最終更新: gordonschumway 2011年05月30日(月) 03:00:42履歴
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【18禁】【BL】【アクション】
[20:52]
(場面は玄武の里。時雨の屋敷)
時雨「鵺が…抜けた……?」
朱里「はい。昨夜遅く、鵺様が只深と共に里から抜けたのを、式神が記録しています」
時雨「…そう……あの子が抜け忍にね……。
まぁ、いつかやると思ってはいたけど。よりにもよって只深とか……」
朱里「どうしますか?既に何人かに追い忍を命じましたが……」
時雨「上忍の気配が少ないね…暗部を送ったの?」
朱里「はい。二人とも位こそ中忍ですが、実力は上忍クラス。
並みの忍では務まらないでしょうから……」
時雨「……(少し笑って)行きたそうだね、朱里?」
朱里「……差し出がましいのは重々承知しております。
でも…もし、時雨様さえよろしければ……」
時雨「ふむ……朱里は鵺の事が好きだったみたいだしねぇ……許せない?」
朱里「…………」
時雨「ま、いいよ。好きにしな」
朱里「ありがとうございます」
時雨「やり方は特に指定しない。結果がすべてだから……。掟通り、始末さえすればいい」
朱里「承知しました」
(SE:朱里の消える音)
時雨「鵺……僕のかわいい弟……。残念だけど、掟は絶対なんだよ……」
(場面は屋敷の外。走ってくる音)
麗燐「朱里様、鵺様が抜けたというのは本当ですか?」
朱里「耳が早いですね、麗燐。…えぇ。昨夜遅く、只深と共に抜けましたよ。
今、そのことで時雨様と話していたんです」
麗燐「・・・きっと、何かの間違いです。鵺様が・・・鵺様が抜け忍になるなどと・・・。」
朱里「そうですか?安易に予測出来たことですよ」
(SE:二人のあるいてる音)
麗燐「朱里様。時雨様と何をを話されていたので?・・・
まさか、鵺様を殺す・・・なんてことは。」
朱里「既に追い忍として暗部が動いています。僕も準備が整い次第、向かいます」
麗燐「・・・朱里様?本気で鵺様を殺すおつもりですか?
以前はあれほどお慕いなされていたのに・・・。」
朱里「心境なんてものは状況によって、いくらでも変わるものですよ?麗燐。
……正直、今の状況の方が僕にとっては都合がいいんです」
麗燐「…………」
(SE:朱里のあるいていく音。一人残される麗燐)
麗燐「なぜですか……?鵺様のこと、本気で好きだったのではないのですか……?
あの時、あなた様が私に打ち明けてくれたから……
相手が鵺様だったから……私は諦めたのに……。」
(SE:ラスの足音)
朱里「……あの日の言葉に偽りはない。鵺様の事は本当に好きですよ。今でも……。
でも、だからこそなんですよ、麗燐。
手に入らないものなら、いっそ無くなってしまえばいい……」
(場面は森)
只深「………気配が消えたな…こいつらで最後か……鵺、そっちも大丈夫か?」
鵺 「…あぁ、これで最後だ。……只深こそ怪我はないか?」
只深「ん、俺は平気…って、お前、腕っ!思いっきり怪我してんじゃねーか!」
鵺 「あぁ、これ位なんてことない」
只深「何てことないワケないだろっ!!
