草木堂書店 HOMEPAGE - 古楽夢一覧10
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NEW 古楽夢          
今更?今頃?今一度 この話、あるいは皆さんご存知でしたかね。  
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NEW ◆(19)グレートフルデッド
    

 毎度情けない話だが、11月の北九州の市場も欲しいものが全く落札できなかった。久々に出たSF関連書。SF宝石やSFアドベンチャーなどの創刊号からの雑誌類。ハヤカワSF文庫、講談社のSFシリーズ、コバルト文庫などの四箱。それと実に筋目のいいロック関係のLP。白人ブルース、サザンロックなどが多い。『ヤードバーズ』から『CCR』『オールマンブラザース』『ザ.バンド』など。金が無くて、とうの昔に売り払ってしまった盤ばかりで自家用に欲しかった。
 その中には『グレートフルデッド』も何枚かあった。私は20代半ばから、「日本のジュディ.ガルシアになる」が口癖で、自分のバンドの練習は放り投げて、野外コンサートの企画に奔走していた。その辺の経緯は我が人生で一番スリリングだったので、またの機会に書いてみたい。
 SFもLPも落札して持ち帰ったのは、若手の二人。「これとこれが良いよ」と、入札前に薀蓄も披露したから、きっと上手く売り捌いてくれると思う。まあ年寄りの昔話、お付き合いで聞いてくれていたのかも知れないが...ともかく若手に元気があれば、この業界の未来は明るい!!と爺は心嬉しく市場を退出したのである。

 丁度その日、東京の龍生書林さんから、古書目録「りゅうせい」の最終号が届いた。巻頭カラー写真版93p、総頁334p。表紙と001番は「女方」。龍生さんといえば三島由紀夫。「女方」は六世中村歌右衛門さんをモデルにした名作。その生原稿の完全復刻版。このサイズに合う、三島の自筆署名を付す為、限定18部で発行されたもの。平成20年牧羊社(川島勝)刊、非売・和装・帙・外箱付の極美本。頒価78万円。
【幻の稀本】である。
 写真版以外、巻末までの書には複数注文割引が付いている。2冊2割引・3冊3割引・4冊4割引・5冊以上5割引となっている。これは絶対5冊以上注文するに限る。例えば、三島由紀夫の「橋づくし」5版異装赤函二万五千円などが、半額で買えるのだ。勿論1,000円からの本も満載である。
 長い間の顧客様へのサービスであろうから、本屋は注文を遠慮させて頂くが、一冊でも多く江湖の書架に収まって欲しいと願う。
 HPに以前北九州の市場に出た「りゅうせい」を落札してUPしてあるが、文芸書に関しては、当店にとって灯台のような存在で、その光が消え去るのは、本当に寂しい限りだ。サンリオSF文庫で、いわゆる金脈を掘り当てた私を暖かく後押しして下さったのを昨日の事のように覚えている。はたしてその後、龍生さんが期待するほどの本屋に成長できたか?と言われれば、全くもって恥じ入るばかり。せめて受けたご恩は、体の動く限り次世代につないでいかなくては!と改めて肝に銘じている。それは若い人たちを励まし続ける事に尽きると考えている。
 そうそう、「グレートフルデッド」とは「慈善行為として死者の埋葬を手配した人物に対して謝意を示す死者または天使」 の意、だそうだ。
この話、あるいは皆さんご存知でしたかね。  
古書目録「りゅうせい」バックナンバーはこちら 

※私は自分が参加した古書展などの初日には、同業の本を買わないようにしている。「こんな本がこんなに安く!!」という事があっても抜いてしまうと、お客様には魅力が無くなってしまうから。これは中央書房の前沢さんに厳しく指摘されて実行してきた。会場にいわゆる[ヌケ]=本屋の値付け損ないがあってこそ、評判が高まって来場者が増えるのだ。展覧会場の近くの喫茶店で、今日の獲物の成果を自慢し合うお客様がいて、口コミで広がり売上も上がる、という事である。店でもそうだ、やはり全部キチキチの値を付けていては、客足は遠のくはずである。「掘り出し物をわざと作る」位の気持ちを持たないといけない。前沢さん、まだお元気だろうか?悩んだ時など、特にお会いしたくなる方だ。私より先には逝かないで頂きたい。100歳まで現役でお願いします。
※私は昔、 「オールマンブラザース」をもじった、「ホームランブラザース&ヒットエンドラン」というバンドを、広島出身の山根兄弟とやってました。今だにいいネーミングだと自画自賛しております。
 

