石田衣良の小説。「池袋ウエストゲートパーク」

池袋ウエストゲートパーク外伝。

氷高組の闇カジノと闇金融を背景にしている。

(十分間で一千万、十分間で一千万)

小峰渉は心のなかで同じ言葉を繰り返していた。からからに渇いた口から、唾液を絞りだし、何度ものどに送ろうとする。

無駄だった。のどの粘膜は夏カゼでもひいたように熱っぽく、ざらざらした不快感が張りついている。

(こんなところで、おれはなにをやってるんだ)

どうも、こうもなかった。こたえならわかっている。現金強奪だ。億を超える裏金を、やばい筋からごっそりいただく。

冗談ではない。売れない映像ディレクターをしている自分が、強盗団の一味なのだ。

三日まえに村瀬のおいしい話に乗ったときから、そんなことは承知している。

わかっていても足の震えがとまらないだけだった。

その村瀬勝也は、小峰に背を向けて立ち、ひかり町の奥の暗がりに目をやっている。

八月早朝の熱のない風が、無人の路地を駆けて、小峰の髪を抜けた。

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