ほら、腕かせ!…………よし、とりあえず腕はこれで大丈夫だろ……」
鵺 「……悪いな……」
只深「遠慮するなよ。……あ、指も怪我してんじゃんよ」
鵺 「流石にこれは大丈夫だ」
只深「いいって。指、怪我してんだろ」
鵺 「ばか、舐めるな!くすぐったい…」
只深「ほら、ちゃんと消毒しなきゃだめだって。それには舐めるのが一番だろ?」
鵺 「でもっ……っ…やめろって……あっ…」
只深「感じててんだ?」
鵺 「違……んっ……」
只深「違うのか?……んじゃ、こっちか?」
鵺 「ちょっ…やめっ……」
只深「くすっ。お前、耳弱いんだよな〜」
鵺 「…やぁっ……ぁ…ぅ……」
只深「感度も相変わらずだな」
鵺 「お前っ…!どこ触ってんだよっ……!」
只深「ほら、この頃してないだろ?誰も見てないしさ……」
鵺 「こ、こんな所で…?」
只深「嫌か?でも、もう嫌っていえないよな?ここ…こんなだし…ww」
鵺 「誰の仕業だよっ…卑怯者っ……んっ…や…ぁ…」
只深「声、出していいんだぜ?別に誰も来ないんだしさ」
鵺 「…あっ…んっ……っはぁ…んっ……」
(場面は森 side:朱里)
(SE:草木をかきわけて走る音)
朱里「……鵺様!!くそっ…どこにいるんだ……!」
麗燐「朱里様。」
朱里「麗燐っ!?なぜ、あなたがここに……」
麗燐「・・・私も鵺様の事が心配なのです。
・・・それに、探すには人数が多いに越したことはないでしょう?」
朱里「そうですが……わかりました…」
麗燐「はい。それではまいりましょう。」
(SE:二人の走り去る音)
(場面は森 side:鵺)
只深「………気持ちいい?」
鵺 「…ふぁ……あっ…いっ……いや…ぁ……」
只深「…ぬ…え……鵺……!」
鵺 「……っ…あっ…ああっ…んっ……ああぁぁぁ!!!」
只深「…っ…俺も……い…くっ……!」
(少し間)
(SE:虫の音)
鵺 「…痛っ……やりすぎだ……バカか、お前は……」
只深「バカで結構です。……とりあえず、今のうちに寝とけ。疲れただろ?」
鵺 「ったく、疲れさせたのは誰のせいだよ……おやすみ!」
只深「おやすみ……」
(SE:虫の音)
只深「………ほんと、俺はバカだよ。
任務のためだけに持った関係だったはずなのに……。
まさか任務自体に疑問を持ち始めたなんて…言えないよな……
俺たち忍びは、ただ与えられた任務を遂行すればいいんだ……感情なんて……」
鵺 「…た…だみ……」
只深「ごめんな…鵺……」
鵺 「……ん…只深……?」
只深「お、起きたか……悪ぃな、鵺。ちょっと死んでくれ」
(SE;なんか効果音)
鵺 「っ…!!只深っ……!いきなりどうしたんだよっ……」
只深「いやね、俺、実はスパイなんだわ」
鵺 「スパ…イ……?」
只深「あぁ、今まで騙してた。お前に友好的に近づき里から遠く隔離する。
そして、邪魔が入らなくなった所で始末する。それが俺の任務だ」
鵺 「……なん…で……」
只深「何でかって?俺は朱雀の里の人間だぜ?
敵国の人間を簡単に受け入れるなんて、玄武の里ももう終わりだな…」
鵺 「兄貴に…報告を……」
只深「おっと、そうはいかない。
時雨に報告するなら、まずは俺を倒していかなきゃなぁ?
それとも、愛した男とは戦えないってか?」
鵺 「…そんなことは…ないっ……!!」
(SE:爆発音)
只深「…ふっ…流石は時雨の弟だな。
威力が桁違いだ……じゃぁ…こっちからも行くぞ!
『桜花八挂翔』(おうかはっけしょう)!!!」
鵺 「『虎旺掌雷拳』(こおうしょうらいけん)っ!!!!」
(SE:攻撃音)
鵺 「…手加減はしない…!裏切り物には…死だっ!!!!」
只深「ははっ。玄武の里を抜けたお前に言われたくないね。
抜け忍は立派な裏切り者だ。そうだろう?」
鵺 「………貴様っ!!」
(SE:爆発音)
只深「…おっと」
鵺 「前がガラ空きだ!!…覚悟っ……!!!」
只深「……ふっ……」
(SE:ドシュっと)
鵺 「なぜ……よけなかった………」
只深「…ぐっ……どの道俺は…任務失敗で殺される……。
どーせ殺されるなら…愛した奴に…殺された方がいいだろ……?
