129 名前: ◆gRbg2o77yE [sage] 投稿日:2011/10/30(日) 17:20:05.38 ID:ZHhRdnTm [1/8]
126の続きを投下します。
・まどか主役SSの中編。
・リョナ+陵辱ものになる予定。
・今回はリョナのみ。

暴力描写等が苦手な方はスルーしてください。
NGword「◆gRbg2o77yE」

 その魔女を最初に見たときに感じるのは、何よりもまず異物感である。
 通常の魔女が結界に潜み、人間を引き込んで餌食にするのと異なり、そいつは結界に隠れる必要
すらない、堂々と顕現して破壊と殺戮の限りを尽くしているのである。現実の街に浮かび上がる魔女
の巨体は、結界に慣れた魔法少女であるほど奇異に映っているだろう。
 藍色のドレスを纏い、耳障りな笑い声を撒き散らす上半身のみの人形。下半身があるべき空間に
は太いシャフトが1本あるだけで、巨大な歯車群に連結されている。
 通称。ワルプルギスの夜。
 得体の知れない、『舞台装置』の魔女。
 街にビルの雨を降らせる巨大な破壊者は、使い魔のサーカス団と、影色の魔法少女たちを大量に
引き連れて、堂々と市街地上空に君臨する。確かなことは1つ。舞台装置たる魔女と、ワルプルギス
劇団とでも呼ぶべき大量の手下たちは、次の公演先に見滝原を選んだということだった。
 そして今、盛大なパレードを行う舞台装置に誘われて浮かび上がるビルの1つに、パステルピンク
のコスチュームを纏う魔法少女が掴まり、一緒に上昇していた。浮遊している標的に目立つ形で近
づく義理は無い。ビルに飛び移れば、勝手に近くまで運んでくれるのだから。
(ワルプルギスの夜は、私が倒す……!)
 まどかは魔弓に力を込めて、巨大な魔女に狙いを定める。
 彼女がいるのは、破壊されたビルの内部。コピー用紙や紙ファイルが大量に散乱したフロアに立
ち、ワルプルギスの夜の頭部を撃ち抜こうとして矢を放った。
 完全な奇襲。
 元より、魔法少女と魔女の戦闘に、正々堂々というものはない。

