最終更新: gordonschumway 2011年06月01日(水) 04:10:02履歴
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【18禁】【ドラマ】【ホラー】
[24:42]
(廊下を歩く音と、鈴虫の鳴き声)
紫苑「いやぁ〜、今日も終わった終わったー!」
紅葉「お疲れ様でした。紫苑さん。今日はもう休みますか?」
紫苑「ん〜、せっかく今日はいつもより早い店じまいだし、
ちょっと夜の散歩にでもいこっかなw」
紅葉「今からですか!?」
紫苑「なんとなく、外の空気を吸いたくなっただけだよ。紅葉、お前もくるか?」
紅葉「いえ、俺は遠慮しておきます。まだ片付けも残ってますし」
紫苑「そっか。お勤めごくろーさん^^ じゃ、ちょっくらいってくるわ」
紅葉「はい。お気をつけて」
(SE:紫苑の歩いていく音)
(少し間)
(SE:部屋で片付けをしている紅葉)
紅葉「それにしても、こんな時間から紫苑さんが出かけるなんて、珍しいな……
何かあるのかな……」
(SE:少し強い風の音)
紅葉「っ……風が…少し出てきたな……ん…?あれは……」
(SE:きらきら光る音)
紅葉「………黒い…蝶?こんな時期に蝶が飛ぶなんて……
それに、なんか…不気味だ……」
(SE:ひらひら向こうへ飛んでいく音)
紅葉「あ、いっちゃた……って、今日は妙に薄暗いな…月は出てるはずなのに…
って、何だ?あの月……」
(SE:何かこうそれっぽいSEがほしいな)
紅葉「赤い…月……なんだろうこの感じ……
なんか…嫌な予感がする……紫苑さん……!」
(少し間)
(SE:砂利道を歩いている音)
紫苑「しっかし、夜の散歩にでてきたものの……あんまり、いい雰囲気じゃねぇな。
人の数も、なんかいつもより少ない感じだし……それに、あの赤い月………
よし、今日は早めに店に戻るか。って……あれは……」
(SE:きらきら光る音)
紫苑「……蝶……?しかも…黒い……珍しいな…」
(SE:きらきら光ながら飛ぶ音)
紫苑「ん?何……ついてこいって…言ってんのか……?」
(SE:きらきら光りながら飛ぶ音)
紫苑「…………まさかな。んなわけねーか。でも……」
(SE:光が強くなる音)
紫苑「あ…光が………っ…まぶしっ…!」
(SE:光の音フェードアウト)
紫苑「っ………え?だれか……いる……?」
女 「あら……こんばんわ」
紫苑「え…あ、あぁ……こんばんわ……(うわ、すっげぇ美人……)」
女 「ふふふ…そんなに見つめないでくださいな。
何か、顔にでもついてますか?」
紫苑「い、いえ、すみません!あまりにも、あなたが綺麗だったので……」
女 「まぁ。お上手ね」
紫苑「………それにしても、
こんな時間に女性が1人で出歩くなんて、危ないですよ」
女 「ご心配には及びませんわ。少し、外の空気を吸いたくなったものでして……」
紫苑「そうでしたか。でも、やはりこのあたりは危険です。
よろしければ、俺があなたの家までお送りしましょう」
女 「お優しいのね。でも初対面の方にそこまでしていただくなくても、平気ですわ」
紫苑「しかし……」
女 「では、こう致しましょう。私の家はここから少し行った所にありますの。
その近くまで送っていただければ、それで十分ですわ」
紫苑「……わかりました。ではそれで」
女 「えぇ。ありがとうございます」
(少し間)
(SE:二人の歩いている音)
紫苑「(しっかし、見れば見るほど美人さんだよなぁ……
なんだってこんな美人があんな所にいたんだ?
見た所、着物は着てるが遊女ってわけでもなさそうだし……
それに、この方向って……)」
女 「何か?」
紫苑「あ、い、いえ、別に。あなたに見とれていただけです」
女 「まぁ。ありがとうございます。
でも、そんなに褒められても、何も出ませんわよ?」
紫苑「いえ、お世辞とかじゃなくて、本当に美しいです……
しかし、なぜあのような所にお一人で?」
女 「それは、外の空気を吸いたくなったから…と、言ったではありませんか」
紫苑「そうですが、でもあなたが向かっている方向って……お寺…ですよね……?
まさか、お寺に住んでる方ですか」
女 「えぇ。まぁ…そういうことになりますかしら……」
紫苑「そうだったんですね。
(しかし、いくら寺に住んでるからとはいえ、何か不思議な感じ…だな……)」
女 「さぁ、もうすぐ寺の入り口ですわ。もうここら辺で…」
紫苑「あ、はい……」
女 「…何か、気になることでも?」
紫苑「気になるというか、よくわからないんですけど、
あなたからは、何か不思議な感じがして……」
女 「不思議な感じ?」
紫苑「はい…すみません。突然ぶしつけなことを言ってしまって……」
女 「いいえ、構いませんわ。
よく言われますの。私を見てると、人じゃない気がするって……」
紫苑「そ、そんなことありませんよ!
