石田衣良の小説。「池袋ウエストゲートパーク」

池袋ウエストゲートパーク第三作目「骨音」の三話目。

金融をテーマとしている。

『どこかの誰かがちいさな紙切れに手のこんだ印刷をする。すかしをいれた紙に七色刷り、十色刷りを重ね、とおし番号を打つ。最新のマイクロ印刷術をつかい、ルーペでしか読めないような文字を印し、磁気インクをつかって電子的な刻印を残す。それでもかかるコストはせいぜい数十円だ。それが市中にでまわるといきなり一万円の価値をもつ。突然生まれる数百倍の利益。まったく魔法みたいにぼろい話。差額の九千九百いくらかは、わが国の立派な政府が専有する通貨発行益になる。』

『だが、一枚の紙切れを通貨にするのは、日本国政府でも日本銀行でもない。おれやあんたみたいな普通の人間が、一万円札には一万円の価値があると単純に信じているからにすぎない。宗教と同じだ。みんなが信じることで、神様は神様でいられる。だから一度でも金というものをみんなが疑い始めれば、紙幣にくっついた幻想はぐにゃぐにゃとゼリーみたいに溶け落ちて、そいつは工芸品のような見事さで印刷されたただの紙切れにもどる。』

登場人物

レギュラー
依頼人
オコノギ

NPO

その他
金融屋
通貨
ぽんど

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