NEW ◆(20)『あまちゃん』とティファナブラス
   
 
 今現在、爺がNHKの朝ドラ中最高傑作と認定する、『あまちゃん』。特にそのテーマソングには、東日本大震災の被災者のみならず、全国民が毎朝元気づけられたものだ。
 ドラマ本体は無数のパロディが散りばめられていてディープ過ぎ、爺より更に年配の方にはさっぱり従いて行けないようだったが、皆異口同音に、オープニングの華やかなトランペットのメロディは「良いね。元気が出るね!!」と言っていたのを思い出す。そして皆さん、いざドラマが始まるとストーリー展開には余り関心が無いようだった。
 そういう爺にしたって、この朝ドラの深か〜い元ネタの全てを理解できていない。大体「アイドル」というのには興味が沸かず、キョンキョンの歌も、ほとんどリアルタイムで共有した覚えが無い。その後のおニャンコやら今を時めくAKBにも全く無関心で来た。
 脚本の宮藤官九郎ちゃんは、劇中「さゆりさん」の後釜で漁協に入った花巻珠子に「分かる奴だけ分かればいい」 などと、楽屋落ちを居直るかのようなセリフまで吐かせていたから、『あまちゃん』は裏情報が分かる人ほど面白かったのだろう。

 音楽担当の大友良英氏もまた、大好きなアーティストへのオマージュやパロディ、パスティーシュを番組の至る所に散りばめていたのだ。その最たるものが番組冒頭から高らかに謳い上げるトランペットの旋律!!何年間も気づかなかったが、成る程、元を知ると、これがまた嬉しくなるものである。
 毎朝鳴り響いたタイトルバックの曲は、ティファナブラスだったのだ。大友氏は「スカ」と「チャンチキ」の要素を入れて作曲した、と告白していたが、この要素に「マリアッチ」が加えられないといけないだろう。
 LP『Herb Alpert's Tijuana Brass』中の「El Presidente」という曲が下敷きであったのだ。闘牛場のファンファーレで始まる熱く明るい曲だ。大ヒットの「Lonely Bull」とそっくりのイントロではある。一度お聴きあれ!!
この話、あるいは皆さんご存知でしたかね。  

補遺補遺エッサホイ
   
 朝ドラで、国民的ムーヴメントが起こった例では、「ふたりっ子」のオーロラ輝子の「夫婦みち」のシングル盤発表-紅白歌合戦出場があった。「マッサン」でニッカウヰスキーの「竹鶴」なんかが店頭から消えた時期があった。再び出回ってからの味は、どうにも???だったが...今年辺りは復活したろうか。いずれにしろ値段的に爺には手の届かぬ酒だ。2015年の「あさが来た」では五代友厚役のディーン・フジオカのブレイクがあった。朝ドラが時代劇からスタートしたのには感動した。当たり前の話、江戸時代も今も断裂せず繋がっているのである。
 しかし、「あまちゃん」は別格である。沸騰した話題が多すぎて一つに絞れない。「種市先輩」の颯爽とした登場。春子の若い時代役の有村架純やGMTのリーダー、入間しおり役 の松岡茉優も大人気になり、すぐ他のドラマの主演を演じるようになった。後半はマネージャー水口琢磨役の松田龍平も多くの女性の熱い支持を得た。秋元康に似たプロデューサー役の古田新太の怪演も見逃せない。
 遂には主題歌や挿入歌のEP・LPまで発売された。即買い求めた一人である。松岡茉優は、二年後、木曜時代劇「銀二貫」で爺の涙を絞り尽くしたものだ。
 ここ数年は朝ドラ、全く見るべきものがなく、朝はブルーレイに録画した「あまちゃん」を最初から見直している。そして、次々に新しい発見も出てきた訳なのだ。

