2chエロパロ板「大人しい女の子が逆レイプ」スレのまとめwikiです

【ネクロさん、誘う(前編) / DOM】

 思い出が走馬灯のように蘇ってきた。

 ――初めて会話したときのネクロさんは、酷かった。

 最初の馴れ合いは、ネトゲの話だったのを覚えている。
 熱烈にハマっているFPSの話を男の友達に話していたときのことだ。

「でさぁ、FPSって言うんだけど、最近ハマっててさ。
 無料だからお前もやってみろよ。絶対面白いからさー」
「いや、もう試験近いんだからさ。勉強しろよ」
「息抜きになるって。勉強という砂漠のオアシスになるって。
 正直友達いなくてさびしいんだよ。かまえよ、俺をかまえよ」
「せんせー、ここにかまって君がいますー」
「はははは」
「……し、知ってる」

 突然、隣の席の根暗な女が俺に話しかけてきた。

「わ、私、それ、知ってるよ」

 髪はぼさぼさ、挙動不審な謎の女、北村。下の名前は知らない。
 言葉を発してはいるが、俺にはまったく目を合わせず、床に視線を落として喋っている。
 ロボットみたいにかくかく話すこいつは、きっと俺とは別次元でものを考えているん
だろうな、と思った。

「お、おぉ……そ、そうなのか。メインウェポンは何を……」
 お見合いの定型句のように、俺は根暗な女に尋ねた。
「エ、AK47」
「……厨武器だね」
「負け犬の、た、たわ言」
「……案外言うのね、きみ。あ、最近マップ新設されたけどさぁ――」

 と、その日は帰りのHRまで延々語りあっていた。
 気が付くと俺の男友達たちは遠巻きになっていた。



「いやー、勉強になるわー。お前ひょっとして、かなりやりこんでいるのか?」
「う、うん……一日ろ、6時間くらい」
「一日の1/4をFPSに!? よし、ID教えろ。対戦部屋立ててやろうぜ!」
「え……え、え」
「えええ? eeeか? ずいぶん適当なIDだな」
「ち、ちが」
「チガ? それはtiga? chiga?」
「……紙、書く」
「あ、うん、そだね。ね、く……ろ?」


 necro


 そのID名には見覚えがあった。
「……ひょっとして、有名プレイヤーのネクロさんですか?」
「……う、うん。ひょっとしたら、そうかも」

 動画サイトに何本か動画が上がっていた。
 初心者向けの参考動画集にも「上手すぎて参考にならない」として紹介されていた。
 有名な動画は、大会での11人連続kill、ナイフ縛りで敵全滅、1人で6人相手に勝利、
ハンドガンでスナイプ、超反応すれ違い殺人事件、などなど。

 この瞬間から、こいつのことは敬意を含めてネクロさんと呼ばせてもらっている。



 その夜。対戦部屋を作って一緒にやってみた。
「ちょ、何だその動き……」
「うぉ、頭の後ろに目でもついてんのか!?」
「おらぁ、死ね死ね死ね……あ、死んだ」
「ちぃ、手榴弾巻いてけん制を……あ、する前に死んだ」
「……あ、死んだ」
「……あ」
「……」
「く……」
「……」
「……」
「……うひ、ひ」
「……」
「……あふぅ……」

 俺は黙々と、ネクロさんに狩られた。


 対戦終了後のチャット。

『流石有名プレイヤーは格が違ったわ……』
『それほどでもない』
『俺、一回かネクロさん倒せたっけ?』
『いや、バジルさんには一度も』(注:バジル 俺のハンドルネーム)
『ですよねー。くそっ、一回くらい殺してやる! 次だ次!』
『当たらなければどうということは無い』

 ちなみに6時間かかって、ようやく手榴弾が事故当たりして一回殺せた。

『殺せた……ようやくお前を殺せたよぉーー!!』
『おめでとうございます』
『感動で泣きそうです』
『まだまだ弱いね』
『次は3時間に一回殺します』
『それじゃ今日は寝るノシ』
『乙ノシ』

