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112.匿名ぶろーにんぐ - 18/04/16 21:19:27 - ID:Q19az+cjCw
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太陽が眠りにつき、二人の世界を月明かりが支配する。
「もうこんな時間ですね。さて、そろそろいつものやつを…
私今からこの花畑で踊ります!ちゃんとここから見ていてくださいね。」
そう言うと彼女は一目散に崖下へダイブする。
強化カーボン製の義体は、いまだに数メートルの落下を物ともしない。
かつて習った五点着地など忘れ、堂々と足腰のみで着地した。
「さあ、始めましょう!私達の束の間の夢…今一度あなたに捧げます。」
月光降り注ぐ青い絨毯の上、白い猫が華麗に舞い踊る。
彼女の笑顔はその場にあった何よりも眩しかった。
東の空に生命の光が灯る。やがて降り注いだ有明の救済に、木々は歓喜の歌をあげる。
「結局一晩中いてしまいましたね。もう帰りましょうか。」
レジャーシートを片付けながら、彼女は思い返していた。
二人で過ごした楽しい日々を。二人で交わした約束を。二人で描いた魂の航跡を。
「そろそろお別れです。大丈夫ですよまた逢いにきますから。絶対に。」
彼女は"あなた"と呼ばれた誰かの墓標に口づけをすると、ふわっと一回転した。
「おやすみなさい。また夢で逢いましょう。」
いつの日か、彼女が終に至る時、この場所は本当の永遠となるだろう。
ずっと…ずっと時が経ち。ずっと…今よりずっと平穏で静かになった時代。
名も知られぬ旅人がここを訪れた。
旅人が見たのは、崖下に広がる一面の花畑と寄り添うように朽ち果てた二つの墓標。
旅人は、この場所を想った者たちの絆に敬意を評し、そっと手を合わせると。
写真も撮らずに立ち去った。
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