「いけえええええええええっ!」

 …………………………………………………
 ……………………

 ビルから飛び出した魔法の矢が、人形の側頭部に突き刺さる。
 間違いない直撃に、魔女の嗤い声は一瞬だけ途切れた。
 しかし、巨大な頭部に刺さる矢は、人間で言えば1本の巨大な針が刺さったようなもの。
 頭部を完全に粉砕するまで矢を打ち込まなければ、巨大な舞台装置は何事も無いかのように街を
破壊し続けるだろう。
 窓ガラスを割って、明るい色の魔法少女は外に躍り出た。
 巨大な人形と、影色の魔法少女たちの大群の前に、姿を現す。
(ほむらちゃん……! マミさん……! 私に力を貸して……!)
 傾いて浮遊するビルに腰を落としたまどかは、数十発の魔法の矢を連射した。
 一撃一撃に、普通の魔女ならば止めをさせるほどの魔力が込められている。
 それを惜しげもなく連射する。
 残った魔力の配分など考える余裕は無い。
 殺される前に殺すしかないのだから。
 ビルから現れた可愛らしい魔法少女を見て、踊っていた手下の動きが止める。
 そして、まるで歓迎するかのような拍手喝采を送ってきた。
 特に攻撃を邪魔もしない。
 あまりにあっけなく、発射された矢は全て、巨大人形の顔から首筋に命中し、つるりとした表面を穴
だらけに変えていく。
「や、やった……! これならいけるかも!」
 これだけの矢を受ければ、普通の魔女ならば木っ端微塵になっている。
 大きなダメージを与えられたはず。
 まどかの顔は少しだけ明るくなり、すかさず次の攻撃の準備に入ろうとする。
 しかし、次の瞬間、彼女の笑顔は凍り付く。
 ワルプルギスの夜に矢は大量に刺さった。
 しかし、それだけで、魔女は何も気にしていないように、地上にビルを落としていく。まどかが見て
いる前で、また数百の命がビルに押し潰され、この世から脱落した。
(……まさか、全く効いていないんじゃ……)
 実際に穴が開いているのだから、と自分に言い聞かせても、不安はみるみる大きくなる。それほど
までに、眼前の魔女は巨大で、悠然として、そして嗤い続けている。
 あらためて間近で、自分が戦っている存在を直視した瞬間、全身に悪寒が走る。
 桁違いの魔力と、巨躯と、攻撃力と、世界の全てを憎悪しているかのような破壊活動。
 それは、魔法少女の戦意を揺るがすには十分すぎるものだった。
(もっと攻撃しなくちゃ! 効いていないわけない! きっと我慢してるだけ!)
 震えながら弓を構え直すまどかに対し、魔女は三日月型の口を細く窄めた。
 そして、びくりと硬直した魔法少女に、蝋燭の火を消すかのように息を吹きかける。
 吐息は油膜のように輝きながら空気中に広がっていき、まるでサーカスの芸人が火を噴くかのよう
に、途中からは凄まじい勢いの火炎放射と化してまどかに襲い掛かった。
(しまっ……! 回避できない……!)
 視界に広がる虹色の炎を前に、まどかは両腕を交差させて顔と胸部を守る。
 顔を守ったのは本能的な恐怖から。
 そして、胸を守ったのは、乳房ではなく、ソウルジェムを守るため。ここでジェムが破壊されて変身
が解除されてしまえばどうしようもなくなる、それが無知なまどかの精一杯の判断だった。
 次の瞬間、彼女が夢と希望を注いだワンピースが燃え上がる。
 激しい炎の奔流が叩きつけられ、色鮮やかな毛髪が一瞬で縮れて吹き飛んだ。
「く゛、う゛う゛う゛う゛ぅ゛! う゛うう、ぅぅ゛! く゛う゛う゛う゛う゛!」
 予想を遥かに超えた高温が、まどかの全身に襲い掛かる。
 ソックスも手袋もみるみる炭化していく。それなりの防御力を持つ魔法少女のコスチュームが、高
温にまるで歯が立たず紙のように焦げ、起伏の乏しい肢体に黒く焼き付いていく。
 熱さは数秒で激痛に変わる。皮膚の表面を平等に焼かれる痛みは、身体をどう動かそうと全く変
わらなかった。顔と胸のジェムだけは守ろうと両腕で隠したが、何の意味も無かい。
 炎は煙のように腕の隙間をすり抜けて、まどかのあどけない顔と、小さな乳房を愛撫する。悲鳴を
上げる唇から口内に侵入した熱は、喉粘膜から肺腑や胃までも蹂躙し、鼻腔や眼窩から顔の内部
を沸騰させる。背中も、乳房も、腹部も、愛らしい顔も、皮膚が焼け爛れて血泡を噴き、表面から黒く
焦げ固まっていく。スカートが赤い火の粉を散らしながら下腹部から焼け落ちるが、露出した性器は
陰唇が完全に炭化して癒着し、焦げた割れ目が辛うじて残るのみだった。
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
 灼熱地獄から逃れようと、まどかはのたうち回るようにビルの内部に転がり込む。
 あまりの苦痛に絶叫し続けるも、喉が焼けてそれも止まる。火炎放射は窓を飴のように溶かし、ま
どかがいる建物内部を火の海に変え、そのままビルを貫通して地上に届いた。
 工業地帯から伸びた鉄塔が2本、炎を浴びてぐにゃりと曲がって倒れる。
 上空では、焼死体にしか見えないまどかがビルから飛び出し、ピンクのコスチュームを着た魔法少
女の姿を取り戻した。黒猫のエイミーを助けることで得た癒しの力は、体表面の火傷など重度でも数
秒で治癒してしまうが、魔力を大量に消耗することは違いない。
(駄目……っ! 接近戦じゃ火力に対抗できない……っ!)
 まどかは炎上しながら落下するビルから別のビルに飛び移りながら、必死に考える。
 この距離では火炎放射で狙い撃ちされてしまい、とても撃ち合えない。市街地に隠れてゲリラ的に
戦うのも選択肢だが、ビルを投げてくるような相手では有効とは思えない。細やかな場所に潜んで迎
え撃とうとしても、相手はビルで面的に押し潰してくるだけなのだから。
「でも、ずっと動き続けながら攻撃できれば、あるいは……」
 ここはワルプルギスの夜の射程範囲であるため、一帯には妙な浮力が発生しており、魔法少女の
まどかは、その気になれば空を飛んで移動できそうだった。
 例えば、ずっと魔女の背中から矢を打ち続けるような戦法ならば可能かもしれない。相応の危険は
勿論あるが、他に戦う手段も思いつけない以上、それに賭けるしかない。
 そこまで考えて、まどかは魔女の嗤い声が聞こえないことに気付いた。
 妙に静かな敵の様子を窺おうと、まどかはちらりとワルプルギスの夜を見る。
 そして、その『変化』に戸惑いの表情を浮かべる。
「え……? いったい、どういうことなの……?」
 魔女の様子が変わったのは明らかだが、それがいったい何を意味するのか。まどかは何も分から
ないまま、舞台装置の背中へと向かっていく。