いきなり斬りつけてごめんな……」
鵺 「只深……」
只深「悪いな、勝手なこと言って……ま、本望ってヤツ……?」
鵺 「………バカだ……」
只深「……え?」
鵺 「…お前は……バカだ……」
只深「……あぁ…俺はバカだよ……。
でも…好きになっちまったんだから、仕方ないだろ?
ホラ、俺様ってば優しいからさ……」
鵺 「只深……すまない……」
只深「何でお前が謝るんだよ……ったく……」
鵺 「…しかし俺は……!」
只深「あぁ、そうだ。最後に忠告しておく……。
緋耀様(ひようさま)には気をつけろ……あいつは…玄武の里を……」
(SE:ドシュっと一発)
只深「…うっ……な…何……」
菊華「は〜い、そこまで。
それ以上しゃべられると、こっちとしては困るのよねぇ……」
鵺 「た、只深っ!!……何者だ。貴様……」
菊華「あぁ、ボウヤも動かないでね〜」
鵺 「なっ……!これは…『影縫い』(かげぬい)か…!
くそっ……体が動かない……」
只深「ぐっ……き…来てたのか……菊華……」
菊華「そ〜よぉ。…あ、そっちのボウヤは初めましてだわね」
鵺 「お…男……?」
菊華「ふふ、生物学上はねwでも、そこら辺の女より美人でしょう?」
只深「…な…なぜだ……」
菊華「…なぜかって?アタシはあなたをずっと視ていたのよ。
……くくっ。まさか、本当に裏切るなんて思わなかったわ」
只深「ぐっ……緋耀様(ひようさま)の命令…か……。
俺は最初から信用されてなかったってわけか……くそっ……」
菊華「そう。あなたはもともと危険視(マーク)されていた。
アタシは、その見張り役だったってわけ。
まぁ、その任務ももうすぐ終わるけどね」
鵺 「た、只深っ……!!!」
只深「ぬ…鵺……悪いな…先…行くぜ……げほっ…
お前は…生き延びろ……よ……」
鵺 「た…だみ……?只深…?嘘だろ……只深っ!!只深っ!!!!」
菊華「まったく、腹に穴開けたままでよくしゃべれるわねぇ…
これだから生命力の強い人間は困るわ…
でも、安心なさい。別れは少しの間よ。
あんたの相棒には、すぐにあわせてあげる……」
鵺 「貴様っ!!!!!!」
(SE:術を破る音)
菊華「あら、ヤダ。「影縫い」(かげぬい)が破られちゃったわ。
流石、あの時雨の弟ね。血脈は恐ろしいわ……
でも…もう遅い……」
鵺 「……なっ…」
(SE:どすっと腰に)
鵺 「…う…ぐっ………」
(SE:どさっと倒れる音)
菊華「(男に戻って)只深……
お前は、ただ与えられた任務を遂行すれば良かったんだ……感情なんて不必要だ。
まして愛情なんて……。だから俺に殺されたんだよ……!っ…!
俺が…どんな気持ちでそばにいたか…
お前、絶対気づいてなかっただろ……
今回の件だって、どれだけ隠してきたか……」
(SE:草木をかきわけて走る音)
麗燐「・・・あれは・・・?」
朱里「鵺様っ……!!」
(SE:二人のはしってくる音)
朱里「…鵺様……鵺様っ……!」
麗燐「只深…死んでる……朱里様、鵺様のご様子は……っ!?」
朱里「……だめだ…もう……」
麗燐「……そんな……」
朱里「鵺様…僕がもっと早く行っていれば………っ!」
麗燐「……朱里様……わかりました…私が何とかします。」
朱里「何とかするって…死んでいるんですよ!?」
麗燐「・・・『御霊返しの術』(みたまがえしのじゅつ)はご存知でしょうか?