 FPSじゃなかったらシュールすぎる会話である。



 話は少し飛んで、現在。
 期末試験が終わり、冬休みが始まり、クリスマスはネクロさんとFPSして、
大晦日はネクロさんと年越しFPSして、元旦・二日は親戚周りという名のお年玉
回収。

 今日は3日。
 正月の特番を眺めている最中に、ネクロさんから電話が来た。

「お年玉、も、もらったから」
「うん」
 あけましておめでとうから始まると思ったら、いきなり本題だった。
「マ、マウス、買うの」
「へぇ」
 ここで少しの沈黙。ネクロさんの息を呑む音が聞こえた。
 ちなみにFPSプレイヤーにとって、マウスとは即ち武器である。
「き、き、き、……来て」
「え?」
「い、い、……いっしょ、いっしょに、い、い、いこ?」
「――お、おぉう」

 ということで年明け早々、家電量販店に行くことになった。



 年明けのヨドバシカメラは、家族連れでにぎわっていた。
 クリスマス商戦を終えて、今日からお年玉商戦か。ご苦労様です。
 俺はクリスマスに貰ったipodでサカナクションを聴きながら、その光景を眺める。

 自販機で暖かいコーンスープを買ってネクロさんを待っていると、ママチャリに
あずき色のジャージ上下でセミロングの髪が若干ぼさついている、なんか貞子みたい
な奴がやって来たと思ったら、ネクロさんだった。
「……お、お、おま、たせ」
「……お、おぅ」
 俺はおそらく、コイツには恋愛対象としては見られていないのだろうなー、と思った。


「普通なら有線式じゃないのか? 無線式は電池で重いし」
 マウス売り場にて。
「え、え? 線が、じゃ、邪魔だよ?」
 普通は重量、信頼性などから有線式が選ばれる。
「それにしても、そんなゴツくて重たい奴を買うつもりか? 軽いほうがいいんじゃ」
「え、え? だ、だって、かるいと、ぶれるよ?」
 自分のスタイルを突き詰めた、いわゆる天才という方々は、われわれ常人の常識には
収まらない考え方をなさる。

 今日のネクロさんの買い物、マウス4980円、マウスパッド4980円、計10000円弱。
 マウスパッドがやたら高価なのは、FPS界では常識です。

 でもネクロさんは、男の人と遊びに行くときのために服を買いに行くといいと思うの。



 地下街でたこ焼きをほお張りながら談笑中のこと。

「バ、バジルさん」
「はい?」
「ク、クリスマスから、ぱ、パソコン、お、おとが、ならないの」
「あらら」
「な、なおして、ほしい……」
「おぅ、できる範囲ならやってやるぞ……ん?」
 ふと、何かが引っかかった。
「まて、まてまてまて」
「え、え、え?」
「お前、大晦日も普通にFPSしてたよね? そしていつもどおり俺を殺してましたよね?」
「う、うん?」
「……音なしでどうやってFPSしてたの?」
「? が、画面は、見えるよ?」
「……い、いや、それは、そうだけど」

 分かりにくいので少し解説しますと。
 音がしない → 状況や敵の場所が分からない → 死ぬ
 要するに、結構不利です。

「べ、別に問題、ないけど……ちょ、ちょっと、きに、なるから……」
「FPSで音がしないことが、別に問題ないときましたか!?」

 そういえば一年戦争の英雄が、ガンダムの頭を吹っ飛ばされて「たかがメインカメラを
やられただけだ!」と言ってましたね。
 やっぱり、天才ってぶっとんでんな。



 ネクロさんの家に行く。
 まだピュアな俺にとってドキドキワクワクな展開なのだが、なんだかジャージ上下の
ネクロさんを見ていたら、すげぇリラックスしてしまうのだった。

