4-10:最終決戦〜死闘〜

初公開:2020/02/10


【K.N.C180年 会議所 中庭】

黒砂糖「作戦は成功した。あとはこちらで時間をかせぐだけだァ」

791「『チョコベビークラスター』」

黒砂糖の上空からチョコ型のクラスター爆弾が襲いかかるも、黒砂糖は巧みな身のこなしで攻撃を避け続ける。

抹茶「くらえっ『出来たてツールV1.40』ッ!!」

未完成品の集計ツールを投げつけるも黒砂糖に叩かれてツールは粉々に砕け散った。

黒砂糖「まだまだァ!こちらから行くぞォ『バーナーショット』ッ!」

791「『スーパーカップバリア』ッ!」

魔法で出した銃火器の火炎放射を791と魔法は防壁で守るも、戦いは黒砂糖の鬼神の如き活躍に劣勢になりつつあった。

肩で息をする二人に対し、黒砂糖はまだまだ余裕ありといった体で肩を回して次の攻撃に備えている。

抹茶「黒砂糖さん…なんて力だ。同期として誇らしい限りだよ」

791「彼の狙いは私のMPを枯らすことだ。抹茶、私の盾になって死んでね」

抹茶「えぇ…」

黒砂糖「喋っている暇があるかなァ!?」

二人の背後の炎壁から火炎玉が飛び出し、既のところで二人は避けた。
続いて間髪入れずに黒砂糖は手に用意した大太刀で二人に斬りかかる。抹茶が791の前に立ち、湯呑みで太刀を防ぎきった。

抹茶「黒砂糖さん、目を覚ましてください。昔はあれほど二人でDBを討伐しようと息巻いていたじゃないですかッ!」

鍔迫り合いの中、抹茶は悲痛な面持ちで黒砂糖に訴えかけた。二人は会議所の同期で軍の垣根を超えた親友だった。
抹茶の悲痛な叫びに黒砂糖の顔は一瞬曇ったが、その後すぐにDB教信者特有の不穏な笑みを戻した。

黒砂糖「『トールディレイ』ッ!」

抹茶の頭上から激しい雷が打ち付ける。避けようとしたがまともに雷を喰らい、抹茶はその場で倒れた。

791「抹茶ッ!」

抹茶「大丈夫ですよ。こんなのかすり傷です…」

腰に携えた携帯ポン酢を飲み干し抹茶は体力を回復した。
黒砂糖は悠然と抹茶を見下ろしている。

791「親友の呼びかけにも応じないどころか騙し討ちなんて、私はちょっと許せないな」

抹茶「待ってください791さん。黒砂糖さんは一瞬ですが迷いを見せました。彼も完全には洗脳にかかっていない、そこが勝機です」

黒砂糖「いくらでも時間はかけていい…あのお方が軍神<アーミーゴッド>を直々に成敗してくれるゥ」




【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

同時刻に編纂室でも激戦が繰り広げられていた。

軍神「『アポロソーラ・レイ』ッ!」

軍神の手から放たれた熱光線がDBに向かうもDBはひらりと避けた。熱光線はそのまま奥の書棚にあたり、そのまま熱で溶けてしまった。

軍神「ッ!」

軍神は顔をしかめた。オニロの歴史家としての記憶を軍神は勿論覚えている。
編纂室で過ごした過去を、目の前の宝物を自らの手で無くしてしまった後悔をしてしまった。

DB「どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!こちらからいくぞォォォ!」

DBは高く跳び上がり、自らの毒素で創り上げた手裏剣を投げた。
軍神は抜刀し弾くも、弾かれた手裏剣はその場で四散し毒を撒き散らした。

軍神「ッ!」

顔を伏せながら後退する軍神に、けたたましい笑いを上げながら浮遊したままのDBが追い打ちのように雛あられ形のホーミングミサイルを次々に打ち込んだ。
軍神は疾走る。追尾を振り切られたホーミングミサイルは次々にその場で爆発していく。最初に円卓のテーブルが、続いて書棚が木っ端微塵になっていった。

軍神「くッ!」

皆で額を寄せ合って会議をした空間が、思い出の場所が壊れていく。

軍神「戦闘術・魂『くさむすび』ッ」

DBの周りに巨大な樹木が現れ、伸びた枝葉が彼を捕らえようとするがDBの毒素で彼に辿り着く前に次々と枯れてしまった。

DB「ゲハハハハッ!!どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!随分と精細をかいているな!ええッ!?」

DBは手に持ったでんでん太鼓をけたたましく鳴らし、音波の真空波を繰り出した。
しかしでんでん太鼓の音で逆に幾分か冷静になった軍神は、その攻撃を逆手に取るように真空波に“乗り”、跳躍を利用し空であぐらをかいたDBの眼前まで跳んだ。

DB「なにッ!」

手に持った刀で払い、軍神はDBを地面に叩き落とした。

DB「やるなァ。それでこそ狩り甲斐があるというとものだァ」

DBは地面に打ち付けられ口からチョコを吐き出したが、不敵な笑みは崩さない。
今の軍神は、戦闘術・魂を会得し敵の攻撃をも利用しようとする細かな攻撃型のアイムと、791の教えで魔法使いとしての力量を最高にまで引き伸ばした大味の攻撃型のオニロのどちらの特性も引き継いでいる。
器用な援護兵タイプの完全上位互換である明治兵タイプに昇華し、いまや攻守に隙がないのだ。

