石田衣良の小説。「池袋ウエストゲートパーク」

池袋ウエストゲートパーク第六作目、短編集「灰色のピーターパン」の三話目。

他人の欲望が見えたら、どんなに楽だろうと思わないか?

人の心の底にある、そいつの一番ひそかな欲望。

その人間をそいつ自身にする誰にもいえない欲望が、たとえば額の小型ディスプレイに映るのだ。

液晶のサイズは携帯電話なみの二、三インチでいいだろう。

高精細で性能のいいパネルなら、それで十分。

池袋西武六階の高級品フロア。乳白色のイタリア産大理石の通路。

腕を組んで歩いているのは、五十すぎの身なりのいいおやじと若いキャバクラ嬢だ。

おやじの額のディスプレイには、はちきれそうなキャバ嬢のFカップ。

キャバ嬢の額には、ピンクゴールドの華奢な腕時計がバックライトできらめいている。

高級ブランドのカウンターで接客するすまし顔の美人は、額に湯気のあがる天丼を表示している。

そろそろ閉店間際で腹が減っているのだろう。

三人は相手がなにを心の底で求めているのか、おたがいに理解している。

登場人物

レギュラー
その他
保育園
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