限られた条件でしか出来ない秘術の中の秘術です。」
朱里「聞いたことはありますよ。
確か、術者の魂を元に、死者を蘇らせる外方(げほう)ですね」
麗燐「はい。必要なのは、魂をいれる器。そして、生贄の死体が一体……
そしてそれを行えるのは、
巫女の血を受け継ぐ神器継承者(しんきけいしょうしゃ)だけ……」
朱里「まさか……麗燐……」
麗燐「条件は揃っています。ただ、私は直系ではない為、
純粋な巫女の値は受け継いでおりません・・・。
正直、何が起こるかわからないですが……。
でも、やってみる価値はあるかと。
鵺様をお助けする唯一の方法なのです。」
朱里「でもっ…!『御霊返し』(みたまがえし)をやった者は、
魂ごと消滅してしまうんですよ!?ただの死じゃない!」
麗燐「・・・分かっておりますよ、朱里様。でも、朱里様と鵺様のためですもの。
この命、少しも惜しくなどありません……」
(SE:風の音)
麗燐「『大地に眠る古の光、穢れ無き天空の光よ。今、我の呼びかけに答えよ……』
……本音を言いいますと、少々…いえ…とても怖い…でも…朱里様のためだから……」
朱里「…え?」
麗燐「・・・鵺様が一番大切だなんて、本当は嘘なのです。
実は私、鵺様は嫌い。だって、私は朱里様の事が好きだったんですよ?
…でも、朱里様は鵺様をお好きで……」
朱里「………」
麗燐「…すごく悔しかった…。でも、相手が鵺様だったから…だから諦めがついたんです」
朱里「麗燐……!」
麗燐「『我が命をもって、我は命ず……』……朱里様の一途な所、私、大好きですよ。
絶対に鵺様を死なせないでくださいね……
最後にあなたに言えてよかった……さようなら。朱里様…」
(SE:御霊返しの音…てか、そんな感じの音)
朱里「麗燐ーーーー!!!!!!」
(数年後、玄武の里)
朱里「あ、また本堂に落書きしてっ!こらっ!鵺!只深っ!!待ちなさいー!!!」
鵺?「(子供)わーい、朱里が来たぞー!」
只深「?(子供)逃っげろ−!!」
時雨「やぁ。がんばってるね、朱里」
朱里「あ、時雨様、おはようございます」
時雨「おはよう。あの子たち……只深と鵺の様子は、どう…?」
朱里「ええ、術の後遺症もなく元気ですよ。いささか、元気すぎるぐらいです」
時雨「まぁいいじゃないの。
『御霊返し』(みたまかえし)の術が成功しただけで、すごい事だったんだから」
朱里「まだ信じられませんよ。
術が成功したこともそうですが、まさか魂が二つに分離するなんて……
二人が幼くなって返ってきたのは、それが原因でしょうか…?」
時雨「……ふむ…二人の髪が黒いのは、麗燐の影響かな?」
朱里「えぇ、そうでしょうね。漆黒の髪は、彼女の自慢でしたから…」
時雨「……そっか……。あぁ。二人の世話は、引き続きよろしく」
朱里「え…?」
時雨「…先日、この里を抜けたのは『18歳と21歳の中忍二人』だよ。違うかい?」
朱里「……ありがとうございます……」
時雨「わんぱくだから、教育係りも大変だよ?出来る?」
朱里「はい!以前の二人を越えるような立派な方に育てあげてみせます!」
時雨「くすくす。期待してるよ」
朱里「それでは失礼致します……」
(SE:朱里の走っていく音)
時雨「麗燐…君が命に代えて残した二人は、君が愛した彼に託したよ。
それがせめてもの、花向けだろうから……」
【18禁】【BL】【アクション】
登場人物 | 詳細 | 配役 |
只深 [タダミ] | ♂21歳:朱雀の里の忍。中忍。よきお兄ちゃんタイプ。 鵺の事が好き。でもはじめは任務のためだった。 | 霧島夏希 |