   
 この間「あまちゃん」から遡って、「木更津キャツッアイ」とか「マンハッタンラブストーリー 」のVHSを買って観た。コリャ全作品を縦断する正に「官九郎ワールド」だ。薬師丸ひろ子も古田新太も小泉今日子も尾美としのりも皆、以前から登場してたのだ。ただ、この二作はいまひとつ「ノリ過ぎ」「ハチヤメチャ」で感情移入できない。「マンハッタンラブストーリー 」のマスター役はTKIOの松岡昌宏。同じバンドの長瀬智也も次項に登場。全く相関図が凄い。
 そして、超傑作を忘れてませんか?「タイガー&ドラゴン」!!。市川森一脚本の畢竟の名作「淋しいのはお前だけじゃない」を下敷きにしている。この作品でサラ金の取り立て役だった西田敏行が、「タイガー&ドラゴン」では集金される側に廻り、ヤクザ(長瀬智也)に返済しては、噺を一つづつ教えて授業料を貰う、という筋書き。設定がウマイ!!一話づつ落語の噺をモチーフに二重のパロディで我々を楽しませてくれた。荒川良々(北鉄の副駅長)の売れっ子落語家ぶりの怪演、ずでにここでも暴発。
 「タイガー&ドラゴン」はブルーレイに焼いてあるのだが、「淋しいのは...」は録画し損ねた。現在DVDはすこぶる高値である。レンタル店にも無い。爺、この作品を見た後、梅沢富美男を観に赤羽線の十条や浅草六区まで行ったもの。当時の篠原劇場の入場料は安かった(500円だったかと)。舞台に万札が飛び交うので、あれでやっていけたのでしょう。先日「座長襲名披露公演」と銘打って、北九州にも来てました。例によって腰の重たい爺は行かずじまいでした。まさか厚生年金会館には札びらは舞わなかったろう。
 「名作」は過去に遡っても、また出演者の将来の作品に期待する事も出来て、楽しみは尽きませんな。

  
シングル盤「淋しいのは...」の後、同じ曲調で「もしもピアノが弾けたなら」が出た。元歌の方が爺は好きだ。ヤクザの取り立て役、という所を避けて、似た曲を出したのだと睨んでます。そして西田敏行は無事「紅白」にというレールが敷かれたと。そう言えば、お寺の手伝いをしてきて、毎年大晦日は除夜の鐘撞きの行事で「紅白」なんぞ最後に何時見たのか忘れた。興味も失せた。一度廃止という話が決まったのでは?最近の大河ドラマといい、偏向報道といい、あんな程度のものしか作れないなら、受信料は高すぎだ。CM抜きという趣旨には賛同するから、月500円が適価と感じる。政治家も早急に「放送法」を変えて欲しいものだ。立法が仕事ではないか。職務怠慢である。

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古楽夢   バックナンバー
今更?今頃?今一度 この話、あるいは皆さんご存知でしたかね。  
【目次】1頁に2話分載。各タイトルをクリック下さい

01◆第1回=シャングリラスの「リメンバー」と
  BEATLESの「フリー・アズ・ア・バード」
◆第2回=夢野久作のスケッチとエッセイ発見!?
02◆第3回=カンロ飴は○○○の味◆第4回=アントラーズ日本一!!とナビスコ保存缶 
03◆第5回=ヨットの夢破れて◆第6回=ほんのおまけ (SONYのメモッコ) 
04◆第7回=日本の大きさ-(the truesize of)◆第8回=ゼブラのサラサ0.7の謎
05◆第9回=野天湯へGO!◆第10回=俳句は久保田万太郎
06◆第11回=鳴かぬなら どこにいるやらホトトギス◆第12回=サーカスがやってくる
07◆第13回=稲垣足穂の箴言◆第14回=「大東亜共栄圏」関連書籍リスト
08◆第15回=雲撮り-小学生の諸君(父兄の皆様)へ◆第16回=「風景を読む」と「ブラタモリ」
09◆第17回=あと何回の運転免許更新◆第18回=哀れなる人の様也
10◆第19回=グレートフルデッド◆第20回)『あまちゃん』とティファナブラス

                 
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