あなたはとても美しい人だ。あなたが人ではないなんて…」
女 「(かぶせて)でも、それも、一理あることですわ……」
紫苑「え…?」
女 「だって私は………人ならざる者…なのですからっっ!!!!」
紫苑「っ…!!!うわぁぁぁぁぁ!!!!」
(少し間)
紅葉「はぁ……紫苑さん…遅いな……散歩って、一体どこまでいったんだろ……」
櫻 「お、くれはじゃん!」
紅葉「あれ、もみじ……どうしたんだ?こんな所で」
櫻 「ああ、今日こっち客が少なくて店がらっがらだからさ、
櫻がそっちいってただろ? そろそろ遅いし、迎えに来たんだよ」
紅葉「そっか。櫻ちゃんなら、紗櫻の部屋にいると思うから」
櫻 「あんがと!あ、なぁなぁくれは」
紅葉「ん?」
櫻 「今日は紫苑さん、一緒じゃねぇの?」
紅葉「あぁ、紫苑さんなら、夜の散歩にでかけたよ」
櫻 「散歩?こんな時間にぃ?」
紅葉「ま、あの人の夜の散歩は今に始まった事じゃないし、
大して気にはしてないんだけど、
ただ、今日は若干、帰りが遅いなって思ってね…」
櫻 「そうなんだ……そりゃ心配だよな……」
紅葉「だから、ちょっとそこらへんまで様子を見に行こうかなって思って…」
櫻 「それがいいだろうなぁ。
そういやさ、くれは。今、こんな噂が広まってるの知ってっか?」
紅葉「噂?」
櫻 「ああ。俺も紫さんから聞いただけだから、詳しくは知らねぇんだけど、
最近この辺りに、若い女の幽霊が出るらしいんだ……」
紅葉「若い女の幽霊?」
櫻 「なんでも、その幽霊に出くわすと、あの世に連れて行かれてちまうとかで」
紅葉「あの世って、そんな、幽霊なんてこの世にいるわけないだろ?」
櫻 「でもさぁ、実際にうちの店に来る客も、その話題でもちきりなんだぜ?」
紅葉「そんなのたかが噂だろ?まさか、実際に見た奴がいるでもなし……」
櫻 「そりゃそーだけどよぉ……。
あっ、ほらほら、それにここ最近、
店に来る客の数がなんとなく減ってるような気がすんだよ」
紅葉「…確かに、それはうちも似たようなもんだけど……」
櫻 「その噂のせいで稼ぎにならないって、紫さんも言ってたし、
もしかしたらすっげぇ重要なことなんじゃね?」
紅葉「………噂のせいで、客が怖がって店に来ない…か……」
櫻 「それとな、その幽霊が現れる時には、
決まって黒い蝶が現れるらしいんだ」
紅葉「黒い…蝶……?」
櫻 「ああ。んで、月の色も赤く、異様な光景だっ、て……。
そういや…今日の月も真っ赤、だよな……」
紅葉「……!!まさか……紫苑さんも、その幽霊に……?」
櫻 「……可能性としては、あるんじゃねぇ?
……その幽霊が狙うのってさ、若い男ばっかだって言われてるし……」
紅葉「……………でも、まさか幽霊なんているわけないし、
それに、どっかに寄り道してるだけかもしれないし、
もしかしたら、勅使河原様と出くわして、どこかで飲んでるかもしれないし……」
櫻 「おっまえなぁ……」
紅葉「もみじ、ありがとう。俺も、ちょっと様子を見に行ってくるよ」
櫻 「え、いやでも……もし、くれはもその幽霊に出くわしたら……」
紅葉「大丈夫。俺は幽霊なんて信じてないし、
それに、ちょっとその辺りまでいくだけだから」
櫻 「……それでも、気をつけろよ。……なんか、嫌な予感がする……」
紅葉「嫌な予感?」
櫻 「ん……それが何かはよくわからねぇけど。でも……すごい…不安で……」
紅葉「もみじ……大丈夫だよ。もし仮にその幽霊に出くわしたとしても、
俺がきっと紫苑さんを連れて帰る」
櫻 「くれは……」
紅葉「だから、お前は安心して、櫻ちゃんと一緒に、俺達の帰りを待ってろよ」
櫻 「……うん……くれは、絶対に、無茶だけはしないでくれよ……?」
紅葉「うん、わかってる。それじゃ、ちょっと行ってくるな」
櫻 「ああ、いってらっしゃい」
(SE:走って行く音)
櫻 「こんなん、柄じゃねぇけど……。
神様……どうか二人を……守ってください……」
(少し間)
(SE:なんかこう、糸っぽい音がほしいね)
紫苑「ぅ……ん……ここ…は……」
女 「あら、気づかれましたのね……」
紫苑「お前は……っ…!!この…糸は……」
女 「強力な蜘蛛の糸…ですわ……
この糸に絡まれた獲物は、決して逃れることができない……」
紫苑「くそっ……どういう…つもりだ……」
女 「うふふふふ、決まっているではありませんか…
あなたを…おいしくいただくため…ですわ……」
紫苑「くっ……お前っ……人間じゃ…ないのか……?」
女 「えぇ……私は姑獲鳥(うぶめ)……人々は私の事を、妖怪と呼ぶ……」
紫苑「妖怪……?お前が……」
女 「見えませんか?ええそうでしょうね。
