんです。ただ、最近、偏頭痛が多くて……」
戒理(kairi159_61) 「あ?偏頭痛?」
弓月(yuzuki160_49)「ええ……。前はそんな事はなかったんですけど、最近いやに多くて……。
あ、でも大丈夫です。
薬もちゃんと飲んでますし、睡眠もとってますし、たぶん、すぐに治りますよ……」
戒理(kairi161_62) 「でも……」
弓月(yuzuki162_50)「ほんとに平気です。ご心配おかけしてすみません……」
戒理(kairi163_63) 「いや、それは別にいいんだが……(でも……何か気になるんだよな……。
この不安は…一体何なんだろう……)」
戒理(kairi164_64) 「(N)この時の俺は、俺の不安が現実のものになるなんて、
夢にも思ってなかったんだ……」
(その数週間後)
(SE:ドアを開ける音)
戒理(kairi165_65) 「おい、弓月。今日は久し振りにオフだし、どっか一緒に出かけねぇ?」
弓月(yuzuki166_51)「あなたは……誰です?」
戒理(kairi167_66) 「は?お前、何言ってんの?俺は俺に決まってるだろ?」
弓月(yuzuki168_52)「あなたこそ何言ってるんです?僕はあなたなんて知りませんよ」
戒理(kairi169_67) 「お…おい。弓月……?」
弓月(yuzuki170_53)「僕の名前を気安く呼ばないで下さいよ。僕の名前を呼んでいいのは、彼だけです」
戒理(kairi171_68) 「彼……?おい、弓月、お前どうしちまったんだよ!?俺の事がわからねえのか!?」
弓月(yuzuki172_54)「放してくださいっ!!僕はあなたなんて知りませんっ!!」
戒理(kairi173_69) 「お前、もしかして時雨になんかされたのか!?それとも何か言われたのか!?」
弓月(yuzuki174_55)「いい加減にしてくださいっ!!
時雨なんて人も知らないですし、あなたも知りませんっ!!
僕はずっと一人で生活してきたんですっ!!」
戒理(kairi175_70) 「くそっ……弓月っ!!」
弓月(yuzuki176_56)「なっ……放してくださいっ!!押し倒すなんてっ……卑怯ですよっ!!」
戒理(kairi177_71) 「弓月っ!ほんとに俺の事忘れちまったのか!?なぁ弓月っ!答えろよっ!」
弓月(yuzuki178_57)「いやっ!!放してくださいっ!!なぜこんな事をするんです!?」
戒理(kairi179_72) 「俺を思い出させるには、これしかねぇだろ!?」
弓月(yuzuki180_58)「んんっ……あっ…かっ…戒理……さん……?」
戒理(kairi181_73) 「……想いだしてくれたか……?」
弓月(yuzuki182_59)「かっ…戒理さん……僕…何か言いましたか……?」
戒理(kairi183_74) 「あ?お前……おぼえてねえのか……?」
弓月(yuzuki184_60)「……また…言ってしまったんですね……」
戒理(kairi185_75) 「また?どういうことだ……?」
弓月(yuzuki186_61)「……僕、たまに自分が何を言ってるかわからなくなる時があるんです……。
記憶がないというか……」
戒理(kairi187_76) 「何…だって……?」
弓月(yuzuki188_62)「…戒理さん……お願いがあります。僕の事は忘れてください……。
このままでは、また僕は戒理さんに変な事を言ってしまうっ!
戒理さんに、これ以上迷惑をかけたくありませんっ!!」
戒理(kairi189_77) 「な、何言ってんだよ……弓月……。そんな事、出来るわけねえだろ!?」
弓月(yuzuki190_63)「いいえ……。僕、恐いんです。自分が自分でなくなっていくのが……。
それにこのままでは、僕は戒理さんまで忘れてしまいますっ!
今は一時期だけでも。きっと、明日にはそれがもっと長くなって、
明後日には、もっと長くなる……。そしたら僕はっ……!!」
戒理(kairi191_78) 「構わねぇよ……」
弓月(yuzuki192_64)「戒理……さん……?」
戒理(kairi193_79) 「たとえお前が俺を忘れても、俺はお前と一緒にいたいんだっ!
お前が苦しんでるなら、俺がその苦しみからお前を解放してやるっ!!