鵺 [ヌエ] | ♂18歳:玄武の里の忍。中忍。あまり感情を表に出さない、 クールなタイプ。不器用。(今回の受け) | ベア |
朱里 [シュリ] | ♂26歳:玄武の里の忍。上忍。時雨の片腕であり、ですます口調。 性格は非常に真面目。実は密かに鵺の事がすき。 | 谷風結香 |
時雨 [シグレ] | ♂ 23歳:玄武の里(げんぶのさと)の首領。 鵺の兄貴でもある。性格はにこにこ笑顔で腹黒いタイプ。 | 岩月十夜 |
麗燐 [レイリン] | ♀19歳:玄武の里の忍。中忍。今回のヒロイン。 元気っこ。実は朱里のことが好き。 | 長谷川絢香 |
菊華 [キッカ] | ♀24歳:朱雀の里の忍。上忍。実は只深の事が好き。 | 谷風結香 |
(場面は玄武の里。時雨の屋敷)
時雨「鵺が…抜けた……?」
朱里「はい。昨夜遅く、鵺様が只深と共に里から抜けたのを、式神が記録しています」
時雨「…そう……あの子が抜け忍にね……。
まぁ、いつかやると思ってはいたけど。よりにもよって只深とか……」
朱里「どうしますか?既に何人かに追い忍を命じましたが……」
時雨「上忍の気配が少ないね…暗部を送ったの?」
朱里「はい。二人とも位こそ中忍ですが、実力は上忍クラス。
並みの忍では務まらないでしょうから……」
時雨「……(少し笑って)行きたそうだね、朱里?」
朱里「……差し出がましいのは重々承知しております。
でも…もし、時雨様さえよろしければ……」
時雨「ふむ……朱里は鵺の事が好きだったみたいだしねぇ……許せない?」
朱里「…………」
時雨「ま、いいよ。好きにしな」
朱里「ありがとうございます」
時雨「やり方は特に指定しない。結果がすべてだから……。掟通り、始末さえすればいい」
朱里「承知しました」
(SE:朱里の消える音)
時雨「鵺……僕のかわいい弟……。残念だけど、掟は絶対なんだよ……」
(場面は屋敷の外。走ってくる音)
麗燐「朱里様、鵺様が抜けたというのは本当ですか?」
朱里「耳が早いですね、麗燐。…えぇ。昨夜遅く、只深と共に抜けましたよ。
今、そのことで時雨様と話していたんです」
麗燐「・・・きっと、何かの間違いです。鵺様が・・・鵺様が抜け忍になるなどと・・・。」
朱里「そうですか?安易に予測出来たことですよ」
(SE:二人のあるいてる音)
麗燐「朱里様。時雨様と何をを話されていたので?・・・
まさか、鵺様を殺す・・・なんてことは。」
朱里「既に追い忍として暗部が動いています。僕も準備が整い次第、向かいます」
麗燐「・・・朱里様?本気で鵺様を殺すおつもりですか?
以前はあれほどお慕いなされていたのに・・・。」
朱里「心境なんてものは状況によって、いくらでも変わるものですよ?麗燐。
……正直、今の状況の方が僕にとっては都合がいいんです」
麗燐「…………」
(SE:朱里のあるいていく音。一人残される麗燐)
麗燐「なぜですか……?鵺様のこと、本気で好きだったのではないのですか……?
あの時、あなた様が私に打ち明けてくれたから……
相手が鵺様だったから……私は諦めたのに……。」
(SE:ラスの足音)
朱里「……あの日の言葉に偽りはない。鵺様の事は本当に好きですよ。今でも……。
でも、だからこそなんですよ、麗燐。
手に入らないものなら、いっそ無くなってしまえばいい……」
(場面は森)
只深「………気配が消えたな…こいつらで最後か……鵺、そっちも大丈夫か?」
鵺 「…あぁ、これで最後だ。……只深こそ怪我はないか?」
只深「ん、俺は平気…って、お前、腕っ!思いっきり怪我してんじゃねーか!」
鵺 「あぁ、これ位なんてことない」
只深「何てことないワケないだろっ!!