私は妖怪とはいえ、もとは人間だったのだから……」
紫苑「どういう…ことだ……?」
女 「遥か昔、私はとある男の子供も身籠りました。
でも流行病(はやりやまい)により、
子供も身籠ったまま、死んでしまったのです……
私は埋葬され、そのまま、姑獲鳥(うぶめ)となった」
紫苑「………」
女 「私は……あの人の子を産みたかった…
たった1人愛した男の子どもを……
でも…それは叶わないまま…私は死んだ……
だからどうしても…あなたがほしい……」
紫苑「なっ…意味わかんねぇよ!何で俺を……」
(回想シーン)
紅葉「なぁ紫苑さん、最近ここら辺に、女の幽霊がでるって話、知ってるか?」
紫苑「女の幽霊?」
紅葉「そうそう。その幽霊ってのが、すっごい美人で、
夜な夜な男を探して歩き回ってるんだって。
んで、その幽霊に出くわすと、あの世につれていかれちまうらしいぜ?」
紫苑「ははははは、幽霊なんて、そんなのいるわけないだろ?」
紅葉「あれ、紫苑さんは信じてねーのか?」
紫苑「まぁね。だいたい、幽霊なんてのは迷信で、
誰かがでっちあげた話がほとんどだし、
でもまぁ……そんなに美人な幽霊なら、一回あってみたいかもw」
紅葉「えー。そしたら紫苑さんが、あの世にいっちゃうじゃんかー!」
紫苑「だ〜から行かないって。ほらほら、紅葉ちゃんも仕事さぼってると、
まーた紫に怒られるぞ」
紅葉「はーい……」
(回想シーン終わり)
紫苑「は…はは……まさか…紅葉ちゃんがいってた幽霊が、
あんただったなんてな……」
女 「うふふふふふ……ねぇ…私をみて…?」
紫苑「っ…んっ……や…ぁ……」
女 「ねぇ……気持ちいい……?」
紫苑「……っ…そんなこと…あるわけ…ねぇだろ……」
女 「でも……感じてるんでしょう……?」
紫苑「あぁっ…んっ……誰が…妖怪なんかに……」
女 「酷い事いうのね……私は…あなたの子供がほしいの……」
紫苑「っ…うっ……ぁ……俺は、
妖怪の子供なんか、ほしくねぇ…っての……」
女 「あなたの事なんかどうでもいの……子供を…子供を頂戴……」
紫苑「うあぁっ…んっ……っ…ぁ……」
女 「あぁ……入った……もっと…もっと動いて……」
紫苑「くっ…ぁぁっ……んっ……ぅ…あ……」
女 「ん…はぁ……もっと…激しく……」
紫苑「あっ…んっ……っ…(くそ……どうしろってんだよ……!!)」
(少し間)
(SE;歩いている音)
紅葉「さてと、意気込んで出てきたものの、
どこにいけばいいのかさっぱりだな…
櫻ちゃんの話しによると、幽霊がでるのはこのしだれ柳の近く……
とはいえ、ここで待ってても出るとは限らないし……」
老婆「もし…そこのお若いの……」
紅葉「え…あ、あぁ。俺ですか?」
老婆「そうじゃ。おぬし、このような所で何をしておる…」
紅葉「連れを探しているんです。でも、皆目見当がつかなくて……」
老婆「さようか……ならば若いの、お主にこれをやろう」
紅葉「これは……お札?」
老婆「このあたりには若い女の妖怪がでるらしいからの……
それに出くわした時には、それを使うとよい……」
紅葉「は、はぁ……」
老婆「もし妖怪に出くわしたら、そのお札を妖怪になげつけて、こう唱えるんじゃ。
『臨(りん)・兵(ぴょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・
陣(じん)・烈(れつ)・在(ざい)・全(ぜん)・滅(めつ)』とな……」
紅葉「それは?」
老婆「妖怪退治の呪文じゃよ。よいか?必ず唱えるのじゃよ……」
紅葉「はい…わかりました……」
老婆「おぬしの連れが…見つかるとよいの……」
紅葉「はい…ありがとう……って、いない………え!?うそ……
でも……お札があるってことは、幽霊…じゃあないよな……
一体何者だったんだよ、あのお婆さん」
(SE:きらきら光る音)
紅葉「ん…?あっ!!黒い蝶!!きっとあれについていけば……!」
(SE:走っていく音)
(場面はお寺の中)
紫苑「……ったく……いい加減に…しろっての……」
女 「んっ…あぁ……なぜ……?」
紫苑「あぁっ…ん…俺は…妖怪の子供なんか…生みたくないんですけど……?」
女 「あなたがどう思うと、私は子供がほしいの……
今までに何人もの男とまぐわってきたけれど、
誰一人として、子供を産ませてはくれなかった……」
紫苑「なるほど……そこにある死体の山は、
そいつらの慣れの果てってことか……」
女 「どの男も使えない男ばかり……だから…あなたこそは……!」
紫苑「ぅぁっ!!っ…ん……そりゃあ…ぁ…ん…
誰だって……っ…妖怪なんぞの子供は…生みたくねぇよ…!」
女 「どうして……?どうして皆そういうの……?