 …………………………………………………
 ……………………

 しかし、ワルプルギスの夜の背後に向かって飛翔するまどかを、不快げな面持ちで見ている無数
の視線があった。使い魔である影色の魔法少女たちである。
 いつも無邪気に踊っている彼女たちが、今は殺意に近い強烈な敵意を発している。
 理由は至極明快。魔女の舞台正面ならともかく、舞台の背後に回ってしまえば、そこで演じられる
劇を見ることができない。戯曲を愛する舞台装置の魔女に対して、何たる無礼、侮辱だろうか。
 その怒りを表すかのように、彼女たちの手には、ハートや星の装飾が施され、丸いフォルムにデザ
インされて玩具のように可愛らしい、ステッキやロングソードが握られていた。
 先端に天使の翼が生えたハートをトッピングした巨大ハンマーを手に、使い魔の少女が言語ならぬ
言葉で呼びかける。それに同調するように、他の影たちも武器を持ち上げる。
 街中に散っていた何百という使い魔たちも、黒い霧のように舞い戻った。
 全員が一斉に、魔女を背後から狙うまどかに殺到する。そして、

「な、何なのあれ……? ワルプルギスの夜が、ひっくり返ってる……!?」

 物陰に隠れていたほむらは、巨大な破壊者の変化に戸惑いの声を漏らした。
 人形部分を天に向けた舞台装置の魔女は、スカートを閉じて、嗤いを止め、ただ静かに宙に浮いて
いる。今まで暴れていたのがウソのようだった。
 それに合わせるように、街中で聞こえていた悲鳴や破壊音が消失する。
 時間が停止したかのように、静寂が街を呑み込んだ。
 自分の心臓の音しか聞こえない絶対的な沈黙。
 異常事態なのは明らかだった。
(なんだか、魔女の結界の中にいるみたい……)
 見慣れた街並みが、まるで別の何かに変わってしまったかのような違和感。
 しかし、ほむらは震えながら、沈黙する舞台装置の魔女を見守り続けるしかなかった。

 …………………………………………………
 ……………………

 どこからともなく聞こえてきたのは、大音量の開演のブザー。
 巨大な人形は、まるで観客に一礼するようにして、ドレスを両手で掴み上げた。
 厚いスカート型の舞台幕。
 それがゆっくりと左右に開いていく。


 幕が開けた瞬間。
 咆哮のような魔女の嗤い声が響き渡る。

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