いくらDBでも構わない存在にまで会議所が彼の化身を育て上げた。
だがその事実を知ってもなお、DBは自らの勝利を揺るがなく確信していた。

軍神に致命的な弱点があることを知っていたからである。

DBはすくっと立ち上がり、地面に降りた軍神には目もくれず、眼前の書物棚に狙いを定めた。

DB「これから新たな歴史を築き上げる俺様の前に、古い過去の遺産など一切不要ッ!」

幻影の術によりDBは瞬く間に増殖し、一様に書棚に狙いを定め攻撃の準備に移った。

軍神「やめろッ!『ビッグサンダー』」

横方向に放たれた雷撃が幻影のDBたちに直撃し吹っ飛ぶも、みな一様に書棚にぶつかり、ある棚は木っ端微塵に粉砕し、
ある棚は轟音を立てて他の棚を巻き込みながら横倒しになって倒壊していった。

軍神「なんてことだッ!」

明らかに軍神には焦りが見えた。軍神の中にあるオニロの歴史家としての感情が、歴史書と編纂室を守らねばならないという使命感を抱かせ、それが却って彼の行動を大きく制限させていた。

DB「守ってみろォ!守ってみろよォ!」

そうした間にもDBはまた幻影で数を増やし、軍神には目もくれず歴史を破壊し始めた。
爆裂音、書棚の倒壊音、書物の破れる音。
その全てが編纂室の悲鳴に聞こえ、軍神は全てのDBを瞬時に片付けるためその場で跳び状況を確認しようとした。

その行動が大きな悪手だった。

DB「―君は本当に馬鹿だな」

軍神の背後から本物のDBの囁き声が聴こえてきたとき、DBの飛び膝蹴りで彼の身体は既に空中でねじ曲っていた。

軍神「ぐはッ!!」

DB「馬鹿めッ!馬鹿めッ!馬鹿めェッ!!貴様が受け継いだのは何も戦闘力だけじゃないッ!アイムとオニロの不完全な性格、心の弱さも受け継いでいるんだよォォ!!」

次々と空中で幻影のDBが現れて軍神を殴打しタコ殴りにしていく。猛烈な速攻にさしもの軍神も防ぎようがなく、次第にその身は終わりの見えない天井に放られていった。

DB「悪腫『裏切りの妖怪けむり』ッ!」

粘着性のある糸からできた蜘蛛の巣が霧の粒を宿して空中に姿を現し、その中心に軍神は捕らわれた。

DB「ゲハハハッ!再三、俺様との戦いに敗れるとは軍神<アーミーゴッド>の名折れだなァ!?」

軍神「誰が負けたと言った?戦いは終戦まで分からない、大戦の鉄則だろう。長い幽閉で元から弱い知能がさらに低下してしまったのか?」

両の手足ともに蜘蛛の糸にがんじがらめにされ、なお軍神は気落ちすることなく挑発的にDBを上空から憐れんだ。

DBはその言葉に一瞬顔を歪ませたが、すぐに自らの絶対的優位を再確認しニタニタと笑い出した。

DB「この間の地下室では貴様を破壊することに急ぎすぎたから失敗した。だが今回はどうだ。
俺様が用意した最高の舞台だァ。これから行われる貴様の処刑は、演出にも気を使ったんだァ」


得意げに喋り続けるDBを虎視眈々と狙っている者がまだいた。

DB「この場で貴様を処刑しそれを会議所内外にアピールすることで貴様を端とした正のオーラは完全に消滅するッ。
これからは俺様の時代が始まるというわけだァ――なにをするッ!」

軍神「おい、やめろッ!」

未だ部屋に残っていた天高くうねる大戦年表紙が突如揺らめく動きを止め、瞬時にDBに向かったと思うと彼の胴体に蛇のように巻き付きはじめた。
自らの意思でDBを窒息させ暴漢を排除しようとしたのだ。
とてつもない速さで大戦年表はDBの身体に何重にも何重にも巻き付いていく。しかし、今の強大なDBには何ら脅威のない攻撃だった。

DB「グアアアアアアッ!この、小癪なァァァァァァ」

DBは自らの身に貼り付いていた大戦年表紙を真っ二つに引き裂いた。
悲鳴にも似た激しい紙面の破れる音とともに、大戦年表紙は息を引き取るようにその場にハラリと落ちていった。
続くように自動筆記ペン『オリバー』も仇を取らんとする勢いで自らの切っ先をDBに向け突進していったが―

DB「ふんッ小賢しい魔法の器具がッ!!」

いとも容易くDBに振り払われ、オリバーは壁に打ち付けられ静止した。

DB「ゲハハハハハハッ!もう終わりだな軍神<アーミーゴッド>!」

編纂室は大戦場でも見ない程、荒廃の様相を呈していた。
粉砕された家具、倒壊する書棚、燃え盛る炎、そして編纂室の象徴だった大戦年表紙は破られ他の書物に折り重なるようにその身を地に投げていた。


大戦世界の歴史が、終わろうとしていた。



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