私はただ子供がほしいだけなのに……!!」
紫苑「っ…!!あぁっ…んっ……もう…やめ………」
女 「嫌よ……あなたの子供が出来るまで、
何度でも犯し続けるわ……例えその命尽きたとしても……」
紫苑「あっ…んっ……や…ぁ……(ったく…俺…相当やばいかも……(苦笑)」
(場面は紅葉サイド)
(SE:きらきら光る音とそれを追いかける音)
紅葉「くそ…どこまで行くんだよ……!って、あ、あれ……
そういえば、この道って…確かお寺に向かう道……
とにかく、見失わないようにしないと……
あ、お寺の中に入った……!よし、いくぞっ…!!」
(SE:足音とまる)
紅葉「はぁ…はぁ……なんとか…追いついたけど……
やっぱ夜のお寺は不気味だな……
そんなことより、黒い蝶……!いたっ…こっちか……!!」
(SE:走っていく音と止まる音)
紅葉「あ…ここ……もう使われてない小屋…か……
でも、黒い蝶はこの中に消えたんだよな……
紫苑さぁーん!いますかー!?いたら返事をしてくださぁーい!!」
(場面は紫苑サイド)
紫苑「…!!あ…あの声は……紅葉……」
女 「あら……飛んで火にいる夏の虫とはまさにこのこと……
今日は2人も男を捕まえられるなんて……さぁ…声の主を呼びなさい……」
紫苑「ぁっ…ん……誰が…呼ぶか……!(紅葉…来るんじゃねぇ……!!)」
女 「くすくす。でも…呼ぶ必要もないみたいね……」
紫苑「な……」
紅葉「紫苑さぁーん!!!いたっ…!!!って……し、紫苑さん……!?」
紫苑「紅葉……ったく…タイミング悪すぎ……(苦笑)」
紅葉「これは一体……」
女 「ようこそ、お若い方……
あなたも…私の子供を作りにきてくれたのね……」
紅葉「はぁ!?何言ってって……そうか!あなたが噂の……
でも、紫苑さんは渡しませんよ…」
女 「あなたこそ何をいっているの?私はただ子供がほしいだけ……
さぁ……あなたも彼と一緒になりましょう……」
紅葉「じょ、冗談じゃないっ!!!くるなっ…!!」
(SE:がさっと符を出す)
女 「あぁぁぁぁ!!!なぜ…なぜ貴様がその札を……!!!」
紅葉「あのお婆さんの言った通りだ……よし、これでもくらえっ!!!」
(SE:符を投げる音)
紅葉「『臨(りん)・兵(ぴょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・
陣(じん)・烈(れつ)・在(ざい)・全(ぜん)・ 滅(めつ)』!!!!!」
女 「どうして……!!!!」
(SE:こう消える音をね)
紅葉「き、消えた………」
紫苑「紅葉……お前……何それ……」
紅葉「なんかよくわかりませんけど、紫苑さんを探している時に、
お婆さんにこのお札を投げつけてこう言えって言われたんです」
紫苑「は……はは………なんていうか…すごいな……」
紅葉「確かに…現実ばなれしすぎてて、俺もよくわかりませんよ……
それより紫苑さん、大丈夫ですか…?」
紫苑「まぁ…なんとかね……でもこのままお前が来てくれなかったら、
どうなってたかわからないけど」
紅葉「まったく、縁起でもない事言わないでくださいよ。
それより、あの妖怪…一体何だったんですか……?」
紫苑「あぁ…姑獲鳥(うぶめ)とかいって、
昔に、男の子供を身籠ったまま死んじまって、
それでどうしても子供が生みたくて、
夜な夜な男を探しまわってたんだと……」
紅葉「なるほど…それで若い女の幽霊に見つかると、
あの世に連れていかれるなんて噂があったのか……」
紫苑「ま、それも噂じゃなかったみたいだけどな…」
紅葉「うぇ……何この死体の山……」
紫苑「あの女の犠牲になった奴らだよ…でも確かに、
あの美貌じゃ、ひっかかるのもわかる気するけど……」
紅葉「騙される方がバカなんですよ」
紫苑「うわ……それだいぶショック……」
紅葉「まぁ、紫苑さんが無事だったのでよかったですけど……
当分、夜の散歩は控えた方がいいかもですね」
紫苑「はい……」
紅葉「さ、早く警察に通報して、俺達も店に戻りましょう」
紫苑「あぁ…そうだな……」
紅葉「(N)こうして、夏の夜の奇妙は事件は、
噂の消失とともに、幕を閉じました。
その後、店に戻った俺たちは、
朱里さんにこっぴどく説教をくらったのは、いうまでもありません……」
【18禁】【ドラマ】【ホラー】
あらすじ この物語は、夜桜月楼(やおづきろう)という吉原随一の廓で繰り広げられる、 遊女や男娼達の人間模様、恋模様を描いたお話です。 時代背景的には、大正か明治初期あたりの、吉原の遊郭になります。 |
登場人物 | 詳細 | 配役 |
紫苑 [シオン] | 夜桜月楼の傾成であり、店でもトップクラスの色子。 紅葉[クレハ]の事を弟のように思っている | ベア |
紅葉 [クレハ] | 紫苑のお付きであり、世話役の色子。 | 谷風結香 |
