「あー、あたしもとうとうおばあちゃんか」
 「まさかお姉ちゃんがこんなに早くお嫁に行って赤ちゃん産むとは思わなかったよ」
 「しかも双子の女の子とはね」
  高校を出てすぐに優しい年上彼氏と恋愛結婚したまどかは双子の赤ちゃんを授かって幸せいっぱいだった。
 「「「それじゃ、また明日来るから」」」
 「うん、ありがとう。パパ、ママ、タツヤ」

 「……うふふ、かわいい寝顔」
  家族が帰った後、すやすやと寝ている愛娘達の顔を覗き込み幸せに浸るまどか。その時、娘達がまどかの言葉に反応するかのように閉じていた小さな瞳を開いて、まどかの顔をじっと見つめる。
 「んー? おなかがすいたのかな?」
  まどかはそう言って笑いかけながら娘を抱き上げようとしたその時、娘達の小さな口元が動き、まどかのよく知った声が発せられた。
 「随分幸せそうだね、まどか」
 「本当。もう幸せの絶頂って所かしら?」
 「!? そ、その声は……!?」

 「ねえ、まどか。どうして契約して一緒に戦ってくれなかったのさ? まどかが一緒に戦ってくれてたら、あたし死なずに済んだのに。あたしも、まどかみたいに素敵な恋とかして幸せになりたかったよ」
 「鹿目さん。いえ、今は鹿目さんじゃなかったわね。貴女、私と一緒に戦ってくれるって言ったわよね。なのにどうして、契約どころかすべて忘れて逃げ出したりしたの?貴女にはがっかりしたわ」
 「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! ごめんなさい!! ごめんなさい!! 私、怖くて!!」
 「あたしだって怖かったよ。でも誰かがやらなきゃみんな不幸になるんだよ?」
 「臆病で弱虫なまどかちゃん。みんな忘れてひとりだけ幸せになるのってどんな気持ち?私も幸せになりたかったな」
 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! 許してください許してください!!」

 「○○さん!!どうかされたんですか!?」
  看護師がまどかの絶叫を聞きつけ病室に飛び込んでくる。するとそこには、涙と鼻水を垂れ流し、失禁しながら誰かに謝り続けるまどかと元気な泣き声をあげる双子の赤ん坊がいた……。

  数年後、精神病院の一室。ベッドの上で上半身を起こしてぼーっとしているまどかの元に4歳くらいの女の子が二人やってきた。
 「「ママ、あのね、きょうからわたしたちようちえんにはいったんだよ」」
  子供たちの屈託のない笑顔と言葉。
 『『ねえまどか。嫌な事から逃げて得た未来って素晴らしいよね』 』
 「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
  だがまどかには子供達の姿も声もかつて、まどかが見捨てて、忘れようとした少女達の物にしか見えなくなっていた……。

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