ほら、腕かせ!…………よし、とりあえず腕はこれで大丈夫だろ……」
鵺 「……悪いな……」
只深「遠慮するなよ。……あ、指も怪我してんじゃんよ」
鵺 「流石にこれは大丈夫だ」
只深「いいって。指、怪我してんだろ」
鵺 「ばか、舐めるな!くすぐったい…」
只深「ほら、ちゃんと消毒しなきゃだめだって。それには舐めるのが一番だろ?」
鵺 「でもっ……っ…やめろって……あっ…」
只深「感じててんだ?」
鵺 「違……んっ……」
只深「違うのか?……んじゃ、こっちか?」
鵺 「ちょっ…やめっ……」
只深「くすっ。お前、耳弱いんだよな〜」
鵺 「…やぁっ……ぁ…ぅ……」
只深「感度も相変わらずだな」
鵺 「お前っ…!どこ触ってんだよっ……!」
只深「ほら、この頃してないだろ?誰も見てないしさ……」
鵺 「こ、こんな所で…?」
只深「嫌か?でも、もう嫌っていえないよな?ここ…こんなだし…ww」
鵺 「誰の仕業だよっ…卑怯者っ……んっ…や…ぁ…」
只深「声、出していいんだぜ?別に誰も来ないんだしさ」
鵺 「…あっ…んっ……っはぁ…んっ……」
(場面は森 side:朱里)
(SE:草木をかきわけて走る音)
朱里「……鵺様!!くそっ…どこにいるんだ……!」
麗燐「朱里様。」
朱里「麗燐っ!?なぜ、あなたがここに……」
麗燐「・・・私も鵺様の事が心配なのです。
・・・それに、探すには人数が多いに越したことはないでしょう?」
朱里「そうですが……わかりました…」
麗燐「はい。それではまいりましょう。」
(SE:二人の走り去る音)
(場面は森 side:鵺)
只深「………気持ちいい?」
鵺 「…ふぁ……あっ…いっ……いや…ぁ……」
只深「…ぬ…え……鵺……!」
鵺 「……っ…あっ…ああっ…んっ……ああぁぁぁ!!!」
只深「…っ…俺も……い…くっ……!」
(少し間)
(SE:虫の音)
鵺 「…痛っ……やりすぎだ……バカか、お前は……」
只深「バカで結構です。……とりあえず、今のうちに寝とけ。疲れただろ?」
鵺 「ったく、疲れさせたのは誰のせいだよ……おやすみ!」
只深「おやすみ……」
(SE:虫の音)
只深「………ほんと、俺はバカだよ。
任務のためだけに持った関係だったはずなのに……。
まさか任務自体に疑問を持ち始めたなんて…言えないよな……
俺たち忍びは、ただ与えられた任務を遂行すればいいんだ……感情なんて……」
鵺 「…た…だみ……」
只深「ごめんな…鵺……」
鵺 「……ん…只深……?」
只深「お、起きたか……悪ぃな、鵺。ちょっと死んでくれ」
(SE;なんか効果音)
鵺 「っ…!!只深っ……!いきなりどうしたんだよっ……」
只深「いやね、俺、実はスパイなんだわ」
鵺 「スパ…イ……?」
只深「あぁ、今まで騙してた。お前に友好的に近づき里から遠く隔離する。
そして、邪魔が入らなくなった所で始末する。それが俺の任務だ」
鵺 「……なん…で……」
只深「何でかって?俺は朱雀の里の人間だぜ?
敵国の人間を簡単に受け入れるなんて、玄武の里ももう終わりだな…」
鵺 「兄貴に…報告を……」
只深「おっと、そうはいかない。
時雨に報告するなら、まずは俺を倒していかなきゃなぁ?
それとも、愛した男とは戦えないってか?」
鵺 「…そんなことは…ないっ……!!」
(SE:爆発音)
只深「…ふっ…流石は時雨の弟だな。
威力が桁違いだ……じゃぁ…こっちからも行くぞ!