紅葉 [モミジ] | とても元気娘で、喧嘩っぱやいタイプ。 | 長谷川絢香 |
老人 | 陰陽道に精通した謎の老人 | ベア |
姑獲鳥 [ウブメ] | 美しい女の姿をした妖怪 | 長谷川絢香 |
(廊下を歩く音と、鈴虫の鳴き声)
紫苑「いやぁ〜、今日も終わった終わったー!」
紅葉「お疲れ様でした。紫苑さん。今日はもう休みますか?」
紫苑「ん〜、せっかく今日はいつもより早い店じまいだし、
ちょっと夜の散歩にでもいこっかなw」
紅葉「今からですか!?」
紫苑「なんとなく、外の空気を吸いたくなっただけだよ。紅葉、お前もくるか?」
紅葉「いえ、俺は遠慮しておきます。まだ片付けも残ってますし」
紫苑「そっか。お勤めごくろーさん^^ じゃ、ちょっくらいってくるわ」
紅葉「はい。お気をつけて」
(SE:紫苑の歩いていく音)
(少し間)
(SE:部屋で片付けをしている紅葉)
紅葉「それにしても、こんな時間から紫苑さんが出かけるなんて、珍しいな……
何かあるのかな……」
(SE:少し強い風の音)
紅葉「っ……風が…少し出てきたな……ん…?あれは……」
(SE:きらきら光る音)
紅葉「………黒い…蝶?こんな時期に蝶が飛ぶなんて……
それに、なんか…不気味だ……」
(SE:ひらひら向こうへ飛んでいく音)
紅葉「あ、いっちゃた……って、今日は妙に薄暗いな…月は出てるはずなのに…
って、何だ?あの月……」
(SE:何かこうそれっぽいSEがほしいな)
紅葉「赤い…月……なんだろうこの感じ……
なんか…嫌な予感がする……紫苑さん……!」
(少し間)
(SE:砂利道を歩いている音)
紫苑「しっかし、夜の散歩にでてきたものの……あんまり、いい雰囲気じゃねぇな。
人の数も、なんかいつもより少ない感じだし……それに、あの赤い月………
よし、今日は早めに店に戻るか。って……あれは……」
(SE:きらきら光る音)
紫苑「……蝶……?しかも…黒い……珍しいな…」
(SE:きらきら光ながら飛ぶ音)
紫苑「ん?何……ついてこいって…言ってんのか……?」
(SE:きらきら光りながら飛ぶ音)
紫苑「…………まさかな。んなわけねーか。でも……」
(SE:光が強くなる音)
紫苑「あ…光が………っ…まぶしっ…!」
(SE:光の音フェードアウト)
紫苑「っ………え?だれか……いる……?」
女 「あら……こんばんわ」
紫苑「え…あ、あぁ……こんばんわ……(うわ、すっげぇ美人……)」
女 「ふふふ…そんなに見つめないでくださいな。
何か、顔にでもついてますか?」
紫苑「い、いえ、すみません!あまりにも、あなたが綺麗だったので……」
女 「まぁ。お上手ね」
紫苑「………それにしても、
こんな時間に女性が1人で出歩くなんて、危ないですよ」
女 「ご心配には及びませんわ。少し、外の空気を吸いたくなったものでして……」
紫苑「そうでしたか。でも、やはりこのあたりは危険です。
よろしければ、俺があなたの家までお送りしましょう」
女 「お優しいのね。でも初対面の方にそこまでしていただくなくても、平気ですわ」
紫苑「しかし……」
女 「では、こう致しましょう。私の家はここから少し行った所にありますの。
その近くまで送っていただければ、それで十分ですわ」
紫苑「……わかりました。ではそれで」
女 「えぇ。ありがとうございます」
(少し間)
(SE:二人の歩いている音)
紫苑「(しっかし、見れば見るほど美人さんだよなぁ……
なんだってこんな美人があんな所にいたんだ?
見た所、着物は着てるが遊女ってわけでもなさそうだし……
それに、この方向って……)」
女 「何か?」
紫苑「あ、い、いえ、別に。あなたに見とれていただけです」
女 「まぁ。ありがとうございます。
でも、そんなに褒められても、何も出ませんわよ?」
紫苑「いえ、お世辞とかじゃなくて、本当に美しいです……
しかし、なぜあのような所にお一人で?」
女 「それは、外の空気を吸いたくなったから…と、言ったではありませんか」
紫苑「そうですが、でもあなたが向かっている方向って……お寺…ですよね……?
まさか、お寺に住んでる方ですか」
女 「えぇ。まぁ…そういうことになりますかしら……」
紫苑「そうだったんですね。
(しかし、いくら寺に住んでるからとはいえ、何か不思議な感じ…だな……)」
女 「さぁ、もうすぐ寺の入り口ですわ。もうここら辺で…」
紫苑「あ、はい……」
女 「…何か、気になることでも?」
紫苑「気になるというか、よくわからないんですけど、
あなたからは、何か不思議な感じがして……」
女 「不思議な感じ?」
紫苑「はい…すみません。突然ぶしつけなことを言ってしまって……」
女 「いいえ、構いませんわ。
よく言われますの。私を見てると、人じゃない気がするって……」
紫苑「そ、そんなことありませんよ!