前にも言ったろ?お前は俺が絶対に守るって……。
だから、そんな事……言うなよ……」
弓月(yuzuki194_65)「戒理さん……」
戒理(kairi195_80) 「俺の事……信じて欲しいんだ……」
弓月(yuzuki196_66)「……はい。戒理さん……」
戒理(kairi197_81) 「(N)こうして俺は弓月を助けるためにあらゆる手をつくし、
弓月の病状について調べ始めた。
こうして調査を進めていくうちに、弓月がかかったのは
当時では治療法も見つかっていない、不治の病だと
言う事がわかった。俺をそれを知った直後、
その治療法を見つけるために、様々な実験を繰り返した。
それでも治療法は見つからなくて……
日を追うごとに弓月の病状は悪化していくばかりだった。
そしてとうとう……」
弓月(yuzuki198_67)「戒理……さん……」
戒理(kairi199_82) 「ん?なんだ?」
弓月(yuzuki200_68)「僕…あなたに会えてほんとによかったと思っています……。
そして、最後まで僕の事を気遣ってくれて…
ほんとにありがとうございました……」
戒理(kairi201_83) 「そんな事はどうだっていい。そんな、最期の言葉みたいなの、やめろよ……。
絶対に、俺がお前を治してやるから……!!」
弓月(yuzuki202_69)「…ありがとうございます……でももう…僕…だめみたいなんです
……あなたの名前が……わからない……」
戒理(kairi203_84) 「ゆ、弓月っ!」
弓月(yuzuki204_70)「僕は…なんて名前でしたっけ……?あなた…知ってますか……?」
戒理(kairi205_85) 「くそっ!なんでいきなり病状が悪化すんだよ!?
俺は戒理。お前は弓月っ!!わかるか!?」
弓月(yuzuki206_71)「そう…でしたっけ……?」
戒理(kairi207_86) 「ああそうだよっ!!
お前はエリート部から俺のとこにきて今や俺の助手となった弓月っ!」
弓月(yuzuki208_72)「……僕は……あなたなんて知りませんけど……?」
戒理(kairi209_87) 「くっそぉっ!!なんでこうなっちまうんだよっ!!
俺は戒理でお前の上司っ!!わかるだろ!?」
弓月(yuzuki210_73)「…わかりません……。でも…その名前…彼と一緒ですね……」
戒理(kairi211_88) 「え……?」
弓月(yuzuki212_74)「僕が心から愛した……唯一の人の名前と……。
そして彼は…僕を助けてくれたんです……」
戒理(kairi213_89) 「それって……」
弓月(yuzuki214_75)「もし…その彼に出会ったら、伝えてもらえませんか……?
僕は…ずっとあなたを愛していると……。
僕が死んでも…ずっとあなたのそばにいると……」
戒理(kairi215_90) 「弓月……。あぁ……。伝えて…おくよ……」
弓月(yuzuki216_76)「ありがとうございます……これでもう……思い残すことはありません……。
でも最期に一目だけでも…彼に会いたかったで…すね……」
戒理(kairi217_91) 「……そいつは…今お前の目の前にいるぜ……」
弓月(yuzuki218_77)「…ほんと…だ……。最期に会えて…ほんとに……よかった……」
戒理(kairi219_92) 「弓月っ!!」
弓月(yuzuki220_78)「さようなら……そして…ありがとう……戒…理…さん……」
戒理(kairi221_93) 「弓月ぃぃぃぃ!!!!」
(回想シーン終わり)
戒理(kairi222_94) 「そうして…弓月は静かにその姿を消した……
俺が…絶対守るって約束したのに……」
水梛(mizuna223_28)「戒理……」
戒理(kairi224_95) 「さっ、もう思い出話はいいだろ。
お前、早く資料室の掃除すませろよ。まだ途中だろ?」
水梛(mizuna225_29)「あ、うん……。じゃあ、先に…戻ってるよ……」
戒理(kairi226_96) 「ああ。早く済ませろよ」
水梛(mizuna227_30)「わかった……」
(SE:消える音)
水梛(mizuna228_31)「それにしても…あんな戒理、初めて見た……。よっぽど好きだったんだな……
その弓月って人が……。僕は……何にも知らないんだな。戒理の事…。
ここに住むようになってからもうしばらく経つのに……。
ま、そんな事いちいち気にしてもしょうがない…か……。
さて…早く片付けないと、また戒理にどやされるな……」
戒理(kairi229_97) 「弓月……俺の声が聞こえているか……?
結局俺は…お前を死なせちまったんだよな……俺のせいで……お前は…」
弓月(yuzuki230_79)『そんな事はないですよ。戒理さんは僕を助けるために、
あそこまでしてくれたんです……。
僕はそれだけで…十分ですよ……』
戒理(kairi231_80) 「弓月っ!?ふっ……そんな事あるわけねえよな……あ〜あ。
幻聴まで聞こえちゃったよ……。
やっぱ今日は…なんか変だな…俺……。
さてと。花も添えたし、帰るとするかっ!弓月…さんきゅうな……」
(SE:消える音)
弓月(yuzuki232_80)『戒理さん……愛しています……。
いつまでも…いつまでも……僕はずっとあなたのそばに……』
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