『桜花八挂翔』(おうかはっけしょう)!!!」
鵺 「『虎旺掌雷拳』(こおうしょうらいけん)っ!!!!」
(SE:攻撃音)
鵺 「…手加減はしない…!裏切り物には…死だっ!!!!」
只深「ははっ。玄武の里を抜けたお前に言われたくないね。
抜け忍は立派な裏切り者だ。そうだろう?」
鵺 「………貴様っ!!」
(SE:爆発音)
只深「…おっと」
鵺 「前がガラ空きだ!!…覚悟っ……!!!」
只深「……ふっ……」
(SE:ドシュっと)
鵺 「なぜ……よけなかった………」
只深「…ぐっ……どの道俺は…任務失敗で殺される……。
どーせ殺されるなら…愛した奴に…殺された方がいいだろ……?
いきなり斬りつけてごめんな……」
鵺 「只深……」
只深「悪いな、勝手なこと言って……ま、本望ってヤツ……?」
鵺 「………バカだ……」
只深「……え?」
鵺 「…お前は……バカだ……」
只深「……あぁ…俺はバカだよ……。
でも…好きになっちまったんだから、仕方ないだろ?
ホラ、俺様ってば優しいからさ……」
鵺 「只深……すまない……」
只深「何でお前が謝るんだよ……ったく……」
鵺 「…しかし俺は……!」
只深「あぁ、そうだ。最後に忠告しておく……。
緋耀様(ひようさま)には気をつけろ……あいつは…玄武の里を……」
(SE:ドシュっと一発)
只深「…うっ……な…何……」
菊華「は〜い、そこまで。
それ以上しゃべられると、こっちとしては困るのよねぇ……」
鵺 「た、只深っ!!……何者だ。貴様……」
菊華「あぁ、ボウヤも動かないでね〜」
鵺 「なっ……!これは…『影縫い』(かげぬい)か…!
くそっ……体が動かない……」
只深「ぐっ……き…来てたのか……菊華……」
菊華「そ〜よぉ。…あ、そっちのボウヤは初めましてだわね」
鵺 「お…男……?」
菊華「ふふ、生物学上はねwでも、そこら辺の女より美人でしょう?」
只深「…な…なぜだ……」
菊華「…なぜかって?アタシはあなたをずっと視ていたのよ。
……くくっ。まさか、本当に裏切るなんて思わなかったわ」
只深「ぐっ……緋耀様(ひようさま)の命令…か……。
俺は最初から信用されてなかったってわけか……くそっ……」
菊華「そう。あなたはもともと危険視(マーク)されていた。
アタシは、その見張り役だったってわけ。
まぁ、その任務ももうすぐ終わるけどね」
鵺 「た、只深っ……!!!」
只深「ぬ…鵺……悪いな…先…行くぜ……げほっ…
お前は…生き延びろ……よ……」
鵺 「た…だみ……?只深…?嘘だろ……只深っ!!只深っ!!!!」
菊華「まったく、腹に穴開けたままでよくしゃべれるわねぇ…
これだから生命力の強い人間は困るわ…
でも、安心なさい。別れは少しの間よ。
あんたの相棒には、すぐにあわせてあげる……」
鵺 「貴様っ!!!!!!」
(SE:術を破る音)
菊華「あら、ヤダ。「影縫い」(かげぬい)が破られちゃったわ。
流石、あの時雨の弟ね。血脈は恐ろしいわ……
でも…もう遅い……」
鵺 「……なっ…」
(SE:どすっと腰に)
鵺 「…う…ぐっ………」
(SE:どさっと倒れる音)
菊華「(男に戻って)只深……
お前は、ただ与えられた任務を遂行すれば良かったんだ……感情なんて不必要だ。
まして愛情なんて……。だから俺に殺されたんだよ……!っ…!
俺が…どんな気持ちでそばにいたか…
お前、絶対気づいてなかっただろ……
今回の件だって、どれだけ隠してきたか……」
(SE:草木をかきわけて走る音)
麗燐「・・・あれは・・・?」
朱里「鵺様っ……!!」
(SE:二人のはしってくる音)
朱里「…鵺様……鵺様っ……!」
麗燐「只深…死んでる……朱里様、鵺様のご様子は……っ!?」
朱里「……だめだ…もう……」
麗燐「……そんな……」
朱里「鵺様…僕がもっと早く行っていれば………っ!」
麗燐「……朱里様……わかりました…私が何とかします。」
朱里「何とかするって…死んでいるんですよ!?」
麗燐「・・・『御霊返しの術』(みたまがえしのじゅつ)はご存知でしょうか?