あなたはとても美しい人だ。あなたが人ではないなんて…」
女 「(かぶせて)でも、それも、一理あることですわ……」
紫苑「え…?」
女 「だって私は………人ならざる者…なのですからっっ!!!!」
紫苑「っ…!!!うわぁぁぁぁぁ!!!!」
(少し間)
紅葉「はぁ……紫苑さん…遅いな……散歩って、一体どこまでいったんだろ……」
櫻 「お、くれはじゃん!」
紅葉「あれ、もみじ……どうしたんだ?こんな所で」
櫻 「ああ、今日こっち客が少なくて店がらっがらだからさ、
櫻がそっちいってただろ? そろそろ遅いし、迎えに来たんだよ」
紅葉「そっか。櫻ちゃんなら、紗櫻の部屋にいると思うから」
櫻 「あんがと!あ、なぁなぁくれは」
紅葉「ん?」
櫻 「今日は紫苑さん、一緒じゃねぇの?」
紅葉「あぁ、紫苑さんなら、夜の散歩にでかけたよ」
櫻 「散歩?こんな時間にぃ?」
紅葉「ま、あの人の夜の散歩は今に始まった事じゃないし、
大して気にはしてないんだけど、
ただ、今日は若干、帰りが遅いなって思ってね…」
櫻 「そうなんだ……そりゃ心配だよな……」
紅葉「だから、ちょっとそこらへんまで様子を見に行こうかなって思って…」
櫻 「それがいいだろうなぁ。
そういやさ、くれは。今、こんな噂が広まってるの知ってっか?」
紅葉「噂?」
櫻 「ああ。俺も紫さんから聞いただけだから、詳しくは知らねぇんだけど、
最近この辺りに、若い女の幽霊が出るらしいんだ……」
紅葉「若い女の幽霊?」
櫻 「なんでも、その幽霊に出くわすと、あの世に連れて行かれてちまうとかで」
紅葉「あの世って、そんな、幽霊なんてこの世にいるわけないだろ?」
櫻 「でもさぁ、実際にうちの店に来る客も、その話題でもちきりなんだぜ?」
紅葉「そんなのたかが噂だろ?まさか、実際に見た奴がいるでもなし……」
櫻 「そりゃそーだけどよぉ……。
あっ、ほらほら、それにここ最近、
店に来る客の数がなんとなく減ってるような気がすんだよ」
紅葉「…確かに、それはうちも似たようなもんだけど……」
櫻 「その噂のせいで稼ぎにならないって、紫さんも言ってたし、
もしかしたらすっげぇ重要なことなんじゃね?」
紅葉「………噂のせいで、客が怖がって店に来ない…か……」
櫻 「それとな、その幽霊が現れる時には、
決まって黒い蝶が現れるらしいんだ」
紅葉「黒い…蝶……?」
櫻 「ああ。んで、月の色も赤く、異様な光景だっ、て……。
そういや…今日の月も真っ赤、だよな……」
紅葉「……!!まさか……紫苑さんも、その幽霊に……?」
櫻 「……可能性としては、あるんじゃねぇ?
……その幽霊が狙うのってさ、若い男ばっかだって言われてるし……」
紅葉「……………でも、まさか幽霊なんているわけないし、
それに、どっかに寄り道してるだけかもしれないし、
もしかしたら、勅使河原様と出くわして、どこかで飲んでるかもしれないし……」
櫻 「おっまえなぁ……」
紅葉「もみじ、ありがとう。俺も、ちょっと様子を見に行ってくるよ」
櫻 「え、いやでも……もし、くれはもその幽霊に出くわしたら……」
紅葉「大丈夫。俺は幽霊なんて信じてないし、
それに、ちょっとその辺りまでいくだけだから」
櫻 「……それでも、気をつけろよ。……なんか、嫌な予感がする……」
紅葉「嫌な予感?」
櫻 「ん……それが何かはよくわからねぇけど。でも……すごい…不安で……」
紅葉「もみじ……大丈夫だよ。もし仮にその幽霊に出くわしたとしても、
俺がきっと紫苑さんを連れて帰る」
櫻 「くれは……」
紅葉「だから、お前は安心して、櫻ちゃんと一緒に、俺達の帰りを待ってろよ」
櫻 「……うん……くれは、絶対に、無茶だけはしないでくれよ……?」
紅葉「うん、わかってる。それじゃ、ちょっと行ってくるな」
櫻 「ああ、いってらっしゃい」
(SE:走って行く音)
櫻 「こんなん、柄じゃねぇけど……。
神様……どうか二人を……守ってください……」
(少し間)
(SE:なんかこう、糸っぽい音がほしいね)
紫苑「ぅ……ん……ここ…は……」
女 「あら、気づかれましたのね……」
紫苑「お前は……っ…!!この…糸は……」
女 「強力な蜘蛛の糸…ですわ……
この糸に絡まれた獲物は、決して逃れることができない……」
紫苑「くそっ……どういう…つもりだ……」
女 「うふふふふ、決まっているではありませんか…
あなたを…おいしくいただくため…ですわ……」
紫苑「くっ……お前っ……人間じゃ…ないのか……?」
女 「えぇ……私は姑獲鳥(うぶめ)……人々は私の事を、妖怪と呼ぶ……」
紫苑「妖怪……?お前が……」
女 「見えませんか?ええそうでしょうね。
