この世界の生き物は、すべて布と綿でできている。

青々と広がる草原に、何匹か山羊のような動物がいる。
彼らも布の皮と綿の肉を持つ。目は刺繍で、視線が動くたびに刺繍の縫い目も変わって行く。
もちろん彼らが食べている草も布だ。手にとってみれば縫い目の葉脈を見ることができる。

地平線の近くに、ヒトのようなものが見える。
よく見るとそれは二足歩行するデフォルメされたイヌだかネコだか、よくわからないものだ。
彼らは自身たちを「ヌイグルミ」と呼んでいる。
この世界で最大の繁栄を謳歌する生物だ。

タオル地の布で覆われたこの生き物は、ヒトと同じように言葉を話し、考える。
彼らの文明は今のヒトよりは遅れているが、それは数百年程度の差と言えるだろう。

しかし、彼らの文明は危機に瀕していた。
ヌイグルミの最大の天敵、「ツギハギ」たちによって……

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