限られた条件でしか出来ない秘術の中の秘術です。」
朱里「聞いたことはありますよ。
確か、術者の魂を元に、死者を蘇らせる外方(げほう)ですね」
麗燐「はい。必要なのは、魂をいれる器。そして、生贄の死体が一体……
そしてそれを行えるのは、
巫女の血を受け継ぐ神器継承者(しんきけいしょうしゃ)だけ……」
朱里「まさか……麗燐……」
麗燐「条件は揃っています。ただ、私は直系ではない為、
純粋な巫女の値は受け継いでおりません・・・。
正直、何が起こるかわからないですが……。
でも、やってみる価値はあるかと。
鵺様をお助けする唯一の方法なのです。」
朱里「でもっ…!『御霊返し』(みたまがえし)をやった者は、
魂ごと消滅してしまうんですよ!?ただの死じゃない!」
麗燐「・・・分かっておりますよ、朱里様。でも、朱里様と鵺様のためですもの。
この命、少しも惜しくなどありません……」
(SE:風の音)
麗燐「『大地に眠る古の光、穢れ無き天空の光よ。今、我の呼びかけに答えよ……』
……本音を言いいますと、少々…いえ…とても怖い…でも…朱里様のためだから……」
朱里「…え?」
麗燐「・・・鵺様が一番大切だなんて、本当は嘘なのです。
実は私、鵺様は嫌い。だって、私は朱里様の事が好きだったんですよ?
…でも、朱里様は鵺様をお好きで……」
朱里「………」
麗燐「…すごく悔しかった…。でも、相手が鵺様だったから…だから諦めがついたんです」
朱里「麗燐……!」
麗燐「『我が命をもって、我は命ず……』……朱里様の一途な所、私、大好きですよ。
絶対に鵺様を死なせないでくださいね……
最後にあなたに言えてよかった……さようなら。朱里様…」
(SE:御霊返しの音…てか、そんな感じの音)
朱里「麗燐ーーーー!!!!!!」
(数年後、玄武の里)
朱里「あ、また本堂に落書きしてっ!こらっ!鵺!只深っ!!待ちなさいー!!!」
鵺?「(子供)わーい、朱里が来たぞー!」
只深「?(子供)逃っげろ−!!」
時雨「やぁ。がんばってるね、朱里」
朱里「あ、時雨様、おはようございます」
時雨「おはよう。あの子たち……只深と鵺の様子は、どう…?」
朱里「ええ、術の後遺症もなく元気ですよ。いささか、元気すぎるぐらいです」
時雨「まぁいいじゃないの。
『御霊返し』(みたまかえし)の術が成功しただけで、すごい事だったんだから」
朱里「まだ信じられませんよ。
術が成功したこともそうですが、まさか魂が二つに分離するなんて……
二人が幼くなって返ってきたのは、それが原因でしょうか…?」
時雨「……ふむ…二人の髪が黒いのは、麗燐の影響かな?」
朱里「えぇ、そうでしょうね。漆黒の髪は、彼女の自慢でしたから…」
時雨「……そっか……。あぁ。二人の世話は、引き続きよろしく」
朱里「え…?」
時雨「…先日、この里を抜けたのは『18歳と21歳の中忍二人』だよ。違うかい?」
朱里「……ありがとうございます……」
時雨「わんぱくだから、教育係りも大変だよ?出来る?」
朱里「はい!以前の二人を越えるような立派な方に育てあげてみせます!」
時雨「くすくす。期待してるよ」
朱里「それでは失礼致します……」
(SE:朱里の走っていく音)
時雨「麗燐…君が命に代えて残した二人は、君が愛した彼に託したよ。
それがせめてもの、花向けだろうから……」
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