私は妖怪とはいえ、もとは人間だったのだから……」
紫苑「どういう…ことだ……?」
女 「遥か昔、私はとある男の子供も身籠りました。
でも流行病(はやりやまい)により、
子供も身籠ったまま、死んでしまったのです……
私は埋葬され、そのまま、姑獲鳥(うぶめ)となった」
紫苑「………」
女 「私は……あの人の子を産みたかった…
たった1人愛した男の子どもを……
でも…それは叶わないまま…私は死んだ……
だからどうしても…あなたがほしい……」
紫苑「なっ…意味わかんねぇよ!何で俺を……」
(回想シーン)
紅葉「なぁ紫苑さん、最近ここら辺に、女の幽霊がでるって話、知ってるか?」
紫苑「女の幽霊?」
紅葉「そうそう。その幽霊ってのが、すっごい美人で、
夜な夜な男を探して歩き回ってるんだって。
んで、その幽霊に出くわすと、あの世につれていかれちまうらしいぜ?」
紫苑「ははははは、幽霊なんて、そんなのいるわけないだろ?」
紅葉「あれ、紫苑さんは信じてねーのか?」
紫苑「まぁね。だいたい、幽霊なんてのは迷信で、
誰かがでっちあげた話がほとんどだし、
でもまぁ……そんなに美人な幽霊なら、一回あってみたいかもw」
紅葉「えー。そしたら紫苑さんが、あの世にいっちゃうじゃんかー!」
紫苑「だ〜から行かないって。ほらほら、紅葉ちゃんも仕事さぼってると、
まーた紫に怒られるぞ」
紅葉「はーい……」
(回想シーン終わり)
紫苑「は…はは……まさか…紅葉ちゃんがいってた幽霊が、
あんただったなんてな……」
女 「うふふふふふ……ねぇ…私をみて…?」
紫苑「っ…んっ……や…ぁ……」
女 「ねぇ……気持ちいい……?」
紫苑「……っ…そんなこと…あるわけ…ねぇだろ……」
女 「でも……感じてるんでしょう……?」
紫苑「あぁっ…んっ……誰が…妖怪なんかに……」
女 「酷い事いうのね……私は…あなたの子供がほしいの……」
紫苑「っ…うっ……ぁ……俺は、
妖怪の子供なんか、ほしくねぇ…っての……」
女 「あなたの事なんかどうでもいの……子供を…子供を頂戴……」
紫苑「うあぁっ…んっ……っ…ぁ……」
女 「あぁ……入った……もっと…もっと動いて……」
紫苑「くっ…ぁぁっ……んっ……ぅ…あ……」
女 「ん…はぁ……もっと…激しく……」
紫苑「あっ…んっ……っ…(くそ……どうしろってんだよ……!!)」
(少し間)
(SE;歩いている音)
紅葉「さてと、意気込んで出てきたものの、
どこにいけばいいのかさっぱりだな…
櫻ちゃんの話しによると、幽霊がでるのはこのしだれ柳の近く……
とはいえ、ここで待ってても出るとは限らないし……」
老婆「もし…そこのお若いの……」
紅葉「え…あ、あぁ。俺ですか?」
老婆「そうじゃ。おぬし、このような所で何をしておる…」
紅葉「連れを探しているんです。でも、皆目見当がつかなくて……」
老婆「さようか……ならば若いの、お主にこれをやろう」
紅葉「これは……お札?」
老婆「このあたりには若い女の妖怪がでるらしいからの……
それに出くわした時には、それを使うとよい……」
紅葉「は、はぁ……」
老婆「もし妖怪に出くわしたら、そのお札を妖怪になげつけて、こう唱えるんじゃ。
『臨(りん)・兵(ぴょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・
陣(じん)・烈(れつ)・在(ざい)・全(ぜん)・滅(めつ)』とな……」
紅葉「それは?」
老婆「妖怪退治の呪文じゃよ。よいか?必ず唱えるのじゃよ……」
紅葉「はい…わかりました……」
老婆「おぬしの連れが…見つかるとよいの……」
紅葉「はい…ありがとう……って、いない………え!?うそ……
でも……お札があるってことは、幽霊…じゃあないよな……
一体何者だったんだよ、あのお婆さん」
(SE:きらきら光る音)
紅葉「ん…?あっ!!黒い蝶!!きっとあれについていけば……!」
(SE:走っていく音)
(場面はお寺の中)
紫苑「……ったく……いい加減に…しろっての……」
女 「んっ…あぁ……なぜ……?」
紫苑「あぁっ…ん…俺は…妖怪の子供なんか…生みたくないんですけど……?」
女 「あなたがどう思うと、私は子供がほしいの……
今までに何人もの男とまぐわってきたけれど、
誰一人として、子供を産ませてはくれなかった……」
紫苑「なるほど……そこにある死体の山は、
そいつらの慣れの果てってことか……」
女 「どの男も使えない男ばかり……だから…あなたこそは……!」
紫苑「ぅぁっ!!っ…ん……そりゃあ…ぁ…ん…
誰だって……っ…妖怪なんぞの子供は…生みたくねぇよ…!」
女 「どうして……?どうして皆そういうの……?