 到着すると、小さなアパートだった。

「おじゃましまーっす……と、あれ? ネクロさん、誰もいないの?」
 玄関に靴が1足しかない。見慣れたネクロさんの革靴だった。
「ひ、ひとり、ぐらしです」
「――マジでか!?」
 急にジャージ姿のネクロさんが、大人の女性に見えた。

「せ、せま苦しい、とこです、が……」
「お、おぅ……」
 ドアを開けると、ちゃんと女の子の匂いがした。
 ――落ち着け俺、今日はそんな、ドキドキワクワクイベントではないのだ。
 小さな、驚くほど小さな、ワンルームの部屋だった。おそらく、俺の部屋の方が広い。
 その小さなスペースに全てが綺麗に収まっていた。
 キッチンがあり、テーブルがあり、タンスがあり、パソコンがあり、本棚があり、
そしてベッドがあった。

 要するに、とても狭かった。



 PCの音が出ないという場合、多くの場合音量がミュートになっているか、配線が外れて
いるか、である。
 一通りネクロさんのPCをチェックしたが、問題は無いようだった。
「わからん……」
「そ、そうです、か」
 ちょっとがっかりした表情のネクロさん。
 くっ、俺、カッコワルイぜ……。
「お、お雑煮でも、たべます?」
「いただきます……」
 そういえば他人の家のお雑煮なんて食う機会があまりないですよね。

 ソフト的には問題はない。ボリュームコントロールもちゃんと設定している。
 メディアプレイヤ、ブラウザ等の他のソフトでも音が鳴らない。
 ドライバを最新のものに更新……しても変わらず。
 問題はハードか? でもスピーカーに異常はなさそうだし……。
 ためしにスピーカーのケーブルを抜いて、自分のipodのイヤホンをジャックに差し込んでみるが、無音。
 やはり途方にくれる。
「……ん?」
 なんだかイヤホンジャックが、やたらとぐらぐらする。

「ネクロさん、クリスマスの日にスピーカーの線に足を引っ掛けて、それ以来音が出なくなったりしてない?」
「ななな、なんで、し、知ってるの!?」

 ジャックが故障しているみたいですね。



「修理に出してもいいけど、安く済ませるならコレがいいんじゃないかな」
「ふー、ふー」
「これこれ。USB接続のオーディオデバイス。安いので1500円くらいかな」
「もぐもぐ」
「しかし、なぜに線に足なんて引っ掛けることに」
「もぐ――。……ト」
「……と?」
「ト、トイレ、急いで……」
「……そうか。それは、仕方ないね」
 トイレ我慢してFPSは結構あるある。

「……ずるずる」
「……もぐもぐ」
「ネクロさんのお雑煮美味いね」
「ど、どうも……」
「……」
「……もぐもぐ」

 なんか変な空気になった。

「……」
「……」スッ。
「?」

 ぱたん。



「……え?」

 突然、ネクロさんがお雑煮を放置して部屋から出て行った。



「……」

 シャー。





 あとなんかシャワーを浴びる音が聞こえてきた。



「……」

 ふぃーん。(ドライヤーの音)




 ゲームでも現実でも行動が読めないネクロさんだけれど、今回のは本当に読めない。



「ふぅ……」
「べふっ!?」

 がちゃっとドアを開けて、バスタオル姿のネクロさんが出てきた。
 思いっきり噴き出してしまった。



「……」
「……」
 今、珍しくネクロさんが俺のことをガン見している。
 普段合わせていなかった視線の分だけ眺めてやるよ、とでも言いたげなくらいに。

「……」
「……」
 対して俺は、なぜか正座している。
 いや、気が付いたら何故か正座する形になっていた。
 視線は床を。さっきからネクロさんのつま先を観察している。綺麗だな。




 かたやベッドに腰掛けるバスタオル姿の女。
 かたや床に正座する男。




 誰か、解説を――。


【ネクロさん、誘う(前編) / DOM】 了

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