私はただ子供がほしいだけなのに……!!」
紫苑「っ…!!あぁっ…んっ……もう…やめ………」
女 「嫌よ……あなたの子供が出来るまで、
何度でも犯し続けるわ……例えその命尽きたとしても……」
紫苑「あっ…んっ……や…ぁ……(ったく…俺…相当やばいかも……(苦笑)」
(場面は紅葉サイド)
(SE:きらきら光る音とそれを追いかける音)
紅葉「くそ…どこまで行くんだよ……!って、あ、あれ……
そういえば、この道って…確かお寺に向かう道……
とにかく、見失わないようにしないと……
あ、お寺の中に入った……!よし、いくぞっ…!!」
(SE:足音とまる)
紅葉「はぁ…はぁ……なんとか…追いついたけど……
やっぱ夜のお寺は不気味だな……
そんなことより、黒い蝶……!いたっ…こっちか……!!」
(SE:走っていく音と止まる音)
紅葉「あ…ここ……もう使われてない小屋…か……
でも、黒い蝶はこの中に消えたんだよな……
紫苑さぁーん!いますかー!?いたら返事をしてくださぁーい!!」
(場面は紫苑サイド)
紫苑「…!!あ…あの声は……紅葉……」
女 「あら……飛んで火にいる夏の虫とはまさにこのこと……
今日は2人も男を捕まえられるなんて……さぁ…声の主を呼びなさい……」
紫苑「ぁっ…ん……誰が…呼ぶか……!(紅葉…来るんじゃねぇ……!!)」
女 「くすくす。でも…呼ぶ必要もないみたいね……」
紫苑「な……」
紅葉「紫苑さぁーん!!!いたっ…!!!って……し、紫苑さん……!?」
紫苑「紅葉……ったく…タイミング悪すぎ……(苦笑)」
紅葉「これは一体……」
女 「ようこそ、お若い方……
あなたも…私の子供を作りにきてくれたのね……」
紅葉「はぁ!?何言ってって……そうか!あなたが噂の……
でも、紫苑さんは渡しませんよ…」
女 「あなたこそ何をいっているの?私はただ子供がほしいだけ……
さぁ……あなたも彼と一緒になりましょう……」
紅葉「じょ、冗談じゃないっ!!!くるなっ…!!」
(SE:がさっと符を出す)
女 「あぁぁぁぁ!!!なぜ…なぜ貴様がその札を……!!!」
紅葉「あのお婆さんの言った通りだ……よし、これでもくらえっ!!!」
(SE:符を投げる音)
紅葉「『臨(りん)・兵(ぴょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・
陣(じん)・烈(れつ)・在(ざい)・全(ぜん)・ 滅(めつ)』!!!!!」
女 「どうして……!!!!」
(SE:こう消える音をね)
紅葉「き、消えた………」
紫苑「紅葉……お前……何それ……」
紅葉「なんかよくわかりませんけど、紫苑さんを探している時に、
お婆さんにこのお札を投げつけてこう言えって言われたんです」
紫苑「は……はは………なんていうか…すごいな……」
紅葉「確かに…現実ばなれしすぎてて、俺もよくわかりませんよ……
それより紫苑さん、大丈夫ですか…?」
紫苑「まぁ…なんとかね……でもこのままお前が来てくれなかったら、
どうなってたかわからないけど」
紅葉「まったく、縁起でもない事言わないでくださいよ。
それより、あの妖怪…一体何だったんですか……?」
紫苑「あぁ…姑獲鳥(うぶめ)とかいって、
昔に、男の子供を身籠ったまま死んじまって、
それでどうしても子供が生みたくて、
夜な夜な男を探しまわってたんだと……」
紅葉「なるほど…それで若い女の幽霊に見つかると、
あの世に連れていかれるなんて噂があったのか……」
紫苑「ま、それも噂じゃなかったみたいだけどな…」
紅葉「うぇ……何この死体の山……」
紫苑「あの女の犠牲になった奴らだよ…でも確かに、
あの美貌じゃ、ひっかかるのもわかる気するけど……」
紅葉「騙される方がバカなんですよ」
紫苑「うわ……それだいぶショック……」
紅葉「まぁ、紫苑さんが無事だったのでよかったですけど……
当分、夜の散歩は控えた方がいいかもですね」
紫苑「はい……」
紅葉「さ、早く警察に通報して、俺達も店に戻りましょう」
紫苑「あぁ…そうだな……」
紅葉「(N)こうして、夏の夜の奇妙は事件は、
噂の消失とともに、幕を閉じました。
その後、店に戻った俺たちは、
朱里さんにこっぴどく説教をくらったのは、いうまでもありません……」
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